2012年7月13日金曜日

pullback 撤退は侵攻よりも難しい・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 pullbackは、後ろ(back)に引く(pull)ことで、「引き戻すこと」という名詞。カタカナ読みは「プルバック」。軍事用語では「軍隊の撤退」を意味する。別の言い方としてdrawbackなどがある。正式にはwithdrawalで、軍隊を退却させる行動一般を指す。動詞はwithdraw。
 米外交の大きな課題は、“on Iraq pullback”(イラク駐留米軍の撤退問題)、そしてon Afghanistan pullback (アフガニスタンの撤退問題)。
 ブッシュ大統領は2007年7月12日、イラク情勢に関する米軍の中間報告を発表、「複雑で多難な状況」が続いていると指摘した。大統領は、この春以来のtroop surge(増派)による約3万人の配備がようやく終ったばかりで、“I believe we can succeed in Iraq, and I know we must.”(私はイラクでの成功を信じる。われわれは成功しなければならないのだ)と言明した。だが、野党民主党が多数派を占める米議会下院はその日、2008年4月1日までに米軍を撤退させる法案を223対201の賛成多数で可決した。ブッシュ大統領は拒否権を行使し、法案は廃案になった。だが、オバマ政権は撤退を決定。イラク駐留米軍は2011年12月18日、国境を越えて隣国クウェートに入り、撤退を完了した。ブッシュ前米政権が2003年に始めたイラク戦争は、約8年9カ月を経て完全に終結した
 ところで、軍隊の撤退にはtactical withdrawal(失地回復のための戦術的撤退)、feigned retreat(敵をおびき寄せるための見せかけの退却)、rout(敗退、退散)があるが、ブッシュ大統領が恐れて二の足を踏んだのは、ズバリrout。共和党政権の元国務長官であるジョージ・シュルツとヘンリー・キッシンジャーの両氏が、2005年1月にインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに、“A rout is not an exit strategy.”(敗退は退去戦略ではない)との論文を発表したとおりだった。
 米タイム誌(2007年7月19日付)の“How to Leave Iraq”(いかにしてイラクから立ち去るか)の記事によると、駐留米軍16万人の撤退は口で言うほど簡単なことではないと述べている。かつて、アフガニスタンに侵攻した旧ソ連軍が約12万人の兵を隣国に撤収するだけで、1988年5月から9カ月かかり、敵の追撃を受けて500人以上の兵士が死亡したという。 
 アフガニスタンについては、オバマ米政権は現在9万1千人の駐留米軍を、2012年秋までに6万8千人に減らす方針を示している。だが、その後はどうなるのか?
 19世紀初めのプロイセンの軍事学者、クラウゼヴィッツは著書「戦争論」で、“War is a continuation of political activity by other means.”(戦争は他の手段による政治の延長)と述べたが、アフガニスタンの運命のカギを握るのも、米国の政治であることだけは確かだ。The Sankei Shimbun(july 28 2007)「グローバル・English」はこちらへ