2012年7月15日日曜日

spoiler


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 spoilerは英和辞書では「台無しにする人(物)」。カタカナ読みは「スポイラー」。元の動詞のspoil(スポイル)は「ダメにする」「損なう」の意味があり、to spoil a child by pampering him(子供を甘やかしてダメにすること)から、spoilerは「甘やかす人」でもある。だが、最近は“Spoiler!”といえば、「ネタばれ注意」。すなわち、映画や小説のプロットをばらして、観客や読者の感興を損なう「ネタばらし」のことだ。
 2007年7月21日、英語版ハリー・ポッター・シリーズの最終第7巻“Harry Potter and the Deathly Hallows”(邦題『ハリー・ポッターと死の秘宝』)が一斉発売されたが、関係者は発売前のネタばれを防ぐため、数カ月前から周到に準備したという。その模様をタイム誌(2007年7月9日号)が、“Harry Potter and the Sinister Spoilers”(ハリー・ポッターと邪悪なネタばらしたち)の記事で伝えた。
 このシリーズは、1997年の第1巻の発売以来、第6巻に至るまで、全世界で60以上の言語に翻訳され、3億部以上を売ったという空前のベストセラー。世界中の子供たちが最終巻の発売を待ち望む一方で、ハリー・ポッターの成功を妬む連中の嫌がらせも絶えない。作者のJ.K.ローリングさんに対しても、すでに4月ごろから「ネタをばらしてやる」と脅迫するpotential spoilersがあったようだ。最大部数のUS版を出版するスカラスティック社では、印刷工場から全米の販売代理店に至るまで、不祥事が起らないように〝厳戒態勢〟を敷いたという。
 ところで、spoilerは選挙にも登場する。自分は当選する可能性がほとんどないが、ほぼ同じ主張をするライバル候補の票を奪って、かく乱要因となる候補者をspoilerと呼ぶ。共和・民主の2大政党が対峙する米国では、independent(日本でいう無所属?)がしばしば〝台風の目〟となる。たとえば、2000年の大統領選挙では、共和党のブッシュ大統領と民主党のゴア元副大統領が争ったが、環境派のラルフ・ネーダー氏がindependentで出馬して三つ巴となり、ネーダー氏がゴア氏の票を奪ったことでブッシュ氏が勝った、とする分析がなされた。
 さて、オックスフォード英語辞書(OED)によると、spoilはもともと「動物の剥いだ皮」を意味した。それが、「皮を剥ぐ」という動詞に転じ、さらに、戦場で勝者が敗者の武器や甲冑を奪い取る、暴力で人の持ち物を奪うこととなり、現在の意味に発展した。
 spoilerの他にも、人の楽しみを奪うものをspoilsportという。新作ミステリーの結末をしゃべるヤツなど、「この野郎!」と思わず罵りたくなる。あなたもspoilerにならないように、“Please do not tell the ending of this column to anyone.”(どうか、このコラムの結末を人に言わないで下さい)The sankei Shimbun (July 22 2007)「グローバル・English」はこちらへ