2012年7月8日日曜日

boot camp


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 boot campは英和辞書では「新兵訓練所」と訳されているが、これは米軍の俗語。正式にはRecruit Training Depotだが、海兵隊(Marine Corps)と沿岸警備隊(Coast Guard)、海軍(Navy)に限ってboot campと呼ぶ。
 2007年に、米国人の空手世界チャンピオンでフィットネス・エキササイズの指導者、ビリー・ブランクス氏が販売した短期集中型エクササイズDVD「ビリーズブートキャンプ」が米国だけでなく日本でも大当たりしてboot campが〝ブートキャンプ〟と英語の発音そのままで知られるようになった。
 ところで、世界最強を誇る海兵隊の本家本元のboot campは非常に厳しいことで知られる。所在地はサウスカロライナ州のパリスアイランドとカリフォルニア州サンディエゴの2カ所。新兵は男女とも高卒以上が対象で、年間約4万人が訓練に励む。男の場合、入隊するや頭をバリカンでクルーカットに刈り上げられ、〝軍隊の洗礼〟を受ける。上官に怒鳴りあげられながら、いかなる命令にも“Aye, aye , sir!”(アイ、アイ、サー)と答えるまで、ビシビシしごかれる。
 basic exercises(基礎訓練)は持久力と腕っ節の強さに重点が置かれ、こなせない者は通常3週間のPhysical Conditioning Platoon(体力調整小隊)に放り込まれる。ここで懸垂が3回以上、腹筋運動が2分で40回以上、3マイル(4・8㌔)が28分以内に走れるようになるまで出してもらえない。また、overweight(体重過多)の者は、食事が“Diet Tray”(減量トレイ)になる一方、underweight(体重不足)の場合は、“double-rations”(2倍盛り)を食べさせられるという。これもなかなかきつい。その後は本格的な軍事教練に入り、日曜、祭日もあってないようなもので、延々12週間続く。
 さて、bootは「長靴」、「ブーツ」のこと。オックスフォード英語辞書(OED)によると、語源は14世紀に遡り、最初は乗馬用ブーツを指したという。米国では19世紀から“kick”(蹴る)の意味の動詞として使われる。boot campという熟語は20世紀の半ばから登場。一説には米兵のはいた長靴に由来するという。boot campで、新兵はbootとも呼ばれる。
 1980年代から、boot campをモデルにした少年犯罪の軍隊式教育による更生施設が各州で導入され、やはりboot campと呼ばれるようになった。最近では指導員の〝しごき〟による死亡事故が起こって、廃止される所もある。
 さて、いずれのboot campでも新入りはこう言い渡される。“You must do everything you are told to do, quickly and willingly.”(やれと言われたことは何でも、すばやく喜んでやらなければならない)。そして、“You must never quit or give up.”(決してやめたり、あきらめたりするな)。boot campは忍耐力と根性を鍛えるところでもある。The sankei Shimbun (August 26 2007) 「グローバル・English」はこちらへ