2012年12月30日日曜日

roil アメリカを読む辞書が選んだ Word of the year

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 カタカナ読みは「ロイル」。たとえばジュースなど沈殿物のたまった液体をかき混ぜると濁った状態になることを指す動詞であり、名詞。比喩的にも用いられ「かき乱す」「乱れる」「混乱する」などと訳される。
 「アメリカを読む辞書」はroilを2012年のword of the year に選んだ。今年もっともよく世界情勢を表した言葉と考えられるからだ。
 米国議会では、fiscal cliff(財政の崖)をめぐり、民主・共和両党が年末まで折衝を続けた。〝財政の崖〟とは、2001年から始まったブッシュ減税が2012年末に失効するとともに、膨大な連邦財政を削減するため2013年1月1日から自動的に歳出の削減が発効することを指す。
 AP通信(12月28日付)は、米金融市場が12月21日以降28日まで下げ続けていることに触れて、“The erratic performance underscored how the "fiscal cliff" can roil the market.”(常軌を逸した相場は、〝財政の崖〟がいかに市場を混乱させるかを裏付けている)と述べた。31日に交渉が決着しなければ、年明けからさらなる混乱が全世界を巻き込むことになるだろう。 
 欧州においても金融市場混乱の火種は尽きない。ウォールストリート・ジャーナル(2011年5月23日付)が、“Debt fears roil European markets”(債務への恐れで欧州市場は混乱)と書いたが、国家の債務危機に揺れる欧州の金融市場は、今年もギリシャやスペイン、さらにはフランスの国債の格付けの引き下げなどがあり、投資家の懸念は強まる一方でroilは止まない。来年も「混乱は続く」との見方が根強い。
 さて、目を中東に転じてみよう。ワシントン・ポスト(2012年12月6日付)は、“Protests roil Egypt”(抗議デモでエジプトは混乱)と報じた。この国は、2011年1月に反政府抗議デモによって、大混乱の末にムバラク前大統領が辞任に追い込まれた。だが、モルシ新大統領になっても、年の瀬まで憲法改正などをめぐり抗議デモは止まず混乱し続けた。新憲法は国民投票によって承認されることになったが、このまま混乱が収束していくとは思えない。
 一方、タイムズ・オブ・インディア(2012年11月13日付)は、“The Generals and the Labyrinth: Scandals roil end of Obama first term”(将軍たちと迷宮:オバマ大統領の1期目最後はスキャンダルがかき乱す)と報じた。これは、米CIA(中央情報局)のペトレイアス前長官が不倫問題で辞任した一件。オバマ政権は騒動の末に、何が何だか訳が分からないままで幕引きとなった。スキャンダルの火種もまた尽きることはないようだ。PS: ご意見、ご感想をお待ちしております

2012年12月29日土曜日

outbreak ノロウイルスが世界的に猛威

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 元になるのは動詞形でbreak out(爆発する、勃発する)。outbreak(アウトブレイク)は「爆発」、戦争の「勃発」の他に、cholera outbreak(コレラの流行)など感染症の発生、流行の意味で使う。
 AP通信(2012年12月28日付)は、“19 ill in suspected norovirus outbreak on liner”(定期船で19人が発症ノロウイルスの疑い)と報じた。この定期船は、ニューヨークからカリブ海を12日間かけて周遊するクイーンメリー2号で、2613人が乗船していたが、食中毒のようだ。
 また、英ガーデイアン(同日付)は、“Norovirus outbreak may have exceeded 1 million, says health agency. Confirmed winter vomiting bug cases soar to 3,538, shutting schools and forcing evacuation of North Sea oil rig”と報じた。英国ではノロウイルスの感染者は100万人を越えていると保健局が推定している。そのうち、学校閉鎖や北海油田の強制避難など確認された感染者だけで3538人に上るという。
 このシーズンは、世界中でノロウイルスが流行しているのだ。
 ところで、この夏、世界に衝撃を与えたのはアフリカ・ウガンダのエボラ出血熱の流行。ウォールストリート・ジャーナル(2012年7月29日付)は、“The world's first major outbreak of Ebola hemorrhagic fever since 2009 has killed at least 14 of 20 people infected in a remote area of midwestern Uganda.”(ウガンダ中西部の遠隔地で2009年以来、世界初の大規模なエボラ出血熱の流行で、20人の感染者のうち少なくとも14人が死亡した)と報じた。ウイルス性感染症で高熱・頭痛などカゼのような症状に始まり、歯肉や鼻から出血が起こり数日で死亡する。現状では治療法が確立していないだけに、恐ろしい。もっとも、英BBC(8月11日付)は、“Uganda's deadly Ebola outbreak under control, says MSF”と報道。MSFはMedecins Sans Frontieres(フランス語)で「国境なき医師団」を指す。それによると、ウガンダの致死的なエボラの流行も制圧された、という。
 感染症の発生は人為的にも引き起こされる。米医師会のニュース(8月10日付)によると、“Hepatitis C outbreak raises public health concerns in 8 states”(C型肝炎の発生が8州で公衆衛生上の懸念を引き起こしている)と報じた。実は、この流行は犯罪によるものだ。“A former New Hampshire medical technician is the suspected source of the outbreak, and he was arrested in July.”(元ニューハンプシャー州の医療技師が大量発生の感染源との容疑がかけられ、7月に逮捕された)。技師は州内の病院に勤務していた当時、30人の患者にC型肝炎を感染させた疑いがもたれる。以前に勤務していた6以上の州でもC型肝炎が発生する恐れがあり、米疾病予防管理センター(CDC)が調査を進めているという。
 感染症のoutbreakに国境はない。明日は我が身と考えて、注意を怠らないことがグローバル時代の心得だ。













2012年12月25日火曜日

glocal これからの金儲けはこれだ!

Illustrated by Kazuhiro Kawakitaka


 カタカナ読みは「グロウカル」。global(グローバル、地球的)とlocal(ローカル、地域的)を組み合わせた造語。オックスフォード辞典(ネット版)によると、reflecting or characterized by both local and global considerations(地域的であるとともに地球的な考えを反映しているか、それらによって特徴付けられる)と定義。すなわち、「地球的かつ地域的な」ということ。
 この意味を解くカギが、“Think globally, act locally”、または“Think global, act local”(地球的視野で考え、地域に密着して行動する)という語句。1970年代から環境問題に関して使われたが、その後、経済やビジネスの分野でも盛んに使われるようになり、glocalization(globalizationとlocalizationの合成語で、カタカナ読みは「グロウカライゼイション」)という言葉まで生まれた。
 その例としてよく挙げられるのが、ハンバーガー・チェーンのマクドナルド。その経営は世界中に広がり、globalizationの典型。だが、インドでの代表メニューはチキン・マハラジャ・マックで、他地域での牛肉ベースのビッグマックではない。つまり、牛は神聖な動物であるので食べない、というインドの地域性を考慮してlocalizationをしているというわけ。
 タイム誌(2012年8月20日号)は、“The Economy’s new rules: Go glocal”(経済の新たなルール:グローカルで行こう)との特集記事を掲載した。これまで一本道を歩んできた米国経済のグローバル化は、イラク戦争、住宅バブルの崩壊、世界金融危機の連鎖で急ブレーキが掛かり、“Local is looking better and better.”(ローカルがますますよく見える)という状況。その理由は、“As finance fades into the backdrop, manufacturing takes center stage.”(金融が背景に後退、製造業が表舞台に登場)して、地域経済が好転していることだ。これだけドル安、円高が続けば、米国の製造業が息を吹き返すのは当然だろう。その分、日本の製造業は海外シフトを余儀なくされており、新たなgo glocalを模索しなければならない。
 ところで、英ガーディアンのブログ(2012年12月4日付)に、“Film-makers start thinking 'glocal'”(映画制作者はグローカルを考え始めた)との記事が出ていた。
 “There are signs that regionally-inflected versions of the same stories offer a way ahead for world cinema.”(同じストーリーで地域を変えたバージョンの映画が世界の映画界に先んじる兆しがある)と指摘した。
そういえば、「巨人の星」のインド版がテレビ放送を開始し、野球をインドの国民スポーツ、クリケットに変えた筋が結構受けているそうだ。物語の筋はglobalに、設定はlocalにがミソなのだ。






2012年12月24日月曜日

scrooge Merry Cliffmas なんか真っ平だ!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 カタカナ読みは「スクルージ」。「守銭奴」「けちんぼ」などを指す名詞。語源は、英国の作家チャールズ・ディケンズが1843年のクリスマスに発表した名作“A Christmas Carol”(クリスマス・キャロル)の主人公で守銭奴のEbenezer Scrooge。
 米CNN(2012年12月1日付)は、“Obama warns of ‘Scrooge’ Christmas without tax-cut extension”(オバマ大統領は、減税の延長がなければ〝けちんぼ〟のクリスマスになるだろうと警告)と報じた。この発言は、米国が直面するfiscal cliff(財政の崖)を回避するため、野党共和党に協力を呼びかけたもの。
 〝財政の崖〟とは、2001年から始まったブッシュ減税が2012年末に失効し、さらに膨大な連邦財政を削減するために2013年1月1日から、自動的に歳出の削減が発効することを指す。それによって、財政は切り立った崖から転がり落ちるように〝均衡財政〟に向かう一方、財政支出で支えてきた景気が一緒に転がり落ちて、不況が一段と厳しくなると予想されているのだ。
 オバマ氏は、ペンシルベニア州内の玩具会社で演説。その内容は“If Congress does not extend soon-to-expire tax breaks for the middle-class, it will be like receiving a ‘lump of coal’ at Christmas.”(議会が間もなく期限切れとなる中産階級への減税措置を延長しないならば、クリスマスに石炭の塊を受け取るようなものだ)。a lump of coalは、かつて悪い子供にクリスマス・プレゼント代わりに与えたもので、とても惨めな “Scrooge Christmas”になるというわけ。まさに、Cliffmas(崖っぷちのクリスマス)か?
 英米では“Santa or Scrooge”(気前のいいサンタクロースか、けちんぼのスクルージか)と、よく言われる。『クリスマス・キャロル』はこの時期のエンターテインメントの定番で、小説だけでなく劇や映画でもおなじみ。もっとも、原作では守銭奴のスクルージは、クリスマス・イヴに超自然現象を体験して改心することになるのだが・・・。
 ところで、USA TODAY(2012年12月23日付)は、“Party on! Non-Christians don't Scrooge on Christmas fun”(パティーだよ。キリスト教徒じゃない人たちもクリスマスの楽しみをケチることはない)と述べている。
 “Although 27% of Americans have no religious tie to Christmas, many atheists, Jews, Muslims and Hindus are in full swing with Christmas trees, lights, gifts and more. Why Scrooge on joy?” (米国人の27%はクリスマスに宗教的な結びつきを持たない人たちだが、多くの無神論者、ユダヤ人、イスラム教徒やヒンドゥー教徒もクリスマスツリーを立てて、明かりを飾り、プレゼントをして目一杯楽しむ。なぜ喜びをケチることがあろうか?)




2012年12月22日土曜日

setback Everyone has setbacks.

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
set backは、物事の進行を「遅らせる」という動詞句。setbackと続けると、その名詞形になる。「後退」「つまづき」「失敗」などと訳される。
 2012年末、米国では新たなsetbackが浮上した。ワシントンポストの12月30日のBreaking newsは、"Talks to avert the fiscal cliff suffered a 'major setback' Sunday, Democrats said, when Republicans demanded significant cuts to Social Security benefits in exchange for President Obama's request to extend emergency unemployment benefits and cancel deep cuts to the Pentagon and other agency budgets."と報じた。
(財政の崖を回避するための民主・共和両党の交渉は日曜日に、〝大きく後退〟した、と民主党関係者は語った。というのは、オバマ大統領が臨時の失業保険金給付を拡大し、国防総省や他の省庁の予算削減を中止した見返りに、共和党が社会保険金給付の削減を要求したためだ)
 こちらを立てれば、あちらが立たず。交渉は難航している。
米ウィークリー・スタンダード(2012年11月19日号)は先日の米大統領選挙の結果に関して、“A setback, not a catastrophe”(後退ではあるが命取りではない)と述べ、共和党の敗北を論評。“The Democrats’ success was Obamacentric.”(民主党の成功は〝オバマ中心〟だ)として、オバマ人気頼りの選挙と分析。一方、“The last thing Republicans need is an identity crisis.”(共和党はアイデンティティの危機などまっぴら御免だ)と指摘した。確かに、今回の選挙でも共和党のアイデンティティは、さらに鮮明になった。だが、それはいかにも時代遅れなもので、〝愚かな失言〟がさらに保守のイメージを傷つけた。
 AP通信(2012年12月10日)は、“Former tea party leader blames GOP for setbacks”(ティーパーティの元リーダーは、共和党の敗退をなじった)と報じた。共和党の下院の多数派のリーダを務め、最近までFreedomWorksを率いたDick Armey氏は、“Republicans have a lot of candidates who did "dumb things" during their campaigns.”(共和党は、選挙戦で〝馬鹿〟をやる候補者が多い)と嘆息した。たとえば、米インディアナ州から上院選挙に出馬した共和党のリチャード・モードック氏は選挙の直前の10月23日に、妊娠中絶反対を訴えて、「レイプというおぞましい状況から始まった命ですら、神のお導きである」と口を滑らせて、落選した。ロムニー大統領候補は、モードック氏の意見は個人的なものだと逃げたが、ダメージは避けられなかった。
 米国では「小さな政府」を期待する世論が根強く、保守の地盤を支えてきたが、「こんな馬鹿なことをいうやつがいる限り、選挙に勝つことはできない。教育をやり直せ」とDick Armey氏は憤懣やるかたない。
 さて、ウォールストリート・ジャーナル(2012年11月10日付)は、“Malaria vaccine suffers setback”(マラリアのワクチンが頓挫を来たす)と報じた。マラリアは今も世界で猛威をふるう感染症で、2010年には全世界で2億人以上が感染し、子供を中心に65万人以上が死亡。そこで、英大手製薬会社のグラクソ・スミスクラインは、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏らの財政援助でワクチンの開発を進めている。
 だが今回、生後6~12週間の赤ちゃん6500人を対象にした臨床実験で、ワクチンの効果は31%に止まったと報告。生後5~17カ月の場合では半数まで効果を上げたのに対し、より幼い赤ちゃんでは、まだまだというわけだ。優れたワクチンが早くできることを祈りたい。
 ブレード・ランナーOscar Pistorius 氏はいう。"Everyone has setbacks. I'm no different. I happen to have no legs. That's pretty much the fact." (誰しもつまづきはある。私だって違いはない。たまたま両足がなかった。それが事実なんだ)
 

2012年12月20日木曜日

senior moment ど忘れって?

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
seniorは「シニアの」「老年の」で、momentは「瞬間」。senior momentは、文字通りでは「シニアの瞬間」だが、a momentary lapse in memory(瞬間的な記憶の欠落)を指す。すなわち、高齢者によくある「一時的な物忘れ」や「ど忘れ」である。
 NPR(米公共ラジオ放送・ネット版)は2011年4月11日付に、“Senior moments: A sign of worse to come?”(度々物忘れをするのは、より悪くなる兆候か)との特集記事を掲載した。その中で、“They can’t retrieve a once-familiar name.”(前に知っていた名前が出てこない)、“They stride into a room with purpose and then forget why.”(何かするつもりで部屋に入り、何故かを忘れる)などの現象を挙げている。
 怖いのはa symptom of dementia(痴呆の兆候)。例えば、“If an older person goes to a convenience store where she frequently shops and cannot remember how to get home, we are more likely to suspect dementia.”(高齢者が日頃よく買い物に行くコンビニに行って、家に帰る道を思い出さないとしたならば、私たちは痴呆=認知症を疑うことになるだろう)という。
 ところで、senior momentは比喩的にも使う。米ネット新聞のハフィントンポスト(2012年8月16日付)は、“The Romney campaign has a senior moment”と報じた。米大頭領選挙のロムニー共和党候補は、Medicare(高齢者医療保険制度)の抜本改革として大幅な削減を打ち出しているが、同党支持を貫いてきた多くの高齢者の反発を招いている、と指摘。見出しは、つまり「ロムニーの選挙キャンペーンは〝ど忘れ〟している」というわけ。
 政治の世界では、この種のsenior momentは実によくあることだ。
  最後に、老人ぼけのジョークを一つ。
 A Little Hard of Hearing
  Three old guys are out walking. 
  First one says, "Windy, isn't it?"
  Second one says, "No, its Thursday!" 
     Third one says, "So am I. Let's go get a beer."     
 
 「ちょっと聞き取れないね」
 3人の老人が歩いている。
 最初に1人が「風が強いね」といった。
 2人目が、違うよ。Wednesdayじゃなくて、木曜日だといった。
    3番目が、僕もだ。thirsty = 喉が渇く。ビールを飲みに行こうぜ。









 
 

2012年12月19日水曜日

bikelash

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
bikeは日本でいう「バイク」ではなく、bicycle(自転車)の短縮形。lashはrush(殺到、ラッシュ)ではなく、backlash(急激な反動、反発)の意味のlash。そこで、bikelashは「自転車に対する反発」で、自転車に乗るcyclistsのマナーの悪さが歩行者や警察当局の反発を招いていることを指す。
 この言葉は、原油価格の高騰と世界的な景気後退が顕著になった2007年ごろから、英国で使われ始めた。ガソリンの節約に健康志向も加わり自転車の愛好者が増加するなかで、信号、道路標識の無視など交通法規を守らない乗り手が問題になっているというわけ。
 米国の大都市でも自転車ブーム。ニューヨークでは、市民の健康を重視するブルームバーグ市長が積極的に市内の道路に自転車専用レーンのネットワークづくりを進めており、2010年の調査では、25万人以上が通勤に自転車を使用しているという。
 だが、わがもの顔で道路を走り回る乗り手が後を絶たず、自転車による交通事故が増加。ニューヨーク・ポスト(2011年1月5日付)は“Bikelash! Cops to crack down on two-wheelers”(自転車への反発。警察が二輪の取り締まり)と報じたが、最近では観光客向けにレンタル自転車も増えて、bikelashは一段と激しくなっているという。
 日本でも自転車の利用が増加するにともない、子供を乗せる3人乗り自転車が登場。その一方で、マナーの悪いcyclistsを取り締まる条例が各地で制定されているが、これもbikelashといえよう。世界は同じ方向にペダルを踏んでいるのだ。The Sankei Shimbun (September 24 2012)


2012年12月16日日曜日

The global mourning "We have wept with you," said Obama



 米東部コネティカット州ニュータウンのサンディフック小学校で2012年12月14 日起きた銃乱射事件について、AP通信は、“Sympathy over US school shooting stretches globe”(米国の学校での銃撃事件への同情が地球に広がる)と報じた。
 実際、一報を聞いて誰しもやり切れない気持ちを感じたであろう。オバマ大統領が声明文で述べているように、“Our hearts are broken today."と表現できる。
 事件は、男が校舎に押し入り銃を乱射、子供20人と学校長を含む教職員8人の計28人が死亡という。“School massacre”(学校の虐殺)という言葉を口にすることさえ、やり切れない。
 それだけに、事件のニュースは衝撃的に全世界を駆け巡った。オーストラリアのJulia Gillard首相は、“senseless and incomprehensible act of evil”(全く訳の分からない意味不明の悪の行為)と呼んだ。
 オーストラリアでは、1996年南部タスマニアで男が35人を銃殺する事件が起きて、政府はセミ・オートマテイック・ライフルをはじめ銃の所持を規制したのだ。
 欧州共同体のJose Manuel Barroso委員長は、 “Young lives full of hope have been destroyed” (希望にあふれた若い命が奪われた)と嘆いた。
 英国のDavid Cameron首相は、“It is heartbreaking to think of those who have had their children robbed from them at such a young age, when they had so much life ahead of them.”(前途に豊かな人生を控えた、こんな若い子供たちを奪われた親御さんを思うと胸がつぶれる思いだ)と語った。
 ドイツのAngela Merkel首相は、“Once again we stand aghast at a deed that cannot be comprehended. The thought of the murdered pupils and teachers makes my heart heavy.”(またしても、私たちは理解を超えた出来事に立ち向かわねばならない。殺された生徒や先生のことを考えるとやり切れない)と述べた。
 フランスのFrancois Hollande大統領は、“horrified”(震え上がった)という。ロシアのVladimir Putin大統領は、“particularly tragic”(何とも悲劇的だ)という。イスラエルのBenjamin Netanyahu首相は、“savage massacre”(野蛮な虐殺)と呼んだ。日本の野田首相は、“The sympathy of the Japanese people is with the American people”(日本国民の同情は米国民とともにある)と述べた。
 さらに、多くのコメントがネットには寄せられているが、世界はコネティカット州の小学校で起きた悲劇を共有しています。

2012年12月15日土曜日

Women rule 女性支配

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 Womenはwoman(女性)の複数形で、ruleは「支配する」。Women ruleは「女性が支配する」。キャッチフレーズとしては、「女性支配」。
 USA TODAY(2012年8月12日付)は、“American women rule the London Olympics - now what?”(米国女性がロンドン五輪を支配したが、さあ今後はどうか)と報じた。米国は46の金メダルを獲得し世界1位だったが、そのうち女性選手が獲得したのは29で過半数を超えた。それだけに、”Women were the big winners.”(女性が大勝利だ)というわけ。確かに、日本をはじめとして女性選手の活躍が目立った。
 タイム(2012年10月1日号)は、クリントン元米大統領が、“5 ideas that are changing the world for the better”(世界を改善する5つの考え)と題する寄稿文で、Women ruleを取りあげた。“I see evidence all over the world that women are gaining social and economic power that they never had before.”(全世界で女性がかつてないほど社会的、経済的な力を獲得しているという証拠がる)とクリントン氏は指摘、女性が世の中を変える大きな力になるだろうと述べている。なるほど、彼の奥さんのヒラリー・クリントン国務長官は、ポスト・オバマの最有力候補の1人だ。
 Inter-Parliamentary Union(列国議会同盟)によると、2012年には世界の議員の20%を女性が占め、15年前の2倍近くになったという。中東のイスラム諸国でも21世紀に入り女性の参政権が認める動きが加速している。政治の世界もWomen ruleとなるのは、遠い先の話ではないようだ。
 では、“When Women Rule the World”(女性が世界を支配するとき)、どうなるのか?同名のタイトルのリアリティ・ショウをFOXが2007年春に制作した。その内容は、12人の美女と12人の“macho, chauvinistic guys”(筋骨隆々、男尊女卑の男たち)が登場、They’ll have to obey every command from the women(男たちは女の命令すべてに従わねばならない)という結構サディステック趣向だ。これは英国を初め欧州などでは放映され評判となったそうだが、依然として男性優位の米国ではついにお蔵入りに終わったという。日本ではどうだろうか?
 しかしながら、ボブ・ディランこう言う。
 “I think women rule the world and that no man has ever done anything that a woman either hasn't allowed him to do or encouraged him to do.”(僕はこの世を支配しているのは女性だと思う。どの男も女が許してくれないことや、励ましてくらないことをしたためしはない)。それも一理あるのだ。 

2012年12月13日木曜日

insider attack “green-on-blue attack”とは何か?

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
insiderはinsider trading(インサイダー取引)というように、「内情に通じた人」を指す。attackは「攻撃」。insider attackは「内部の者による攻撃」で、身内の犯行である。
 英BBC(2012年9月18日付)は、“What lies behind Afghanistan's insider attacks?” (アフガニスタンの内部攻撃の背後に何があるのか) と報じた。イスラム原理主義武装集団タリバンと戦闘を続けるNATO(北大西洋条約機構)軍で、共同戦線を張ってきたアフガニスタン治安部隊のinsider attackによって死傷兵が続出する事態だという。
 この内部攻撃は、rogue Afghan soldiers(ならず者のアフガン兵)による犯行で、“green-on-blue attack”(青に対する緑の攻撃)とも呼ばれる。それぞれの色は何を意味するのだろうか?実はblueは味方、greenは味方の協力軍、さらにredが敵を意味するのだ。そこで、red-on-blueは味方に対する敵の攻撃で、blue-on-blueは同士討ち。すなわち、friendly fireである。
 AP通信(2012年12月11日付)は、この事態を受けて米軍が、“Insider Threats Afghanistan, Observations, insights and Lessons Learned” (身内の脅威、アフガニスタン、観察と洞察、学んだ教訓)と、題する70㌻の冊子を部隊に配布した。
それによると、2007年5月から2012年10月1日までのinsider attackによる死者は320人以上に上るという。そして、注意事項として、もっと文化の違いを理解せよと指摘している。
 “Troops should not blow their noses, put their feet up on desks, wink, spit, point fingers at Afghans or use the "ok" hand signal, which some Afghans interpret as an obscene gesture.”(戦闘員は、アフガン人を前に鼻をかんだり、デスクに足を上げたり、ウインクやつばを吐いたり、指差してはならないし、手でOKの仕草をしてもならない。ある人たちにとってはわいせつな行為を意味するのだ)
  ところで、治安部隊にタリバンが〝浸透〟しているとみられ、治安部隊を訓練するNATO軍兵士にいつ銃口が向けられるか分からない。それがinsider threat(身内の脅威)なのだ。実際、こんな状態では、戦闘どころの話しではない。記事は米軍の士気は低下する一方であると指摘している。
 さて、insider attackは、コンピューター・ネットワークのセキュリティー用語としても使われる。ハッカーが企業ネットワークへの侵入した場合、“The intruder is someone who has been entrusted with authorized access to the network.”(侵入者がネットワークへの正当なアクセス権を認められた者である)とすると、攻撃はいとも簡単になるのだ。
 「獅子身中の虫」という言葉通り、最も怖いのは身内の攻撃なのだ。







2012年12月10日月曜日

zinger 政治家は口のうまさだ!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
カタカナ読みは「ジンガー」。意味は「当意即妙な言葉」「とげのある言葉」、あるいは「落ち」。これが政治用語では、討論などで相手に与えるverbal jab (言葉によるジャブ)。ウイリアム・サファイアの政治辞典によると、blast(突風、爆発)。“Give him a zinger in the debate and see if he comes apart.”(討論で一発食らわせて、ばらばらにしてやれ)などと使う。
 米大統領選挙は2012年11月6日の投開票を控え、民主党のオバマ大統領と共和党のロムニー大統領候補がテレビ討論で直接対決した。有権者やメディアが期待したのは、決まり切った質問ではなく、zinger。だが、想定外の展開が起こることもある。
 米フォーブス(2012年10月5日付)は、“Zinger from the President stings business aviation”(大統領の不意の発言がビジネス航空業界を一刺し)と報じた。オバマ氏が10月3日の最初の討論で、社用飛行機を所有する事業家に言及し、もっと税金を納めるべきだと発言したのだ。全米ビジネス航空協会にとっては、まさに寝耳に水の指摘。税金が上がれば、飛行機の売上げは減少してしまう。そこで、緊急に大統領宛の手紙を出して、「この業界は100万人以上を雇用し米国経済を支える産業で、社用機を所有している大半は地方の中小企業だ」と訴えた。
 ところで、オバマ大統領がロムニー候補に、決定的な一発を食らわしたのは3回目の討論だった。AP通信(2012年10月23日)によると、ロムニー氏が米国の軍事支出について、海軍は1917年以来もっともship(戦艦)の数が少ないと批判した際に、オバマ氏はこう答えたのだ。
“Governor, we also have fewer horses and bayonets. We have these things called aircraft carriers, where planes land on them. We have these ships that go underwater, nuclear submarines.”(知事さん。われわれはまた、馬や銃剣の数も少なくなりました。われわれは空母と呼ばれるものを保有しています。そこには飛行機が着陸できます。これらの船は海底を進む、原子力潜水艦です)
 さて、演説の草稿を作るスピーチ・ライターにとって、zingerはa moment of uplift in a speech(演説の盛り上がりの瞬間)とか、観衆が沸き立つようなpunch line(落ち)を指す(政治辞典)。とにかく政治家は口が達者でなくては勤まらない。





























2012年12月4日火曜日

omnishambles The world is a global omnishambles!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
omni-はall(すべて)を意味するラテン語の接頭辞。shamblesは、単数扱いの名詞で「大混乱」。たとえば、“His desk is a shambles.”(彼の机はメチャクチャだ)などと使う。そこで、omnishamblesは「すべてが大混乱」という意味になる。
 オックスフォード英語辞典(OED)は、2012年のWord of the year(年の言葉)にomnishamblesを選んだ。 その定義は、“a situation that has been comprehensively mismanaged, characterized by a string of blunders and miscalculations”(一連の失敗と誤算によって特徴付けられ、全体として管理を誤った事態)という。
 この言葉は、2009年に英国BBCの風刺コメディ“The thick of it”(まっただ中)で、“You’re a fucking omnishambles.”(お前らみんなメチャクチャだ)というフレーズで使われたという。その後、流行語になった。
 OEDのWord of the yearは、その年のムードを最も象徴する言葉が選ばれる。omnishambles を造語したBBCでは、誤報で会長が辞任するなどomnishamblesに。さらに、欧州では金融危機の挙げ句にEurogeddon(Euro+Armageddon=欧州ハルマゲドン)という新語を生むほどの大混乱に終始した。
 夏のロンドン五輪開幕直前には、米共和党のロムニー大統領候補が現地を訪問し、五輪成功を危ぶむ発言をしてRomneyShambles”(ロムニー大混乱)という言葉も登場した。
 さて、わが国を顧みると、政治はまさにomnishamblesの末に、衆院解散、総選挙に突入したのであった。The Sankei Shimbun (December 3 2012)