2012年7月16日月曜日

fake food 偽物を食わされる世の中・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


fakeは、動詞では「捏造する」「偽造する」「見せかける」という意味で、名詞では「にせ物」。だから、fake foodは本物に見せかけた「にせ物食品」。カタカナ読みは「フェイク・フード」。
米国でこれを取り締まるのが、食品医薬品局(Food and Drug Administration=FDA)。fake foodは正式には“economic adulteration of food”という。adulterationはズバリ「混ぜ物をすること」。economicは「経済的」だが、ここでは「金儲け」を意味し、「金儲けのために、食品に粗悪物を混ぜて販売し、消費者をだます」という犯罪行為だ。
FDAの消費者マガジン(1999年3・4月号)の“Fake Food Fight”(にせ物食品との戦い)の記事は、牛乳を水増しして販売したfake milk 以来、FDAの取り締まりの歴史を描いている。オレンジやリンゴのジュースに砂糖や水などを入れて増量したり、安物のコーン・シロップをメープル・シロップや蜂蜜に加えたり、健康食品の朝鮮ニンジンにオガ屑を混ぜる―など、手を変え、品を変え、fake foodは後を絶たない。
FDAの起源は1906年。だが、現在の体制に整ったのは1938年の連邦食品・医薬品・化粧品法による。実は、その前年の37年にテネシー州でジエチレン・グリコールが含まれた薬品が販売され、100人以上が死亡した事件がきっかけ。ジエチレン・グリコールは不凍液などとして用い、毒性が強く食品への添加を禁じられているが、価格が安く、今でも性懲りもなく使われる。2006年、パナマで販売された中国製の咳止めシロップに混入され、再び100人以上死亡する惨事が引き起こされたばかりか、翌年6月には、ジエチレン・グリコールで甘みを付けたfake toothpaste(にせ練り歯磨き)が米国内に出回る騒動が起きている。
にせ物食品販売の罰則は、文書による警告から刑事罰に及ぶ。混ぜ物をしたオレンジジュースを11年に渡って1億5000万㍑以上販売した業者は、罰金10万ドルと懲役5年の刑が言い渡され、香料と砂糖で味付けした水を〝100%リンゴジュース〟と偽って販売したベビーフード会社には、218万ドルの罰金が科せられた例がある。
さて、オックスフォード英語辞書(OED)によると、fakeは19世紀ロンドンの泥棒仲間の俗語として登場。最初はdo for ~(やっつける)、plunder(奪う)、kill(殺す)の同義語で、それから〝にせ物〟の意味に変化したのは、世の中にそれだけにせ物がはびこってきた証拠であろう。
ところで、第16代大統領リンカーンはこう警告する。“You can fool some of the people all of the time, and all of the people some of the time, but you can not fool all of the people all of the time.”(ある人たちをずっとだますことはできる。また、すべての人を一時的にだますこともできる。だが、すべての人をずっとだますことはできないのだ)The Sankei Shimbun(July 15 2007)