2013年4月17日水曜日

chillax こんな単語を知ってる?



 chillaxは、メリアム・ウェブスター(オンライン版)によると、chill(冷やす)とrelax(リラックスする)を合成した単語。初出は1999年という。カタカナ読みは「チラックス」。
 chillは、冷やして熱を奪うという意味。仕事のことで頭がいっぱいで熱くなっているのが冷めると、chill out(冷静になる、くつろぐ)。一方、relaxの語源はラテン語で、re-は「離れる」という意味の接頭辞、laxは「緩む」こと。仕事の緊張感から解放されると、ほっとする。そこで、chillaxはrelaxをより強調する言葉といえる。
 英国のテレグラフ(2012年5月19日付)は、“David Cameron: how karaoke and tennis make PM a 'chillaxing champ'”(デービッド・キャメロン首相:いかにしてカラオケとテニスで〝くつろぎのチャンピオン〟になるか)との記事を載せた。近刊の伝記で、キャメロン氏が首相であるプレッシャーから逃れるために、カラオケやテニスをやるほか、日曜日の昼食にはグラスに3、4杯のワインを楽しむ、というストレス解消法を紹介している。自身がインタビューで、“If there was an Olympic gold medal for ‘chillaxing,’”(オリンピックに〝くつろぎ(という競技)の金メダル〟があったら)と語り、“the Prime Minister would win it.”(首相はそれを勝ち取るだろう)と結ぶ。
 “He considers the job of Prime Minister, with its requirements to be on duty seven days a week, to be an enormous privilege.”(彼は、首相の仕事は週に7日の勤務を要求され、大変な特権であると考えている)が、それだけにストレス解消にも並外れた〝力量〟が求められるようだ。
 ところで、chillには「ぞくっとする」など、冷たく感じるというニュアンスがある。ランダムハウス米俗語歴史事典によると、Black English(黒人英語)では1980年代から、chillがcool(クール、涼しい)の 同義語として使われている。chill outも「くつろぐ」の意味で頻繁に登場する。
 ストレス多い社会に生きる皆さん、いかにchillaxするかが工夫のしどころでしょう。


2013年4月16日火曜日

global tax 税金から逃れるすべはない

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 global(グローバル)は「地球規模の」で、taxは「税金」。global taxは「地球規模の税金」。United Nations(国際連合)が創設を検討しているもので、UN global tax あるいはworld tax(世界税)の呼称でメディアに報じられるようになった。
 米地方紙デザレット・ニュース(2012年2月3日付)は、“U.N. leaders consider world tax to fund social protection, services” (国連の指導者らは、社会的な保護・サービスの財源のために世界税を検討している)と報じた。国連の社会開発委員会のフォーラムにおいて、“Everyone should be able to access at least basic health services, primary education, housing, water, sanitation and other essential services.”(どの人も、少なくとも基本的な医療、初等教育、住宅、飲料水、衛生、その他の基本的なサービスを受けられるようにすべきである)という趣旨で、0.005%のfinancial transaction tax(金融取引税)の創設が提言された。つまり、世界の経済危機の源であり、あぶく銭があふれる金融市場に狙いを付けたわけ。
 この税金は、米ノーベル賞経済学者のジェームズ・トービンが1972年に外国為替市場の投機抑制策として提唱したcurrency transaction tax(通貨取引税)に起源を持ち、世界の貧困撲滅に役立てようというもの。しかし、最大の問題は、徴収漏れがないように世界各国が協調し、global revenue service(グローバル歳入庁)のようなworld taxation system(世界的徴税システム)を創設しなければならない点であると指摘されている。
 ところで、フォックス・ニュース(2010年5月10日付)は、“World Health Organization moving ahead on billions in internet and other taxes”(世界保健機関はインターネットなどへ数十億ドルの課税を目指す)と報じていた。それによると、世界的な感染症の研究や、貧しい国への医薬品供給のため、インターネットの活動や取引にglobal consumer taxes(グローバル消費者税)への課税を検討しているという。
 国連の役人が当てにするのも、税金である。

2013年4月13日土曜日

doodle 落書きする

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 doodleのカタカナ読みは「ドゥードゥル」で、オックスフォード英語辞典(ODE)にはscribble absent-mindedly(うわの空で書く)と定義されている。日本語では「いたずら書きをする」「落書きする」などと訳される。また、いたずら書きをする人をdoodlerという。
 インターネットの大手検索エンジンのグーグルはこのほど、doodlerを募集する広告を出した。“Every day, hundreds of millions of online users visit the Google homepage.”(毎日、何億人ものオンライン・ユーザーがグーグルのホームページを訪れる)という状況で、ユーザーに強い印象を与えるイラストやグラフィックデザインでGoogleのロゴマークを装飾するのが仕事になるという。要求されるのは、”Freehand illustration skills and a wide range of artistic styles.”(手描きのイラスト技術と幅広い芸術的スタイル)というから、アートないたずら書きが求められるようだ。
 今やCG(コンピューターグラフィックス)技術の進化によって、どんな映像でも人工的に作り出せる時代である。ネットの世界では絵の上手さよりも、発想のユニークさ、豊かさが重視され始めた。そこでdoodleに目が向けられたというわけ。
 米CNN(2012年4月11日付)は、“A game that brings your drawings to life”(あなたの描いた絵に生命を与えるゲーム)をリポート。あるオンラインゲームでは、ユーザーの描いたキャラクターをスキャンして、それを画面上で動画に変える試みが始まっているという。“Endless days of doodling during class led to the inspiration of game.”(毎日の授業の間のいたずら書きがゲームの発想につながった)そうだ。
 授業中にいたずら書きをするとは何事だ、との批判もあるが、タイム誌(2009年2月26日付)は、“Study: Doodling helps you pay attention”(研究によると、いたずら書きが注意を喚起するのに役立つ)と報じた。“When you doodle, you don’t daydream.”(いたずら書きをするときは、夢うつつにはならない)から。


2013年4月11日木曜日

slut 「あばずれ」ってこういうことなの?


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 カタカナ読みは「スラット」。語源は15世紀初頭にさかのぼり、「だらしのない女」としてkitchen maid(台所の下働き)を指した。転じて、「売春婦」とか「あばずれ」などの蔑称となった。ところが、最近では、“Slutwalk”(スラットウォーク)など女性の抗議デモの標語に登場、より積極的な意味で使われている。形容詞はslutty。
 カナダのグローブ・アンド・メール(2012年5月25日付)は、“Hundreds march in Toronto Slutwalk to combat sexual violence”(性暴力と戦うため、数百人がトロント市で〝スラットウォーク〟の行進)と報じた。同市でSlutwalkが始まったのは昨年4月。女性への性暴力の対策を議論する集会で、“Women should avoid dressing like sluts in order not to be victimized.”(女性は被害に遭わないために、〝あばずれ〟のような格好を避けるべきだ)と、警察関係者が発言したのがきっかけ。性的暴行の被害に遭うのは、被害者側に原因があるとする見解に反発する形で運動がスタートした。“No matter what I wear, my body is not an insult.” (たとえ私がどんな服装をしようと、私の身体は侮辱の原因ではない)と主張する。
 この運動はカナダから世界各国に拡大。ブラジルでは妊娠中絶の解禁など、各国が抱える女性問題を抱き合わせたフェミニズム運動に発展した。主催者側は、Tシャツにジーンズなどの普段着でのデモを奨励しているが、ビキニや超ミニスカートを着けた挑発的な姿の参加者もあり物議を醸した。
 ニューヨーク・ポスト(2012年6月6日付)によると、ニューヨーク市のトップ公立高校でその日、“Slutty Wednesday”(スラッティな水曜日)と称し、生徒約100人が学校の服装規定に抗議してデモを行なった。校則では、女生徒に対して肩や腹部、背中を出すなど肌の露出が多い服装を禁じているが、「学校は勉強するところで、服装は重要ではない」と反発しているのだ。
 これから夏にかけては気温上昇とともにsluttyな女性が増えるが、男は見ないようにするしかないか…。

2013年4月8日月曜日

tweetup tweetプラスmeet up 出逢いを大切に

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 tweetは、鳥が「さえずる」ことだが、最近ではこの意味で使われることは少ない。むしろ、to post a message on Twitter(〝ツイッター〟のオンライン・サービスにメッセージを掲示する)の意味で使うのが圧倒的。tweetupは派生語で、tweetとmeet up(出会う)が合成した言葉。ツイッターを通じて知り合った人たちが、実際に会うことを指す。カタカナ読みは「ツィータップ」。
 インドのインディアン・エックスプレス(2012年5月14日付)に、“Let’s Tweet and Meet”(ツイッターをやって、出会おう)との記事が載った。ムンバイ市で、葉巻を楽しむシガー・クラブを立ち上げた人が、ツイッターで人集めに成功したというエピソードを紹介。“Twitter has helped me get in touch with a lot of like-minded people.”(ツイッターの助けで、同好の人々とコンタクトを取ることができた)と述べている。
 経済発展が著しいインドは今や世界で6番目のツイッターの使用国であるという。そこで、“Many brands are recognizing this and creating the unique tweetup to cater to their target audience.”(多くの商業ブランドがこの事実を認めて、彼らのターゲットとする顧客に提供するためのユニークなツイッターによる出会いの場を立ち上げつつある)という。
 tweetupは米国の大統領官邸ホワイトハウスでも始まった。“White House Tweetups”というホームページが設けられ、“A Tweetup is an in-person meeting of people who use social media to engage with the White House on Twitter.”(Tweetupは、ツイッター上のホワイトハウスとソーシャル・メディアを使ってコンタクトする人たちが直に会う会合です)と説明。今年(2013年)も去る4月1日に行われた復活祭のイベントへの参加を呼びかけた。その結果、選ばれた数千人の子供たちがホワイトハウスの庭でEaster Egg Roll(イースターの卵転がし)の行事を楽しんだという。
 “Birds of a feather flock together”(類は友を呼ぶ)と、ことわざにある通りではないか。




2013年4月7日日曜日

gender-bending ニューハーフは和製英語

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 genderは「性」。bendは「曲げる」と言う動詞。語の起源は1980年代に生まれたgender-benderで、文字通りでは「性を曲げる人」だが、“a person who dresses and behaves like a member of the opposite sex”(異性の格好をしたり、そのように振る舞う人)の意味。形容詞がgender-bendingで、性差がわかりにくくなる意味にも使う。
 AP通信(2012年2月10日付)は、“Gender bending model still causing a stir”(異性装のモデルが依然〝興奮〟のタネ)と報じた。世界のファッション界で注目を集めるボスニア生まれのオーストラリア人、アンドレイ・ペジック。その容貌は美しい女性モデルだが、実はれっきとした男性。しかも、男性モデルもやれるというから、まさにsupermodelと呼ばれるにふさわしい。記事では、“His androgynous beauty has turned him into a trendsetter in an industry.” (その両性具有的な美が彼を業界の流行発信者に変えた)と述べ、2011年の1年間で14の雑誌の表紙を飾ったという。
 異性の服装をするという動詞はcross-dress。大昔から祭礼や芸能をはじめcross-dressingは盛んに行われて来たが、最近では迫真のリアリティが追及されるようだ。また、habitual cross-dresser(いつも異性の格好をしている人)や性転換手術をした人などのtransgender person(性差を越える人)も目新しいことではなくなってきた。日本でいう「ニューハーフ」はshemaleという。
 だが、新たな問題としてニューヨーク・ポスト(2010年11月27日付)は、 “Gender-bending athletics”(性差が分かりにくくなる運動競技)とのコラムを掲載した。ある大学の女子バスケットボールチームの女性選手がtransgender personとして、自分は「男性」であると宣言。そこで、この人は女性か男性か、となったわけ。NCAA(全米大学体育協会)は、選手のsexual reassignment surgery(性別適合手術)やホルモン療法を禁じているため、この人はそれらを控えているという。だが、人権尊重の立場からtransgender の人々への差別を禁じる州もあり、今後のスポーツ界に波紋を呼んでいる。

2013年4月3日水曜日

naïve 天然だ!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 naïveは日本語でも「ナイーヴ」。古仏語のnaïf(自然のまま、生まれつきの)が語源。“Lacking worldly experience and understanding”(世間的な経験や理解に欠ける)という意味で、同義語はsimple(単純)、innocent(無邪気な)、unsophisticated(世間ずれしてない)。だが、しばしばstupid(バカ)の婉曲表現として使われる。
 ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏が2011年8月30日に回顧録“In My Time”を出版。クリスチャン・サイエンスモニター(同日付)によると、“In the book, Cheney argues former Secretary of State Rice was naïve for trying to reach a nuclear weapons agreement with North Korea.”(その本の中で、チェイニー氏は、ライス前国務長官が北朝鮮と核兵器協定を結ぼうとしたのは〝天真爛漫〟だ、と皮肉った)という。
 ライス氏はこれに対し、"I don't appreciate the attack on my integrity that that implies."(暗にほのめかすような私への人格攻撃は評価しない)と反論した。integrityは、日本語に訳しにくい単語の1つ。語源はinteger(整数)と同じでwholeness(全体性)を指す。転じてsoundness of moral character(道徳的な高潔さ)、honesty(正直さ)をいう。ここでは、「人をバカにするのは許さないわ」というのを婉曲に言ったわけ。
 さて、英国のスカイ・ニュース(2011年9月1日付)によると、野党労働党のエド・ミリバンド党首はインタビューで、“The Government is ‘naïve’ to think the UK is safe from the problems facing the global economy.”(政府が、グローバル経済が直面する数々の問題から英国が安全であると考えているとすれば〝おめでたい〟)とキャメロン政権を批判。"Collective austerity, advocated by the UK Government, is too simplistic for the complex challenges the world faces." (世界が直面する複雑な課題に対して、英国政府が掲げる総合的緊縮政策は単純すぎる)と指摘した。simplisticもnaïveの同義語で、裏を返せば「単純バカ」と非難したことになる。