2012年7月25日水曜日

nepotism Free society in name only...


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 nepotismは、英和辞書では「縁者びいき」とか「縁故採用」という訳がついている。人事や取引などで家族や親戚、友人などをひいきにすることを指す。カタカナ読みは「ネポティズム」。
 米国人が歴代総裁職に就く世界銀行で、ウォルフォウィッツ総裁が2007年5月、自分のgirl friend(恋人)である女性職員を人事で厚遇し異例の昇給を指示したことがnepotismだとされた。世銀内に特別調査委員会が設けられて倫理規定違反の疑いで追及され、辞任に追い込まれた。ニューヨーク・タイムズ(同年4月25日付)は、nepotismの代わりにfavoritismとの語を使って報道したが、これも「えこひいき」「情実」の意味だ。ほかにもcronyismという同じ意味合いの言葉がある。これらの違いは、語源を調べると明瞭になる。
 favoritismは、favorite(お気に入り)に接尾辞の-ism(主義)をつけて「えこひいき」を総称する。favoriteの元はfavor(好意、偏愛)。オックスフォード英語辞書(OED)によると、favoritismは1763年が初出だ。nepotismはそれより古くて1670年。語源はラテン語のnepotem(nephew=いとこ)だが、なぜ「いとこ主義」が「縁者びいき」になるかというと、中世のカトリック教会では、法王をはじめ僧侶は禁欲と純潔を誓ったから嫡子がいない。だから、後継の地位にいとこや親戚を優遇する習慣があったのだ。cronyismは比較的新しく19世紀からで、crony(昔なじみ)のひいきを意味する。
 興味深いことに、自由競争を奨励しwindow of opportunity(出世の機会の窓)はすべての人に開かれていると謳う米国社会だが、実際には昔ながらの人脈がモノを言い、縁故や情実がはびこっている。米国には、政府の高級官僚がpolitical appointment(政治任用)で選ばれる制度があって、共和党政権下では共和党人脈、民主党政権下では民主党人脈が生きるわけ。ジョン・F・ケネディ大統領が、実弟のロバート・ケネディを司法長官に任命した例もあり、往々にしてnepotismがはびこる下地があると言える。
 ブッシュ政権のトップ人事を見ても、チェイニー副大統領は、父親のブッシュ大統領下の国防長官で、息子の〝後見役〟として副大統領に就任。イラク戦争の不始末の責任をとって辞めたラムズフェルド前国防長官は、フォード政権下でも国防長官をやっていたが、その時にホワイトハウスの首席補佐官だったのがチェイニー氏。ライス国務長官は、父親のブッシュ政権時代に国家安全保障会議の東欧ソ連部長を務め、息子の代に国家安全保障担当の補佐官に昇格した。そのほかの閣僚人事も、共和党の古い人脈と父親のブッシュ元大統領の知人や友人がほとんどだ。ウォルフォウィッツ世銀総裁も、ブッシュ大統領の〝鶴の一声〟で国防副長官から世銀総裁に転身。〝恋人の件〟も「上を見習っただけ」と思ったのかもしれない。The Sankei Shimbun(May 20 2007)「グローバル・English」はこちらへ