2009年3月24日火曜日

Land of opportunity Time of crisis can be opportunity!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 opportunityは「チャンス」。アメリカの別称はland of opportunity(チャンスの国)だ。アメリカは“a nation of immigrants”(移民の国)で、16世紀から始まった欧州諸国からの移民は、王政・貴族制度でがんじがらめになった階級社会を嫌い、新大陸に成功の機会を求めたのである。
 リンカーン大統領は1860年代に、land of opportunityについて、誰もが金持ちになる平等な機会を与えられる社会が自由社会である、と述べている。それがAmerican dream(アメリカン・ドリーム)を支えてきたといえる。
 では、現代のアメリカはどうか?ニューヨーク・タイムズ(2007年7月13日付)の社説は“The Land of Opportunity?”と〝疑問符〟を付けた。OECD(経済開発協力機構)が先進諸国の所得分配傾向を調査した結果、「アメリカでは、父親の所得が一番底の5分の1の層に属する場合、その子もそこで終わる確率は40%以上である」と報告しており、貧乏人は今や貧乏から這い上がることができないと指摘する。“The problem is that the have-not don’t have many opportunities either.”(持たざるものは、機会も多くないことが問題である)という。“window of opportunity”(機会の窓)は、閉じられつつあるのか?
 オバマ大統領は2009 年3月7日のラジオ演説で“Time of crisis can be great opportunity.”(危機は大きなチャンスとなり得る=AP通信の見出し)と語った。オバマ氏は、深刻な経済危機の中で四半世紀ぶりに失業率が8%を超え、数百万人が住む家を失って、その日の生活にも困窮しているという厳しい現実を語った上で、こう言って国民を鼓舞した。“With every test, each generation has found the capacity to discover great opportunity in the midst of great crisis. That is what we can and must do today.”(様々な試練に際し、どの世代もこれまで、大きな危機の最中に大きなチャンスを発見する力を見出してきた。それはわれわれにも可能であり、今日やらねばならないことだ)
では、どこにチャンスを発見すればよいのか。残案ながら、演説はそこで終わり。
 だが、歴史を振り返ると、ヒントがある。ケネディ大統領は1959年4月、冷戦の危機について演説した中で、こう述べた。“When written in Chinese, the word ‘crisis’ is composed of two characters-one represents danger and the other represents opportunity.”(中国語で「危機」という言葉を書くと、1つは「危」であるが、もう一方は「機」である)。1957年にソ連の人工衛星スプートニク1号の打ち上げが成功して、米国がショックを受けた後だが、彼はこのとき“The space age offers the opportunity for new voyages of discovery.”(宇宙時代は新たな発見への旅の機会を与えてくれる)と語った。その言葉通り、以後の宇宙開発競争が、アポロ計画と人類初の月面着陸成功につながっていく。
 偉大な物理学者アルベルト・アインシュタインは、“In the middle of every difficulty lies opportunity.”(どんな困難の中にもチャンスがある)と述べている。チャンスを見出せるか否かは、各人に掛かっている。危機に遭遇してすぐに投げ出してしまう人もいれば、「なにくそ!」と歯を食いしばってがんばる人もいる。そういう意味では、“The economic crisis is a test of character.”(経済危機は、人の〝本性〟が試される機会である)と言えるだろう。The Sankei Shimbun (March 23 2009)

2009年3月18日水曜日

Panda-hugger

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 panda-huggerは、パンダをhug(抱擁)する人という意味。カタカナ読みは「パンダ・ハガー」。パンダは中国を代表する人気動物で、世界中の子供たちが抱きしめたくなるほどだが、この単語のニュアンスは少し違う。2000年以降、米中関係の記事に頻繁に登場するようになった言葉で、「親中国派」を指す。
 保守系新聞ワシントン・タイムズの安全保障担当記者ビル・ガーツ氏によると、「panda-huggerは、ペンタゴン(国防総省)内の中国専門家のなかでsoft-liner(柔軟路線派)を揶揄する言葉」(2000年11月)として使われ始めたという。panda-huggerは「中国を軍事的脅威と見なさない」のが特徴。むしろ、経済発展が著しい中国を格好のマーケットと位置付け、金儲けの相手として仲良くしようと考えるという。
 クリントン政権は中国に対して融和政策をとり、米経済界の要望を受けて、WTO(世界貿易機関)への中国の加盟を強力に推進した。その意味では、クリントン大統領はpanda-huggerに違いない。
 ブッシュ政権下でも、ロバート・ゼーリック米通商代表が、中国加盟の最後の仕上げをした後、2005年からは国務副長官に就任して、対中外交を取り仕切ってきた。翌年1月には中国四川省の成都を訪れ、実際にパンダの子を抱いてのツーショットにご満悦だった。ニクソン大統領が1972年に中国共産党との国交を回復して以来、中国は米国にパンダを贈与、ワシントン・アトランタ・サンディエゴなどの動物園で飼育されて政治的協調のシンボルとなってきただけに、ワシントン・ポスト(2006年1月26日付)はゼーリック氏の訪中を“Panda Diplomacy”と報じ、同氏が中国との関係改善に乗り出したと論評した。ゼーリック氏は2006年7月に副長官を辞任。その後、世界銀行総裁に就任している。
 ところが、中国は経済関係を除くと、軍事面でも政治面でもことごとに米国と対立している。とくにイランの核開発問題や北朝鮮の弾道ミサイル発射問題で、ロシアとともに米国に反対し、かつての「冷戦」の様相を再現している。そこで、panda-huggerに替わって台頭するのは、dragon-slayer。中国を危険なドラゴン(龍)と見なし、それをslay(退治)する人で、「対中強硬派」を指す。共和党やペンタゴン内の保守派が1つの勢力をなしている。彼らは、中国をあくまで共産党の一党独裁体制ととらえ、自由主義社会の敵と考えている。経済的発展を謳歌する現実に対しても、一方で急速な軍備拡張を指摘して不信感を隠さない。いったん事があれば、〝改革開放〟路線など吹っ飛んでしまい、米中戦争も起りかねないと主張する。dragon-slayerの見方は極端であろうが、目先の利益につられて中国の言いなりになり、パンダを抱きしめて喜ぶというのも、思慮が足りないと言えよう。The Sankei Shimbun(September 10 2006)


アメリカ総領事館で2009年3月18日、東アジア安全保障フォーラムがあった。ゲスト講師はハワイのイースト・ウエスト・センターのシニア・フェロー、Denny Roy氏。テーマは「中国の外交・安全保障政策」であった。Roy氏は、中国は経済発展によって国力が増大し、大国として存在感を強めているが、バランス感覚の取れた外交政策をとることで、大きな軍事的脅威とはならないだろう、との楽観的な見方を示した。
 Roy氏に対する印象を一言でいえば、panda-hugger。つまり、パンダをhug(抱擁)する人という意味。パンダは中国を代表する人気動物で世界中の子供たちが抱きしめたくなるほどだが、この単語のニュアンスは少し違う。2000年以降、米中関係の記事に頻繁に登場するようになった言葉で、「親中国派」を指す。ワシントンタイムズの安全保障担当記者のビル・ガーツ氏によると、「panda-huggerは、ペンタゴン(国防総省)内の中国専門家のなかでsoft-liner(柔軟路線派)を揶揄する言葉」(2000年11月)として使われ始めたという。panda-huggerは「中国を軍事的脅威と見なさない」のが特徴である。

2009年3月12日木曜日

expired food

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
expireは「期限が切れる」という動詞で、expiredは過去分詞形。foodは「食品」。そこで、expired foodは「期限が切れた食品」。カタカナ読みは「イクスパイァド・フード」。
 MSNBCのニュース(2009年2月12日付)は、“21 Stores Fined For Selling Expired Food”(21店が期限切れ食品販売で罰金)と報じた。ニューヨーク州ウエストチェスター郡の消費者保護局がこの冬、郡内の46のスーパーマーケットを査察した結果、半数近い21店で平均35品目の“perishable food past its expiration date”(期日を過ぎた〝生鮮食料品〟)を販売していたことが判明。総額で5万9600㌦の罰金を科したという。店側は、例によって、“We take this issue very seriously.”(この件を真摯に受け止めている)とのコメントを発表、再発防止に努めて行くそうだ。
さて、販売されていたexpired foodの「期日」にはどんなものがあったのか?
 米国でも“food safety”(食品の安全)は大きな社会問題で、農務省や食品医薬品局(FDA)が詳細な表示規定を設けている。まず、「賞味期限」に当たるのがBest-If-Used-By Date。「何日までに使えばベスト」という意味。ちなみに英国などでは、“Best-Before Date”(何日以前はベスト)という。
 農務省のガイドラインでは、Best-If-Used-By Dateは食品の安全期日を示すものではない。つまり、この日付を過ぎれば、品質が劣化し、味は落ちるが、食べられないわけではないという。
これとよく似た表示がUse-By Date。こちらは、「何日までに使え」という日付で、一般的な「消費期限」といえる。ガイドラインによるとinfant formula(ベビー用ミルク)などは、これが安全期間のexpiration date(期限切れ日)を意味するので要注意。
 また、販売期限を示すSell-By Date(何日までに売れ)がある。これは日本では見られない表示だが、小売業者に店頭での販売期限を示したもの。牛乳や卵などのパッケージに書かれており、その日付までに買って冷蔵庫に保存すれば、1週間程度は十分に持つ。
 ここまでは一応の原則だが、残念ながら実際のスーパーの棚に並ぶ商品が、かならずこの通りというわけではない。Best-If-Used-By DateとUse-By Dateを混同して使うなど、消費者の無知に付け込んでミスリードしたり、expired food を平気で販売する業者は後を絶たない。
そこで、“The bottom line: Trust your eyes and noses.”(肝心なのは、自分の目と鼻を信じること)。つまり、“If it looks bad and /or smells bad, toss it out.”(もし、見た目が悪くなっていたり、嫌な臭いがすれば、捨てなさい)。深刻な不況下にあり、もったいないと思う気持ちはよくわかるが、「食べて当たらなければ、消費期限内」というのは、危険なカケである。The Sankei Shimbun (March 2 2009)

 PS: アメリカでも日本でも、いまや不景気のど真ん中で、賞味期限切れの食品をそれと断って堂々と販売する店が人気を呼んでいる。そういう店を何というか?“salvage grocer”(サルベージ・グローサー)。salvageは「救出する」でgrocerは「食品販売」だ。そして、賞味期限切れや、その寸前の食品で、まだ十分食べられるものを“closeouts”(見切り品)と呼ぶ。日本のスーパーでも「見切り品」は、半額シールが貼って売られており、バーゲン・ハンターが集まる。アメリカでも事情は同じだ。そこで、こんな質問が出る。“Will you buy expired food for half off?”(あんたは、半額だったら期限切れ食品を買うかい?)。私の答えは“It depends on how expired and what it is”(どんな期限切れか、物は何かによる)