2013年5月17日金曜日

outrageous このニュアンスを分かって欲しい



 outrageous(形容詞)の名詞形はoutrage。語源はout+rage(怒り)ではなく、outr (ultra)+ageで"the passing beyond reasonable bounds"(度を越すこと)を指す。つまり、outrageousは「常軌を逸した」という意味だが、転じて「乱暴な」「非道な」となる。だが、動詞としてのoutrageにはもう一つの意味がある。ずばりrape(強姦する)である。このニュアンスを理解してコンテキストの中で意味をくみ取る必要がある。
 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、戦時の慰安婦問題について自らの見解を述べたことについて、米国務省の報道官が批判した。
 Kyodo News International (May 16, 2013) は、“Hashimoto's remarks on sex slaves ‘outrageous’: U.S. State Dep't”と報じた。このoutrageousはどんなニュアンスを持っているのか?
 そもそも、軍隊に従属した兵士の性処理のための女性を「慰安婦」と捉える論理と、sex slaves(セックスの奴隷)とする論理は、最初からすれ違っていると言わねばならない。というのは、「慰安婦」は男性の立場からの言葉であり、sex slavesは女性の側に立った言葉であるからだ。
 そこで、Jen Psaki氏(女性報道官)が、記者会見でどう発言したのか見てみよう。
 "As the United States has stated previously, what happened in that era to these women who were trafficked for sexual purposes is deplorable and clearly a grave human rights violation of enormous proportions."(合衆国は以前から主張しているように、その時代に性的目的のために違法に取引された女性の身の上に起こったことを、痛ましいことであり、明らかに著しい人権侵害だったと考えている)
 つまり、Psaki氏が問題にしているのは、trafficking(人身売買)と、その後のwhat happened to these womenであり、それがいかなる文言を使うにしても容認する発言はoutrageousであると感じたのである。「言語道断」との訳を見かけたが、「(女性の人権を踏みにじる)あきれた暴論」といいたいようだ。彼女の頭をよぎったのはrapeであろう。
 アメリカで深刻な問題となっているのが、米軍の内部で横行する兵士のsexual assault(性的暴力)である。そのほとんどのケースが、男性兵士が酒に酔って女性を襲うというもので、とくにイラクやアフガニスタンなど生死を争う厳しい環境で後を絶たないのだ。
 橋下氏は、在日駐留米軍に対して、兵士の性処理のための風俗業の活用を説いた、だが、実際に性的暴行などの問題を起こす兵士は精神障害を起こして追い詰められており、沖縄での相次ぐ事件を見ても分かるように、米軍はもはや、帰還兵を自由に外出させること自体さらに問題を引き起こすことになりかねない、と深い懸念を持っている。

2013年5月16日木曜日

glasseslike 近未来を開くGoogle Glass



 メガネはa pair of glassesという。そこでglasseslikeは「メガネのような」(Resembling eyeglasses)という形容詞。だが、とくにGoogleが開発を進めている, wearable computing device(身体に装着するコンピューターのデバイス)Google Glass(「グーグル・グラス」)を指す。   
 The New York Times (May 6, 2013) は、グーグル・グラスについて、”Google's wearable computer, the most anticipated piece of electronic wizardry since the iPad and iPhone”(グーグルの装着コンピューター、iPadや iPhone以来、もっとも期待される電子のすぐれもの)と述べている。つまり、”The glasseslike device allows users to access the Internet, take photos and film short snippets”(そのメガネのようなデバイスによってインターネットにアクセスできるほか、写真やビデオの撮影もできる)という。なるほど、「マトリックス」や「甲殻機動隊」のような近未来世界が一気に開けるというわけ。
 だが、May 15には、Googleはこのデバイス向けのアプリの開発者の会議を招集した。同日付のThe New York Timesは、”Glass seems nowhere to be found, except on the faces of developers who have agreed to pay $1,500 for the device.”(グラスを掛けていたのは、1500ドルを支払うことに同意した開発者だけで、ほかには見当たらないようだ)と書いていた。
 私も売り出されたら、ぜひ買いたいと考えているが、米国ではもうすでに映画館やバーなどでglasseslike deviceを装着しての入場を禁止すると表明しているところがあるという。時代の流れは何とも速い。


2013年5月13日月曜日

smartphone face スマートフォンばかり見ていると・・・




 smartphone faceは「スマートフォン顔」だが、スマートフォンの表という意味ではない。A drooping jawline and saggy jowls caused by neck muscles that have been shortened from constantly looking down at a smartphone(ずっとうつむいてスマートフォンばかり見ていると、クビの筋肉が萎縮して、あごの線が下がり、下あごの部分が垂れ下がってくる。(From Wordspy.com) つまり、こんな顔=写真=になるというわけ。
 smartphone faceはあごが垂れ下がるからsmartphone sagともいう。整形美容医師の観察から生まれた新造語で、a new ailment from smartphone addiction(スマートフォン中毒から来る新たな病気)と位置づける。”Your smartphone can make your face sag.”(スマートフォンで顔が垂れ下がる)下あごが下がると、日本語でいう「仏頂面」のような、いかにも不機嫌な表情に見える。そういえば、電車の長いすに並んでスマートフォンをいじくっている人たちの顔は、近寄りがたいものがあるよな。
 アメリカ形成外科学会(the American Society of Plastic Surgeons =ASPS) によると、Chin implants or ‘chinplants’ are becoming the fastest growing plastic surgery trend, and in 2011 the popularity of the procedure grew more than that of the boob job.
 (あごの移植が形成外科の最近のトレンドになりつつあり、2011年には豊胸術をしのぐ人気であるという)
 確かに、老化にともないあごの筋肉は下がる。高齢化が進むにつれて、美容整形は〝若返り〟を目指すからchinplantsはこれからのターゲットとなりそうだが、スマートフォン顔がそれに拍車を掛けているのは間違いない。

2013年5月3日金曜日

demise 「終わり」を表す正式の堅い表現

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 demiseは、書き言葉として「消滅」「終焉」の正式な表現。また、君主の「崩御」や、「逝去」などdeath(死)の婉曲表現として使われる。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、語源は古仏語のdemettreで、別の英語ではdismiss(去らせる、退出させる)。転じて王位を譲る、さらに遺された不動産を移譲することをいう。カタカナ読みは「ディマイズ」。
 米航空宇宙局(NASA)の最後のスペースシャトル「アトランティス」が2011年7月21日に帰還し、30年に渡ったシャトルの時代に幕が下りた。英BBC(7月19日付)は、“Shuttle's demise brings Titusville down to earth”(シャトルの終焉がタイタスビルを現実に引き戻す)と報じた。タイタスビルは、NASAの本拠地Kennedy Space Centerのすぐそば。シャトル計画の終わりとともに8000人以上が解雇され、シャトルの打ち上げでにぎわった地元の観光事業も大幅に縮小という。
 だが、このdemiseを“blessing in disguise”(見かけは悪そうだが実はありがたいもの)と見る人もいる。“This town is full of people who put man on the Moon and ran shuttles for 30 years.”(この町には、人類を月に送りシャトルを30年間運用した人々がたくさんいる)。“We’ll still be a part of space here.”(私たちはここでは依然、宇宙の一部なのだ)と住民は考えており、新たな宇宙プロジェクトはこの町からきっと始まると期待している。
 さて、英国ではメディア王ルパート・マードック氏傘下の日曜版大衆紙が盗聴疑惑の末に廃刊に追い込まれたが、ロイター通信(7月20日付)は、“UK's Sunday Mirror gains on Murdoch tabloid demise”(英国のサンデー・ミラー紙がマードックの大衆紙の廃刊で利益)と報じた。サンデー・ミラーは、ライバル紙の廃刊で50%売り上げを伸ばしたという。つまり、英国の日曜版大衆紙の需要は依然旺盛で 、“front-page splashes on sex and celebrity”(セックスやセレブに関する一面のケバい見出し)は〝売り〟である。新規参入を考える企業もあり、屍を乗り越えて進む…。

heatstroke

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 heatは「熱」、strokeは「打撃」、また転じて「発作」。heatstrokeは、熱による発作、「熱射病」と訳される。sunstroke(日射病)と並ぶ言い方。
 最近では「熱中症」の語が一般的。これはhyperthermia(カタカナ読みは「ハイパーサーミア」)という医学用語に相当する。普通の英語では、heat-related illness。その中でheat cramps(熱性けいれん)、heat exhaustion(熱疲労、暑気あたり)、heatstrokeと分類されるが、新聞メディアでよく見るのが、命にかかわるheatstroke。
 20011年夏も北半球の各地で、heat wave(熱波、猛暑)が襲来。ロイター通信(7月16日付)は、“Heat wave lingers, submerges U.S. in sizzling temperatures”(熱波が停滞、米国はうだるような気温に沈む)と報じた。このsizzleという動詞は、油で揚げる時にジュージュー音を立てることを指し、いかにも暑そうな表現だ。
 それだけに、米CNN(7月13日付)は早々に“Heatstroke: A deadly hazard of summer”(熱射病、死に至る夏の危険)と警告。その中で、“Heat exhaustion involves elevation of body temperature, headaches, nausea and vomiting.”(熱疲労は、体温上昇、頭痛、吐き気やおう吐を伴う)として、これらの兆候に注意を促した。さらに、めまいや意識の混濁が起こるとheatstrokeで、取り返しのつかない事態になりかねない。
前段のheat exhaustionを防止するには、“Drink plenty of water throughout the day.”(日中は水分を十分に取ること)だが、カフェインやアルコール入りは、脱水症状を促す危険性があるのでダメ。“Air conditioning is the most effective way to cool off and prevent heat-related illness.”(エアコンが熱中症を冷やして予防する最もよい方法)であるのは間違いない。
 さて、ブルームバーグ(7月13日付)は、“Heatstroke deaths quadruple as Japan shuns air conditioners to save power”(日本は節電のためにエアコンを止めて熱中症の死亡が4倍増)と報じた。

bloodbath

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 bloodは「血」で、bathは「入浴」。bloodbathは、文字通りは「血の入浴」。つまり、浴びるほどの血を流すことから、massacre(大虐殺)を意味する。経済に関して比喩的にも使われ、大量解雇や株式市場の暴落を指す。
 タイムズ・オブ・インディア(2011年8月8日付)は、“Syria bloodbath continues, 52 dead”(シリアの大虐殺は続く、52人が死亡)と報じた。シリアでは、今年3月以降、反政府抗議デモに対し公然と弾圧が始まった。アサド大統領は、“Syria is on the path to reforms.”(シリアは改革の途上にある)としながらも、デモの参加者を“terrorist groups”(テロリスト・グループ)と呼び、軍隊を出動させて武力で鎮圧し始めた。連日、多数の死傷者が出て当局の取り締まりは虐殺の様相を呈し、まさにbloodbathの事態となった。アラブ諸国に吹き荒れる反政府デモによる民主化革命は、多数の犠牲を強いることになった。
 ところで、最近注目を集めたのが世界同時株安によるmarket bloodbath。株式などが投げ売りされて相場が暴落、大量の損失(赤字)が出るのは、まさに経済的な意味でbloodbath。インターネットのビジネスニュースRTTNews(8月4日付)は、“Economic worries lead to bloodbath on Wall Street”(経済的懸念からウォール街は株が〝暴落〟)と報道。米株式市場でダウ工業株30種平均がこの日、500ポイント以上下げたことで、株式市場に悲観論が強まっていると指摘した。米国の不況と財政赤字の悪化が最大の不安材料。案の定、格付け会社のスタンダード&プアーズが、米国債の格付けを引き下げるに至って、週明け8日のダウ平均はさらに600ポイント以上下落。market bloodbathはアジア、欧州市場に波及した。
 さて、ウォールストリート・ジャーナル(8月9日付)のブログに“High frequency traders win in market bloodbath”(高頻度トレーダーは市場暴落でも勝ち残る)と出ていた。金融取引は今やコンピューターを使った秒単位の売買だが、はしこい奴は生き残る。人の行く裏に道あり花の山…。minagoro

chav 語源をご存知だったら脱帽です

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 カタカナ読みは「チャヴ」。英国の軽蔑語でlower-class(下層階級)に属するnon-educated delinquent(教育のない非行少年)を指す。語源研究者マイケル・クィニオン氏によると、「子供」を意味するジプシー語のchaviが語源。chavのファッションは、flashy gold jewelry(金ぴかのアクセサリー)、“prison white”(刑務所の白)と呼ばれる真っ白いトレーナー、野球帽、ブランド名の入ったスポーツ・ウェアやシューズなど。
 2011年8月の初めにロンドンを中心に英国各地で起きた若者の暴動。タイム誌(8月22日号)は、“An outbreak of arson, looting and lawlessness caught Britain and its leaders by surprise.” (放火、略奪そして無法状態の突発は、英国とそのリーダーたちを驚愕させた)と報じた。だが、同誌では触れられていないが、この暴動について英国民の間では、“Chav riots”(チャヴ暴動)とささやかれた。つまり、中心となって暴れ回ったのは下層階級の非行少年というわけ。
 著名歴史家のディビッド・スターキー氏は、8月12日のBBC2のニュースショウ番組で今回の暴動に触れて、“What has happened is that the substantial section of the 'chavs' have become black. The whites have become black.”(起こっているのは〝チャヴ〟の相当部分が黒人化していることだ。白人が黒人になっている)と述べ、ヒップホップなど黒人文化の浸透を指摘。“A particular sort of violent, destructive, nihilistic gangster culture has become the fashion.”(暴力的で、破壊的、ニヒルなギャング特有の文化が流行している)と語った。この発言に対して、「人種差別」との批判が多数寄せられたそうだが、それは一面において英国の金持ち保守層の〝本音〟を代弁しているようだ。
 保守党のデイビッド・キャメロン首相は、“This is criminality, pure and simple.”(これは、紛れもなく単純な犯罪だ)と述べ、警察官を大量動員して“street gang”(街のギャング)の鎮圧に踏み切った。英国社会は確かに病んでいる。

gloom

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 gloomは「暗がり」(darkness)、「薄暗がり」(dimness)、また精神的に「憂鬱な状態」(a state of melancholy)を指す。カタカナ読みは「グルーム」。景気の「先行き不透明」を表す言葉としてよく使われる。
 最近、頻繁に見かけるのがglobal gloom(地球規模の暗さ)。ウォールストリート・ジャーナル(2011年9月6日付)は、“Global gloom dents Asia shares”(世界経済の先行き不透明感からアジアの株式市場が下落)と報じた。dentは「ガツンとやってへこませる」。では、gloomの実態は何か?“Investors were unable to shake off worries about Europe's debt woes and the health of the U.S. economy.”(欧州の債務危機とアメリカ経済の状況について、投資家が懸念を払拭しきれなかった)ということ。景気は「気の持ちよう」とはよく言ったもので、worries(複数形、心配)が背後にある。
 また、ロスアンゼルス・タイムズ(2011年9月9日付)は、“Key member of Europe central bank quits, adding to economic gloom”(欧州中央銀行のキーマンが辞任、経済の先行き不透明に追い打ち)と報じた。ユルゲン・シュタルクECB専務理事が、イタリア、スペインの国債買い上げに反対して突如辞任。シュタルク氏はドイツ出身の主任エコノミストだっただけに、辞任は欧州債務危機の最後の砦の動揺を示唆。そのため、外国為替市場でユーロは売られ大きく値を崩した。
 さて、英国BBCは2011年9月4日、“Company profits defy economic gloom”(企業収益は経済の先行き不透明に挑戦する)とのレポートで、世界の経済ニュースに関して、“So it's all tales of doom and gloom, right?”(それでは、すべてお先真っ暗の話ばかりか、本当に?)と問いかけた。アップル社をはじめ、社会のニーズを先取りする企業は収益を上げているし、どんな環境でも生き残っていく企業はある。ことわざに言う。“The gloom of the world is but a shadow. Behind it, yet within our reach, is joy.”(世界の暗さは影に過ぎない。背後には、なお手の届くところに喜びがある)

secularism 

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 secularはラテン語が語源でworldly(現世の、世俗的)という意味。13世紀ごろ、キリスト教の教会と対立する概念として登場。その後、一般的に「非宗教的な」という意味で使うようになった。接尾辞の-ismを付けて、secularismは「世俗主義」と訳される。とくに、政治の世界では、宗教の介入を認めない政教分離の立場をいう。
 トルコのトゥデイズ・ザマン(2011年9月18日付)は“Secularism for Arabs and Turks”(アラブ人とトルコ人にとっての世俗主義)と題する社説で、“Will the Arab Spring countries embrace secularism as described by the Turkish prime minister?”(アラブの春を迎えた国々は、トルコ首相が説くような世俗主義を受け入れられるか? )と疑問を投げかけた。トルコはイスラム教徒が国民の9割以上を占めるが、共和国になって以来、世俗主義をとって来た。エルドアン首相は、チュニジアやエジプトをこのほど歴訪し、新政府が民主主義を推し進めるためには、世俗主義をとるべきだと主張した。“He attributes secularism to the state, not the individual.”(彼は、世俗主義を個人ではなく国家に帰属すると考える)。つまり、宗教については個人の自由意思に任せる一方、国家の運営は非宗教的であるべきだとした。
 バチカンのカトリック・ニュースサービス(2011年9月18日付)は、“Church and state: Why can’t they be friends?”(教会と国家:なぜ仲良くできないのか? )との記事を掲載。その中で、“Pope Benedict XVI has made the dangers of secularism a major theme of his pontificate.”(ローマ法王ベネディクト16世は、世俗主義の危険を任期中の最大のテーマにあげた)と述べた。欧米諸国では、“The separation of church and state, which is a hallmark of a democracy, has also gone onto the separation of God and life unfortunately.”(政教分離は民主主義の特質だが、さらに不幸にも神と生活の分離にまで至った)と指摘している。
 May God be with you! (神があなたとともにありますように)

prison overcrowding 社会の悪化を示す現象

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 overcrowdingは「過密状態」。overは「~過ぎる」でcrowdは「混雑する」という動詞。どこがそれほど込み合っているのかといえば、prisonあるいはjail、つまり「刑務所」。prison overcrowding(刑務所の過密)は今や〝熟語〟になりつつある。
 タイム誌(2011年9月29日付ウェブ版)は、“As California fights prison overcrowding, some see a golden opportunity”(カリフォルニア州は刑務所の過密と戦うが、これを絶好の機会とみる人もいる)と報じた。その中で、“The prison currently operates at 200% of its capacity; with less personal space among inmates, tensions rise, making life more dangerous for prisoners and guards alike.”(刑務所は現在、収容人員の2倍で運営されている。囚人間のスペースはより狭くなって緊張が高まり、囚人も監視人もともに命を脅かされる状態にある)と指摘。このため、州政府は囚人の教育プログラムを前倒しで行い、早期に社会復帰させる方針転換を迫られているという。これは、自由の身になりたい囚人には絶好の機会。だが、世間の風は意外に冷たく、刑務所に舞い戻る常習犯(recidivist)は後を絶たない。不況が深まる中で、米国各地のstate(州)prisonやcounty(郡)jailでovercrowdingが頭痛の種である。
 ところで、prison overcrowdingは、米国だけでなく世界各地でも問題になっている。シンガポールのストレーツ・タイムズ(2011年9月6日付)は、“1 dead, 2 wounded after prison riot in Thailand”(タイの刑務所暴動で1人死亡、2人負傷)と報じた。タイ南部のパッターニー県の刑務所で、“The prison has capacity for 900 inmates but has had more than 1,300 for many years.”(長年に渡り900人収容のところに1300以上の囚人がいる)とした上で、overcrowdingが原因で囚人同士の衝突を招いたと述べている。
“The degree of civilization in a society can be judged by entering its prisons”(社会の文明の度合は、そこの刑務所に入れば分かる)と指摘したのはロシアの文豪ドストエフスキーである。

downgrade 身から出たサビじゃないか?

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 downgradeは文字通り、grade(等級や評価)をdown(下げる)ことで、「格下げする」「評価を下げる」。最近は、credit rating(信用格付け)の格下げがもっぱら話題だ。downgradeの反対がupgrade。「アップグレード」とカタカナ読みすると、コンピューター・ソフトの更新でおなじみ。
 米サンフランシスコ・クロニクル(2011年10月24日付)は、“The scary truth about downgrades”(格下げの恐ろしい真実)と報じた。ここでdowngradesは、名詞の複数形であることに注意。その1つが、“This year, for the first time in its history, the United States had its AAA rating downgraded by S&P.”(今年、史上初めて米国債の格付けは、スタンダード・アンド・プアーズによってトリプルAから引き下げられた)ということ。その衝撃は大きく、一時は世界同時株安の様相を呈した。さらに米国以外にも、ギリシャ、アイルランド、スペイン、イタリアなど欧州諸国の格付けが相次いで引き下げられたというわけ。
 今や先進国であっても財政破綻の可能性が浮上し、downgradeの〝嵐〟が吹き荒れるようになった。その影響は甚大で、経済の先行き不安から株価は暴落、失業は増加、その結果、さらに景気が低迷するという悪循環。米ドル、ユーロが売られて安くなり、その反動で予想外の円高を招く。downgradesは、世界経済にとって何1つよいことはないが、これも各国の放漫財政のゆえで〝身から出たサビ〟というべきであろう。
 格下げされた国のトップは、必ずといってよいほど格付け会社を非難する。米CNNは9月21日、“Berlusconi blasts Italy downgrade”(ベルルスコーニ首相がイタリアの格下げに怒りを爆発させる)と報道。だが、この国家の一大事を前に、未成年女性の買春疑惑にまみれるベルルスコーニ氏に対して、イタリア国民や他の欧州諸国の不信感は高まっている。英フィナンシャル・タイムズ(10月24日付)は、“Berlusconi faces the ultimate downgrade”(ベルルスコーニ首相は、究極の格下げに直面している)と述べた。

about-face こういう英語が大切なんだ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 about-face は、19世紀半ばに生まれた軍隊用語で、a turn of 180° from the position of attention(気を付けの位置から180度回ること)。すなわち「回れ右」。この場合のaboutは「~について」ではなく、in the opposite direction(反対の方向)を指し、faceは「顔」ではなく「顔を向ける」こと。about-faceは、実際の動作だけでなく、「突然の方向転換」の意味で使われる。
 ユーロ崩壊の危機に揺れる欧州で注目を集めたのが、“Greek about-face”(ギリシャの“回れ右”)。財政危機にあるギリシャのパパンドレウ前首相は、欧州各国から要求された緊縮政策について国民投票を行なうと発表。その後、金融市場は大荒れとなり、突如方針を転換して投票を断念。緊縮政策の受け入れと連立政権の成立とを引き換えに、本人は辞任した。カナダのモントリオール・ガゼット(2011年11月8日付)は、“Papandreou's about-face raises hopes for European crisis”(パパンドレウの方向転換は欧州危機に対して希望をわかせる)と報じ、市場はほっと一息ついた。
 さて、「アラブの春」の民主化運動が高まる中東で注目を集めるのが、トルコのabout-face。米クリスチャン・サイエンス・モニター(2011年11月3日付)は、“Turkey's bold about-face on Syria”(シリアに対するトルコの大胆な方向転換)と題する論文で、“Turkey’s bold backing of regime change in Syria – until recently a close friend – has caught many by surprise.” (トルコが、最近まで緊密な友人だったシリアでの政権交代を大胆に支持することは、多くの人々にとって思いも寄らぬことだった)と述べた。トルコはこれまでアサド政権と良好な関係を続けて来たが、今年1月にシリアで反政府デモが起こり、騒乱が東トルコの国境に及ぶに至って方向転換。アサド政権のデモ弾圧を非人道的な蛮行と非難し、反政府デモを支持するようになった。シリアの国際的な孤立は深まっており、国内は〝内戦状態〟の様相を呈し始めた。国際政治・経済のabout-faceは時に大事に発展するから要注意である。




covert war すぐに戦争したがるのは人間の悪い癖だ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 covertは古仏語が起源で、本来の英語ではcovered(覆われた)という意味。ここでは、スパイ用語でcovert operations(秘密作戦)を指す。これは、ボブ・バートン著『最高機密:諜報と情報の辞典』によると、“Operations planned and executed so as to conceal the identity of, or permit plausible denial by, the sponsor.”(首謀者の正体を秘匿するか、口先の否定を許すように計画され、実行される作戦)をいう。そこで、covert warは「秘密作戦による戦争」。カタカナ読みは「コウヴァート(またはカヴァート)・ウォー」。
 英ガーディアン(2012年1月11日付)は、“This covert war on Iran is illegal and dangerous” (イランに対する隠密裏の戦争は非合法で危険だ)と報じた。“As another Iranian nuclear scientist is assassinated, the mystery thickens as to whether the Mossad, US or the UK are involved.” (もう1人のイランの核開発科学者が暗殺され、イスラエルの諜報機関モサドや米・英が関与しているか否かについて、謎は深まる)と指摘した。この事件は、バイクに乗った男が科学者の車に磁石付き爆弾を装着して爆殺したもの。2010年の1月と11月に続き3人目の核科学者の暗殺事件で、イラン側はイスラエルと米国を名指しで非難。当然ながら両者は関与を否定した。
 ところで、イランの核開発問題は中東情勢のカギを握る懸案であり、イスラエルは米国とともにイランへの軍事攻撃を検討してきたとされる。クリスチャン・サイエンス・モニター(2011年12月28日付)は、“An accelerating covert war with Iran: Could it spiral into military action?”(イランに対する隠密戦争の激化:軍事行動への急旋回の可能性はあるか)と警告。そうなれば、covert warではなくovert(諜報用語でopen=公然の)warとなり、取り返しのつかない事態へ突入する。
 イラン側のホルムズ海峡封鎖を威嚇する一方、米国による各国への経済制裁強化の呼び掛けで欧州連合(EU)がイラン産原油の禁輸を決定するなど―表の外交の世界でも事態は緊迫の度が深まっている。

toxic 人間をtoxicなんて呼ぶなよ!


I


 toxicの語源はギリシャ語のtoxikonで、毒矢の矢じりに塗る毒を指す。そこで、toxicは「有毒な」「有害な」という意味の形容詞。実際に毒物を含むtoxic chemicals(有毒化学物質)とかtoxic waste(有害廃棄物)などと使う。また、この言葉は比喩的にも使われる。
 米有力投資銀行ゴールドマン・サックスの業務執行役員グレッグ・スミス氏は辞職するに当たって、ニューヨーク・タイムズ(2012年3月14日付)のオピニオン面に、“Why I am leaving Goldman Sachs”(私がゴールドマン・サックスを去る理由)という一文を寄稿。その中で、“I can honestly say that the environment now is as toxic and destructive as I have ever seen it.”(正直言って、今の環境は私がこれまで見たことがないほど有害かつ破滅的である)と述べた。どういうことか?
 ゴールドマン・サックスの長年の成功を支えてきたのは企業文化であるとした上で、“It revolved around teamwork, integrity, a spirit of humility, and always doing right by our clients.”(それは、チームワーク、誠実さ、謙虚な精神、そしていつも顧客のために正しい仕事をすることを主軸にしてきた)と指摘。だが、今ではその文化を捨ててしまって〝金儲け主義〟に走り、顧客を食い物にするまでに堕落した、と批判している。
 さて、家庭問題で一番切実なのがtoxic parent(有害な親)。子供の気持ちを無視するだけでなく、言葉でいじめ、果ては暴行や性的虐待にまで及ぶような親を指す。ニューヨーク・タイムズ(2009年10月20日付)は、“When parents are too toxic to tolerate”(親が我慢できないほど有害になるとき)との精神医学者の論文を掲載。その中で、“It is no stretch to say that having a toxic parent may be harmful to a child’s brain, let alone his feelings.”(有害な親を持つことは、子供の感情はいうまでもなく、脳にまで害を及ぼすようだ、といって過言ではない)と述べている。虐待を受けた子供は生涯trauma(心的外傷)を背負わされるのだ。親の責任は重大である。

rewrite history 

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 rewriteは「書き直す」という動詞。rewrite historyは「歴史を書き直す」で、慣用表現ではないが、よい意味でも悪い意味でもよく使われる。記録を競うスポーツの世界では、「記録を塗りかえる」という意味になる。
 アルゼンチン出身で、スペインのサッカークラブ、バルセロナのFWリオネル・メッシ選手は3月20日、グラナダとのリーグ戦で同チームでの通算ゴールを234に伸ばし、クラブ史上最多得点記録を達成した。AFP通信(2012年3月21日付)は、“Messi hailed as ‘living legend’ after goal record”(メッシはゴール最多記録を達成後〝生きている伝説〟として迎えられる)との記事で、スペインの日刊紙バンガルディアが“Messi rewrites history”(メッシ、歴史を書きかえる)と報じた、と伝えた。
 さて、rewrite historyを政府が行う場合は、往々にして「歴史の改ざん」となる。インドのインディアン・エクスプレス(2012年4月7日付)は、“Bengal to rewrite history with ‘Left downfall’”(ベンガルでは〝左派の没落〟にともない歴史を書きかえ)と報道。西ベンガル州(州都コルカタ)では、2011年の州議会選挙でママタ・バナルジー女史が率いるトリナムール会議派が圧勝し、34年間続いた共産党政権が終わった。女史は州首相に就任、新政権では中学・高校レベルの歴史教育で、共産主義を提唱したドイツの思想家、マルクスとエンゲルスの項を縮小することを検討しているという。これに対して、インディア・トゥデー(4月9日付)は、“Trying to rewrite history for political purposes is certainly one of the most dangerous things a democratically elected government can do.”(政治的な目的のために歴史を書き直そうとすることは、民主的に選ばれた政府が行う最も危険な行為の一つであることは確かだ)と批判した。
 英国の歴史家、R・G・コリングウッドは、“Every new generation must rewrite history in its own way.”(どの新世代も自分流に歴史を書き直さねばならない)としているが、歴史家は新たな問題意識を持って歴史を再評価することが求められる。

anti-austerity 締め付けられるのは誰でもいやだ 

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 anti-は、カタカナ読みで「アンタイ」とか「アンティ」で、「反対の」という意味の接頭辞。austerityは形容詞austere(厳格な、耐乏の)の名詞形で「オーステリティ」。ここでは、政府の「緊縮財政」または「緊縮政策」を指す。そこで、anti-austerityは「緊縮政策反対」。
 AFP通信(2012年5月1日付)は、“May Day protesters have poured into streets across Europe, swept up in a wave of anti-austerity anger that threatens to topple leaders in Paris and Athens.”(メーデーの抗議デモ参加者がヨーロッパの街という街に流れ込み、緊縮政策に反対する怒りの声が席巻、パリやアテネの指導者らを転覆させかねない)と報じた。欧州のユーロ圏ではsovereign debt crisis(国家財政の破綻による債務不履行の危機)の回避のため、ギリシャをはじめ各国が緊縮政策に転じたが、景気が一段と低迷し失業率も上昇、anti-austerity protests(緊縮政策反対の抗議デモ)を引き起こす原因となった。
 このデモの影響は大きい。インターネットのニュースレター(同6日付)は、“François Hollande clubs Sarkozy in French election as anti-austerity sweeps Europe”(〝反緊縮〟が欧州を席巻、仏大統領選挙でフランソワ・オランドがサルコジをぶちのめす)と、緊縮政策を進めてきたサルコジ大統領の敗北を速報した。オランド氏は社会党の出身で、“austerity-sceptic”(緊縮政策に懐疑的)とされ、今後緊縮財政から景気刺激策へ舵を切ると見られる。英国のテレグラフ(同5日付)は、“The anti-austerity bandwagon will gain momentum if Francois Hollande is elected as president.”(フランソワ・オランドが大統領に選ばれたならば、〝反緊縮〟の流れに弾みがつくだろう)と予想。bandwagonは「楽隊車」で、jump on the bandwagonは「時流に乗る」という意味。
 だが、anti-austerityが、各国の経済政策の潮流となり、再び野放図な借金財政がまかり通れば、債務危機の再燃は必至だけに、金融市場は戦々恐々だ。




cyberweapon インターネットの戦争

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 cyber-は日本語でも「サイバー」、今では主にインターネットを意味する接頭辞。weaponは「兵器」だから、cyberweaponは「サイバー兵器」。computer virus (コンピューターウイルス)などネットを通じて侵入し被害をもたらすmalware(カタカナ読みで「マルウエア」、malicious softwareの略で、悪意のある不正ソフト)を指す。
 最近、注目を集めているのが、Flame(炎)と呼ばれるcyberweapon。ウォールストリート・ジャーナル(2012年5月29日付)は、“Advanced malware targets Middle East”(進化したマルウエアが中東を標的に)と報じた。この〝兵器〟の正式名称はWorm.Win32.Flame。中東諸国で相次いで発見され、ロシアのインターネット・セキュリティー会社カスペルスキーは、“the most sophisticated cyberweapon yet unleashed”(これまで放たれた最も精巧なサイバー兵器)と評した。
 ニューヨーク・タイムズ(同日付)は、“Iran confirms attack by virus that collects information”(イランが情報収集ウイルスの攻撃を確認)との記事で、Flameはデータを盗み出すspyware(スパイウエア)であると指摘。イランの核開発関連のコンピューターがcyberattack(サイバー攻撃)を受けたという。では、攻撃を仕掛けたのは何者か?
 イスラエルのヤアロン副首相はその後、軍のラジオ放送のインタビューで、“Anyone who sees the Iranian threat as a significant threat—it's reasonable that he will take various steps, including these, to harm it.”(イランの脅威を顕著な脅威とみなす者にとって、相手を攻撃するために、これら=ウイルスを含む様々な手段を講じるのは当然だ)と、関与をほのめかす発言をした。
 サイバー攻撃は、これまでハッカーによる個人の犯罪として問題視されてきたが、今や国家間や国家とテロ組織等とのcyberwarfare(サイバー戦争)にまで拡大しつつある。ネットの世界はますます危険な〝無法地帯〟となり、われわれもcyberweaponの流れ弾を食らいかねない。

swelter うだる暑さとは?

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 メリアム・ウエブスター辞典によると、to suffer, sweat, or be faint from heat(熱さに苦しみ、汗が出て、気が遠くなる)、あるいはto oppress with heat(熱さで押さえ付けられる)という動詞。つまり、swelterは「暑さでまいる」「うだるように暑い」と訳される。カタカナ読みは「スェルター」。
 欧米のメディアでもそれほど頻繁に使う言葉ではなかったが、2012年夏は溢れかえった。
 英国BBC(2012年7月3日付)は、“US storm-hit millions swelter in heatwave” (米国で暴風雨の被害にあった数百万人が熱波でまいる)と報じた。
 6月29日に東部地区を中心に暴風雨が襲って死傷者が出た上、数百万所帯が停電。その後首都ワシントンでも気温が40度を超え、各地で熱波が到来多くの人が熱中症で死亡したという。
 ワシントンポスト(7月4日付)は、“Shiver or swelter? The great debate between derecho hell and snowmageddon”、との記事を掲載した。この中で、derechoはスペイン語で、straight(真っ直ぐ)の意味で、ここでは雷雨をともなう激しい暴風雨をいう。Snowmageddonは、snow(雪)とArmageddon(ハルマゲドン)を組み合わせた造語で、「究極の豪雪」とでも言おうか。2009年ごろからheavy snowfall(どか雪)を表すのに使われ出した。そこで、「震えるのか、うだるのか?〝暴風雨の地獄〟と〝この世の終わりの豪雪〟とどちらがましか、大議論」というわけ。
 最近の暴風雨も熱波も豪雪も〝極端〟な事態になることがしばしば。どちらも身近に体験したメリーランド州の住民は、“Both heat and cold. Both are bad. It’s equal-opportunity badness.”(熱も寒さも、どちらも悪い。どちらも等しく悪い機会だ)と答えているのは、もっともである。
 だが、“Pride and Prejudice”(自負と偏見)を書いた英国の女流作家ジェーン・オースティンはこう言ったそうだ。“What dreadful hot weather we have!  It keeps me in a continual state of inelegance.”(何と恐ろしいほど暑い天気。このせいで、私はずっとみっともない状態のまま)

streaking 発祥はイギリスで命名はアメリカだ




 streakerの元の語はstreak。strike(ストライク、打つ)、stroke(ストローク、ひと打ち)と同じ語源で、筆でさっと描いた「線」を指す。転じて「稲妻」、動詞として「疾走する」、さらに公共の場を裸で駆けるストリーキング(streaking)に発展。streakerはstreakingをする人。
 2012年ロンドン五輪で、関係者が神経をとがらせる一方、メディアが密かに面白がっていたのがstreaking。
 英テレグラフ(2012年7月10日付)は、“London 2012 Olympics torch upstaged by streaker”(ロンドン2012年オリンピックの聖火はストリーカーに人気をさらわれる)と報じた。五輪の聖火リレーがロンドン西方のヘンリー・オン・テームズにさしかかったところ、その前方を造り物のトーチを掲げ、裸の背中に“Free Tibet” (チベットを解放せよ)と書いた男性のストリーカーが走り抜けて、公然わいせつ罪で逮捕された。
 ロンドンのイブニング・スタンダード(7月12日付)は、“The world deserves to see Britain's Olympic streak”(世界は英国五輪でストリーキングを見て当然)との記事を掲載。その中で、“An act that was first recorded in London in 1799, and named in the US in 1973, had gone global.”(1799年にロンドンで初めて記録され、1973年に米国でストリーキングと名付けられた行為は、世界に広まった)と解説している。英国が本家本元というわけだが、その中でもとりわけ有名なのは、この人。“Father-of-three Mark Roberts has streaked more than 500 times since 1993.”(子供3人の父親、マーク・ロバーツ氏は1993年以来500回以上ストリーキングを行って来た)。世界中の国際的なスポーツ大会に〝出場〟し、ギネスブックにもその名を連ねている。
 もっとも、ウェールズ・オンラインでは、五輪の注意事項に“STREAKERS BEWARE”(ストリーカー注意)として、ストリーキングは伝統とはいえ、面白がってやると最大2万ポンドの罰金が課せられる、と警告している。

anti-bullying いじめっ子はどこにでもいる

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 anti-は「反~」「対~」という接頭辞で、bullyingは「いじめ」。anti-bullyingは「いじめに反対する」「いじめ対策の」という意味。ここで問題になるのはschool bullying(学校でのいじめ)で、今や世界各国で学校教育の重要問題になっており、anti-bullying program(いじめ対策プログラム)や anti-bullying legislation(いじめ対策の法律制定)が進められている。
 米教育省は2012年8月6、7の両日、首都ワシントンでBullying Prevention Summit(いじめ防止サミット)を開催された。今年で3回目。記者発表によると、“The summit will focus on ensuring that anti-bullying efforts are coordinated and based on the best available research.”(サミットの焦点は、いじめ対策への取組みの様々な努力が、最善の研究成果に基づいて一元化して行われているか、を確かめることだ)。とくに、“Panels will highlight the connection between bullying and suicide.”(討論会では、いじめと自殺の関係にとくに留意していく)。
 米国では、1990年代から学校でのいじめによる自殺が問題になり、21世紀に入ってbully(いじめ)とsuicide(自殺)を組み合わせたbullycide(いじめ自殺)という新語が登場。1999年にジョージア州を皮切りに、これまでモンタナ州を除く49州でschool anti-bullying legislation(学校でのいじめ対策法の制定)が行われた。
 米国でのいじめは人種差別や、同性愛などの性的差別によるものが顕著だが、“Bullying is a common occurrence in most schools.”(いじめはほとんどの学校で共通の現象)とされる。
 一方、カナダのCBCニュース(2012年7月14日付)は、“Anti-bullying legislation step in right direction, advocates say”(いじめ対策法の制定は正しい方向、と支持者はいう)と報道。
 カナダでも、小学校4~6年生の10人に1人が他の生徒をいじめているとされる一方、4人に1人がいじめられているとの調査があり、学校と行政当局がいじめ防止法の制定に動き出している。