2012年7月21日土曜日

glamorize


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 glamorizeは「魅力的にする」とか「美化する」という動詞。カタカナ読みは「グラマライズ」。
glamorize the bathroom with expensive fixtures(高価な設備でバスルームを豪華にする)などと実際の装飾を指す一方、glamorize war(戦争を美化する)などと使う。
 2007年5月に問題になったのが、「映画が喫煙を美化している」との〝禁煙運動家〟らの批判。アメリカ映画協会(MPAA)はこれを受けて今後、喫煙シーンを暴力やセックスなどと同様に、rating(年齢制限区分)の対象とすることを決めた。ダン・グリックマン会長は「喫煙はますます社会的に受け入れがたい。ニコチン中毒による健康被害への懸念が大きく、どの親も子供にタバコを吸ってほしいとは思わない」と理由を述べ、“Raters will consider whether smoking is glamorized.”(レーティング担当者は、喫煙が美化されているか否かを検討する)と話した。美化されていると見なされれば、17歳未満の子供は保護者同伴でしか鑑賞できないR指定にされるという。
 だが、喫煙を美化しているとは、どの映画を指すのか?ワシントン・ポスト(2007年5月11日付)は、“Put it out, Sweetheart”(あなた、タバコを消して)の記事で、「『カサブランカ』もXXX(成人向け)にされただろうか?」と問いかけた。1942年のこの映画で主演のハンフリー・ボガードが小粋にタバコを吸ってみせて以来、ハリウッドではタバコが〝カッコよさ〟の象徴となった。子供は映画スターがタバコを吸うのを見て喫煙習慣にはまる、という研究もあり、1998年のタバコ訴訟以来創設された最大の禁煙運動団体American Legacy Foundationは、「喫煙シーンのある映画は自動的にR指定にすべきだ」と譲らない。
 オックスフォード英語辞書(OED)によると、glamorizeが初めて使われたのは、映画雑誌“Silver Screen”(銀幕)の1936年12月5日号。“They (film stars) are so glamorized…”(映画スターは美化されたものだ)とある。語源は名詞のglamourで元は魔法とか呪文を意味した。形容詞化して“She is glamorous.”(彼女はグラマーだ)というと「性的魅力にあふれた女体」を想像するが、本来は「華やかな魅力」を表し、そこには、大したことがないものを魔法の力で美しく見せかけるという含みがある。同義語にromanticizeがあり、romantic(ロマンチック)に見せるという意味。
 映画は、そもそも現実をromanticizeし、glamorizeするから面白いのだが、観客の中に、それを真に受ける人がいることが問題になるわけだ。だからといって、「カサブランカ」でボガードが、朝、歯ブラシをくわえて吐き気を催し、ゲーゲーと声を上げ、タバコのヤニで茶色に染まった歯を鏡で見詰めるようなシーンを挿入すれば、ぐっとヘビースモーカーの現実に近付くが、そんな映画は誰も観たくないだろう。The Sankei Shimbun(June 3 2007)