2011年3月29日火曜日

resilience


resilienceは「復元力」「回復力」と訳される。語源はラテン語のresilireで、英語では rebound(はね返る)だが、“the power or ability to return to the original form, position, etc.”(元の形や位置などに戻る力や能力)と定義される。これは心理学的な意味でも使われ「逆境に負けない力」を指す。カタカナ読みは「リジリアンス」。
東日本大震災に関する英語メディアの報道で、日本の回復力に対する評価と期待が大きい。
ウォールストリート・ジャーナル(3月12日付)は、“Sturdy Japan”(不屈の日本)のタイトルで、“No country was better prepared for an 8.9 quake.”( M8・9の地震にこれ以上の備えをしていた国はない)と述べた。M8・9は実際にはM9・0と修正されたが、日本は最善の備えをしていたと強調。地震速報システムをはじめ、“After its disastrous Kobe earthquake in 1995, Japan instituted a multitude of reforms.”(1995年の阪神・淡路大震災の後、日本は多くの改革を制度化した)と指摘する。その上で、この大震災の後も、“Japan remains a great industrial power.”(日本は偉大な工業国であることには変わりない)と、その復元力を評価した。
ブルームバーグ(3月13日付)は、“Tokyoites Reeling from Quake Show Resilience with Daily Routine”(地震でよろめいた東京人は、日常の仕事に復元力を示す)と報じた。“The city has experienced more than 100 aftershocks following the main quake.”(都市は大地震の後100回以上の余震を経験した)が、その中で、取材を受けた男性社員のひとりは、“With all that’s happening, maybe I should propose to my girlfriend.”(こんなことが起こって、たぶん僕はガールフレンドにプロポーズすべきだろう)と話した。彼は、人生の重大な決断を考えたようだ。
今後日本は復興事業に直面するが、豪州紙オーストラリアン(3月14日付)は、“Japanese Resilience Helps Mammoth Rebuilding Job”(日本の復元力が壮大な復興事業を助ける)と報道。その中で、“The Japanese people have set about the recovery operation with a resilience, technical expertise and a capacity for organization that have served them well for generations.”(日本の人々は〝不屈の力〟と専門的技術、何代にもわたって人々を支えてきた組織力で、復興の仕事に取り掛った)と述べている。
また、USA TODAY(3月14日付)は、“From Past Tragedies Comes Japan’s Legacy of Resilience”(過去の数々の悲劇から生まれた日本の〝不屈の力〟という遺産)と報じ、日本人は、前世紀に津波や地震、原爆の悲劇から学んだ、と指摘している。
これらの評価は、日本への励ましでもある。“Hang in there, Japan!” (がんばれ、日本!)

2011年3月16日水曜日

casino


 casinoはcassinoとも綴る。日本語では「カジノ」だが、英語の読み方は「カッシーノ」。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、語源はイタリア語のcasa(家)で、イタリアでは今でも「夏の別荘」を指す。元は、音楽を聴いたり、ダンスをする場所だったが、18世紀の終わりからgambling(賭博)もできるようになったという。
 アメリカでcasinoといえば、ラスベガス。ウォールストリート・ジャーナル(2月8日付)は、“Shares of Las Vegas hotel and casino operators are poised to get a boost as consumers return to Sin City.”(ラスベガスのホテルやカジノ経営の株式が、消費者が〝悪徳の町〟に戻ってくることで、上げに転じそうだ)と報じた。Sin Cityは、賭博をはじめ合法、非合法の様々な悪徳がはびこる町という意味で、ラスベガスはその代表というわけ。
 カジノ経営は景気動向に非常に敏感だ。“The industry's stock valuations fell precipitously during the worst of the recent recession as gamblers and tourists kept discretionary income off the gaming tables.”(最近の不況の最悪期には、ギャンブル客や旅行者が、自由に使える所得をゲームのテーブルから遠ざけたので、業界の株式の評価は急降下してしまった)。それが少し上向いて来たというのは、逆に景気回復の確かな足取りとも言える。
 米国では、州政府によってgamblingが合法化されている。カジノが最初に合法化されたのは、1931年のネバダ州。ラスベガスは、その中心地として急速に発展した。その後、犯罪組織との抗争を経て規制を強化。1960年代から、カジノは合法的な産業として投資対象になり、今に至っている。
 1976年には、ニュージャージー州がリゾートタウンのアトランティックシティに限って合法化。その後、各地に広がって行き、1990年代には、ルイジアナ、イリノイ州などでriverboat casino(川船のカジノ)も合法化された。一方、Native American、いわゆるインディアンのreservation(保留地)でもカジノは合法化され、インディアン部族の大きな収入源となっている。
 American Gaming Association(AGM)によると、2008年にカジノ産業の総収入は320億㌦を上回った。そこから、諸経費のほかに140億㌦の賃金や給付金、56億㌦の税金を支払ったという。
 もちろん、こうしたカジノの拡大、普及に対してanti-casino(反カジノ)運動も起こっている。犯罪を誘発し、道徳的にも好ましくないという主張である。だが、多くの場合、経済的利益の方が優先されるようだ。もっとも、儲かるのはcasino operatorであって、客が大儲けする確率は極めて低いことを明記しておきたい。ことわざに、”There is no better gambling than not to gamble.”(賭けないことにまさる賭けごとはなし)とあるが、カジノとはまさにそういう世界である。The Sankei Shimbun

2011年3月7日月曜日

recidivist


 recidivistのカタカナ読みは「リシディヴィスト」。オックスフォード英語大辞典(OED)の定義では、“one who habitually relapses into crime” (常習的に犯罪に陥る人)。つまり、「常習犯」だが、日本の法律用語では「累犯者」に相当。recidivismは「常習的犯行」「累犯」である。
 「常習犯」は日常会話ではhabitual offenderとか、chronic criminalという。recidivistは、「累犯」と同じで、正式の〝役所言葉〟である。たとえば、酔っ払い運転の常習者について、最近の地方紙に、“Woman jailed for ninth drink-drive conviction” (女は酒酔い運転の9回目の有罪判決で投獄)という記事が出た。その中で、“She was clearly a recidivist drink-driving offender.”(彼女は明らかに酒酔い運転違反の累犯者であった)と述べ、原因はchronic alcoholic(アルコール依存症)だったと指摘している。
 recidivistは社会にとって大きな問題だが、実は〝役所〟にとっては、さらに大きな問題となっている。とくにリーマンショック(2008年9月)以来の不況の中で、州政府には、刑務所の財政負担がのしかかりrecidivismへの対策を急いでいる。ニューヨーク・タイムズ(1月24日付)は、“States Help Ex-Inmates Find Jobs”(州政府が元受刑者の職探しを助ける)と報じた。
 たとえば、“Michigan spends $35,000 a year to keep someone in prison ― more than the cost of educating a University of Michigan student.”(ミシガン州が刑務所の囚人1人に年間で使う費用は3万5千ドルで、ミシガン大学の学生1人当たりより多い)という。1㌦=80円で換算しても年間280万円。その結果、州政府は年間約20億㌦(1600億円)の刑務所予算を計上してきた。そこで、この4年間は仮釈放の制度を弾力的に運用、職業あっせんを積極的に行い、囚人の数を7500人、全体の15%減らし、年間2億ドル以上の予算削減を果たしたという。“Michigan spends $56 million a year on various re-entry programs, including substance abuse treatment and job training.”(ミシガン州では、薬物乱用の治療や職業訓練を含めて、囚人のための様々な社会復帰のプログラムに年間5600万㌦を使っている)という。それでも、社会復帰して、真面目に勤めてもらえれば、財政負担軽減ともに一石二鳥で、“Smart Answers to Recidivism”(常習犯罪解決への賢い答え=2009年12月25日付けニューヨークタイムズの社説)の実現ということになる。
 もっとも、全体的に見れば前科者に対する世間の風当たりは厳しい。投票権や親権も否定され、公営住宅への入居や〝生活保護〟も受けられない。社会復帰は苦難の道である。それだけに、“They become more comfortable behind bars than in the outside world.”(監獄にいる方が娑婆よりも居心地がよい)という現実が依然横たわっている。The Sankei Shimbun