2011年11月5日土曜日

R-word


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 R-wordは「Rを頭文字とした単語」という意味。カタカナ読みは「アール・ワード」。Rで始まる「禁句」の婉曲表現で、このRは「遅らせる」「妨げる」という意味のretardという動詞を指す。医学の専門用語で知的発達障害をmental retardationと呼ぶが、知的発達障害のある人をretarded(知恵遅れ)と呼ぶことは、差別的とみなされるからだ。
 R-wordと似た禁句の婉曲表現に、fuck(セックスを意味する卑語)を指すF-wordやnigger(黒人を意味する差別表現)を指すN-wordがある。
 ウォールストリート・ジャーナル(2010年1月26日付)は、“Chief of Staff Draws Fire From Left as Obama Falters”(オバマ改革進まず、首席補佐官に左派の矛先)と報じた。オバマ大統領が選挙戦で公約した医療保険制度改革が頓挫したことに、民主党左派の連中は憤懣やる方ない。彼らは、同党内の保守派が大統領の足を引っ張っているとして、ホワイトハウスのエマニュエル首席補佐官に向かい、保守派を糾弾するテレビ広告を打つと息巻いた。その時、エマニュエル氏は逆上して、彼らを“F―ing retarded!”と怒鳴り上げたという。
 ここでF―はF-wordのことで、fuckingというのは「こん畜生」と罵る形容詞。〝品格〟を重んじるジャーナル紙は、その部分を伏せ字にしたが、舌禍事件としての意味合いを際立たせるためにR-wordはそのまま掲載した。案の定、障害者の団体から厳しい批判の声が上がった。
 それについて同紙は2月3日付で、“Emanuel Meets with Disabilities Groups, Apologizes Again”(エマニュエル氏は障害者団体と面会し、再び謝罪)と報じた。“He sincerely apologized for his mistake and the pain it caused in our community.”(彼は自分の犯した過ちと、われわれの団体=障害者団体にもたらした苦痛に対して真摯に謝罪した)という。さらに、“He pledged to join more than 54,000 other Americans in pledging to end the use of the R-word at www. r-word.org.”(Rワードを使わないようにすることを誓っている5万4000人のアメリカ人の運動=www. r-word.orgに参加すると誓った)。
 このwww. r-word.orgは、“Spread the Word to End the Word”(その言葉を使わない〝誓いの言葉〟を広げよう)という運動を展開。来る3月3日にはスペシャルオリンピックスなどと提携し、10万人の誓約に向けて全米に呼びかけるという。
 カリフォルニア州知事夫人マリア・シュライバーさんは、ロサンゼルス・タイムズ(2008年8月22日付)に“The R-word Is No Joke”(R-wordは冗談じゃない)とのコラムを寄稿。“Sticks and stones will break my bones but names will never hurt me.”(棒で殴ったり石をぶつけたら骨が砕けるが、呼び名は人を傷つけない)ということわざがあるが、冗談じゃない、“Words break people’s hearts.”(言葉は人々の心を砕く)と力説している。The Sankei Shimbun (February 22 2010)