2012年7月20日金曜日

surface mail


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 surface mailは「普通郵便」。カタカナ読みでは「サーフィス・メイル」。air mail(航空郵便)に対して地上や海上のような地表を運ぶので、surface(表面)の語を当てている。国際向けは、米国と国境を接するカナダとメキシコ以外は「船便」のことで、航空便より配達時間は大幅にかかるが、格安料金なのが魅力だ。
 ところが、米国からの従来の「船便」が2007年5月14日から突然廃止された。米国に住む外国人らは、小包を本国に送るために郵便局に行って、窓口で初めて「船便」がなくなったことを知らされ、困惑した。インターネットのブログやフォーラムには、“International Surface Mail Going Away”(国際普通郵便がなくなった)などの訴えが相次いだ。これまで、個人の引越荷物や大量の雑貨などを船便送りしていたのが、今後は航空便に頼る以外にない。自前の海上輸送手段を持たない個人輸入や中小の業者は、少なからず影響を受けることになった。
 U.S. Postal Service(米国郵政公社)は、この日からfirst-class stamp(一種郵便切手=定型の封書の料金)の値段を39㌣から41㌣(※)にするなど、全体で7.6%の料金値上げを実施した。この値上げは、2006年1月の前回値上げから1年半も経っていない。しかも、ロサンゼルス・タイムズ(5月14日付)の“What’s Behind the Postage Hike”(郵便料金値上げの背景にあるもの)によると、郵便事業は2006年に約9億ドルの利益を上げるなど4年連続の黒字で儲かっているという。
 だが、郵政公社は現在80万人近い職員を抱え、年金や健康給付金が年々増加しているうえに、原油価格の高騰で21万台以上ある郵便配達車両のガソリン代が大幅に増えたことなどを値上げの理由に掲げた。つまるところ、従来の「船便」は儲からないので〝合理化〟されたのだ。
 米国の郵便事業は、建国の父の1人であるベンジャミン・フランクリンが、1775年にフィラデルフィアで初代のPostmaster General(郵政長官)に就任してスタートした。その理念は、「すべての地域に郵便サービスを提供して国民の結合をはかる」というもの。1792年には、全米に郵便局と郵便道路網を建設するために郵政省が発足。国家を支える情報インフラとして重視され、ずっと大統領に直属してきた。1971年に現在の公社に移管されたが、事業は今も〝独占体制〟である。自由競争がモットーのなかで、郵便事業だけは別。上記の理念実現のため、独占は〝必要悪〟として容認されてきた。だから、料金値上げやサービス内容の変更も否応なしに行われる。
 さて、surfaceには動詞として「表面化する」という意味がある。今回の料金値上げでは、surface mailの廃止とともに、“The evils of monopoly have surfaced.”(独占事業の弊害が表面化した)と思える。(※2008年5月12日に42㌣に値上げ)The Sankei Shimbun(June 17 2007)