2013年11月24日日曜日

pay back「倍返し」は何て訳すの?



pay backは借金などを「返済する」ことだが、日本語で「借りを返す」というように、「仕返しする」(retaliate)意味でも使う。名詞形はpayback

ロサンゼルス・タイムズ(20131113日付)は、“Calderon says investigation is payback”(カルデロン氏は、捜査は仕返しだと述べる)と報じた。本文にはこうある。“State Sen. Ronald S. Calderon, who is being investigated by the FBI on suspicion that he accepted bribes, accused federal authorities Wednesday of trying to smear him for refusing to wear a wire in a sting operation against two other senators.”(カリフォルニア州上院議員のロナルド・カルデロン氏は、FBIに賄賂を受け取った容疑で捜査されているが、水曜日に、ほかの2人の上院議員に対しておとり捜査をするために盗聴器を身につけることを拒絶したとして、自分を中傷しようとしている、と捜査当局を非難した)sting operationはおとり捜査で、米国では正当な捜査手法と見なされている。カルデロン氏の主張が正しいとすれば、このpaybackはまさに「意趣返し」(revenge)であろう。

さて、今年の流行語にドラマ・半沢直樹で有名になった「倍返し」がある。これをどう訳すか?ネットを調べてみると、ウォールストリート・ジャーナル(2013年9月4日付)のブログで、筆者のAtsuko Fukaseさんは、“Fictional Japanese TV banker takes double the payback”と訳していた。ここでpaybackが登場する。これをもう一度日本語に直訳すると、「虚構の日本のテレビドラマの銀行員は、倍にして仕返しする」となる。“Hanzawa’s signature expression, ‘take double the payback’ is now showing up everywhere–in magazines, newspapers and conversations.”(半沢の決め台詞「倍返し」は今や雑誌、新聞、日常会話で、ありとあらゆるところに登場している)と述べている。pay back(動詞形を使って、pay back double (倍にして返す)ともいえる。

このpaybackをおなじみのrevenge(リベンジ)に替えてtake double the revengeでもいい。定冠詞のtheがあるのは、「あの借りを返す」の「あの」に当たる。前にとる動詞はtakehavegetなどで、共同通信社は、「やられたらやり返す。倍返しだ!」を、“An eye for an eye. I'm gonna get double revenge!”と訳していた。一般的な言い方として定冠詞は省略。もちろん、double revenge(倍返し)だけでもよい。

ところで、“an eye for an eye” は文字通りでは「目には目を」で、“An eye for an eye, and a tooth for a tooth”(目には目を、歯には歯を)と続き、旧約聖書の出エジプト記にあることわざだが、古くはメソポタミア文明で栄えたバビロニアのハムラビ法典に起源をもつ“lex talio”(ラテン語で、同害報復)の原則を指す。Retaliate(報復する)の語源はこのtalio

だが、なぜこんな法律が生まれたのか?実はそれ以前の未開の時代は、倍返し以上が普通だった。やられたら怒りにまかせて滅茶苦茶にやっつける世界であったが、それでは秩序が保たれないからだ。しかし、偉大なキリストは、「やられたらやりかえす」でもダメだとおっしゃったのである。新約聖書のマタイ伝にこうある。

You have heard that it was said, “An eye for an eye and a tooth for a tooth.” But I say to you, do not resist an evildoer. If anyone strikes you on the right cheek, turn to him the other also.(あなたは、目には目を、歯には歯をといわれるのを聞いた。しかし、私はあなたに言おう。悪人を拒んではならない。誰かがあなたの右の頬を打ったならば、もう一方の頬も向けなさい)

仏教にいう。恨みに対するに恨みをもってしたならば、永久に恨みの絶えることはない。恨みに対して、恨みを捨てよ、と。いずれも、忍耐と強い精神力を要求する教えである。それに比べれば、「倍返し」は先祖帰りともいえる激情の発露であろう。

さて、ネットを調べていたら以下の表現に行き当たった。
You will see!   今に見てろ!
Keep your guard up! ガードを上げておけよ
You’ll pay for this! ただじゃおかないぞ!
Watch your back! 背中に気ぃつけぇやぁ
最後の決め台詞。

“I will pay you back double!”(倍返しだ!)

2013年11月15日金曜日

pseudo 「なんちゃって〜」はどう訳すの?


なんちゃってラーメン、実はケーキ
pseudoはカタカナ読みでは「スードウ」。「にせの」「〜まがいの」を意味する形容詞。pseudonym(仮の名前)はペンネーム。pseudoscience(えせ科学)はすなわち、科学に似ているが偽の仮説に基づいたホラ。

ところで、流行語となった「なんちゃって〜」は、「〜まがいの」という意味でならば、pseudo-がぴったり。例えば、最近、若い女性に流行している簡単にロングヘアーをボブに変える「なんちゃってボブ」は、英語でずばりpsuedo-bob。また、ネットにはびこる「なんちゃって右翼」はpseudo-rightsでよい。

World socialist Web Site(2013年11月13日付)は、“New Zealand pseudo-lefts promote new Labour leader”(ニュージーランドのなんちゃって左翼が新たな労働党の党首を支援)と報じた。“New Zealand’s middle-class pseudo-left groups—Fightback, Socialist Aotearoa (SA) —have all rallied behind the new opposition Labour Party leader David Cunliffe.”(ニュージーランドの中産階級のなんちゃって左翼グループ「反撃、社会主義者アオテアロア」は、新たな野党労働党のDavid Cunliffe党首を背後で支援してきた)

さて、同じ「なんちゃって〜」でも自ら望む場合は、wannabe(〜気取り、なりたがり屋)を使う。カタカナ読みは「ワナビー」で、元の形はwant to be(なりたい)。例えば、Madonna wannabes(マドンナのようになりたい人)は「なんちゃってマドンナ」であろう。

Digitalspy(2013年11月11日付)によると、“George Clooney reignites Russell Crowe feud: He's a Sinatra wannabe”(ジョージ・クルーニーがラッセル・クロウとの確執を再燃させる:やつはなんちゃってシナトラだ)。

Speaking about how Crowe attempted to bury the hatchet, Clooney told Esquire: “The truth is that he did send me a book of poems to apologise for insulting the s**t out of me, which he did.

"And that's when he really went off on me. Who the f**k does this guy think he is? He's a Frank Sinatra wannabe. He really went after me."

さて、以上はどういう意味か?bury the hatch(手斧)は日本語でいう「矛をおさめる」、つまり「仲直りをする」。the s**t out of は、伏せ字はshit(くそ)で、文字通りの意味は「私からくそを絞り出す」、つまり「徹底的に」。
クロウが仲直りを試みたことについて、クルーニーはEsquire誌にこう話した。「本当いうと、やつは徹底的におれを侮辱したことで、詩集を送ってわびを入れて来たんだ」
「やつが突然起こりだした時さ。やつはいったい何様だと思っているのかね?やつこそなんちゃってフランク・シナトラだよ。やつはおれのまねばかりしているのさ」

このいきさつについては以下をお読み下さい。

During his recent interview with the folks at Esquire magazine, the Monuments Men star discussed the book of poetry he once received from the Gladiator star as an apology. Apparently Crowe felt bad about some of the things he said in the past.

According to Female First, Russell Crowe had a problem with George Clooney using his celebrity to sell everything from booze to suits. When Clooney compared his ad work to Crowe’s band 30 Odd Foot of Grunt, the Man of Steel star lost his cool.

“I had a good laugh when Clooney tried to compare doing ads for suits, a car, and a drink to what I do as a musician. An endorsement is about money My music is from the heart. I believe if you take on characters for a living you can’t make yourself into an icon in order to sell a pair of shoes,” Crowe said.

To apologize for calling George Clooney a “sellout” and “Frank Sinatra wannabe,” the Australian actor sent the Intolerable Cruelty star a present.

“The truth is that [Russell Crowe] did send me a book of poems to apologize for insulting the s*** out of me, which he did,” Clooney told the publication.




2013年11月10日日曜日

smug ドヤ顔って英語で何ていうの?


smug はずばり、「ドヤ」(どうや)という自己満足を表す形容詞。メリアム・ウェブスター辞書によると、“having or showing the annoying quality of people who feel very pleased or satisfied with their abilities, achievements, etc.”(自分の能力や業績などに大変喜ぶか、満足している人々の嫌な面を持っていたり、見せつけている)と定義している。つまりexcessively self-satisfied(ひとりよがり、自己満足し過ぎ)。

SuperSport (2013年10月13日付) は、“Keshi smug after win”(ケーシー勝って得意満面)と報じた。サッカー・アフリカのチャンピオンズ・リーグでナイジェリアがエチオピアを破った試合、“Nigeria coach Stephen Keshi is happy with their result.”(ナイジェリアのスティーブン・ケーシー監督は結果に満足している)。“The team was forced to come from a goal down to win the fixture 2-1 courtesy of late goals.”(試合は、チームが1点先行されたが、後半の2点ゴールで2−1で勝利した)“I’m happy we got a good result from here.”(ここでよい結果を残せて満足だよ)と監督。

こういう感じがsmugのニュアンス。しかし、語源は16世紀にさかのぼり、trim(きちんとした)・neat(かっこいい)・spruce(めかした)・smart(スマートな)など外見の良さを強調したが、18世紀から「ひとりよがりの自己満足」を皮肉る言葉となった。

ところで、日本のテレビで流行語になった「ドヤ顔」は文字通りsmug faceでよい。こういう表現は世界共通、とくにセレブや政治家の得意顔を皮肉る言葉になっている。なかでも、オバマ米大統領のsmug faceは人気があるようだ。英国インディペンダント(2012年11月2日付)は、“The Barack Obama smug face: What do you really think about the US elections?”と題して、読者クイズを出している。2012年の米中間選挙の結果を受けたオバマ氏の顔を、A) smug(満足そう) B) exhausted(憔悴している) C) stoned(酔っぱらっている) D) dejected(意気消沈している) E) wise(賢そう) F) none of the above (上記のいずれでもない)からチョイス。

評価: A) と答えた人は、“You are a Republican voter sensing defeat on the horizon. You hate poor people.”(あなたは、民主党の負けを見越して共和党に投票する。貧乏人を嫌っている) 注:この選挙で下院は民主党が大敗し、上下院がねじれた。 B) You are an over-empathizing wishy-washy liberal. You had muesli for breakfast.(あなたは、民主党に肩入れし過ぎの優柔不断のリベラル。朝食にはミューズリーのシリアルを食べたな) C) You are stoned.(あなたが酔っぱらっている) D) You've had a really bad week, and suspect the weekend will be even worse.(この一週間本当によくなかったので、週末もなお悪いと感じてるな)....