2012年7月11日水曜日

math phobia 数学が好きになるには・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


mathはmathematics(数学)の略称で、phobiaはacrophobia(高所恐怖症)、claustrophobia(閉所恐怖症)などの「恐怖症」。math phobiaは「数学恐怖症」だが、phobiaには「忌み嫌う」の意味もあるので、「数学嫌い」。カタカナ読みは「マス・フォビア」。
さて、数学嫌いは世界共通の現象で、その結果は成績に如実に反映される。2005年の全米統一学力テスト(NAEP)の12年生(日本の高校3年生に相当)の数学の結果は、advanced (優)、proficient(良)、basic(可)、below basic(不可)の4段階評価で、「可」以上の成績は61%で、そのうち「良」以上は23%。39%が「不可」だった。また、男子の平均点が女子を上回った。米国でも女性の方に数学嫌いが多いようだ。
全米数学教員評議会(NCTM)は1989年に、“reform mathematics”(改良数学)を打ち出した。数学が〝得意〟な一部の児童・生徒だけでなく、すべての子供たちに分かりやすく、さらに高度な知識を身につけることができる、というのが謳い文句。数学嫌いの子供は、addition(足し算)、subtraction(引き算)、multiplication(掛け算)、division(割り算)の四則計算(four rules of arithmetic)から苦手で、とくにmultiplication table(日本の九九に相当)が身についていないのが特徴だ。reform mathでは、計算機が普及している時代に初等計算でつまずくのはunproductive(非生産的)なことだとして、計算機の積極的な使用を奨励。そして、負担が軽くなった分、小学校からalgebra(代数)などを、中学校の初めからcalculus(微積分)などを教えることにした。多くの人がこの考えに賛同し、学校も相次いでreform mathを採用したのだ。
ところが、reform mathはなかなか狙い通りの成果を上げられなかった。かえって、初等計算さえできない子供が続出。そこで、“traditional mathematics”(伝統的数学)を学んだ親や、それを重視する教師らは、reform mathに反対するようになった。「簡単な計算もできないで、何が高等数学だ」という苦情が相次ぎ、ついに各地でreform mathかtraditional mathかという“Math Wars”(数学戦争)に発展。2006年にNCTMは、基礎的な算数の指導を強化することで、これまでの路線を若干軌道修正した。
reform mathの信奉者は、九九をはじめ憶えさせることの多いtraditional mathをparrot math(オウム返しの数学)などと批判する。確かに数学はrote memorization(丸暗記)の学科ではないが、それは憶えなくてよい、ということではない。計算の手順(algorism)はちゃんと憶えないと理解が進まない。math phobiaをいかにして克服するか? 結局のところ、処方箋は“The more math you do, the less scary it becomes.”(数学はやればやるほど、怖くなくなる)という以外にない。The sankei Shimbun (August 12 2007)「グローバル・English」はこちらへ

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