2009年3月18日水曜日

Panda-hugger

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 panda-huggerは、パンダをhug(抱擁)する人という意味。カタカナ読みは「パンダ・ハガー」。パンダは中国を代表する人気動物で、世界中の子供たちが抱きしめたくなるほどだが、この単語のニュアンスは少し違う。2000年以降、米中関係の記事に頻繁に登場するようになった言葉で、「親中国派」を指す。
 保守系新聞ワシントン・タイムズの安全保障担当記者ビル・ガーツ氏によると、「panda-huggerは、ペンタゴン(国防総省)内の中国専門家のなかでsoft-liner(柔軟路線派)を揶揄する言葉」(2000年11月)として使われ始めたという。panda-huggerは「中国を軍事的脅威と見なさない」のが特徴。むしろ、経済発展が著しい中国を格好のマーケットと位置付け、金儲けの相手として仲良くしようと考えるという。
 クリントン政権は中国に対して融和政策をとり、米経済界の要望を受けて、WTO(世界貿易機関)への中国の加盟を強力に推進した。その意味では、クリントン大統領はpanda-huggerに違いない。
 ブッシュ政権下でも、ロバート・ゼーリック米通商代表が、中国加盟の最後の仕上げをした後、2005年からは国務副長官に就任して、対中外交を取り仕切ってきた。翌年1月には中国四川省の成都を訪れ、実際にパンダの子を抱いてのツーショットにご満悦だった。ニクソン大統領が1972年に中国共産党との国交を回復して以来、中国は米国にパンダを贈与、ワシントン・アトランタ・サンディエゴなどの動物園で飼育されて政治的協調のシンボルとなってきただけに、ワシントン・ポスト(2006年1月26日付)はゼーリック氏の訪中を“Panda Diplomacy”と報じ、同氏が中国との関係改善に乗り出したと論評した。ゼーリック氏は2006年7月に副長官を辞任。その後、世界銀行総裁に就任している。
 ところが、中国は経済関係を除くと、軍事面でも政治面でもことごとに米国と対立している。とくにイランの核開発問題や北朝鮮の弾道ミサイル発射問題で、ロシアとともに米国に反対し、かつての「冷戦」の様相を再現している。そこで、panda-huggerに替わって台頭するのは、dragon-slayer。中国を危険なドラゴン(龍)と見なし、それをslay(退治)する人で、「対中強硬派」を指す。共和党やペンタゴン内の保守派が1つの勢力をなしている。彼らは、中国をあくまで共産党の一党独裁体制ととらえ、自由主義社会の敵と考えている。経済的発展を謳歌する現実に対しても、一方で急速な軍備拡張を指摘して不信感を隠さない。いったん事があれば、〝改革開放〟路線など吹っ飛んでしまい、米中戦争も起りかねないと主張する。dragon-slayerの見方は極端であろうが、目先の利益につられて中国の言いなりになり、パンダを抱きしめて喜ぶというのも、思慮が足りないと言えよう。The Sankei Shimbun(September 10 2006)


アメリカ総領事館で2009年3月18日、東アジア安全保障フォーラムがあった。ゲスト講師はハワイのイースト・ウエスト・センターのシニア・フェロー、Denny Roy氏。テーマは「中国の外交・安全保障政策」であった。Roy氏は、中国は経済発展によって国力が増大し、大国として存在感を強めているが、バランス感覚の取れた外交政策をとることで、大きな軍事的脅威とはならないだろう、との楽観的な見方を示した。
 Roy氏に対する印象を一言でいえば、panda-hugger。つまり、パンダをhug(抱擁)する人という意味。パンダは中国を代表する人気動物で世界中の子供たちが抱きしめたくなるほどだが、この単語のニュアンスは少し違う。2000年以降、米中関係の記事に頻繁に登場するようになった言葉で、「親中国派」を指す。ワシントンタイムズの安全保障担当記者のビル・ガーツ氏によると、「panda-huggerは、ペンタゴン(国防総省)内の中国専門家のなかでsoft-liner(柔軟路線派)を揶揄する言葉」(2000年11月)として使われ始めたという。panda-huggerは「中国を軍事的脅威と見なさない」のが特徴である。