2015年11月11日水曜日

bush の俗語の意味に注意しよう


bush は草むらとか茂み。the を付ければ、the bush で未開の奥地を意味する。
だが、俗語ではアメリカの前大統領 George Bush。彼のお父さんも George Bush で第41代大統領。いずれも、湾岸戦争、イラク戦争をやったので、評判が悪い。Urban Dictionary によると、Bush は “A disgrace to America”(アメリカの恥)とか “warmonger”(戦争屋)とか “Someone who chokes on a pretzel”(プレッツェルを喉に詰まらせた野郎=アメフトの試合をテレビで見ていて)とか揶揄される。

もう一つの意味は、ズバリ “Pubic hair”(陰毛)あるいは性器そのもの。

ハフィントンポスト(11月5日)は “‘Taste The Bush' Ad Is So Suggestive It Was Banned”(「ブッシュを味わう」とのコマーシャルは、あまりに暗示的で禁止された)と報じた。

A sexy slogan prompted a regulatory agency in the U.K. to ban an Australian wine company's ad, as the agency suggested the phrase "you can almost taste the bush" was a reference to something much naughtier than wine.

このスローガンは、オーストラリアのワインの宣伝だが、英国では禁止された。というのは、「あなたは、ほとんどブッシュを味わえる」という言葉は、ワインよりもっといやらしいものを示唆しているからだという。

The video from Premier Estates features a woman touting the company's wine, then placing a half-full glass of wine at a low table in front of her crotch area just before she says the words "Some say you can almost taste the bush.”

ビデオでは、ワインを勧める女性が、半分ワインが入ったグラスを彼女の前のテーブルに置くと、ちょうど彼女の股のところに来る。そして彼女はこう呟く。「あなたは、ほとんどブッシュを味わえる」

She then hesitates for a moment before she awkwardly looks down, picks up the glass and walks away.

彼女は一瞬ためらった後、下を見て、グラスを持って、立ち去る。

A ruling issued yesterday by U.K.'s Advertising Standards Authority concluded most viewers would understand the "taste the bush" phrase to be a "to be a reference to oral sex, particularly given that it was accompanied with the image of the wine glass positioned directly in front of the woman's crotch.”

これは訳さなくても分かるよね。


2015年11月2日月曜日

humbled 「恐縮です」と大統領候補のベン・カーソン氏



「恐縮する」というのは「恐れて身がすくむ」ことだが、一般的に「恐縮しています」「恐縮です」と言えば「ありがとう」の言い換えである。こういう表現が英語にあるのか、というと、学校英語では「ない」と教える。理由は「欧米人は恐縮することはない」などと説明する。そして、和英辞書では「恐縮する」の訳語として “I am sorry to trouble you…”(邪魔してゴメンなさい)などしている。あるいは、意訳して “I am much obliged to a person.”(原義は「大変な負債をつくってしまった」=感謝に堪えない)とする。

だが、これは真っ赤なウソ。欧米人でもちゃんと「恐縮する」ことがある。
米大統領選挙の共和党の候補者である、ジョンズホプキンズ大学の脳神経外科医だったベン・カーソン氏は、10月の1ヶ月間で1000万ドル(約12億円)の献金を集め、11月1日のツイッターで、以下のように語った。

In the month of October, we raised $10 million and today we'll receive our 800,000th donation. I am humbled by your support. Thank you.

(10月に、われわれは1000万ドル募りました。そして、今日80万件目の寄付をいただきました。あなた方の支持を受けて恐縮です。ありがとう)

I am humbled by ~こそ「恐縮している」という表現である。humbleは通常形容詞として使い、not proud or arrogant; modest(誇らない、偉ぶらない、謙虚)という意味。だが、ここでは他動詞(卑下させる、謙虚にさせる)としての古い用法。「アメリカ人は自分が悪いことをしても、決して謝らない。謙虚な人間はいない。だから、そんな表現はない」などと、今でも教える英語教師がいるが、それは偏見である。政治家に「謙譲の美徳」を求めるのは間違いだとしても、表現上はちゃんとあるのです。

カーソン氏はこの人柄で、誰が見ても傲慢不遜なトランプ氏を支持率で圧倒して、今のところ共和党の大統領候補の首位に立った。




2015年10月10日土曜日

「一億総活躍社会」ーEngagement of All Citizens


安倍首相が打ち出した「一億総活躍社会」の構想。文字通りは、一億人の国民すべてが活躍する社会、という意味だが、問題は国の政策として「活躍」が何を指しているのか、である。

官邸の英語版ホームページには、「一億総活躍相」を“Minister in Charge of Promoting Dynamic Engagement of All Citizens”と翻訳していた。ここでも、Dynamic Engagement が何を意味するのか、engagement の動詞形は engage だが、一体何に engage するというのか?

政策としての engagement ですぐに思いつくのは、米国の外交政策の engagement policy。「関与政策」と訳されるが、この engagement は、a synonym for a wider range of more specific practices of contact between an international actor and a foreign public, including public diplomacy, communication and the deployment of international aid.(国際的に活動する主体と外国の大衆との間の接触において、より広い範疇に及ぶ、より特別な行為と同義で、大衆外交、コミュニケーション、国際援助の実施を含む)という。これは、冷戦時の敵対政策に代わるものとなった。

では、Engagement of All Citizens(すべての市民の関与)とすると、関与の対象は何であるのか?安倍首相は経済優先を今後の施政方針の中心に据えて、GDP(国内総生産)600兆円を打ち出したので、この目標に向かって engage(関与する)ということになりそうだ。つまり、GDPを現在の464兆円から600兆円に押し上るため、全国民が総出で働くというのが、「一億総活躍社会」の中身というわけであろう。

これに対して、野党側からは「戦前の国家総動員法のようだ」との批判が聞かれた。国家総動員法は1938年(昭和13年)に、戦争における勝利は国力の全てを軍需へ注ぎ込み、国家が「総力戦体制」をとることが必須であるという認識から生まれた。英語では National Mobilization Law と訳される。実は、この National Mobilization の方が「一億総活躍」にぴったりの翻訳だと感じる。

TPP 発効後、経済戦争に勝ち抜くために、老いも若きも、男も女も、果ては子供まで mobilize(動員する)され engage(関与する)させられる。しかもDynamicに。合言葉は「挙国一致」(National Unity)、「尽忠報国」(Loyalty and Patriotism)、「堅忍持久」(Dogged Patience)、「滅私奉公」(Selfless Devotion) だ!


2015年10月1日木曜日

Free the Nipple ー女性解放運動もここまで来た


free は「自由な」であるが、ここでは動詞で「自由にする」または「開放する」。the nipple は「乳首」。Free the Nipple は「乳首を開放する」というわけで、女性がおっぱいを見せてくれるのだが、男性を誘惑するためではなく、れっきとした the equality movement focused upon the double standards regarding the censorship of female breasts.(女性の乳房への検閲に関する二重基準に焦点を絞った男女平等運動)である。つまり、男はトップレスで歩いても何も言われないのに、女は警察に捕まったり、写真の場合でも検閲にひっかかるのは不平等だ、というわけ。

この運動は、もとは 米女優で活動家のLina Esco が、Free the Nipple(2013)という映画を製作したことで始まった。この運動は、女性がいつでもどこでも胸をはだけよう、というのではなく、アメリカ社会の文化と法律の偽善的なあり方を糾弾するためのものだ、という。

アメリカでは、New York, Hawaii, Maine, Ohio, Texas では、公共の場では男女ともトップレスになることを禁じられているが、ほとんどの州では、公然とまたは暗黙のうちに、女性が乳首を露出することは、act of indecent exposure(猥褻な行為)であり、a criminal offense(犯罪)と見なされるのである。

The Daily Mail Online に、“Naomi Campbell, 45, bares her breasts in daring 'free the nipple shoot'... before Instagram bosses DELETE it over nudity clause”と出ていた。

Naomi Campbell といえば、スーパーモデルとして有名だが、すでに45歳。私生活ではアル中、ヤク中で、最近では暴行事件で逮捕されるなど話題に事欠かない。一方で、活動家としての顔もあり、Instagram に乳房を露わにして「乳首を解放する」大胆な写真をアップロードしたが、Instagram の管理者はヌード条項に従ってそれを削除したのでした。もっとも、削除前の写真はネットに出回っているので、関心のある人は探して下さい。


Read more: http://www.dailymail.co.uk/tvshowbiz/article-3237226/Naomi-Campbell-45-bares-breasts-free-nipple-shoot.html#ixzz3nIlcuQOM 

2015年9月24日木曜日

“Happy Birthday to You” にcopyrightなし




誕生日のたびに歌われる歴史上最も有名な “Happy Birthday” song。この元歌は“Good Morning To All.” この歌に copyright(著作権、版権)を主張してきた Warner/Chappell に対し、米ロサンゼルスの連邦地裁は、版権所有に基づく課金の権利を退ける判決を下した。

ロサンゼルス・タイムス(9月22日付)は “All the 'Happy Birthday' song copyright claims are invalid, federal judge rules”(すべてのハッピー・バースデー・ソングの版権請求は無効、連邦裁判事裁定)と報じた。


The story began in 1893, with a Kentucky schoolteacher and her older sister. Patty Smith Hill and Mildred J. Hill wrote the song for Patty’s kindergarten students, titling it “Good Morning To All.” The original lyrics Patty wrote were: “Good morning to you / Good morning to you / Good morning, dear children / Good morning to all.”(この話は1893年、ケンタッキーの学校教師とその姉から始まった。パティ・スミス・ヒルとミルドレッド・J・ヒルが、パティの幼稚園の生徒のために、“Good Morning To All”という題で歌を書いたのだ。パティが書いた歌詞は、“Good morning to you / Good morning to you / Good morning, dear children / Good morning to all.”

The sisters published the song in a book called “Song Stories for the Kindergarten,” and assigned the copyright to their publisher, Clayton F. Summy Co., in exchange for a cut of the sales.(姉妹は『幼稚園のための歌の話』という本の中で歌を出版し、版権を売上の一部との交換で、Clayton F. Summy Co. に委ねた)

ところが、Warner/Chappell が 1988年に Clayton F. Summy Co. の後継者の Birch Tree Group を買収し、この歌の権利も手に入れたとして訴訟に及んだというわけ。

Warner and the plaintiffs both agreed that the melody of the familiar song, first written as "Good Morning To All," had entered the public domain decades ago. But Warner claimed it still owned the rights to the "Happy Birthday" lyrics.(ワーナーと原告の双方は、最初に "Good Morning To All” として書かれた、なじみ深い歌のメロディーは、すでに何十年もまえに公有に属していると認めている。しかし、ワーナーは『ハッピー・バースデー』の歌詞の権利は所有している、と主張した)

だが、この歌詞を書いたのは、あの姉妹なのか誰なのかは、わからない、という。


これが現代の著作権ビジネスの深層である。

2015年9月17日木曜日

It is what it is. - 流行する「仕方がない」


“It is what it is.”は、簡単に言えば、フランス語の決まり文句の “C'est la vie.”に相当する。「それが人生というもんだ」(That is life.) が原義で、「それが現実だ」(That’s just the way things are, like it or not.)とか「仕方がない」(There is nothing that can be done about it.)とか、大体そんな意味で使われる文句と同じである。

Urban Dictionary にはこう出ている。

A) A phrase that seems to simply state the obvious but actually implies helplessness.(単に明らかな事実を述べてるようで、実際は無力さを意味している)

B) A phrase that seems to simply state the obvious but actually means "it will be what it is," as in "it ain't gonna change, so deal with it or don’t.”(単に明らかな事実を述べているようで、実際には「こうなってしまう」、つまり「何かしてもしなくても、そいつは変えられない」と言っている) 

J: I can't believe the price of gas!(ガソリンの値段、信じられない!)

B: It is what it is.(仕方ないさ)

米国人は一般的に、optimistic(楽天的)で、困難に立ち向かっていくガッツを尊ぶ。「仕方がない」などとは滅多に口にしない。表現そのものは昔からあるが、米国人がこんなあきらめの言葉を口にするようになったのは、21世紀になってから、おそらく2001年の9/11同時多発テロ以降ではないか、と思う。

最近、随所で “It is what it is.”を見聞するようになったのは、American dream を聞かなくなったのと比例するようだ。1%の人間が富の半分を独占し、われわれ99%は貧乏人との認識が高まるにつれて、pesimistic(悲観的)な人が増えたのか、あるいは、もうどうでもいいや、という無気力が支配し始めたのか?
ところで、2007年にバグダッドに駐留した米軍の司令官の一人は、兵士らの間に“It is what it is.”が蔓延しているのに気付いたという。たとえば、“The Iraqi Army unit you’re partnering with can’t show up to an operation on time, but it is what it is.”(パートナーのイラク軍の連中は、作戦行動に間に合うように来やがらねえが、まあ仕方ねえか)など、投げやりな言い方ばかりで、これでは軍隊の規律は保てない、と感じたそうだ。“Why “It Is What It Is” is a Stupid Phrase”(「仕方がない」とはバカ言うんじゃねえ)と怒り心頭に発している。


2015年9月10日木曜日

refugee, migrant, immigrantー 違いがわかる?


refugeeは「レフュージー」で、読み方は「ジー」にアクセントを置く。ヨーロッパで問題になっているのが、内戦で国が崩壊しているシリアからの refugee。日本語では「難民」と訳すが、元の語は refuge。shelter or protection from danger, trouble, etc.(危険や困難などからの避難や保護)で、それを求めて逃げて来た人が refugee である。つまり、助けを求めている人のこと。

ロイター通信(9月6日付)は、ローマ教皇フランシスコがバチカンから難民問題で全ヨーロッパの教区に呼びかけた、と報じた。その内容はこうだ。

“I appeal to the parishes, the religious communities, the monasteries and sanctuaries of all Europe to ... take in one family of refugees.”(全ヨーロッパの教区、宗教コミュニティ、修道院、教会に、…各々が難民の一家族を受け入れることを訴えます)

では、いくつぐらい教区があるのか?
“There are more than 25,000 parishes in Italy alone, and more than 12,000 in Germany.”(イタリアだけで2万5000以上の教区があり、ドイツは1万2000以上)だから、決して少ないものではない。

ところで、欧州の難民問題のニュースでよく目にするのが、migrant crisis。migrant は「マイグラント」(移民、または移民の)で、元型は migrate(マイグレイトと読む)という動詞。本来の意味は、go from one country, region, or place to another(一つの国、地域、場所から他に移る)。注意したいのは、migrant には政治的な意味は一切含まれていない、ということ。つまり、物理的に移動する人を指す。

よく似た語に、immigrant (イミグラントと読む)がある。これもやはり日本語では「移民」と訳されるが、頭に im(元の形はin)が付くと、「入り込む」という意味になり、定住という目的が加わる。すると、急に政治性を帯びてくるのだ。immigration law の手続きが絡んで、legal(適法)か illegal(違法)かとなり、各国で「移民排斥問題」が起こる。


だが、その根底にある nationality(国籍)は、the status of belonging to a particular nation(ある国に帰属するステータス)で、その国に生まれることによって vested interests(既得権益)となるが、絶対的なものではない。この世界は誰の持ち物でもないのだ。globalization が進む中で、refugees を legal immigrants として暖かく迎える気持ちは、すべての国の国民に求められている。

2015年9月7日月曜日

「ドン引き」ー日本語と英語の発想の違い?


「ドン引き」は、放送業界の用語でカメラをズームアウトすることを指した。そこから、ネタがウケずに観客が引いた状態を示すようになる。つまり、しらけること。ドンを省略して「引くよねえ」(しらけるよねえ)などと言う。
では、ドン引きの英訳は zoom out でよいか、となると、これは文字通り画像を縮小する意味。

ドン引きを「しらける」とすると、どんな表現があるか?ここで注意しなければならないのは、日本語の「ドン引きする」、あるいは「しらける」は自動詞だが、英語の場合は他動詞となり、「ドン引きさせる」「しらけさせる」と考える。

ドンピシャが俗語表現の turn off。本来は電気などを消すことから転じて、しらけさせる、うんざりさせる、となる。“Her attitude turned me off.”(彼女の態度にドン引きしちゃった)ただし、この表現は、セックスのことを言う場合が多く、「彼女の態度で萎えた」という意味になるので要注意。

その逆はもちろんturn on で、“He turns me on.”(彼ってメッチャいけてる)

一般的に「しらけさせる」とする場合、turn の代わりに put を使って、“Her actions put us off.”(彼女の行動に私たちはドン引きした)などとできる。


ところで、「彼女はドン引き」と名詞形では、“She is a turn-off.” もう少し凝った言い方では、“She is a wet blanket.”(濡れた毛布)もある。彼女に濡れた毛布を被せられることを想像して…。

2015年9月4日金曜日

pledge ー Trumpから目が離せない


pledge は「誓約」「誓い」などと訳される。米国のメディアは9月3日、“Donald Trump signs pledge not to run as independent”(Donald Trump、第三党からの出馬はないと誓約に署名)と報じた。その誓約の内容は以下である。

“I ______ affirm that if I do not win the 2016 Republican nomination for President of the United States I will endorse the Republican nominee regardless of who it is. I further pledge that I will not seek to run as an independent or write-in candidate nor will I seek or accept the nomination for president of any other party.”

「私___は、もし2016年の共和党の米国大統領の指名を獲得しなかったとしても、共和党の指名を受けた人、それが誰であれ、支持することに同意します。さらに、第三政党、または無所属、他の政党の指名を受けることはないことを誓います」

この誓約は、共和党がトランプ氏に強制したもの。支持率のトップにあるトランプ氏が、共和党の指名から外れて無所属で出馬すれば、共和党の指名候補に大きな打撃になり、結果的に民主党に勝ちを譲ることになるとの懸念の声が広がっているからだ。

ところで、誓いを表す英単語は pledge のほかにも vow、oath、swear がある。この違いが、日本人には理解しにくいのは、誓うという行為が欧米では、キリスト教の神に誓う、神と契約するという考え方に基づくからだ。

⚫️oath(名詞)とswear(動詞)は神に向かって声に出して誓うことを意味する、いわゆる「宣誓」である。swear は make the oath。「オリンピックの選手の宣誓」は the Olympic oath。「選手宣誓」は the athlete’s oath。何を誓うかと言えば、to play clean and fair(正々堂々とプレーすること)である。

⚫️vow は名詞、動詞どちらでも使う。この言葉も神との約束であるが、ある行為、行動に自分のすべてを捧げることを誓うというもの。「結婚の誓い」は、marriage vows、wedding vowsという。


⚫️pledge は、聖書においては名詞として使われ、通例では、ある行為を保証するために差し出すcollateral(担保)のことを指した。トランプ氏は、第三党から出馬しない、という保証の意味で誓約書の署名したのである。

2015年9月3日木曜日

~-oriented ー この便利な言葉!


orient は「オリエント」。the Orient といえば東洋やアジア、とくに極東を指す。語源は中世仏語で、the east(東)あるいは sunrise(日の出)を意味する。元のラテン語の orīrī は rise で、太陽が昇るイメージを想像してほしい。その方向を東と名付けて起点にすると、残りの西、南、北とすべての方向が決まる。

そこで、orient を動詞として使うと、「方向付ける」という意味になる。“The lectures are designed to orient the new students.”(それらの講義は新入生向けである)など。最近の流行は、~-oriented(~指向の、優先の)という使い方。

⚫️ results-oriented(結果優先主義の):例えば、安倍首相の口癖、「政治は結果がすべてだ」というのを英訳すると、“The politics are totally results-oriented.” これは、judge something on the basis of the results instead of the actual action(実際の行為ではなく結果に基づいて判断する)ということ。ところが、民主主義のプロセスの本質は the actual action を重視することにある。結果がすべてだ、という考え方からは、“The end justifies the means.”(目的のために手段を選ばない)という権謀術数主義に陥りかねない。

⚫️ money-oriented(カネ儲け優先):「今の世の中は自分中心、カネカネカネの世の中だ」というのを英訳すると、“This is a self-centered, money-oriented society.” あとは言わずもがなでしょう。

⚫️ female-oriented、women-oriented(女性優先の):台頭する「女性が輝く社会」もその一つでしょうか。

⚫️ consumer-oriented(消費者優先の)

このほかにも、いろいろな名詞を前にくっつければ、~優先の、という形容詞が作れる。

ところで、orientからの派生語にorientate(動詞、orientと同じ)そして orientation(適応、順応、指向性)がある。


米国でよく問題になるのが sexual orientation (性的指向)。“What is your sexual orientation?”(あなたの性的指向は?)という質問に対して、“I am straight.”(heterosexual=異性を好む)、“I am gay or lesbian.”(homosexual=同性愛)、“I am bisexual.”(両性愛、つまり「二刀流です」)などと回答することができる。

2015年9月2日水曜日

bot ー こいつに騙される!?


bot の語源は、robot(ロボット)の bot(ボット)。ただし、ロボットのように body(体)を持たない、a device or piece of software that can execute commands, reply to messages, or perform routine tasks, as online searches(ネットのサーチのように、コマンドを実行したり、メッセージに応答したり、また機械的なタスクを行うデバイス、またはソフトウエアの一種)。

さらに、MUD(Multi-User Dungeon Game) やIRC(Internet Relay Chat)に現れる実在しない agentを指す。

GIZMOND(8月31日)の記事、“Ashley Madison Code Shows More Women, and More Bots”(Ashley Madisonのソースコードを調べると、もっと多くの女性会員ともっと多くのボットがいることがわかった)によると…

After searching through the Ashley Madison database and private email last week, I reported that there might be roughly 12,000 real women active on Ashley Madison.(先週、Ashley Madisonのデータベースと個人メールを調べて、この不倫サイトで活動している生身の女性は大体1万2000人くらいと報じた)

Now, after looking at the company’s source code, it’s clear that I arrived at that low number based in part on a misunderstanding of the evidence.(今、この会社のソースコードを調べた結果、この低い数字は、部分的には証拠の誤解に基づくことが判明した) 

Equally clear is new evidence that Ashley Madison created more than 70,000 female bots to send male users millions of fake messages, hoping to create the illusion of a vast playland of available women.(同時に、Ashley Madisonは7万以上の架空女性のボットを作って、男性ユーザーに何百万という偽メッセージを送りつけ、現実の女性と遊べる巨大な遊園地の幻想を抱かせた、という新たな証拠も明らかになった)

そのfemale bot が送ったメッセージにはこんなのがある。
Hmmmm, when I was younger I used to sleep with my friend’s boyfriends. I guess old habits die hard although I could never sleep with their husbands.(うふん、もっと若いころは、友達のボーイフレンドとよく寝たわ。彼女らの旦那とはやれなかったけれど、昔の習慣て止まないようね)

I’m sexy, discreet, and always up for kinky chat. Would also meet up in person if we get to know each other and think there might be a good connection. Does this sound intriguing?(セクシーで慎重、そしてエッチな会話はいつもOKよ。お互い知り合って、いい関係になれそうなら、個人的に会えるかしら?これって興味ありそう?)


botに騙されるよね!

2015年8月29日土曜日

「キレる」をどう英訳する?



「キレる」は怒りの感情が、我慢の限界を超えて一気に爆発する状況を示す言葉で、angry(怒っている)という形容詞を使って、get angry at ~, with ~, または for ~(~に、~のためにキレる)でよい。angry の代わりに mad(狂った)を使えば、get mad at ~で「非常に怒っている」感じが出るでしょう。

「まじギレ」は、まじで(本当に)キレる(怒る)だから、She was really angry.(彼女はまじギレした)

英語的に最もニュアンスが近いのが、これ。怒りの爆発に重点を置いて、blow one’s top(蒸気が鍋のフタを飛ばす感じ)、さらにgo nuts(ぶちキレる感じ)。

「キレる」は俗に「プッツンする」などというので、この「キレる」瞬間のニュアンスを強調したい場合は、動詞の snap(パチッとかポキッと音を表す語)を使う。本来はsnap a stick(棒をポキッと折る)か、snap at the offer(申し出にパッと飛びつく)のように使うが、たとえば「堪忍袋の尾が切れた」は、My patient finally snapped. と訳せる。また、She snapped back angrily at him.(彼女はプッツンして彼に言い返した)となる。

「キレやすい」は get angry easily である。これが、get angry occasionally(頻繁にキレる)となると、これは精神的な病気とみなされる。


難問は「逆ギレ」。これはダウンタウンの松本人志の造語だが、彼の主張は「最近特に耳にする、よくみんな使っている逆ギレ。本来なら怒られ(キレられ)なあかんのに、逆にそれを防ぐがために、逆にこっちから怒るのが逆ギレや」(日経より)。これは「逆恨み」(unjust resentment)と同じニュアンスの言葉で、unjust anger(筋違いの怒り)。「本来なら怒られなあかん人が、逆に怒る」と考えると、He gets angry unjustly at someone who should be angry at him. となろうか。そこで、snapを使ってみると、He snaps back angrily at someone who should be angry at him. というのは、どうでしょうか? 

2015年8月25日火曜日

White nationalism ー Trump人気を支える本音



White nationalismは「白人国家主義」または「白人至上主義」(white supremacy)と訳される。意味は、白人が最も優れているという偏見に基づく人種差別主義。

The New Yorker (August 31, 2015)にEvan Osnos氏の“The Fearful and the Frustrated”(怖いし嫌なこと)の中で、米国でWhite Nationalismへの共感が共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏を押し上げる大きな勢力を形成している、と論じた。

トランプ氏は候補に名乗りを上げた6月16日、2000マイルの長城をメキシコ国境に築き、「問題多い人々の流入を食い止める」と豪語した。
“They’re bringing drugs. They’re bringing crime. They’re rapists. And some, I assume, are good people.”(やつらはヤクを持ち込み、犯罪を持ち込み、強姦者だ。もちろん、何人かはいいやつさ)

この言い分は、何の根拠もなく、いまだにトランプ氏は根拠を示していないが、野球帽をかぶったレーガン(大統領)気取りのパフォーマンスが、白人至上主義者に大いにウケたのだ。

On June 28th, twelve days after Trump’s announcement, the Daily Stormer, America’s most popular neo-Nazi news site, endorsed him for President: “Trump is willing to say what most Americans think: it’s time to deport these people.”(トランプ氏の宣言から12日後の6月28日、アメリカのネオナチのHP、Daily Stormerは「トランプはほとんどのアメリカ人が考えていることを言おうとしている。こいつらを追放するときが来た)
さらに、The Daily Stormer urged white men to “vote for the first time in our lives for the one man who actually represents our interests.”(同紙は白人に、やっとわれわれの利益を代表する男に、生まれてはじめて投票することを促した)

その後、トランプ氏はイラン問題に触れて、イスラエルへの支持を表明し、jew-lover(ユダヤ人好き。ユダヤ人は白人ではない)と批判されたが、白人至上主義者たちにとっては “white racial consciousness”(白人の民族意識)を高揚させる候補者となった。




2015年8月19日水曜日

「浮気の代償」をどう英訳する?


「浮気」は、和英辞書では「不貞」と解して unfaithfulness、また「不倫」として adultery である。そして、「代償」は compensation。「浮気の代償」を the compensation of unfaithfulness or adultery とすれば、その代償は、浮気相手あるいは配偶者への慰謝料を意味してしまう。これでは、「浮気の代償」から外れてしまう。

unfaithful であるというのは「浮気」の属性の一つに過ぎない。adultery(姦通)はいかにも古臭い言い方。浮気や不倫の具体的な事実は、an affair(「情事」と和訳される)、あるいは an extramarital affair(婚外交渉)。「浮気をする」は having an affair、またズバリ loving。

ところで、一般的に「浮気の代償は大きい」などという場合には、「浮気をした結果、支払わねばならなかったすべての費用」という意味になるから、この場合の「代償」は cost または price。

そこで「浮気の代償」は、正式な表現では the price of an extramarital affair で、ざっくりと「浮気の大きな代償」という場合には、the high cost of having an affair であろう。

さて、“Life is short. Have an affair”(「人生は一度。不倫をしよう」=日本語版)の標語で一躍有名になった不倫サイト、Ashley Madison のサイトがハッカーに攻撃され、個人情報が盗まれた。

その事件について、HUFFPOSTは8月19日、“EXPERTS: Ashley Madison Hack Data Is Real”(Ashley Madison のハッキングされたデータは本物:専門家)と報じた。

The website reportedly has as many as 37 million users, and gigabytes of names, addresses, credit card numbers and emails allegedly tied to the site were leaked onto the so-called "dark web" late Tuesday night.(このサイトは三千七百万人のユーザーがあり、それに関連する氏名、住所、クレジットカード番号、メールなど何ギガものデータが、いわゆる「ダーク・ウエブ」に漏洩された)
Ashley Madison's records could damage the reputations of politicians and public figures, not to mention ordinary people. (Ashley Madisonの記録は、一般人は言うに及ばず政治家や著名人の評判に打撃を与えるだろう)

"There could be genuine casualties as a result" of the leak, Graham Cluley, an independent security analyst, wrote in a blog post on Tuesday. "I mean suicide.”(この漏洩の結果、本当の被害が出るだろうと、セキュリティー・アナリストの Graham Cluley は火曜日のブログで書いた。「つまり、自殺だ」)


日本でも多数の利用者がいるそうで、これから「浮気の代償」が支払われることになりそうだ。

2015年8月18日火曜日

social bankruptcyー他人事ではない!


social bankruptcyは「ソウシャル・バンクラプシー」。「社会的破産」などと訳してはいけない。socialは実はsocial mediaの略。Wordspyによると、この言葉は、The condition of being so overwhelmed by social media that the only solution is to close all one's accounts(ソーシャル・メディアに圧倒されて、すべてのアカウントを閉める以外に解決策がない。といった状況)と定義している。すなわち、「SNS破産」。

どういうことか?今や複数のSNSのアカウントを持つのが当たり前の世の中で、Facebook、Google+、Twitter、Instagram、LINEなどコミュニティーごとに使い分けるのが常識になってきた。ところが、accounts が増え、friends も増え続けていくと、最初は得意になるが、段々返事を書くのが苦しくなり、やがてすべてのfriendsとコミュニケーションを維持することが出来なくなる。そして、最後に、“Help! I’m trapped in social media and I feel like I can’t get out!”(助けて、ソーシャル・メディアにハマって抜けられない)となってaccounts を閉鎖する状態が、social bankruptcyというわけ。

だが、すべてのaccountsを閉めた後はどうなるのか?やっと解放され、素晴らしい自由の天地が開けるのか?否、恐ろしい孤独がやってくるのだ。


During the event, a film called “Social Bankruptcy” showcased what life would be like without social media, and how it affects individuals. Social media is everywhere, and it’s unavoidable, having become a communication tool for the majority of society.(その辺の経緯が映画『Social Bankruptcy』で語られる:ソーシャル・メディアのない生活がどんなものか。それはどれだけ個々人に影響しているか。ソーシャル・メディアはどこにでもあり、社会の大多数のコムニケーションの方法となり、もはや避けられない)―Melissa Chandler, “Social networking vs. handwritten letters to remain connected,” The Commuter, March 9, 2015

2015年8月10日月曜日

erraticートランプにはイラつく!


erraticは「イラティック」。deviating from the usual or proper course in conduct or opinion(行動や意見が普通や常識から外れている)からで「常軌を逸した」とか「突飛な」と訳される。人物やその行動を批判する言葉で「イラつく」といったニュアンスがある。なぜイラつくのか?こちらの思い通りにならないからだ。

全米で今一番常軌を逸して、保守派共和党をイラつかせているのが、来年の大統領選挙で共和党の一番人気、不動産王のドナルド・トランプ氏。

ワシントンポスト(2015年8月8日)は、“GOP leaders say erratic attacks hurt Trump, but he vows to fight and win” (常軌を逸した攻撃がトランプに仇になる、と共和党の幹部はいうが、トランプ氏はあくまで戦い抜くと誓う)と報じた。

Trump’s erratic performance during and after the first Republican presidential debate last week sparked a backlash throughout the party Saturday and a reassessment of his front-running bid.(先週の第1回共和党の大統領候補討論会でのトランプの常軌を逸した行動は、土曜日に党内で反発を招き、先頭を走るトランプを候補から外せとの議論が出ている)という。

The final straw for many was Trump’s comment on CNN late Friday that Fox moderator Megyn Kelly had “blood coming out of her eyes, blood coming out of her wherever.(トランプの多くの常軌を逸した行動の最後の一つが金曜日の夜のCNNのコメントで、討論会で司会をしたフォックスTVの人気女性キャスターのMegyn Kellyは『目から血が出ているし、どこからでも血が出ている』というもの)


Megyn Kellyは、討論会でトランプ氏のこれまでの女性蔑視発言を追及したが、トランプ氏は“blood coming out of her eyes”は「目が血走っている」と皮肉ったあと、“blood coming out of her wherever”は「あそこも血走っている」と含みをもたせて「メンスで機嫌が悪い」といったわけ。だが、これは明らかに言い過ぎで、〝返り血〟を浴びることになったのである。

2015年8月9日日曜日

freeganー食べ物を捨てるのはもったいない!


freegan は「フリーガン」、オックスフォード英語辞書(OED)の新語500の一つにこのほど選出された言葉で、Someone who eats thrown away food as they hate waste(もったいないから捨てられた食べ物を食べる人)と定義している。

WikipediaのFreeganism(フリーガニズム)の項には、“Freegans get free food by pulling it out of the trash (bins), a practice commonly nicknamed "dumpster diving" in North America”(フリーガンは、北アメリカでは〝ゴミあさり〟と一般的に呼ばれる行為によって、ゴミ箱からただの食べ物を拾う)という。dumpster divingのdumpsterは、アメリカでよく見る大型のゴミ箱でdivingは、頭から突っ込むこと。一般的にゴミあさりはgarbage picking。この一文で、freeganのfreeはfree foodと分かる。では、gan の語源は?vegan(極端な菜食主義者)のganである、という。

Freeganismは1990年代の半ばから登場した思想運動で、大量消費社会に対する抵抗と環境保護に基づき、食べ物の大量生産と大量廃棄に対するアンチテーゼである。

では、世界でどれぐらいの食物が廃棄されているか?国連のFood Loss and Food Wasteによると、“One-third of food produced for human consumption is lost or wasted globally, which amounts to about 1.3 billion tons per year.”(地球上で人間が消費するために生産される食物の三分の一が失われるか廃棄される。その量は年間13億トンに上る)

世界を見渡せば多くの人々が飢えに苦しむ一方で、こんな馬鹿気やことが行われているのだ。食料廃棄の中心は先進諸国で、6割りを輸入食品に頼る日本でも年間約1800万トンの食料は無駄に捨てられいる(農林水産省推計)。これは一人当りでは年間約15キロである。こんなことをしていて、本当によいのか?というのが、Freeganismの主張である。


欧米諸国では、公共の道路に捨てられたものは、公共のものとなり誰が拾ってもよいところが多く、貧富の格差が広がる中でfreeganの活動家も増えている、という。日本ではゴミ箱に捨てられた食物を拾って食べるのは、抵抗が強いが、食べ物を捨てないという工夫はもっと出来る筈である。

2015年8月6日木曜日

hard on とhard offー俗語の意味は?



hardは「堅い」という意味の形容詞だが、堅くなるのは男のアソコも同じで、俗語では「勃起した」。“You make me so hard.”(君が僕をそんなに堅くさせる=君を見てると立っちゃって) 状態持続を示すonが付くと、hard on(勃起している)。“I looked at her. She was staring at my hard on.” (僕は彼女を見た。彼女は僕の勃起を見つめた)というのは、恋人同士なら自然な成り行きであるが、“I don't get an instant hard on by seeing her naked on the bed.” (彼女がベッドに裸でいるのを見ても、僕はすぐには立たなかった)となると、これがhard off。

つまり、hard offは hard on の逆の状態で、日本語でいうと「ふにゃちん」。offは「離れる」「それる」といった意味の副詞としても使う。turn offは、栓を回して「止める」だが「しらけさせる」という意味でも使う。“I love my wife, but her weight has turned me off sexually.”(妻を愛しているが、彼女の体重がね、セックスをしらけさせるんだ)こういうのを、boner killerという(注:bonerはbone=骨から来た語で勃起したペニス。killerは殺し屋)

では、「エッチの最中にフニャチンになる」は英語で何というか? ズバリ Going soft during sex。softは「やわらかい」という形容詞だが、日本語でいう「ソフトな」よりも悪い意味で使われることが多い。つまり、「セックスの最中にやわらかくなる」は弱りもの。あなたがお悩みの場合、主語はYouでもyour penisでもどちらでもよい。“I can get hard and then while having sex my penis will go soft.” (最初は堅いんですが、やってる最中に中折れするんです)と言いましょう。


これは、ED(勃起不全)。Erectile Dysfunction is the inability of a man to have an erection hard enough to have sexual intercourse.(勃起不全は、男性が性行為のために十分な勃起を得られないことをいう)その原因は、心理的なものが大半を占めているという。男性の理想(あるいは女性の理想)は、rock hard erection(精力絶倫)。The harder the erection, the healthier the man.(ビンビンで、オトコは健康)と、健康食品の宣伝に書いてあったなあ…

2015年8月4日火曜日

elder orphan ー 一人暮らしの果てに



elder(エルダー)はolderと同じで「年上の」「年配の」、orphan(オーファン)は「孤児」。elder orphanは「年配の孤児」である。

Word Spyによると、“An elderly person who has no family or whose family cannot or will not provide care”(家族や面倒を見てくれる家族がいない老人)。日本でいう、「一人暮らしの老人」「独居老人」であるが、それよりも捨てられたというニュアンスが強く、「孤老」とでもいうべきかもしれない。

CNN(2015年5月18日)は、“The 'elder orphans' of the Baby Boom generation”(ベビーブーマー世代の独居老人)で、“Although the problem of elder orphans has been known for a while, new research suggests just how bad it is. About 22% of Americans 65 years and older are in danger of becoming, or already are, in this situation.”(独居老人の問題はこのところ問題になっているが、新たな調査では、状況は深刻だ。65歳以上のアメリカ人の22%は、独居老人になる危険があるか、もしくはその状態である)という。

その最大の要因は、“Silver Tsunami”(シルバー・ツナミ)、すなわち「一挙に押し寄せる高齢化の波」である。若いころに結婚もせず、子供をつくらなければ、気楽な一人暮らしで、家族を世話する面倒はないが、自分が年を取っても、世話をしてくれる人はなく、最後はelder orphanとして人生を終わることになる…。


だが、そんなことを今さら言っても仕方がない。You only live once(YOLO=どうせ人生は一度きり)、Elder Orphans Club でも作って楽しくやろうよ!

2015年7月25日土曜日

It was a setup! ー「そいつはヤラセだ!」


日本語の「やらせ」の原型は動詞の「やらせる」。これを英語でいうと、強いてやらせるときはmakeを使って、make someone do something。自由にやらせるときはletを使って、Let him try.(あいつにやらせてみたら)などとなる。

だが、TVの番組が「やらせ」という場合は、「仕組まれた」という意味だから、makeやletは使えない。むしろ、「仕組む」という意味合いのset upから派生した名詞のsetup(セッタップ)がドンピシャ。見出語のIt was a setupは、「それは仕組まれたものだ」の意味で、不定冠詞のaが付くのがミソ。

一方、「やらせの」と形容詞的な表現はどうなるか?ここでsetupを使うのは違和感があり、この場合はstaged(ステイジド)がよく使われる。つまり、「(舞台のために)仕組まれた」というニュアンス。「やらせの交通事故による詐欺」は、fraud over staged car crashesである。

ところで、set upは、むろん普通に「何かをセットする」「組み立てる」などの意味でも使う便利なイディオム。“I’m setting up Windows 10 for my PC on July 29.” (7月29日にウインドウズ10をパソコンにセット・アップします。注:アップグレード版はタダですから)

俗語としてのset upは、上記の「やらせ」の結果として「はめる」「はめられた」となる。例えば、“You set me up!”といえば「オレをはめたな」となる。反対に“You were set up.”といえば「お前はハメられたのさ」である。いずれも過去の表現であるのが注意点。


EUが財政緊縮策を求めて来たギリシャで、欧州委員会と欧州中央銀行、そしてIMFとの債務交渉が再開されたが、その直前に突如辞任したバルファキス前財務相は、なぜギリシャがこんなことになったのかについて、こう言い放った。“We were set up.”(われわれはハメられたのさ)。

2015年7月21日火曜日

Bozo explosionーバカの連鎖



bozo(ボゥゾゥ)は「バカ」で、explosion(エクスプロゥジョン)「爆発」。会社で社長以下、正規社員のヒラに至るまで(注:非正規社員を除くのは、経営に責任を負わないから)、バカと腰抜けばかりになって、忠告する人もなければ、忠告を聞く人もなく、ヘボ会社になっていく…ということ。つまり、「バカの連鎖反応」である。

この言葉は、1990年ごろからシリコン・バレーで、バラ色の将来を背負ったstartup(操業開始の会社)が、バカなCEOを雇ったばかりに、取り巻きの役員もバカを雇い、その下の社員もバカ、という負の連鎖を起こすことを言った。

PalmのCEOだったEd Colliganは言う、“Avoid the bozo explosion”(バカの爆発は避けよ) “If you hire one clueless manager, you’re dead; that person will hire more bozos, and they’ll hire more.”(もし無能な支配人を雇えば、それで終りだ。そいつはきっとバカをよりたくさん雇い、さらにそいつらはもっと多く雇うから)

だが、ことはシリコンバレーにとどまらないようだ。日本を代表する東芝の体たらくは、まさにbozo explosionだ。第三者委員会が20日発表した不適切会計に関する調査報告は、2008年度から14年度まで、歴代社長が不正な利益操作に関与したことが明らかにしたが、前々社長が前社長を選び、前社長が今の社長を選んだわけであるから、結局、バカの連鎖が避けられなかった、ということだろう。


では、How to prevent bozo explosion? (バカの爆発を防ぐにはどうすればよいのか)。Guy Kawasaki, the chief evangelist of Canva, an online graphic design tool の答えは “Insist that managers hire better than themselves. This principle starts at the level of the board of directors when hiring the CEO.”(支配人は自分より優れた者を雇うことを主張せよ。この原則は、CEOを雇う役員会のレベルから始めること)

2015年1月14日水曜日

face detectionで、テロリストは捕まるか?


face は顔。detectionは、detective(探偵)と同じ語源で、detect(探し出す、検出する)の名詞形。face detectionは「顔を探し出すこと」、「顔の検出」。カメラが顔の位置を特定し、その部分を四角く囲ってデジタルイメージにスキャンするコンピューター技術のことだ。

実は、1月7日にパリで発生した仏紙シャルリー・エブド襲撃テロ事件以降、フランス国内をはじめ欧州各国の空港や国境、街角のsurveillance camera(監視カメラ)で、テロリスト追跡のためこの技術がフル稼働している。

この技術は、facial recognition system(顔認証システム)の一部で、データーベースにある容疑者の画像と照合し、一致すれば、「それ、犯人逮捕に出動せよ」ということになる。

顔は、指紋や目の虹彩と同じように一人ひとり皆違い、個人を特定するのに最も便利な身体の部分だ。顔を隠して歩く人は民主主義の国では少なく、我々の顔も知らないうちに監視カメラで捉えられている。

おまけに、FacebookなどSNS(social network service)では顔をcoming out(公開)するのが今や当たり前、smartphoneselfie(自分撮り)してアップするなど、捜査当局にしてみれば、顔を追跡しない手はない、というわけだろう。

2001年1月にスーパーボウルが行われた米国フロリダ州のタンパで、捜査当局は街角に36台の監視カメラを設置し、Faceitというアプリを使って犯罪者を捜査する実験を行い、超満員のスタジアムで19人の犯罪容疑者を特定できたという。

それから14年経った今、世界中の空港、公共施設、ショッピングセンター、さらには地下鉄、エレベーターの中やトイレの出入り口まで、カメラが目を光らしており、face detectionが作動し、我々の顔はスキャンされていると考えてよい。

もちろん、こうした映像を恣意的に使用することはプライバシーの侵害になり法的に問題であるが、現実には顔を隠して外出しない限り、プライバシーを防衛するすべはないのだ。
今回テロ事件が起こったフランスでは、2010年にサルコジ大統領が「フランスでは(全身をすっぽり覆う)ブルカを受け入れない」と主張し、イスラムの女性が公共の場でスカーフで顔を覆い隠すことを禁止した。当時、仏マスコミは「ブルカは女性抑圧の象徴だ」などと賛同の声を上げたが、よく考えてみると、その禁止は信仰と表現の自由という根本的な権利の侵害である。それでも法律は可決、施行された。ここに来て、公共の場にはかならず監視カメラがあることを考えれば、テロ対策だった、と納得がいく。

もっとも、今回のテロ事件で一人残った女性容疑者は、face detectionのフル稼働以前に国外へ逃走、その後シリア入りしたとされるのだが・・・。