2011年2月8日火曜日

humane slaughter


 humaneは、英和辞書では「慈悲深い」「思いやりのある」などと訳される形容詞。一方、slaughterは「殺戮」「虐殺」で、humane slaughterは文字通りだと「慈悲深い虐殺」。このままでは何のことだか分からない。実は、ここで殺されるのは食肉用の動物。牛や豚をなるべく苦しませずに屠殺することをhumane slaughterという。カタカナ読みは「ヒューメイン・スローター」。
 米国には1958年以来、Humane Slaughter Actという法律がある。それによると、“Animals should be stunned into unconsciousness prior to their slaughter to ensure a quick, relatively painless death.”(動物は、迅速かつ比較的苦しまずに死なせるため、屠殺の前に気絶させるべきである)。つまり、humaneの中身は、殺す前に電気ショックなどでunconsciousness(意識のない状態)にする点である。ところが、この法律は食用の鳥類には適応されておらず、トリがかわいそうだ、という声が絶えなかったそうだ。
 ニューヨーク・タイムズ(2010年10月21日付)は、“New Way to Help Chickens Cross to Other Side”(ニワトリを彼岸に渡す手助けをする新たな方法)と題する記事で、“Two premium chicken producers are preparing to switch to a system of killing their birds that they consider more humane.”(高級チキンの生産企業2社が、より思いやりがあると考えられるトリの殺し方に転換する準備を進めている)として、今年4月から実施すると報じた。その方法とは、こうだ。“The new system uses carbon dioxide gas to gently render the birds unconscious before they are hung by their feet to have their throats slit.”(新システムは、脚を持って逆さにぶら下げて喉をかき切る前に、二酸化炭素ガスを使って優しくトリの意識を失わせる)。トリは、吊るされるときに嫌がって大暴れするので、その苦痛を事前に除去するという。ここでも、humaneの中身はunconsciousnessだ。
 ところで、humaneとよく似た単語にhuman(ヒューマン)がある。いずれも、語源はラテン語のhumanusで、「人間の」という意味。human being(人間)などというように、humanは「人間の」「人間らしい」という形容詞で、よい意味だけでなく悪い意味でも使われる。一方、よい意味である人間的な「優しさ」「親切さ」を強調する場合はhumaneを使う。反対語はinhumanで「非人間的」である。
 さて、新方式で殺された鶏肉が販売されるときには、ラベルにそれと表示されることになるという。その候補には“humanely slaughtered”(慈悲深く殺された)、“humanely processed”(慈悲深く処理された)などの言葉が挙がっている。だが、ガス施設への投資額は大きいだけに値段は高くなるという。そこで質問。従来方式かhumanely slaughtered か、あなたはどちらを選びますか?The Sankei Shimbun