2013年5月3日金曜日

about-face こういう英語が大切なんだ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 about-face は、19世紀半ばに生まれた軍隊用語で、a turn of 180° from the position of attention(気を付けの位置から180度回ること)。すなわち「回れ右」。この場合のaboutは「~について」ではなく、in the opposite direction(反対の方向)を指し、faceは「顔」ではなく「顔を向ける」こと。about-faceは、実際の動作だけでなく、「突然の方向転換」の意味で使われる。
 ユーロ崩壊の危機に揺れる欧州で注目を集めたのが、“Greek about-face”(ギリシャの“回れ右”)。財政危機にあるギリシャのパパンドレウ前首相は、欧州各国から要求された緊縮政策について国民投票を行なうと発表。その後、金融市場は大荒れとなり、突如方針を転換して投票を断念。緊縮政策の受け入れと連立政権の成立とを引き換えに、本人は辞任した。カナダのモントリオール・ガゼット(2011年11月8日付)は、“Papandreou's about-face raises hopes for European crisis”(パパンドレウの方向転換は欧州危機に対して希望をわかせる)と報じ、市場はほっと一息ついた。
 さて、「アラブの春」の民主化運動が高まる中東で注目を集めるのが、トルコのabout-face。米クリスチャン・サイエンス・モニター(2011年11月3日付)は、“Turkey's bold about-face on Syria”(シリアに対するトルコの大胆な方向転換)と題する論文で、“Turkey’s bold backing of regime change in Syria – until recently a close friend – has caught many by surprise.” (トルコが、最近まで緊密な友人だったシリアでの政権交代を大胆に支持することは、多くの人々にとって思いも寄らぬことだった)と述べた。トルコはこれまでアサド政権と良好な関係を続けて来たが、今年1月にシリアで反政府デモが起こり、騒乱が東トルコの国境に及ぶに至って方向転換。アサド政権のデモ弾圧を非人道的な蛮行と非難し、反政府デモを支持するようになった。シリアの国際的な孤立は深まっており、国内は〝内戦状態〟の様相を呈し始めた。国際政治・経済のabout-faceは時に大事に発展するから要注意である。