2011年11月27日日曜日

painkiller


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

painは「痛み」で、killerは「殺し屋」「殺すもの」。painkillerは「痛みを殺すもの」という意味で「痛み止め」「鎮痛剤」。カタカナ読みは「ペインキラー」。
“The King of Pop”(ポップの王様)と呼ばれたマイケル・ジャクソンさんが2009年6月25日、自宅で急死した。米メディアは、“Michael Jackson was heavily addicted to the powerful painkiller Oxycontin and received daily doses of it.”(強力な鎮痛剤オキシコンチンの重症中毒で、毎日服用していた=6月26日付のABCニュース)などと報じ、死亡原因に関連して、鎮痛剤の中毒による健康問題があったことを指摘した。
AP通信(2009年6月28日付)は、“Thread of Pain Ran Through Jackson’s Career”(ジャクソンさんの生涯は痛みの連続)と報じた。1984年、コマーシャルの撮影中に事故で頭部を火傷した際の痛み。その2年後、白斑ができる皮膚病を発症してから、度重なる整形手術による痛み。さらに、厳しいダンスの訓練にともなう筋肉痛。“Physical agony was the unshakable problem with being Michael Jackson.”(肉体的苦痛は、マイケル・ジャクソンであるために、逃れられない問題だった)という。ジャクソンさんはpainkillersを常用するようになり、その結果、様々な副作用に悩まされて、入退院を繰り返していたという。
(注:マイケル・ジャクソンの死亡事故に関して、ロサンゼルス郡地裁の陪審団は2011年11月7日、過失致死罪に問われていた元専属医のコンラッド・マーレー被告(58)に対し、有罪評決を下した。死因は、複数のpainkillerの使用である)
ところで、オキシコンチンは、アヘンの成分を化学合成したオキシコドン(oxycodone)という麻薬系鎮痛剤の商品名。米国では1995年に処方箋薬として認可された。ガンなどの耐え難い痛みを緩和する効果が大きく、2001年には年間売上高が10億㌦を超えるベストセラーとなった。だが、医療目的以外の乱用が表面化。中毒、過剰服用、挙句の果てに死亡事故が起こり、2003年には薬の宣伝内容が違法として、連邦議会で取り上げられた。
米国では、オキシコンチンをはじめprescription painkillers(処方箋鎮痛剤)の医療目的外での使用者は年々増加。2006年には520万人と推定され、とくに10代の若者にまでpainkiller addiction(鎮痛剤中毒)が広がっている(2008年1月4日のABCニュース)。子どもたちは、医師が処方した親の薬を盗んで使うことから始め、友達と薬のやりとりをしたり、インターネットでの売買にはまるという。つまり、〝合法的麻薬〟として流通し始めているのだ。
“These drugs both prevent pain and stimulate the pleasure center in the brain.”(これらの薬は痛みを妨ぐとともに、脳内の快楽中枢を刺激する)からで、強力で、よく効く鎮痛剤は、それだけ中毒性が強い。中毒に陥り、乱用の果てにあるのは、麻薬と同じく健康被害、人間関係の破綻、そして副作用による死である。“Painkillers can kill you.”(痛み止めは、君の息の根を止めることができる)というのは笑い事ではない。The Sankei Shimbun (July 13 2009)


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