2011年11月23日水曜日

cell yell


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

cellはcellphoneで「ケータイ」。yellは 「叫ぶ」「大声を出す」。cell yellは、excessively loud cell phone conversation(大声のケータイ通話)で、カタカナ読みは「セル・イェル」。
米国で7月は“National Cellphone Courtesy Month”(ケータイ・マナー月間)。これはケータイの普及にともない2002年に始まった運動で、その課題の中心が耳障りな着信音とcell yell。“Many cellphone users have a tendency to speak into their phones more loudly than necessary.”(多くのケータイ使用者は必要以上に大きな声で話す傾向がある)。電車の中などで、聞きたくもない他人の会話を強制的に聞かされるのがイヤだというcell-yell hater(セル・イェル嫌い)は多い。
2006年2月にABCニュースが実施した“Rudeness in America”(アメリカにおける無礼)という調査では、“making annoying cellphone calls”(迷惑なケータイ通話)に関して、87%の人が時々、57%の人がよく出遭うと回答している。
ケータイの会話はなぜ大声になるのか?小さなケータイのマイクに、ちゃんと声が届いているか心配な上に、周囲の騒音が気になるからだ。
だが、それだけではない。ニューヨーク・タイムズ(2001年11月22日付)の“Cell Yell: Thanks for (Not) sharing”(セル・イェル:共にする(しない)ことの有難さ)での分析はこうだ。
公衆電話が登場した1950年代には、通話のプライバシーを守るために電話ボックスが置かれた。もし、当時ケータイが発明されていたら、人はやはりプライバシーを気にしてボックスからケータイを掛けたであろう。ところが今日、社会はオープンになり、“Many relish the idea of speaking in open spaces, oblivious to the presence of others, and often in too loud a voice.”(多くの人が、公開の場で他人の存在を気に留めず、しばしば大声で話すことを好む)。cell yellはその結果というわけ。
ところで、cell-yell haterの感情を逆なでするのが、いかにも楽しそうに大声でケータイ通話する連中だ。こうした意図的な行動をstage-phoning(スティジ・フォーニング)という。2001年に英国の学者が指摘した現象で、一種の虚栄心から劇場の舞台に立って電話するように、“The caller is effectively performing for innocent bystanders.”(電話の掛け手は、何も知らない傍観者に見せつけるように振舞う)というタチの悪いタイプ。
では、cell yellに直面したら、アメリカ人はどうするか?“No need to shout. Be aware of how loudly you’re speaking.”(叫ばなくてもいい。どれだけ大声で話しているか気を付けなさい)と注意する?それとも、“Don’t cell yell!”(大声で通話するな)、または“Turn it off!”(ケータイを切れ)と怒鳴る?実は、多くの人は見て見ぬふりをして、“Fuck yourself!”(こん畜生)と心の中で罵るのだとか。The Sankei Shimbun (July 27 2009)