2012年6月10日日曜日

umami


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 umamiの語源は「うま味」「旨味」。日本語から英語に転用された言葉の1つ。米国の辞書ではsavory(風味のよい)とかmeaty(肉の風味の)とも英訳されることがあるが、ここでいうumamiは、アミノ酸の複合体の味覚。とくにa taste that is characteristic of monosodium glutamate(MSG=グルタミン酸ナトリウムに特徴的な味覚)と説明される。
 ウォールストリート・ジャーナル(2007年12月8日付)は、umamiを“A New Taste Sensation”(新しい味覚の衝撃)と報じた。また、米公共ラジオ(NPR)も2007年12月13日の番組で、sweet(甘味)、sour(酸味)、salty(塩味)、bitter(苦味)に続く“the fifth taste”(第5の味覚)としてumamiが注目されている、と紹介した。なぜ今、「うま味」なのか?
 umamiは、1908年に東京帝国大学の池田菊苗教授が、だし昆布から発見。味の素が最初に主要成分であるMSGを製造・販売した。いわば日本が生みの親。MSGはかつて「化学調味料」と呼ばれ、現在は「うま味調味料」となった。日本からアジアや欧米に急速に普及し、現在北米だけで年間推定約9万5000トンのMSGが販売されているという。実際、外食産業から、スーパーマーケットに並ぶ加工食品やスナック菓子まで、MSGが幅広く使われているのは日米ともに同じ状況だ。
 一方、米国では1960年代から外食産業、とくに中華料理店でのMSGの大量使用が問題視され、MSGを過剰摂取して頭痛や顔面の紅潮、動悸、眠気などを引き起こすChinese restaurant syndrome(中華料理店症候群)が指摘された。米食品医薬品局(FDA)で調査・研究が行われ、1995年の報告書では、「何パーセントかの人はMSG摂取による症状が現われる場合がある」としながらも、〝安全な食品成分〟と認めている。
 欧米でもumamiの成分がフランス料理のブロス(魚や肉の煮汁)や、パルメザンチーズ、アンチョビー(イワシの油漬け)、完熟トマトなどに含まれていることは、かなり昔から知られており、呼び方はどうあれ、どんどん食べられてきた。
 だが、味覚としてのumamiの存在は、欧米では長らく認められず、おいしさはギリシャ時代以来の伝統に従い、甘・酸・塩・苦の4味の組み合わせによると考えられてきた。umamiが〝第5の味覚〟となったのは、21世紀の直前。2000年にマイアミ大学の研究者がまとめた報告書で、われわれの舌には従来の4つの味覚と区別してglutamateを識別できるレセプターがあることが分かったというわけだ。
 そこで、「うま味」は英語に翻訳できない言葉として、そのままumamiと表記されることになった。今やsushi(寿司)と同様にグローバル化の波に乗り、世界中で使われる日本語になり始めている。The Sankei Shimbun(January 13, 2008)「グローバル・English」はこちらへ