2012年6月8日金曜日

Spanglish


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 Spanish(スペイン語)とEnglish(英語)を組み合わせた造語がSpanglish。カタカナ読みは「スパングリッシュ」。その名のとおり、スペイン語と英語が混ざり合った混成語のこと。ヒスパニック系住民のコミュニティーで使われる。
 ヒスパニック(Hispanic)は、中南米出身者を指すが、本来は「スペイン語を話す人」という意味。米政府が1980年の国勢調査から民族分類のための用語として使い始めた。米国のヒスパニック人口は2005年に4270万人となり、黒人(3970万人)を抜いて白人(1億9840万人)に次ぐ最大のマイノリティとなった。今では、全米各地の都市にbario(バリオ)というコミュニティーが形成され、スペイン語が話されている。barioの外は英語社会。英会話が必要で、バイリンガルを強いられるが、使い分けよりもむしろ混用が進んでいる。
 Spanglishの語を最初に使ったのは、プエルトリコのジャーナリスト、サルバドール・ティオ。1952年、米国からの英単語の流入で、プエルトリコのスペイン語が乱れているのを批判する記事の中で用いたのが初出という。
 Spanglishが生まれたのは、メキシコとの国境地帯や南カリフォルニア、ニューメキシコ、テキサス、フロリダ州などのヒスパニック・コミュニティーで、その後、中南米諸国に浸透していく。
 著名ジャーナリストのH.L.メンケンは著書“The American Language”(第4改訂版)で、20世紀前半から中南米でbaseball(野球)をbeisbol(ベイスボル)とスペイン語風に発音したり、“How much?”をjamach(ハマチ)とそのまま使用する例を挙げて、「純粋のスペイン語にない単語が多く使われている」と指摘している。
 さて、現在のSpanglishに関して、メキシコ出身の批評家イラン・スタバンス氏は、ニューヨークの街角や学校で約6000語を収集、“Spanglish”(2003年)として出版した。これは、初めてのSpanglish辞書だろう。その中で、クリスマスを意味するスペイン語のnavidad(ナビダゥド)の代わりに、英語からの〝音訳〟であるcrismasが用いられていることや、kodak(コダック)がカメラや写真、klinex(クリネックス)がティッシュペーパーを意味する普通名詞として使われていることなどを紹介している。
 スタバンス氏は、メキシコで生まれ米国へ移住し、スペイン語を母国語にしながら英語教育を受けた。Spanglishを“the verbal encounter between Anglo and Hispano civilizations”(アングロサクソンとヒスパニック文明の言語的な出合い)と定義。“It was only when I was already comfortable in both Spanish and English that I suddenly detected the possibilities of Spanglish.”(私が突然、スパングリシュの可能性を発見したのは、私がすでにスペイン語と英語双方のなかで快適だと感じたときのことだ)と語っている。The sankei Shimbun(2008.1.27 Engrish) 「グローバル・English」はこちらへ