2012年6月7日木曜日

barrel


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 barrelは本来「樽(たる)」を意味するが、ここでは原油(crude oil)の計量単位としてのbarrel(バレル)、つまりoil barrel。1バレルは42 US gallons(42ガロン)で、メートル法に換算すると約159㍑。barrelの省略形はbbl。bbl/d、bpdはbarrel per dayの略で、「1日当たりのバレル」という単位。
 国際石油市場で原油1バレルの値段は、2001年の9・11中枢同時テロのころ20㌦台だったが、今年初めには一時100㌦に達した。この原油高の原因は、基本的には需要と供給の関係による。つまり、石油資源は減る一方で、新たな発見は少なく、増え続ける需要に供給が追いつかない。ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は、ニューヨーク・タイムズ(2008年1月4日付)で“Dealing With the Dragon”(竜=中国の扱いをめぐって)と題し、「新興国、とりわけ中国での石油の消費が急増している」と指摘。中国は今や世界の石油需要の9%、近年は世界の石油消費伸び率の3分の1を占める。“As a result, oil at $100 a barrel is, in large part, a made-in-China phenomenon.”(結果として、1バレル100㌦の石油は大部分がメイド・イン・チャイナの現象である)と述べた。
 US Energy Information Administration(米エネルギー情報管理局)によると、2006年の米国の石油消費量は2058万8000bbl/dで世界トップ。2位が中国(727万4000bbl/d)、3位が日本(522万2000bbl/d)と続く。世界最大の消費国は米国なので、〝メイド・イン・チャイナ説〟は自国の消費を棚に上げた身勝手な議論だが、米国ではこの説に賛同する人が多いようだ。
 さて、計量単位のbarrelは、採掘した原油を木製の樽に入れて運んだことに由来する。米国のペンシルベニア州で最初の油田を掘ったのは、エドウィン・ドレークという人物で1859年のこと。彼は洗い桶に保存したというが、1860年代になるとウィスキーや塩を入れる樽が使われるようになった。42ガロンの樽を使ったのは、J・D・ロックフェラーが1870年に設立したスタンダード・オイル会社。この樽が普及したのは、米国の税当局である内国歳入庁(IRS)が徴税の便宜のために後押ししたから。スタンダード・オイルは、米国内の石油精製・販売の約9割を独占、青いペンキで塗装したblue barrelがすっかり定着した。1911年に反トラスト法違反で会社は解散を命じられ、34の独立企業に分割されたが、blue barrelはその後も受け継がれる。
 もっとも、原油の輸送において、タンク車やパイプラインが現われるや、42ガロンの樽は瞬く間に時代遅れの代物になった。今では全く見かけることはない。それでも、国際相場で昔ながらのbarrelが生き続けているのは、石油産業では決して他国の自由にはさせない、という米国の頑固な意志の表れであるように思えてならない。The Sankei Shimbun (February 3 2008)  「グローバル・English」はこちらへ