2011年12月12日月曜日

smart power


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


smartは「賢い」「利口な」という意味。powerは「力」であるが、ここでは「国力」としてのパワーを指す。smart powerは文字通りでは「賢明なパワー」。カタカナ読みは「スマート・パワー」。
オバマ政権の国務長官に就任したヒラリー・クリントン氏が2009年1月に、米上院外交委員会で承認を求める公聴会で、“We must use what has been called ‘smart power,’”(われわれは、いわゆるスマート・パワーを使う必要がある)と、今後の外交方針を述べた。その上で、“the full range of tools at our disposal-diplomatic, economic, military, political, legal, and cultural-picking the right tool, or combination of tools, for each situation.”(使えるあらゆる手段、つまり外交、経済、軍事、政治、法律、文化的な手段のことで、ケース・バイ・ケースによって適切な手段を選び、また手段を組み合わせて用いる)と説明した。
実は、この言葉は、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の「スマート・パワー委員会」の造語。委員会の共同議長を務めるのは、日本でも著名なブッシュ政権の国務副長官だったリチャード・アーミテージ氏と、ハーバード大学大学院ケネディスクール教授のジョセフ・ナイ氏。smart powerとは、軍事力などのhard powerと、ナイ氏が提唱するlegitimacy(正当性)を核にした文化的、政治的な影響力などのsoft powerをミックスしたもの、と定義している。
だが、なぜ今smart powerなのか?
コラムニストのロジャー・コーエン氏は、ニューヨーク・タイムズ(2009年1月14日付)の“Magic and Realism”(マジックと現実主義)で、smart powerについて“It’s better than dumb power, of which we’ve had a large dose.”(それは、われわれが嫌というほど味わった〝ダム・パワー〟よりはましだ)と書いた。dumbは「バカ」の意味で、ダム・パワーを、「友人関係を壊し、軍事力をかさに来て、合衆国への信望を損ない、終わりなき戦争を宣言するもの」と〝定義〟した。
なるほど、ブッシュ政権は「悪の枢軸」(Axis of Evil)と対峙し、ゴリ押しのunilateralism(一方主義?)でイラク戦争に突入、ふたを開けてみれば大量破壊兵器はなく、国際社会におけるlegitimacy(正当性)を踏みにじってしまった。
CSISの報告書は、こう説明する。“America’s image and influence are in decline around the world. To maintain a leading role in global affairs, the United States must move from eliciting fear and anger to inspiring optimism and hope.”(アメリカのイメージと影響力は、世界中で落ち目になっている。世界的な問題でリーダーシップを発揮するためには、合衆国は恐怖や怒りを引き出すのではなく、楽天主義や希望を吹き込まなければならない)。どうか、クリントン国務長官がいつまでもsmartでありますように!The sankei Shimbun (February 2 2009) 「グローバル・English」はこちら