2011年10月8日土曜日

birth tourism


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

birthは「誕生」「出産」で、tourismは個々のtourではなく、総称としての「旅行」。そこで、birth tourismは「出産旅行」。妊娠中の女性がbirthright citizenship(生得権としての市民権)が認められる国へ旅行して、そこで出産すること。生まれた子供にその国の市民権を取得させることが狙い。カタカナ読みは「バース・トゥーリズム」。
合衆国憲法は、修正第14条でbirthright citizenshipを認めている。すなわち、“All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the State wherein they reside.”(米国に出生、または帰化し、その法治下に置かれたすべての者は、米国及び居住する州の市民である)。そこで、外国から米国の市民権を得るためのbirth tourismが問題になる。
ABCニュース(2010年8月4日付)は、“Debate Over Birthright Citizenship Aims at ‘Baby Tourists’”(生得権としての市民権をめぐる議論は、ベイビー・ツーリストを標的にしている)と報じた。
“Baby Tourist”は、birth tourist(出産のための旅行者)を言い換えたもの。議論は、共和党のリンゼイ・グラハム上院議員が、修正第14条の改正を提案したことから始まった。
“Birthright citizenship, I think, is a mistake. …People come here to have babies. They come here to drop a child. It’s called ‘drop and leave’.”(生得権としての市民権は、誤りであると思う。…人々は出産のためにここに来る。そして、ここで子供を産み落とす。いわば、産み落として置いて行く)とした上で、問題は、産み落とされた赤ん坊が“anchor”(錨)になって、その家族が将来、米国での居住権を合法的に獲得する事態になっている、と指摘した。つまり、birth tourismが移民の〝抜け穴〟になっているというわけ。
ただ、憲法修正条項の改正は、日本での憲法改正と同様に、現実には困難であることを付け加えておく。 
ところで、米国でbirth tourismによる出産がどのくらいあるのか?ABCニュースによると、2006年の国勢調査のデータを分析した結果、出生届が出された427万3225人のうち、7670人が米国に非居住の母親から生まれており、そのうちの何%かであろうという。母親の国籍では、メキシコ、韓国、中国などが多いとも指摘している。
birth tourismへの批判が高まった背景には、景気が低迷を続ける中で、不法移民の取り締まりなど、政府の移民政策に対する不満がある。批判者の本音は、これ以上移民を許すなということ。だが、アメリカは建国以来、移民がつくってきた国であり、作家のドン・デリーロがいうように、“America was and is the immigrant's dream.”(アメリカは今も昔も移民の夢である)。その夢がなくなれば、アメリカではなくなるのだ。The Sankei Shimbun  (September 6 2010)