2012年10月5日金曜日

brink 瀬戸際政策とは・・・

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 brinkは「縁」とか「がけっぷち」、あるいは「間際」「瀬戸際」を意味する名詞。カタカナ読みは「ブリンク」。英語ではedge、marginなどと言い換えられる。つまり、ぎりぎりの際どいところという意味だ。この言葉はon the brink of ~、できるだけ短い表現を好む新聞の見出しではtheを省いてon brink of ~で頻繁に登場する。
 たとえば、中東のイスラエルとパレスチナの一触即発の危機的な状態は“On Brink of Explosion”(爆発寸前)などの見出しが躍る。会社が倒産寸前の状態は、on the brink of bankruptcy。
2006年11月7日に行われた米中間選挙の結果、民主党は下院で早々に過半数を制したが、上院では共和党の49議席に対して48議席まで肉薄。無所属の2議席を加えて50とし、激戦のバージニア州の1議席を獲得できるかどうかが過半数制覇の決め手となった。当時インターネットでは、この際どい状況を“Democrats Win House, on Brink of Senate Power”(民主下院に勝利、上院も掌握間際)、“On Brink of Controlling Senate”(上院支配寸前)と表現。その後、民主党は勝利し、上下両院で過半数を制するに至った。
  選挙戦で最大の争点となったのは、イラク問題。投票前の5日、イラク高等法廷はサダム・フセイン元大統領に死刑を言い渡したが、共和党の追い風にならなかったばかりか、イラクはto the brink of civil war(内戦の際)に追いやられた。
 brinkの派生語で、日本の安全保障に重くのしかかるのが、北朝鮮のbrinkmanship。これは「瀬戸際政策」と訳されるが、国際政治で有利な立場に立つために、わざと危機的な状況を演出して交渉相手から譲歩を引き出す戦術だ。金正日総書記の支配する北朝鮮は、1990年代から“Nuclear Brinkmanship”(核の瀬戸際政策)によって、クリントン前政権や日本、韓国を脅迫し米や重油、原子力発電の設備までせしめて来た。
 北朝鮮は瀬戸際政策をエスカレートさせ、ついに2006年10月初めに核実験を強行。その後も、再三にわたって6カ国協議を頓挫させ、ついに2008年10月には、ブッシュ政権からテロ指定国家解除をもぎ取った。北朝鮮は常にto the brink of nuke crisis(核危機の瀬戸際)まで突っ走る可能性があり、予断を許さない。
 brinkmanshipの語源は冷戦時代の1956年に遡る。米国の核抑止政策について、当時のJ.F.ダレス国務長官がbrinkmanshipを提唱、“the ability to get to the verge without getting into the war”(戦争を起さないでぎりぎりのところまで行く能力)と定義したのに始まる。その年に民主党の大統領候補になったアドライ・スティーブンソン氏は、「彼(ダレス長官)が自慢するbrinkmanshipは、われわれを核の深淵の縁に追いやる戦術だ」と厳しく批判した。今日の北朝鮮の瀬戸際政策の本家本元は、実は米国である。The Sankei Shimbun(November 26 2006)