2012年3月14日水曜日

squeeze


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 squeezeは「ぎゅっと握る」「搾り取る」という動詞。カタカナ読みでは「スクゥィーズ」。squeeze a lemon(レモンを搾る)などという。名詞にすると、a squeeze of lemon(レモンの搾り汁)となる。また、「無理やり入る」という意味もあり、野球のsqueeze play(スクイズ)でおなじみ。最近は経済記事に頻繁に登場、「圧迫」「緊縮」「引き締め」などの意味で使われている。
 世界的な経済への圧迫要因となっているのが、原油価格の高騰。AP通信は2008年7月1日、“Five-year oil squeeze predicted”(今後5年間の石油市場はひっ迫と予測)と報じた。IEA(国際エネルギー機関)は、世界の石油総需要は現在の日量8700万バレルから2013年までには9400万バレルに増加、価格高騰の影響でかつての予測よりブレーキがかかると見ているが、供給は需要をわずかに上回る程度という。つまり、相場が下がる可能性は少なく、先進国の経済成長は、このままでは息の根を止められることになりかねない。
 米軍への影響も深刻だ。NPR(米公共ラジオ)は同日、“Oil Prices Squeeze Pentagon’s Budget”(石油価格が国防総省の予算を圧迫)と伝えた。米軍の場合、“A $1 increase in the price of a barrel of oil translates into an increase for the whole department of $130 million.”(1バレル当たりの石油価格が1㌦上がると、全体で1億3000万㌦の負担増になる)という。この半年間で1バレル当たり50㌦近い値上げだから、その負担は推して知るべし。イラク、アフガニスタンでの軍事作戦にも支障が出始めており、米議会ではイラクからの撤退論議が再燃しそうだ。
 一方、ウォールストリート・ジャーナル(同日付)は、“Debt-Laden Casinos Squeezed by Slowdown”(借金を抱えたカジノは景気減速で〝火の車〟に)と報じた。石油高騰に加えて住宅バブルの崩壊で、ラスベガスのカジノ客が激減。ラスベガス行きを減便する航空会社も出ている。銀行はカジノへの融資を引き締めに、関係者は“This is the toughest environment we’ve faced.”(かつてない厳しい環境)と悲鳴を上げている。
 さて、squeeze a lemonには、こんな小話がある。ある田舎の酒場に力自慢のバーテンダーがいて、賭けをした。もし、バーテンダーの絞ったレモンからさらにジュースが搾れたならば1000㌦がもらえ、負ければ1000㌦取られるという。ある日、メガネをかけて背広を着たやせた小男が“I’d like to try the bet.”(賭けをしたい)と言った。観客が大笑いする中で、バーテンダーはレモンを搾り、ひしゃげたカスを小男に手渡した。小男がそれを握り締めた。何と6滴のジュースがグラスに落ちた。観衆はやんやの喝采。バーテンダーは小男に1000㌦を払い、仕事をたずねた。小男曰く、“I work for the IRS.”(税務署勤めだ)。最後の1滴まで搾るのがtax squeezeというわけ。The Sankei Shimbun (July 13 2008)

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