2012年12月30日日曜日

roil アメリカを読む辞書が選んだ Word of the year

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 カタカナ読みは「ロイル」。たとえばジュースなど沈殿物のたまった液体をかき混ぜると濁った状態になることを指す動詞であり、名詞。比喩的にも用いられ「かき乱す」「乱れる」「混乱する」などと訳される。
 「アメリカを読む辞書」はroilを2012年のword of the year に選んだ。今年もっともよく世界情勢を表した言葉と考えられるからだ。
 米国議会では、fiscal cliff(財政の崖)をめぐり、民主・共和両党が年末まで折衝を続けた。〝財政の崖〟とは、2001年から始まったブッシュ減税が2012年末に失効するとともに、膨大な連邦財政を削減するため2013年1月1日から自動的に歳出の削減が発効することを指す。
 AP通信(12月28日付)は、米金融市場が12月21日以降28日まで下げ続けていることに触れて、“The erratic performance underscored how the "fiscal cliff" can roil the market.”(常軌を逸した相場は、〝財政の崖〟がいかに市場を混乱させるかを裏付けている)と述べた。31日に交渉が決着しなければ、年明けからさらなる混乱が全世界を巻き込むことになるだろう。 
 欧州においても金融市場混乱の火種は尽きない。ウォールストリート・ジャーナル(2011年5月23日付)が、“Debt fears roil European markets”(債務への恐れで欧州市場は混乱)と書いたが、国家の債務危機に揺れる欧州の金融市場は、今年もギリシャやスペイン、さらにはフランスの国債の格付けの引き下げなどがあり、投資家の懸念は強まる一方でroilは止まない。来年も「混乱は続く」との見方が根強い。
 さて、目を中東に転じてみよう。ワシントン・ポスト(2012年12月6日付)は、“Protests roil Egypt”(抗議デモでエジプトは混乱)と報じた。この国は、2011年1月に反政府抗議デモによって、大混乱の末にムバラク前大統領が辞任に追い込まれた。だが、モルシ新大統領になっても、年の瀬まで憲法改正などをめぐり抗議デモは止まず混乱し続けた。新憲法は国民投票によって承認されることになったが、このまま混乱が収束していくとは思えない。
 一方、タイムズ・オブ・インディア(2012年11月13日付)は、“The Generals and the Labyrinth: Scandals roil end of Obama first term”(将軍たちと迷宮:オバマ大統領の1期目最後はスキャンダルがかき乱す)と報じた。これは、米CIA(中央情報局)のペトレイアス前長官が不倫問題で辞任した一件。オバマ政権は騒動の末に、何が何だか訳が分からないままで幕引きとなった。スキャンダルの火種もまた尽きることはないようだ。PS: ご意見、ご感想をお待ちしております

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