2012年1月7日土曜日

bubble


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 
 bubbleは通常の意味は「あぶく」。多数の泡の場合はbubbles。経済のbubbleもカタカナ読みで「バブル」。だが、アメリカン・ヘリテージ辞書によると、a protective, often isolating envelope or cover(保護・隔離用の包囲物、またはカバー)という、もう1つの意味がある。さらに、政治用語として、大統領を保護・隔離するため周囲にめぐらされるsecurity zone(保安地帯)を指す。
 オバマ大統領も、in the bubble(バブルの中)の人である。AP通信は、2008年の大統領選挙に当選した日の模様について、“His victory speech was delivered before a multiracial crowd of more than 100,000 people. Many cried and nodded their heads while he spoke, surrounded by clear bulletproof screens on his left and right.”これを訳すと、「10万人以上の多人種からなる群衆を前に勝利宣言が行われた。彼が演説するあいだ、多くの人が涙を流し、うなずいた」わけだが、オバマ氏はその時「左右を透明な防弾スクリーンに囲われていた」という。タイム誌(11月4日付)によると、この防弾スクリーンは約3㍍×約4・5㍍あり、“protect him from potential snipers in the high-rise buildings”(高いビルからの狙撃者から守る)ためだ。
 コラムニストのウイリアム・サファイア氏の「政治辞書」(2008年)によると、bubbleの語は、オープンカーに乗った大統領を保護するためのtransparent shield(透明の覆い)に由来する。アイゼンハワー政権の時にリムジンの覆いが開発され、bubbleと呼ばれた。だが、1963年のケネディ大統領暗殺事件では、大統領の乗ったリムジンにbubble は装着されていなかったという。
 bubbleは転じて、大統領の護衛全般を指すようになる。護衛はUnited States Secret Service(合衆国シークレットサービス)が行うが、1968年にロバート・ケネディ上院議員が大統領選挙戦の最中に暗殺されてからは、大統領候補も護衛の対象になった。オバマ氏の場合は、候補になる1年以上前の2007年5月から護衛がつけられ、今年に入ってからは、さらに強化された。人種差別主義者による襲撃、暗殺を警戒してのことである。実際、2008年の8月には、オバマ氏の暗殺を計画したとして容疑者3人が逮捕された。
 さて、bubbleは比喩としても使われる。ニューズウィーク誌(2005年12月19日号)は、“Bush in the Bubble”(バブルの中のブッシュ)と題する記事で、ブッシュ大統領は“the most isolated president in modern history”(現代史上最も隔離された大統領)ではないかと書いた。“He does not like dissonance.”(彼は不協和音を嫌う)とされ、自らが信頼する人物以外、そばに寄せ付けないという。こうしたbubbleは権力者にありがちなことで、悪いニュースや耳の痛い話から遠ざけられ、大事を誤ることになる。The Sankei Shimbun (November 16 2008)「グローバル・English」はこちらへ