2012年1月15日日曜日

political correctness


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 politicalは「政治の」「政治的な」で、correctnessは「正しさ」「正当性」。「政治的正当性」と訳され、カタカナ読みは「ポリティカル・コレクトネス」。略称はPC。形容詞では、politically correct(政治的に正しい)となる。では、いったい何が政治的に正しいのか?language(言葉遣い)である。そのほか、idea(考え)、behavior(行動)など。
 2008年の米大統領選では、民主党のバラック・オバマと共和党のジョン・マケインのnegative campaign(中傷合戦)がデッド・ヒート。たとえば、オバマ陣営は、マケイン陣営を“old-style politicians”(旧体制の政治家)、“old big–spending Washington Lobbyists”(無駄遣いの古いワシントン・ロビー)など、oldを連発してこき下ろしている。このoldは「古い」のほかに、「年老いた」の意味がある。これはマケイン氏が72歳で、高齢であること当てこすっている。“Is John McCain too old to be president?”(ジョン・マケインは大統領になるには年を取り過ぎているか?)と、ワシントン・ポストなど有力メディアも、大統領の資格として年齢問題を取り上げたことがある。
 ところが、高齢社会が進む現在、特定の人をoldというのは差別的と見なされ、not politically correct(政治的に正しくない)との批判が高まってきた。それだけに、オバマ陣営も“old man”(老人)と直接言うことは避けているが、「oldを繰り返して印象付けるdirty politics(汚いやり口)だ」とマケイン陣営は憤慨している。
 米国では1980年代、フェミニズム運動の中で言葉遣いに多く残るmale-dominating pattern(男性支配のパターン)がgender discrimination(性的差別)であると批判された。たとえば、「男」を意味するmanが「人」と同義として使われるのは、not politically correctというわけ。その結果、policeman(警察官)はpolice officerに、mailman(郵便配達員)はmail carrierに言い換えられた。また、salesmanやsaleswomanは廃されてsales personに、chairman(議長)も公式にはchairあるいはchairpersonと呼ばれるようになった。これらの言い換え語は、“gender-sensitive language”(性別に配慮した言葉遣い)だが、PC movement(PC運動)は80年代後半以降、race(人種)、culture(文化)、age(年齢)、abilities(能力)などに急速に拡大している。
 米国で、英語を母国語としない生徒のためのEFL(外国語としての英語)のクラスでは、必ずpolitically correct Englishを教える。英語の学習とともに、すべての人は平等で差別してはならないという民主主義の基本理念を叩き込むわけだ。だが、politically correct Englishが支配する公式の会話や文章は、〝建前〟の世界。1歩外へ出るとpolitically incorrect Englishが氾濫するのもアメリカの現実だ。talk in private(私的な会話)になれば、つい本音が出てしまうのである。The sankei Shimbun (October 26 2008)