2012年11月22日木曜日

abs ニーチェの言葉を思いだそう!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 abはabdominal muscle(腹部の筋肉、つまり腹筋)の略。通常、複数形で使うのでabs。カタカナ読みは「アブス」。アメリカのテレビでこの言葉を聞かない日はない。“Flatten your abs.”(腹をひっこめろ)というのは、フィットネスの最大の目標だ。
 アメリカ人の6割以上がoverweight(体重過多)かobesity(肥満)と警告されるだけに、男女ともにbelly(腹)がpooch outした(出っ張った)人がやたらに目につく。いわゆる「ビール腹」は英語でもbeer belly。waist lineのあたりにfat(脂肪)が付いて垂れ下がっている状態をさすが、ビールの摂取とは関係なく、やはり高カロリー、高脂肪の食物の摂り過ぎが原因である。
腹回りに突出した贅肉は、俗語でlove handles(ラブ・ハンドルズ)とかspare tire(スペア・タイヤ)と呼ぶ。太っているのに無理して股上が浅いきつめのジーンズをはくと、それらがジーンズからはみ出して、上部が盛り上がったカップケーキのように見えるので muffin top(マフィン・トップ) などと表現。言い得て妙だ。
 夏場は薄着になるので、フィットネスの欲求が高まる。ジムは盛況で、ab exercise(腹筋運動)の専用マシンの販売にも拍車がかかる。
“How can I get six-pack abs or washboard abs?”(どうすれば6つに割れた腹筋、洗濯板のような引き締まった腹筋が獲得できるのか?)“You should work your abs.”(腹筋を鍛えろよ)
 筆者が知るなかで、最もすばらしい腹筋をしていたのは、映画俳優で拳法の達人、ブルース・リー。彼の鍛え上げた肉体は全世界の少年らを魅了した。妻のリンダさんの後日談によると、ブルース・リーはab trainingのマニアで、暇さえあればsit-upやcrunchなどの運動を続けたという。
  和英辞書を引くと、腹筋運動の項目にはsit-upが載っている。仰向けに寝た状態から上半身を起こす一般的な腹筋運動がこれだ。crunchは腰を浮かさないように頭を持ち上げ、背中の上方部だけを丸めるようにする。これは、腹部の中心にある腹直筋を鍛えることになり、効果が期待できる。
 もっとも、“You’ll never get sexy abs with crunches and sit-ups.”(腹筋運動だけではセクシーな腹筋にはならない)と、フィットネスの専門家は指摘する。そもそも、カロリー過多の結果、腹が出ることになったので、すでに全身が腹部と同じような状態にあると考えたほうがよい。腹回りをすっきりさせるためには、ジョギングやエアロビクスなど、全身を使った有酸素運動が必要だが、それ以前に飲み過ぎ食べ過ぎに要注意だ。
 ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェはこう言っている。“The abdomen is the reason why man does not readily take himself to be a god.”(この腹というものがあるために、人間はやすやすと神になれないのである)The Sanei Shimbun(June 25 2006)