2012年5月19日土曜日

racial divide


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 racialは「人種の」という形容詞で、元の名詞はrace(人種)。divideは「分ける」「分割する」という動詞だが、名詞形は「断絶」、最近ではdigital divide(デジタル・デバイド=情報格差)などとカタカナ読みのまま使われる。racial divideは「人種間の断絶」を意味する。
 2008年の米大統領選挙の民主党候補者の指名争いでは、当時黒人候補のオバマ上院議員とクリントン上院議員が接戦を繰り広げる中で、racial divideが大きな課題として浮上した。
 ワシントン・ポスト(2008年2月6日付)は、“Democrats’ Votes Display a Racial Divide”(民主党の票は人種間の断絶を示す)との記事で、African American(アフリカ系アメリカ人)はオバマ氏、Latinos(ヒスパニック)はクリントン氏支持が鮮明になった、と報じた。オバマ氏は黒人の多い州で勝利し、ヒスパニックの多い州はクリントン氏が制したことについての分析だった。ニューヨーク・サン(2月11日付)の見出しはさらに単刀直入で、“Hispanics’ Reluctance on Obama Highlights Black-Brown Divide”(ヒスパニックのオバマ嫌いは、黒と茶色の断絶を浮き彫りにする)といった。
 racial divideの根底にあるのはracism (人種的偏見)であり、肌の色の違いによる差別、対立感情。つまり“color divide”(ニューヨーク・サン)である。
 だが、ヒスパニックと黒人が対立する背景には、実生活において雇用をめぐって職の取り合いをするなど厳しいライバル関係にある事実が挙げられた。しかも、中南米からの移民によるヒスパニック人口の急増が黒人層を圧迫するようになり、対立に拍車を掛けている。危機感を深めた黒人層はオバマ氏を支持し、選挙戦の強力な推進母体になってきたが、他の人種からの反発も聞こえた。4月22日に予備選が予定されているペンシルベニア州では、クリントン氏の強力な支持者であるレンデル知事が、「オバマ氏に投票しない白人もいる。彼は黒人だから」と語り、それが現実である(AP通信)。
 もっとも、オバマ氏自身は、父親がケニア出身の黒人、母親が白人の混血である。だが、容貌が黒人であるため、アフリカ系アメリカ人として注目され、その中で政治家として頭角を現した。彼は、人種偏見と戦い、道半ばで暗殺された公民権運動指導者キング牧師(1929~68)の〝後継者〟として、カリスマ的存在にのし上がった。
 オバマ氏は、racial divideを乗り越えて、人種の融和を呼びかける。“There’s not a black America and white America and Latino America and Asian America; there’s the United States of America”(黒人のアメリカも白人のアメリカも、ヒスパニックのアメリカもアジア人のアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だ)。この言葉が、多くの米国人の心を打った。The Sankei shimbun (March 2 2008)
 注:だが、オバマ氏が大統領になった今も、残念ながらracial divideはなくならない。
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