get a lifeは、カタカナ読みで「ゲッタライフ」、米語の慣用表現で、1980年代からよく使われるようになった。文字通りでは、a life(生命、生活)をget(得る)ことだが、to do something different(違ったことをする)という意味で使うことが多い。もっとも、ニュアンスは状況によって大きく変わる。
たとえば、働かないでぶらぶらしている息子に“Get a life!”と親が言うときは、“You need to leave home and get a job.”(家を出て仕事を見つけろ)と続く。つまり、今までの生活を改めて、新たな生活を始めなさい、ということ。最もストレートな使い方だ。1990年から92年にかけて“Get a Life”というTVコメディが流行った。主人公は〝大人になるのを拒否〟した30歳の独身男。1話ごとにget a lifeを試み、誤って死んでしまう。が、次回の話では、再び生き返って登場するという、まさにget a lifeのストーリー。
さて、彼女に振られて部屋に閉じこもり、くよくよしている友人に“Get a life!”といえば、“Stop thinking about your old girlfriend and get on with your normal life.”(昔の彼女のことはくよくよ考えずに、普通の生活に戻れよ)という意味で、励ましの言葉になる。
ところが、この言葉を有名人が公の場で使うと騒動になる場合がある。米大リーグでサイ・ヤング賞7回の最多受賞に輝くロジャー・クレメンス投手。これまで、メディアに囲まれるのはヒーロー・インタビューが中心だったが、2007年12月にステロイド剤などを使用した薬物疑惑を指摘されて以来、メディアの態度はがらりと変わり、どこへ行っても薬物使用について追求されることになった。クレメンスはついに逆キレ、“You guys need to get a life!”と言い放った。
早速、ニューヨーク・タイムズ(2008年2月27日付)は“Clemens to Reporters:‘ Get a Life’”との見出しで記事にした。翻訳すると「クレメンス、記者らに『いい加減にしろ』」といったところ。ウエブサイトには、読者の賛否のコメントが寄せられた。“Why don’t you take his advice, ya parasites.”(彼の忠告を聞けよ、テメエら〝寄生虫〟め)としつこく質問するメディアに批判がある一方、“Wasn’t it their life to report all the great things he has done in his career? Now that he has achieved infamy, he tells them to get a life. What a crock!”(野球人生で彼が成し遂げた偉業を報道するのが記者のライフではなかったか?スキャンダルを巻き起こしながら、いい加減にしろだって、バカめ!)という怒りの声もあった。
get a lifeには、もう一つto have fun(楽しむ)という意味がある。働き詰め、勉強詰めの真面目人間に、ちょっとブレーキを踏んで息抜きをしたら、と薦める場合も、また“Get a life!”である。The sankei Shimbun (April 6 2008)
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