2012年10月4日木曜日

Happy Holidays

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 happyは「幸せな」という形容詞、holidayは「祝祭日」。中世の英語ではholidaiでholy day(聖なる日)、つまり宗教的に重要な日。Happy Holidaysは「幸せな祝祭日を」という挨拶の言葉で、カタカナ読みは「ハッピー・ホリデイズ」。
 この言葉をめぐる米国社会の考え方を知るには、次のジョークがよい。
 A: Hey, Happy Holidays!
    B: Oh my God, you anti-Christian heretic demon!(おやおや、君はキリスト教に反対する異端の悪魔だ)
 A: Uh, Merry Christmas?(じゃあ、メリー・クリスマス?)
 B: There, now Jesus loves you again.(それでこそ、キリストも再び君を愛するよ)
 11月の第4木曜日のThanksgiving Day(感謝祭)から12月25日のクリスマスにかけてホリデー・シーズンだが、お祝いの挨拶言葉をめぐって、ここ10年以上も政治的対立が絶えないのだ。
 クリスマスは、ChristのMass(ミサの儀式)という意味で、言うまでもなくイエス・キリストの生誕を祝うキリスト教の行事。昨今では、米国でも宗教的な意味合いが薄まり、百貨店のプレゼント商戦の印象が濃くなっているが、キリスト教以外の宗教を信じる人たちは当然、「メリー・クリスマス」と声を掛けることにも、掛けられることにも抵抗がある。
世界各国から来た人々が暮らしている米国では、宗教もさまざま。ユダヤ教では、このシーズンにハヌカー祭(Hanukkah)を祝う伝統があり、アフリカ系アメリカ人の間では12月26日から1月1日にかけて、クワンザ(Kwanzaa)という比較的新しい祝祭行事を迎える。こうした他宗教の行事にも配慮した結果、Happy Holidaysという一般的な挨拶が登場。political correctness(差別廃止を訴える政治的正当性)の立場からも喧しく言われるようになり、公立学校や百貨店が率先して、挨拶状などで使うようになった。
 ホワイトハウスも慎重で、カーター、レーガン大統領のころから、あえて「メリー・クリスマス」と書かないholiday cardを送っていたそうだ。その慣例に従って、ブッシュ大統領も2005年末に、“Best Wishes for the Holiday Season”(素晴らしいホリデー・シーズンを)と書いて送ったら、今度はキリスト教の右派から「なぜメリー・クリスマスと言わないのか」とクレームが付いた。
 CNNとUSA TODAY、ギャラップが実施したアンケート調査によると、Happy Holidays派は44%で、反対派は43%、まさに拮抗していた。これは、米国の保守派とリベラル派の対立を象徴しているようだ。だが、この対立はあくまで表向きの政治の話。一般の人々にとっては言い方などどうでもよいことで、みんなで祝日を楽しく過ごすことができればそれでよいのである。The Sankei Shimbun(December 3 2006)