2012年8月3日金曜日

scanner

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 scannerはカタカナ読みでも「スキャナー」。絵や写真などの画像をパソコンに取り込むときに使う機器で、おなじみ。動詞はscanだが、日本語でも最近は「スキャンする」などという。
 米国では2007年春にアリゾナ州フェニックスの国際空港に設置された新型x-ray(X線) scannerが議論になっている。“backscatter”(後方散乱)という技術を使って、乗客の衣服の下に隠し持っている爆発物や武器を「見通す」という。このスキャナーを通ると、丸裸を人に見られるvirtual strip search(イメージ上のストリップ検査)であると、人権団体から批判の声が上がった。
 だが、テロリストの方も武器の携帯が巧妙になっているため、「対抗措置だ」と米運輸保安局(TSA)は〝新兵器〟の設置に理解を求めた。スキャンした画像は、その場でチェックするだけで、保存や転送はしないとしている。とりあえず、この新スキャナーを通るかどうかは乗客の判断に委ねられるから、嫌ならpat-down search(ボディチェック)も選択できるという。
 問題は、このscanによって、どこまで見られることになるのか、ということ。実は、scanには「ざっと見る」と「じろじろ見る」の2つの相反する意味がある。アメリカン・ヘリテージ辞書によると、元はexamine closely(じっくり調べる)だった。語源はラテン語のscandere(climb=登る)で、詩の韻律を調べる(scan a verse of poetry)ときに、リズムのアップダウンに合わせて足踏みをしたことに由来するという。「詩の綿密な分析」から転じて、look at ~ searchingly(じろじろ見る)の意味で記録に残った最初は、1798年。それが20世紀にはlook over quickly(ざっと見る)になった。思うに、出版物が大量に出回るようになり、1つのものをじっくり見る時間がなくなって、意味も変わったのかもしれない。
 面白いことに、ラテン語のscandereの元はギリシャ語のskandalon(stumbling block=つまずきのもと)との説がある。だから、つまずかないように慎重に「よじ登った」のかもしれない。だが、いったんつまずくとどうなるか?―そこから、scandal(スキャンダル)という言葉が生まれる。オックスフォード英語辞書(OED)によると、16世紀以降「悪評」を意味し、17世紀には「不面目な行為をやった人」も意味するようになった。scandalize(スキャンダルが公けになる)は、1489年に起源がある古い言葉である。
 TSAの役人は、ロイター通信に対して、新型スキャナーの使用に際し、身体各部の画像には〝ぼかし〟を入れる(blur any images of body parts)と述べ、〝局部〟を「ざっと見る」ことはあっても「じろじろ見る」ことはないという。ちょっとくらい見られたって長い列を待つよりましか、とも思うが、このスキャナーは使い方を1歩間違うと、スキャンダルを巻き起こしかねない。The Sankei Shimbun(March 18 2007)「グローバル・English」はこちらへ