Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
mommyは幼児語で「おかあちゃん」、makeoverは「作り変えること」。つまりmommy makeoverは、「おかあちゃんのイメージチェンジ」。出産して、「おかあちゃん」と呼ばれるようになった女性が、美容整形によって出産前の姿を取り戻すことをいう。
mommy makeoverはニューヨーク・タイムズで、2007年に流行した“Buzzwords”(難解語?)の1つに挙げられた。mom jobとも言うそうだが、こちらは文字通り「ママの仕事」。
米国形成外科学会(ASPS)によると、2006年、mommy makeoverの施術は全米で32万5000件以上に上り、2005年より11%の伸び。対象は20~39歳の出産を経験した女性で、一般美容整形の5倍の伸び率を示した。つまり、出産後の女性の〝若返り志向〟が強まっているというわけだ。
どんなことをするのか?日本語に「たらちね(垂乳根)」という母につける枕言葉があるが、英訳するとsagging breastsで、これを蘇らせるのが、breast augmentation(豊胸術)。さらに、protruding tummy(出っぱった腹)をヘこますのがtummy tuck (腹のしわの縫い上げ)。また、unwanted fat around the hips(臀部についた不要な脂肪)を取り除くのが、日本でも流行のliposuction(リポサクション)。lipo-は「脂肪」を意味する接頭辞で、suctionは動詞 のsuck(吸う)から来る名詞。つまり、皮下脂肪を真空ポンプで吸引すること。これらの美容整形をセットで行うのが、mommy makeoverだ。
シカゴ・トリビューン(2007年12月16日)によると、「20年前は、こんなことができるとは思いも寄らず、女性は慎重に服を選んで隠す以外になかった」。だが、今では「産後の身体のoverhaul(整備)に必要な手術」がそろったという。
時代とともに雇用環境が大きく変わり、女性であっても男性と対等に働かねばならなくなった。キャリア・ウーマンでなくても、働く女性にとって出産は一大事。とくに職場復帰のためには“post baby tune-up”(出産後の調整)が必要である。男女平等社会とはいえ、男の揶揄(やゆ)の視線を跳ね返して仕事をしていくためには、外見のシェイプアップは欠かせない。
通常のmakeoverは、new hairstyle(新しいヘアスタイル)とかmakeup(化粧)。フィットネス好きで意志の堅固な女性は、ダイエットと運動に励む。だが、そんなことでは追いつかないのが、“the severe physical trauma of pregnancy, childbirth and breast-feeding”(妊娠、出産と授乳による著しい肉体的ダメージ)だという。“to go back to hourglass figure”(ウエストのくびれを取り戻すため)には、hourglass(砂時計)の時間を逆戻りさせなければならないが、mommy makeoverはそれを可能にするかも・・・。The Sankei Shimbun (February 10 2008)