Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
jobは「仕事」でspillは水などがあふれて「こぼれること」。時間外の仕事を指す俗語。カタカナ読みは「ジョブ・スピル」。“If your boss calls you on the weekend, that’s job spill. If you boot up your laptop after supper, that’s job spill.”(週末に上司が電話してきたら、それはジョブ・スピル。夕食後、仕事用のパソコンを立ち上げるのもジョブ・スピル)とウェブスター辞書の編集者は定義している。
“Imagine job tasks seeping from the office to the home in much the same way as oil can invade a body of water or a beach.”(あたかも〝油の流出〟が水域全体や浜辺に広がっていくように、あふれる仕事が会社から家にじわじわ入ってくる)という意味合いで、ジャーナリストのジル・アンドレスキー・フレイザーさんが著書“White Collar Sweatshop”(2001年)の中で最初に使った。Sweatshopとは「搾取工場」で、現代企業はホワイトカラーが搾取される工場に変わりつつあると警告。job spillについて、“It’s the dirty secret behind many a corporation’s bottom line.”(多くの企業の業績に隠れた汚い秘密だ)と指摘する。
1990年代以降、パソコンやケータイなどのelectronic gizmos(電子機器)は、ビジネスにとってtime-saving(時間的節約)の有力な武器に成長。サラリーマンはどこにいても仕事ができる環境になったが、逆に言うと、どこにいても仕事をさせられるようになった。以前はアフター・ファイブの通勤電車で、一杯引っ掛けて新聞を読みながらくつろぐ姿が見られたが、今では車中で気ぜわしくケータイで得意先と連絡を取ったり、メールをチェックしたりする姿が当たり前になった。もちろん帰宅しても、パソコンの前に座る。
昔、新聞記者は24時間勤務で、事件が起ればすぐに駆けつけろ、と言われたものだが、今やすべてのサラリーマンが昼夜を分かたず働くclockless worker(時間制限なしの労働者)に変わってきた。
合理化とリストラによる人減らしで、レイオフや解雇が情け容赦なく行われ、職場を去った前任者の仕事がghost work(幽霊の仕事)として残りのスタッフの肩にのしかかってくる。仕事は増えることはあっても減ることはないのだ。
だが、働いた分だけ給料をもらっているか、といえば、それらの仕事はoff-the-clock work(時間外の無給の仕事、つまりサービス残業)と見なされ、答えはNo。アメリカでも、仕事が忙しいためvacation deprivation(休暇返上)は日常茶飯事になっている。ワシントン・ポスト(2006年6月25日付)の記事によると、米国人の年間休暇は平均2週間で、少なくとも4日は返上。夏休みは約6割の人が、家を離れて4泊5日程度の旅行をするmicrovacation(ミニ休暇)を取るのが関の山。休暇中も4人に1人はパソコン持参で仕事をするという。The Sankei Shimbun(July 23 2006)
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