2011年4月25日月曜日

regime change

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
regimeは、別の英語ではgovernment、administration、つまり「政府」「政権」。changeは「交代」だから、regime changeは「政権交代」である。カタカナ読みは「レジーム・チェンジ」。ただしregimeには、“especially government that has not been elected in a fair way”(とくに、公正な方法で選ばれなかった政府)というニュアンスが含まれる。
中東アラブ諸国では、各地で民主化を求める反政府デモが激化し、相次いでregime changeが起こっているが、米公共ラジオ(NPR)は4月1日、“Want Regime Change? Win Over The Military”(レジーム・チェンジを望むならば、軍隊を味方につけよ)と題するリポートを報じた。その中で、チュニジア、エジプトの民主化運動が成功し、政権交代にこぎつけたのは、各国の軍部が反政府運動を支援したからだと指摘。その上で、“As long as the ruler is identified by the military as the best embodiment of the national interest, he is fine. If not, they will topple him.”(支配者は、最も国益を代表していると軍隊からみなされる限り、存続する。もしそうでない場合は、軍隊が支配者を転覆させるだろう)との識者の意見を載せた。つまり、どの国も軍の影響力が大きいので、その意向が政治の動向を決定するというわけだ。
ところで、米外交評議会のリチャード・ハース会長は、2005年のフォーリン・アフェアーズ(7・8月号)に、“Regime Change and Its Limits” (レジーム・チェンジとその限界)と題する論文を寄稿。“Regime change allows a state to solve its problems with another state by removing the offensive regime there and replacing it with a less offensive one.”(レジーム・チェンジは、そこの敵対的な政権を排除して友好的な政権に置き換えることで、ある国に別の国との問題を解決させうる)と述べている。「ある国」とは米国のことで、regime changeは、米国の国益に従って他国の反米政権を親米政権に転換させる政策を意味する。
これに関して思い出すのは、ブッシュ前大統領が2002年7月に行った記者会見。“It is the stated policy of this government to have regime change. And it hasn’t changed. And we’ll use all the tools at our disposal.”(レジーム・チェンジさせることが、この国の定まった政策だが、それでは変わらない。われわれは自らの裁量であらゆる手段を講じる)と表明し、03年3月イラク戦争に突入した。
もっとも、オバマ大統領は、3月28日のテレビ演説でイラクに言及、“Regime change there took eight years, thousands of American and Iraqi lives, and nearly a trillion dollars.” (そこのレジーム・チェンジのために8年の期間と、数千のアメリカ人とイラク人の生命、1兆㌦近い金がかかった)と述べ、反政府デモが内戦に発展したリビアでは、同じことは繰り返せないと言明した。The Sankei Shimbun (April 18 2011)

2011年4月13日水曜日

aftershock

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
afterは「~の後に」という前置詞。shockは日本語でもショック、または「激しい震動」。そこで、aftershockは、“a small earthquake or tremor that follows a major earthquake”(大きな地震に続く小さな地震や微動)と定義される。つまり、「余震」のこと。この言葉は、比喩的にも使う。カタカナ読みは「アフターショック」。
ロサンゼルス・タイムズ(3月16日付)は、“Aftershocks Prompt Fear of a Major Quake near Tokyo”(余震が東京近郊での大地震の恐れを引き起こす)と報じた。ここで、aftershocksは複数形。東日本大震災で、3月11日の東北地方太平洋沖で発生したマグニチュード9.0の大地震のあと、余震が頻繁に起こっていることを示す。記事は、“The pattern of aftershocks appears to be shifting south toward the capital.”(余震のパターンは首都に向かって南へ移動しているように見える)とした上で、“Scientists say the temblors could transfer stress to nearby faults.”(震動は近くの断層に圧力を与えるかもしれない、と科学者はいう)。faultは「欠陥」「過失」を指すが、ここでは地質上の〝欠陥〟で「断層」のこと。
米ニュース専門放送のMSNBC(3月21日付)は、“Aftershock Blitz: Will Japan Ever Stop Shaking?”(余震の猛威:日本の震えは止まるか?)として、“Every aftershock of the magnitude 9.0 earthquake will itself have aftershocks. Then all of those aftershocks will have aftershocks.”(M9.0の地震に続くそれぞれの余震自体に余震があるだろう。そして、それらの余震にも余震があるだろう)と述べる。それだけに、平穏を取り戻すにはなお時間がかかるだけでなく、今後も警戒を続ける必要があるというわけだ。
また、カナダのCBCニュース(3月19日付)は、“Japan Hit by Another Aftershock”(もう1つの〝余震〟に襲われる日本)と報じた。「もう1つの余震」とは、地震による東京電力福島第1原子力発電所の事故の影響。つまり、放射性物質による汚染だ。“In another development, spinach and milk from farms near the stricken nuclear plant show radiation above the safety limit.”(もう1つの展開として、事故のあった原発近くの農家で採れたホウレンソウや牛乳が安全基準を超える放射線量を示している)との当局者の声を伝えた。今回の放射能汚染は、104基の発電用原子炉が稼動している米国をはじめ、各国の原子力行政にまで影響を及ぼすことは必至であろう。
英ガーディアン(3月15日付)は、“Japan’s Earthquake Will Cause a Global Financial Aftershock”(日本の地震が世界の金融市場に余震をもたらすだろう)との記事で、地震被害による保険の支払いや復興資金の需要増による影響を分析しているが、東日本大震災のもたらした余震はまさに地球を揺り動かしている。The Sankei shimbun (April 4 2011)

2011年4月4日月曜日

contain

Illustrated by Kazuhiro Kawakita
containは「含む」「入っている」という動詞。日本語のコンテナ(英語はcontainer)は「入れもの」「容器」である。語源はラテン語のcontinereで、英語ではhold together(一緒に保つ)、enclose(囲む)。これが軍事用語に転用され、「封じ込める」「抑制する」という意味で使われる。カタカナ読みは「カンテイン」。
東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故が、世界の注目を集めている。その最大の関心事はnuclear meltdown(原子炉の炉心溶融)であり、英語メディアはいっせいに、“Japan works to contain nuclear reactor meltdowns.”(日本は原子炉のメルトダウンを食い止める作業をしている)などと報じた。
カナダのグローブ・アンド・メール(3月14日付)は、“Battle On to Contain Japan’s Nuclear Threat”(日本の核の脅威を封じ込める戦いは続く)と報道。その戦いとは、“Nuclear plant operators were flooding shut-down reactors with cold water, including sea water in some cases.”(原子力発電所の管理者らは、停止した原子炉に冷水、場合によっては海水も浴びせていた)というもの。自衛隊、消防、警察の関係者も加わって作業は続けられた。その理由は、“To keep temperatures down and prevent explosions that could spread radioactive contamination across the country.”(温度を低く保って、放射性汚染が各地に広がる恐れのある爆発を防ぐため)である。
だがその後、“New Reactor Fire as Japan Works to Contain Threat”(日本が脅威を封じ込める作業をする中で、新たな原子炉の火災=3月15日付AP通信)という事態になった。作業は難航し、放射線が外部に流出。ドイツ通信社(同日付)は、“Japan N-Reactor Containment May Be Damaged, Says IAEA”と伝えた。IAEAはInternational Atomic Energy Agency(国際原子力機関)で、ウィーンに本部がある。containmentは「封じ込め」という名詞。「日本の原子炉の封じ込めに被害のもよう」とIAEAが言ったのは、放射線の流出を防ぐ格納容器が損傷したことを指す。
さて、ブルームバーグ(同日付)は、“BOJ Fails to Contain Investor Panic as Nuclear Risk Rises”と報道。BOJはBank of Japan(日本銀行)で、「核のリスクが高まる中で、日銀は投資家のパニックを抑制できない」という。放射線流出のリスクが高まり、株式市場が暴落するなど金融市場の混乱を防げなかったことを示している。
さて、containmentは、外交では「封じ込め政策」のこと。第2次大戦後、米国はソビエト連邦を新たな全体主義への挑戦と見て、政治、経済、軍事力を駆使して共産主義勢力の拡大を封じ込めようとした。その結果、冷戦(Cold War)が続くが、nuclear weapon(核兵器)を使ったHot War(熱戦)は何とか阻止されたのである。The Sankei Shimbun (May 28 2011)