Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
21世紀のダンディズムを表す新語。metropolis(大都市)のmetroと性愛を表す接尾辞のsexualを組み合わせた形容詞、名詞で、1994年に英ジャーナリストのマーク・シンプソン氏が創り出した。「都会に住んで、一流のブランド店やヘアドレッサー、ジムに通う若い男性で、表向きにはgay(男同士の同性愛)、straight(同性愛でない)、bisexual(男性も女性も愛する)であるかを問わず、本心は自分自身を性愛の対象とするナルシシスト」と定義付ける。
この言葉に当てはまる人物として、シンプソン氏はサッカーW杯・イングランド代表チームの主将、デビッド・ベッカムを例示。「Becks(ベッカムの愛称)は、サッカーの派手なプレーとともに、毎週のように違った髪形で登場し、雑誌の表紙で裸体を披露することで有名だ」(「Metrosexualに出会う」=2002年7月22日)と解説している。
metrosexualは米国へ輸出されて、masculinity(男らしさ)の新たな表現形式としてメディアで論じられ、流行語となった。スポーツやボディービルなどで鍛えた肉体美を誇示することが要素のひとつで、俳優のトム・クルーズ、ブラッド・ピットや、アーノルド・シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事などが該当する。米国方言学会(ADS)は03年に、metrosexualを「Word of the Year」に選んだ。
言葉の持つ意味は時間を追って変化する。この語のニュアンスについて、シンプソン氏は「よいこととは思っておらず、笑い物にするつもりだった」(2004年1月5日)と語る。だが、“生みの親”の意図とは離れ、metrosexualは一人歩きを始める。commercialism(商業主義)の波に乗り、都会暮らしのcool(カッコいい)な男のlife-style(生活様式)を表す言葉に変わった。
「Metrosexual へのスタイル・ガイド、現代の男のハンドブック」も出版された。著者のマイケル・フロッカー氏は、AOLタイム・ワーナーの編集者で、「すべての男は自分を磨くことでよくなる。コンピューターをアップグレードするように、自分自身を新時代のmetrosexualな男性にアップグレードできる」と指摘。とくに服装は大切だとして、どんなシャツやズボンを身に着けるべきか事細かに指南している。時計のベルトは皮のほうが男らしいとか…。
では、metrosexuality(名詞)は、男の自信の表れか、あるいは男の弱さの印か?
シンプソン氏は「両方だ」と答える。「男としてのidentityへの不安が背景にあることは確かだが、一方で、男にとって性的な自信や性的解放を示す言葉になっている」。
思うに、metrosexualityは、私流に訳すと「見てくれの男らしさ」。metrosexualは、「僕の男らしさを見てくれ」といわんばかりの目立ちたがりのことか。The Sankei Shimbun (June 18 2006)
PS:ここに出てくる男たちは、いまやみんなシニアモードに入ったが・・・
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