Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
quackeryは、英和辞書を見ると「いんちき療法」。カタカナ読みは「クワッカリー」。その元になった語はquack。アヒルの鳴き声を表す擬音で、動詞として使うと「クワッ(ク)、クワッ(ク)」と鳴く、という意味。これが名詞になると「にせ医者」「いかさま師」となる。その語源は16世紀のオランダ語のkwaksalver。「salve(膏薬)の行商人」という意味で、アヒルのように声高に膏薬の効能を唱えたが、ちっとも効き目がなかったから、「にせ医者」と蔑まれることになったのだろう。
quackeryは厳密にいうと、医学的に治療できる根拠がない療法や薬のことで、効能を誇張した詐欺まがいの薬なども含まれ、米国では1916年にPure Food and Drug Act(食品医薬品・品質法)が成立するまで野放しだった。17、18世紀には、何にでも効くDuffy’s Elixir(ダフィーの万能薬)などが英国から輸入され大評判になった。そもそも何にでも効く薬などあるはずないが、その時代の人は素直に信じて騙された。そのなごりで、当時、万能薬として喧伝されたsnake oilは、今も「いんちき薬」の代名詞として使う。
さて現在では、quackeryはalternative medicine(民間療法)や健康食品の分野に紛れ込んで蔓延している。いわくmiracle cures(奇跡の治癒)、psychic surgery(心霊手術)、faith healing(信じれば治る)など。また、インターネットや雑誌の広告では、女性向けにweight-loss(減量)が、男性向けにはpenis-enlargement(ペニス増大)が、それぞれいんちき商品を売りつけるための格好のテーマとなっている。とくに流行のダイエット関連の健康食品では、危険な薬剤として米食品医薬品局(FDA)が使用を禁じているものも売られていて、死亡被害まで出ている。
そこで、quackeryを監視するために設立されたNPOの老舗が、Quackwatch。1997年からはウェブサイトも運営しており、問題のある療法や健康食品などを調査し、結果を公表するとともに、被害に遭わないように注意を呼びかけている。
だが、quackeryの被害は後を絶たない。最近は、科学技術の急速な進歩で、「新しく開発された療法」と言われると、よほどの専門家でない限り判断がつきかねて、だまされるケースが多い。science(科学)にもとづくという謳い文句も、うっかり信用できない。科学に名を借りただけのpseudo-science(似非科学)が横行しているのだ。
似非科学の特徴は、科学的な根拠を示さず、証明もなしに超常現象や神秘的な理論を説くところにある。とくに、~energy(~エネルギー)には要注意。いわく“psycho-spiritual energy”(心霊的エネルギー?)とか、“biocosmic energy”(生物宇宙エネルギー?)とか。“Science cannot explain.”(科学では説明できない)などと効能が説明してある場合は、似非科学に間違いなく、眉につばを付けてかからなくてはいけない。The Sankei Shimbun(October 22 2006)
0 件のコメント:
コメントを投稿