Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
masterは、日本語でも「マスター」、「親方」「名人」などトップクラスの人物を指し、動詞として「支配する」などの意味で使う。mindは、「知性」「知力」。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、mastermindは“an outstanding or commanding mind or intellect”(ずば抜けた、支配的な知性)または、そうした知性を備えた人物。本来はよい意味で使われたが、こんな人物が犯罪に加担した場合、とんでもない悪事を企むことになり、今度は悪い意味で「黒幕」になる。また、mastermindは動詞として「黒幕として背後で画策する」という意味でも使う。
米ABCニュースは2011年5月1日、“Osama bin Laden, hunted as the mastermind behind the worst terrorist attack on U.S. soil, has been killed, President Obama announced tonight.”(米本土での最悪のテロ攻撃の背後にいる黒幕として追われていたウサマ・ビンラーディンが殺害された、とオバマ大統領が今夜発表した)と報じた。米国での最悪のテロ攻撃とは、もちろん2001年の9・11中枢同時テロ事件。それまではMr. bin Laden(ビンラーディン氏)と呼ばれたが、あの事件の容疑者と認定されてからは、“9/11 mastermind”(9・11の黒幕)“terrorist mastermind” (テロリストの黒幕)などと称されるようになった。後者は、事件の実行犯とされる国際テロ組織アルカーイダの黒幕という意味である。
トルコの英字紙ヒュリエット・デイリー・ニューズ(2011年5月3日付)は、オピニオン面で、“Why bin Laden had his fans?”(なぜ、ビンラーディンにはファンがいたのか)との記事を掲載した。“The death of bin Laden was comforting news for the billions around the world who saw him as the mastermind of terror.”(ビンラーディンの死は、彼をテロの黒幕と見なす世界中の何十億の人にとってほっとさせるニュースだった)。とくにアメリカ人で、9・11の犠牲者の遺族らが歓喜する気持ちは理解できる。しかし、世界はそんな人ばかりではない。“News from Pakistan and Afghanistan in fact indicate quite a few people in those countries mourn for the man, whom they regarded as a hero who bravely stood up against ‘the imperialists’.”(実際、パキスタンやアフガニスタンからのニュースによると、これらの国々ではかなりの人々が彼の死を悼んだ。彼らは、その人を〝帝国主義者〟に対して敢然と立ち上がったヒーローと見なしていたのだ)と指摘した。
そして、ニュージーランドのサンデー・スター・タイムズ(2011年5月8日付)は、“Osama bin Laden is dead, but the legacy of the 9/11 terrorist attacks he masterminded live on around the globe.”(ウサマ・ビンラーディンは死んだが、彼が企てた9・11テロ事件の遺産は地球全体で生き続けている)と述べた。「テロとの戦い」は終わりそうにない。(May 20、2011)
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