2011年10月30日日曜日

hurt locker


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 “The hurt locker”は、2010年の米アカデミー賞の作品賞を受賞した映画の題名。邦題もカタカナ読みで「ハート・ロッカー」だが、“What is a ‘hurt locker’?”(ハート・ロッカーとは何か)という疑問がアメリカで巻き起こっている。
 映画は、イラクを舞台に、反政府武装勢力やテロリストらによって仕掛けられたroadside bombs(道端に仕掛けられた爆発物)を取り除く米軍の爆発物処理班(EOD)の物語を描いている。“War is a drug.”(戦争は麻薬だ)―最初に現れるこの言葉は、処理作業にのめり込むあまり、周囲を危険に陥れる主人公の“戦争中毒”ぶりを示す。
 脚本を書いたマーク・ボール氏は、2004年末にバグダッドで記者として米軍に加わり、EODを取材した経験を持つ。彼はニューヨーカー誌(昨年7月10日付)のインタビューに答えて、“If a bomb goes off, you’re going to be in the hurt locker. That’s how they used it in Bagdad.”(もし爆弾が爆発したら、ハート・ロッカーに陥る。バグダッドではそんな風に使っていた)と述べ、言葉の意味は人によって少々違うが、と前置きした上で、“It’s somewhere you don’t want to be.”(それは、居たくないところだ)と説明している。
 そこで、ランダムハウス米俗語歴史事典(1997)を引いてみた。すると、hurt lockerは米軍の俗語で、起源はベトナム戦争にさかのぼるという。in the hurt lockerという慣用句として使われ、locker(ロッカー、鍵の掛かる戸だな)をbag(袋)やseat(座席)に置き換えた類似表現もある。
 問題はhurtの意味。「傷つける」「痛む」という動詞では、“Where does it hurt?”(どこが痛い?)などと使うが、ここでは名詞が元になっていて、“trouble or suffering, especially deliberately or callously inflicted”(困難や苦痛、とくに意図的に、あるいは情け容赦なく課せられたもの)と定義。1971年には、米軍の訓練教官が“I’ m gonna put the hurt on you trainees!”(見習生諸君、君たちに試練を与える)と言ったそうだ。時代が下って1991年の湾岸戦争の時には、“If we don’t deal with Saddam right here…we’re all gonna be in a world of hurt.”(サダム・フセインをここでやっつけないと…われわれは皆大きな困難に陥るだろう)という表現が使われたという。
 そこで、in the hurt locker, bag, or seatはいずれも“in trouble or at a disadvantage”(やっかいな状態に、不利な状況に)を指すという。だが、なぜかhurt bagやhurt seatよりも、hurt lockerがよく使われるようになった。思うに、この言葉が一番、入ったら最後、誰かがカギを開けてくれるまで決して抜け出すことができない、息詰まるような閉塞感があるからだろう。
 そこで、新しい使い方を1つ。“Don’t you think this recession is a real hurt locker?”(この不況こそ真のハート・ロッカーとは思わないか)The Sankei Shimbun (March 22 2010)

open carry


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 openは日本語でも「オープンに」、または「おおっぴらに」という。carryは「携帯する」という動詞・名詞。open carryは「おおっぴらに携帯すること」。だが、何を携帯するのかといえばfirearm(銃火器)、とくにhandgun(拳銃)である。カタカナ読みは「オウプン・キャリー」。
銃による殺傷事件が連日のように発生し、銃規制が重大な社会的問題となる一方で、西部劇に登場するカウボーイのように、拳銃を腰に下げて公の場に出る“Open carry movement”(オープン・キャリー運動)が起こっている。
 ウォールストリート・ジャーナル(2010年3月4日付)は、“Stores Land in Gun-Control Crossfire”(銃規制の火花を散らす議論に巻き込まれるチェーン店)との記事を掲載。米国では43州で銃の携帯が容認されているが、そこで約4970店舗を展開するコーヒーショップのスターバックスが、店内に銃の持ち込みを容認したことで、open carryの是非をめぐる議論が巻き起こっていると報じた。
 open carryを主張するのは、pro-gun advocates(銃所持容認派)。その根拠は合衆国憲法修正第2条の一部で、“The right of the people to keep and bear arms shall not be infringed.”(人民が武器を貯え、またこれを携帯する権利は侵してはならない)というもの。この条文は、建国初期の1791年に自己防衛の権利を保障したものだが、時代が変わった今でも改廃されることなく続いている。2008年に連邦最高裁はこれに基づき、首都ワシントンでの銃所持禁止に対して違憲の判断を下した。
 ジャーナル紙によると、Open carry movementは、2004年にバージニア州の銃所持容認派が火をつけて、今や全米に拡大しつつあるという。
 ニューヨーク・タイムズ(2010年2月23日付)は、“Fearing Obama Agenda, States Push to Loosen Gun Laws”(オバマ大統領の方針を恐れて、州政府が銃規制法を緩和へ)と報じた。大統領はgun-control advocates(銃規制派)で、規制強化に乗り出すとの思惑から、保守派が強い州で規制緩和が進んでいるという。実際、バージニア州議会はこのほど、アルコール飲料を提供するバーやレストランでも、concealed carry(銃を隠して携帯すること)を容認する法案を可決した。
AP通信(2009年12月11日付)は、08・09年で南部と西部を中心に24州で47の新しい銃規制緩和法案が可決されたと報じ、その背景には、銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)の活発なロビー活動があると指摘している。
 こうした動きに対して、“Brady Campaign to Prevent Gun Violence”(銃による暴力を防止するブレイディ運動)などの銃規制派は危機感を募らせ、反対の署名運動を展開しているが、銃所持拡大に歯止めがかかりそうにない。コーヒーショップに入るのに、bulletproof vest(防弾チョッキ)が必要な時代なのか?冗談じゃない!The Sankei shimbun(March 29 2010)

Open-carry advocates rally with rifles, long guns in San Leandro

Russ Allen drove to San Leandro on Saturday to attend a rally protesting the recent passage of Assembly Bill 144, the state's ban on carrying unloaded handguns in public.
The Sacramento resident said he became aware of California's open-carry law only recently after a robbery in his apartment complex.
"I disagree with what they're trying to do," said Allen, who had an unloaded Smith and Wesson .40 caliber handgun strapped to his belt. "The Second Amendment clearly states we have a right to bear arms, and it shall not be infringed."
Allen joined about 30 others at the rally, which was organized by the gun rights advocacy group Responsible Citizens of California.
The group says that as a result of the ban on unloaded handguns, which goes into effect Jan. 1, the only recourse is to carry so-called long guns such as rifles and shotguns, which have not been affected under AB 144.
Many who attended the rally carried a rifle or shotgun strapped to their shoulder. With the occasional supportive horn honking from passing motorists, they gathered at the corner of Hesperian Boulevard and Bayfair Drive in San Leandro from about noon to 1 p.m. Saturday.San Jose Mercury News.com (October 22 2011)

2011年10月27日木曜日

American Century


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 American Centuryは「アメリカの世紀」。20世紀をさす言葉として使われる。“for Americans”(アメリカ人にとっては)という但し書きが必要だが、アメリカ人の大きな自信(または、うぬぼれ)を示す言葉である。カタカナ読みは「アメリカン・センテュリー」。
 この言葉を最初に使ったのは、タイム誌を創刊したヘンリー・ルース(1898-1967)。1941年、アメリカが第2次世界大戦に参戦する直前に、姉妹誌ライフの社説で、中立の立場をとってきた米政府に対し、民主主義を世界に広めるため、孤立主義を棄てるよう促した。その中で、“to create the first great American Century”(最初の偉大なアメリカの世紀を創りだすために)と呼びかけた。
 第2次大戦で戦勝国となったアメリカは、戦後、西側自由主義陣営の盟主として、東側社会主義陣営のソ連との間で冷戦を展開したが、ソ連の崩壊とともに“the sole superpower”(ただ1つの超大国)として世界に君臨することになった―というのが、アメリカ人の自信を支える歴史観といえる。
 タイム誌の2010年3月22日号は、“10 Ideas for the Next 10 Years”(今後10年の10の見通し)という記事で、その第1に、“The Next American Century”(次のアメリカの世紀)を掲げている。その結論として、“In fact, the Americanization of the world will characterize the foreseeable future far more than the past.”(事実、今後予測できる未来には、かつて以上に世界のアメリカ化が進むだろう)という。
 Americanizationの元の動詞はAmericanize(アメリカ化する)。この言葉は、日本の戦後を特徴づけている。アメリカの核の傘によってもたらされた“Pax Americana”(アメリカ支配による平和)の下で、戦後復興、さらに高度経済成長を実現して、今の繁栄を築きあげた。その目標は、一言でいえばAmericanizeすることだった。
 現在進んでいるglobalization(グローバル化)は、世界的な規模に拡大するAmericanizationであり、さまざまな摩擦や抵抗があったとしても、“The rest of the world is becoming more like the U.S.”(残りの世界がよりアメリカのようになっていく)という潮流である。そのツールであるインターネット1つをとっても、アメリカで生まれたものであり、アメリカが世界の最先端を行く。
 もっとも、アメリカは9・11米中枢同時テロ以降、イラク、アフガニスタンで戦争を引き起こし、またウォールストリートに端を発する金融危機で世界を混乱に陥れる―などロクなことをしない。「いい加減にしろ」と怒鳴りつけたい気がするが、かといって、アメリカが衰退し、その影響力がなくなるとは考えられない。“Don’t believe the prophets of doom.”(アメリカの破滅を予言する者を信じてはならない)とのご託宣である。
 それだけに、英語を勉強しなくてもよい時代がやってくることは、当面ないようだ。The Sankei Shimbun (April 5 2010)

go for it


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 go for itは、スポーツなどでよく使う慣用表現。命令形が多く、日本語では「行け」「がんばれ」「ブチかませ」などと訳される。カタカナ読みは「ゴー・フォリット」。
 米国史上初めてとなる医療保険制度改革法が成立し、政府は国民皆保険を目指して改革を進めた。だが、野党共和党は、改革にともなう大幅な増税の可能性に反発を強め、2010年11月の中間選挙に向けて、法律の廃止を訴えて攻勢を強めた。 
 オバマ大統領は3月25日、アイオワ州で法律の成立後初めて演説。共和党の改革潰しの動きに対して、“My attitude is, ‘Go for it.’”と語った。すなわち、「私の姿勢は〝ブチかませ〟だ」というわけ。その後、“If they want to have that fight, we can have it.”(彼らが戦うつもりならば、われわれは受けて立てる)と述べ、さらに、“Because I don’t believe the American people are going to put the insurance industry back in the driver’s seat.”(なぜならば、米国民は保険産業をふたたび運転席に置こうとしているとは思わないからだ)と、自分の姿勢についてくわしく説明している。ここで“in the driver’s seat”は、主導権を握ってカジ取りをする立場の意味。
 さて、goは「行く」という動詞で、forは「~のために」とか「~に向かって」という前置詞。go for(~に向かって行く)として「~をやろう」いう意味で使う。 itは「それ」という代名詞だが、とくに何かを指すわけではなく、漠然とした状況、事情などを表す。そこで、go for itは、文字通りでは「それに向かって行く」。ランダムハウス米俗語歴史辞典(1997)は、“go ahead eagerly, especially in a risky or challenging situation”(とくに危険な、または厳しい状況でも、熱意をもって前進する)と定義。命令形は、簡単に言えば“do it”だ。文献での初出は1970年代で、ニュアンスとして「人生の可能性に対する限りない楽観主義」を表しているという。そこで、アメリカンフットボールなどスポーツの試合で、“Go for it!”の大合唱の声援に出合うことになる。
 似た表現にgo for brokeがある。brokeはbreakの過去形だが、昔は過去分詞でもあった。ここでは形容詞的に使われ、bankrupted(破産した)のでwithout money(一文なし)の意味。そこで、go for brokeは、すべてを賭けて一か八かやるということ。カタカナ読みは「ゴー・フォブロウク」。
 go for itにしろ、go for brokeにしろ、さらに勇気を出して挑戦するという決意がその中に見てとれる。そこで例文。“Life is full of choices, if you have the guts to go for it.”(あなたにやろうという根性があれば、人生はいかなる選択もできる)。または“Go for it! The future is promised to no one.”(やろう!未来は誰にも約束されていない)。何が大事かって?ヤル気です。The Sankei Shimbun (April 19 2010)

2011年10月25日火曜日

loopy


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 loopはヒモなどで作る「輪」。輪がいっぱいになったfull of loopsがloopy。すなわち、輪がこんがらがってもつれている状態が想像できる。アメリカン・ヘリテージ辞典は、offbeat(風変わりな)、crazy(狂った)と定義する。さらに、俗語としてsilly(バカな)とかstupid(愚かな)という意味で使われる。カタカナ読みは「ルーピィ」。
 先日、ワシントンで開催された核安全保障サミットをめぐり、ワシントン・ポスト(2010年4月14日付)が、出席した鳩山首相をloopyと呼んで酷評したことが話題となった。原文では、“By far the biggest loser of the extravaganza was the hapless and (in the opinion of some Obama administration officials) increasingly loopy Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama.”
 文中のextravaganzaは、イタリア語起源で音楽やオペラの豪華ショーを意味したが、ここでは「政治ショー」としてのサミット。「サミットでの最大の敗者は断然、不運で(オバマ政権の何人かの役人の意見では)ますますloopyな日本の鳩山由紀夫首相だった」という意味になろう。
この酷評の背景には、迷走する米軍普天間飛行場の移設問題に対する米政府のいら立ちがある。記事は、鳩山首相は5月までに別の提案をすると言ったが、これまで何も出てこない、とした上で、“Uh, Yukio, you’re supposed to be an ally, remember?”(ああ、ユキオ、同盟国であることを覚えておいでか)と問いかけている。ここでloopyをどう解釈するか?
 鳩山首相自身は21日の党首討論で、「私は愚かな首相かもしれません」と認めたが、すぐに言葉を変えて「愚直だったから」とも述べた。
 さて、過去のアメリカにも同じようなケースがある。2002年11月のNATO会議の際に、カナダの報道官が記者団との懇談でブッシュ前大統領を“moron”(カタカナ読みは「モロン」)と呼んだことが報道され、その後“Moron Bush”がメディアにあふれた。moronは、1910 年にアメリカの心理学者がギリシャ語のmoros(英語ではdull=頭が鈍い)から創った専門用語で、7歳から12歳ぐらいの精神年齢と思われる人物を類別するものだったが、後に学術用語としては使われなくなり、stupidとかfoolish(バカな)などの意味の〝悪口〟として残った。
 当時はイラク戦争の開戦前で、ブッシュ氏が先頭に立って各国に圧力をかけ、参戦を呼び掛けていた。反米感情が急速に高まり、外交コミュニティでは同氏を「ネオコンの操り人形」と罵る声が噴出。そのムードが報道官の〝失言〟につながったようだ。結局、報道官はその責任をとって辞任した。
 思うに、一国の代表者が外国のメディアに公然と揶揄されるというのは、実に情けない話だが、揶揄される側にも、それなりの理由があるのだ。The Sankei Shimbun (April 26 2010)

canary in a coal mine


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 canaryは「カナリア」で、coal mineは「炭坑」。canary in a coal mineは、炭坑でカナリアを飼い、有毒ガスを検知した習慣から生まれた慣用表現で、「警告」や「予兆」の意味に使われる。カタカナ読みは「カネァリー・イナ・コウル・マイン」。
 元連邦準備制度理事会(FRB)議長のグリーンスパン氏は2010年3月26日、ブルームバーグのインタビューで、“The recent rise in Treasury yields represents a ‘canary in the mine’ that may signal further gains in interest rates.”(米国債の利回りの最近の上昇は、たぶん金利のさらなる上昇を示す〝予兆〟である)と述べた。ここではa coal mineの代わりにthe mineが使われているが、意味は同じである。
 炭坑の有毒ガスの検知には様々な動物が使われたが、とくにカナリアはメタンや一酸化炭素に敏感なことから、20世紀を通して使われてきた。つまり、坑内にカナリアを籠に入れて持ち込み、さえずりが聞こえるあいだは、換気が十分なので安全。カナリアの異変が脱出の合図になった。
 さて、米国債(10年物)の利回り上昇の背景には、1兆4000億㌦に達する連邦政府の財政赤字があるという。グリーンスパン氏は“I’ m very much concerned about the fiscal situation.”(財政状況を大変懸念している)と語った。赤字の原因は、2008年秋のリーマン・ショック以来の経済危機がもたらした不況による税収の落ち込みと、巨額の景気対策や金融機関などの救済策。同氏は昨年にも、“A consumption tax is a likely response to a widening budget deficit.”(消費税が、拡大する財政赤字に対する答えになるだろう)と述べている。つまり、canary in a coal mineという表現は、問題点がはっきりと認識されて、対策への道筋が明らかな場合に使われる。
 ところが、問題があることは誰の目にも明らかなのに、タブー視されて議論されない場合がある。そんな状況を指す慣用表現が“elephant in the room”(部屋の中の象)。roomの代わりにliving room(居間)なども使われるが、小さな部屋に大きな象が居座っている姿を想像すれば、“It’s so big you just can’t ignore it.”(非常に大きくて無視できない)というニュアンスが分かるだろう。
財政の立て直しは増税問題が絡んでくるので、選挙を前にして議論はタブー。それだけに“elephant in the room”の典型といえる。「国民の生活が優先」などという言葉だけが先行して、常に問題は先送りされる。挙句の果てに起こるのは何か?
 財政規律を失った巨額の赤字は、手綱が外れた雄牛と化してセトモノ店に飛び込んで、“bull in a china shop”となる。小文字で始まるchinaは「陶磁器」で、「はた迷惑な乱暴者」の意味で使う慣用表現。店内で大暴れする雄牛の姿を想像してほしい。事の重大さが少しは分かるはずである…。The sankei Shimbun (May 3 2010)

PS: S&P downgrades U.S. credit rating for first time
By Zachary A. Goldfarb

Standard & Poor’s announced Friday night that it has downgraded the U.S. credit rating for the first time, dealing a symbolic blow to the world’s economic superpower in what was a sharply worded critique of the American political system.

Lowering the nation’s rating to one notch below AAA, the credit rating company said “political brinkmanship” in the debate over the debt had made the U.S. government’s ability to manage its finances “less stable, less effective and less predictable.” It said the bipartisan agreement reached this week to find at least $2.1 trillion in budget savings “fell short” of what was necessary to tame the nation’s debt over time and predicted that leaders would not be likely to achieve more savings in the future.

“It’s always possible the rating will come back, but we don’t think it’s coming back anytime soon,” said David Beers, head of S&P’s government debt rating unit.

The decision came after a day of furious back-and-forth debate between the Obama administration and S&P. Treasury Department officials fought back hard, arguing that the firm’s political analysis was flawed and that it had made a numerical error in a draft of its downgrade report that overstated the deficit over 10 years by $2 trillion. Officials had reviewed the draft earlier in the day.

“A judgment flawed by a $2 trillion error speaks for itself,” a Treasury spokesman said Friday night.

The downgrade to AA+ will push the global financial markets into uncharted territory after a volatile week fueled by concerns over a worsening debt crisis in Europe and a faltering economy in the United States.

The AAA rating has made the U.S. Treasury bond one of the world’s safest investments — and has helped the nation borrow at extraordinarily cheap rates to finance its government operations, including two wars and an expensive social safety net for retirees.

Treasury bonds have also been a stalwart of stability amid the economic upheaval of the past few years. The nation has had a AAA rating for 70 years.
(The Washington Post August 6 2011)

raise the stakes


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 stakeは複数形にするとギャンブルの「かけ金」、ポーカーのチップなどを指す。raiseは「上げる」。そこで、raise the stakesは、チップを積み上げて「かけ金をつり上げる」という慣用表現。リスクや犠牲などを増大させるという比喩にも使う。カタカナ読みは「レイズ・ザ・ステイクス」。
 ウォールストリート・ジャーナル(2010年4月12日付)は“Medical Schools Can’t Keep Up”(医学校がついていけない)という記事で、“The new federal health-care law has raised the stakes for hospitals and schools already scrambling to train more doctors.”(医療に関する新たな連邦法は、すでにより多くの医師の養成に奮闘している病院や学校に対して、さらなる難題を突きつけることになった)と報じた。
 この連邦法は、先ごろ成立した医療保険制度改革法。今後この法律の下で新たに数百万人が医療保険に加入すると、医師不足に見舞われるという。米国医科大学協会(AAMC)によると、アメリカには現在約95万4000人の医師がいるが、“The nation could face a shortage of as many as 150,000 doctors in the next 15 years.”(この先15年間で15万人に及ぶ医師不足に直面しそうだ)と予測。とくに、“The greatest demand will be for primary-care physicians.”(もっとも大きな需要は、プライマリ・ケアにたずさわる医師であろう)。それだけに、医学校はさらに多くの医学生を養成するため、学校での教育や病院での研修制度を大幅に拡張する必要性に迫られている、という。だが、無理な拡張によって、未熟な医師を〝濫造〟するという危険性も大きくなるわけだ。
 さて、昨今はアメリカでも、一発小説でも当てて世に出ようという人が多い。そこで、“Plotting a novel”(小説の筋をつくる)の場合、読者を引きつけるコツが、ずばり“Raising the stakes”。いったい、どういうことだろうか?
 ある小説の書き方のサイトに、こうあった。“When you have your heroine up a tree with lions prowling and roaring below, start throwing stones at her.”(作者は、ライオンが下でうろつきながら吠えている木の上に主人公の女性を想定する場合、まず彼女目掛けて石を投げることから始めよ)。言い換えれば、小説の筋は事態が悪くなることから始め、好転する前にさらに一段と悪化させることによって読者をハラハラドキドキさせ、ページに釘付けにすることができる、と指南している。
 思うに、raise the stakesという慣用表現が生まれたのはギャンブルの世界であるだけに、“High risk, high reward.”(日本語では「ハイリスク、ハイリターン」=リスクが大きいほど見返りも大きい)という考え方が支配的。その行為をめぐって、未来への期待と不安が交錯するところがミソと言えそうだ。The Sankei Shimbun (May 10 2010)

2011年10月14日金曜日

crackdown


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 crackはもともと「バシッ」とか「ビシャ」とかモノが裂けるような鋭い音を表した。動詞として「強打する」という意味にもなり、転じて「砕く」「破る」。crack down on ~で、「(強制手段を用いて)~をビシッと取り締まる」。“The police cracked down on drunk drivers.”(警察は酒酔い運転者を厳しく取り締まった)などという。crackdownはその名詞形で、警察の「手入れ」も指す。カタカナ読みは「クラックダウン」。
 アリゾナ州で2010年4月下旬に、新たな移民規制法が成立、共和党のジェニス・ブリュアー知事が署名した。米メディアは、これを“immigration crackdown”(移民の取り締まり)と呼び、激しい論議が巻き起っている。移民の取り締まりといえば、不法移民(illegal immigrants)が対象となるが、“Arizona’s new law turns all of the state’s Latinos, even legal immigrants and citizens, into criminal suspects.”(アリゾナの新法は、同州のLatinos、合法的移民や市民までも犯罪容疑者に変える=4月30日付ニューヨーク・タイムズの社説)という。
 ここで、Latinosとは中南米出身の「ラテンアメリカ人」で、ヒスパニック系住民を指す。“The statute requires police officers to stop and question anyone who looks like an illegal immigrant.”(その法規は、警察官に不法移民に見える者は誰でも呼び止めて職務質問するように求める)というところが問題。米国において市民でない者は、たとえば旅行者の場合パスポートなど、ID(身分証明書)の携帯を義務付けられているが、警察官には「不法移民に見えるから」という理由でIDの提示を求める権限は与えられていない。だが、アリゾナ州の新法ではこれができるのだ。
 この新法の背景には、“Arizona is the ground zero of illegal immigration.”(アリゾナは不法移民の爆心地)と呼ばれ、中南米からのヒスパニック系の不法移民が多く、麻薬密輸や誘拐などの犯罪が横行、厳しい取り締まりを求める声が高まっていたことがある。
 それにしても、ヒスパニック系住民は今後、ヒスパニックであるという外見で逮捕される恐れがあり、まさに公然とした人種差別の復活につながりかねない。オバマ大統領は、この法律について“misguided”(見当違いだ)と批判。また、タイム誌(2010年4月30日付)は“Arizona Police Split on Immigration Crackdown”(アリゾナの警察は移民取り締まりに意見が割れる)と述べ、警察現場の当惑ぶりを伝えている。
 オバマ政権は、大統領選挙中からimmigration reform(移民政策の改革)を公約に掲げてきたが、医療保険制度改革におとらず難しい問題であるだけに、いっこうに進んでいない。2012年の大統領選挙に向けて、移民問題は台風の目になりそうだ。
(The Sankei Shimbun May 17 2010)

Arizona deputy likens border to war zone at Washington hearing

By Uriel J. Garcia Cronkite News Service
WASHINGTON - Pinal County Sheriff's Office Chief Deputy Steve Henry said Wednesday that when his deputies go to the border they face a situation similar to a warzone in Afghanistan or Iraq.
"The fact that everybody we encounter, almost, is armed. The only difference is that we don't exchange shots with them most of the time," Henry said after speaking to a panel in Washington.
Henry was joined by sheriffs from around the country as part of a discussion panel hosted by the Center for Immigration Studies, an independent organization that advocates for limits on legal and illegal immigration, and the House Immigration Reform Caucus.
Many of those speakers blamed what they called the Obama administration's lax enforcement of border and immigration laws for the problems they are seeing in their communities, many of which are far removed from the border.
The sheriffs, who also came from Iowa, North Carolina and Maryland, said that because drugs are a problem in their communities it is important that immigration officials support them in their efforts to enforce immigration laws.(October 13 2011)

Singer Pablo Montero Blasts Anti-Illegal Immigration Laws in U.S.

Mexican singer Pablo Montero criticized anti-illegal immigration laws that have been enacted in different parts of the United States and asked the White House to give the undocumented a little more help.
The artist, who will appear in concert next week in Arizona, one of the states with the toughest anti-illegal immigration laws, said the U.S. government should understand the hard times immigrants are going through and should stop these laws from being enforced.
"This is the worst - there really have to be a lot of changes because the United States has made so many mistakes," he said at a press conference in Mexico City to introduce his new album, "El Abandonado" (Abandoned One).
(http://latino.foxnews.com/latino/entertainment/2011/10/11)

trigger


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 triggerは、日本語でも「トリガー」と言い、ピストルの引き金のこと。動詞では「引き金を引く」。また、set off(~のきっかけとなる)、initiate、provoke(引き起こす)などの意味で比喩的に用いる。ニュースの英語でも、頻繁に使われる。
 2010年5月6日、ニューヨーク株式市場は全面売りの展開となり、ダウ工業株30種平均が一時、1000㌦近く値を下げた。この原因について、CNBCのマーケット・ニュースは、“Stock Selloff May Have Been Triggered by a Trader Error”(株売りは、トレーダーのミスが引き起こした可能性あり)と報じた。“According to multiple sources, a trader entered a ‘b’ for billion instead of an ‘m’ for million in a trade.”(複数の関係筋によると、トレーダーは、ある取引でミリオン=100万のmとするところを、ビリオン=10億のbと入力した)という。金融取引は今や、ほとんどがelectronic trading(電子取引)であるだけに、うっかりした入力ミスが金融危機の〝引き金〟を引くことになりかねない。
 ところで、ルイジアナ州沖のメキシコ湾で4月20日に石油掘削基地の爆発事故が発生、深刻な被害が広がっている。AP通信(5月6日付)は、事故原因に関して、“Bubble of Methane Triggered Rig Blast”(メタンガスの泡が掘削装置の爆発を引き起こした)と報じた。メタンガスは油井から発生し、掘削用のパイプを上って急激に膨張したとみられるという。その関連記事(5月7日付)では、“(The blast) triggered a gush of as much as 5,000 barrels of crude a day.”(その爆発が日量5000バレルに上る原油の噴出を引き起こした)と述べている。また、ロイター通信(4月30日付)は、“US Gulf Oil Spill Set to Trigger Lawsuit Flood”(米国のメキシコ湾の原油流出が訴訟の洪水を引き起こし始めた)と報じ、原油流出被害に対する損害賠償訴訟に言及している。
 さて、「引き金を引く」は文字通りでは、pull the trigger。共和党の大統領候補だったマケイン上院議員は、イランの核開発問題に関する上院の公聴会で、“The U.S. keeps pointing a loaded gun at Iran but failing to pull the trigger.”(米国は、イランに装てんした銃を向けながら、引き金を引かないままだ=4月14日付のAP)と述べ、核軍縮を進めるオバマ政権に対して、もっと敢然とした態度でイランに立ち向かうべきだと叱咤した。
 こうした発言を聞くと、trigger-happyという形容詞を連想させる。ウイリアム・サファイアの政治辞典は、bellicose(けんか早い)と言い換えているが、この-happyは「幸せな」ではなく、「やたらと使いたがる」という意味で、「すぐに引き金を引きたがる」ということ。何とも物騒な話だが、“be quick on the trigger”(早撃ちができる)が西部劇のヒーローの条件。今なお前近代の銃社会にあるアメリカを象徴する言葉がtriggerだ。(The Sankei Shimbun May 24 2010)

State bear hunts trigger emotions, controversy
By Jeff DeLong

Brian Hubkey of Carson Valley, Nev., sees the chance to stalk a bear with a bow and arrow as an opportunity for outdoor adventure he can share with his family.
"If we're successful, great. If not, so be it," Hubkey says of Nevada's first legal hunt for black bears.He and others are on the hunt for bears in Nevada's mountains, now that the state has become the latest to establish a bear hunting season.
Up to 20 bears can be killed during the season that was approved by Nevada wildlife officials this summer amid widespread disagreement, a candlelight vigil and marches on the governor's mansion. Ten bears had been killed as of this week, halfway through the season, officials say.
"There's been a lot of passion," says Chris Healy, spokesman for the Nevada Department of Wildlife. "In my 25-plus years with the department, it was by far the most controversial decision we've been involved with."
Nevada is one of several states to add or expand bear hunts the past two years. California, Kentucky, Oklahoma and New Jersey have also done so, often resulting in clashes among hunters, wildlife managers and critics of the hunts. Nevada was the 33rd state to adopt a black bear hunting season, according to the hunting organization Safari Club International.
Supporters say increasing populations of bears justify start-up of the hunts.
"Just about everywhere black bears exist they are stable or growing in population. There are a ton of black bears," says Carl Lackey, biologist and bear expert for the Nevada Department of Wildlife.
Others say a growing trend of bear hunting around the country is troubling.
"People don't want to see black bears killed for their heads or their hides," says Andrew Page, senior director for the Humane Society of the United States.
A bear hunt, Page insists, "doesn't solve conflict problems between people and bears" and states are instead bending to the desires of trophy hunters. "It's a highly passionate issue," Page says. "Bears, like no other wild animal, really elicit a good feeling for people. It really upsets folks and rightfully so."
In New Jersey, the state is gearing up for its 2011 bear hunt after 592 bears were killed in December 2010, says Lawrence Hajna, spokesman for the state's Department of Environmental Protection.
Last year's bear hunt, New Jersey's first in five years, followed street protests and an unsuccessful legal challenge.
Hunting can also serve as an effective way to manage bear populations and reduce conflicts where bears wander into neighborhoods, says Nelson Freeman, deputy director of government affairs for Safari Club International.
"It's definitely a success story," Freeman says, adding that sportsmen-funded efforts to restore wildlife populations are working and opening up a "plethora of hunting opportunities."
( USA TODAY October 14 2011)

2011年10月13日木曜日

veteran


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 veteranは日本語でも「ヴェテラン」というが、その場合は“a person who is long experienced in an activity”(ある種の活動を長年経験した人)で、さまざまな分野での「熟練者」を指す。だが、アメリカでは、“a person who has served in the armed forces”(軍隊に務めた人)を指すことが多い。つまり、military veteran(兵役経験者)。日本では「退役軍人」などの訳語があてられる。
 NPR(米公共ラジオ)は最近、“The Impact of War”(戦争の衝撃)というシリーズで“America’s New Veterans: Getting Help Amid Hurdles”(アメリカの新たな兵役経験者たち、さまざまな障害の中で援助を求める=5月10日付)などと現状を報じた。Veterans Day(退役軍人の日=11月11日)といえば、第1次世界大戦の戦勝記念につながるが、ここでいうNew Veteransとは、2001年の9・11中枢同時テロ以降のアフガニスタン、イラク戦争で戦った人々。彼らの中でDepartment of Veterans Affairs(退役軍人省=略称はVA)に対してveteran’s benefits(兵役経験者が受け取る給付金、補償)を求める人が急増しているという。
 とくに問題になっているのは、service-related disabilities(兵役による障害)で、戦闘で手足を失ったり大ケガをしたり、さらにPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、除隊後、職に付けない人が増えていることだ。
 disability benefits(障害者給付金)に対する請求は膨大な数で、“The number of outstanding claims at the VA for service-related disabilities hovers around 500,000.”(兵役関連の障害に対する給付金請求は際立っており、その数は約50万件に及ぶ=5月11日付)。審査が追いつかず、40%近くが決定までに4カ月以上待たされるという。しかも、申請は増え続けており、今後4、5年間で100万人に上ると見られる。
 米国にとってveterans affairs(兵役経験者の諸問題)がいかに深刻であるか?
シンセキ退役軍人長官は“Veterans are a disproportionate share of the nation’s homeless, jobless, mental health depressed patients, substance abusers, suicides.”(兵役経験者は、米国のホームレス、失業者、精神障害者、アルコール中毒や麻薬などの乱用者、自殺者の中で不釣り合いなほど大きな割合を占める)と述べている。
 米国は第2次大戦後も、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中南米・中近東・アフリカ諸国への派兵、さらに近年の湾岸戦争、アフガニスタン、イラク戦争と、世界のどこかで戦争を繰り広げて来た。
 ところが、国のために戦いながら、今晩寝るところさえないhomeless veteranの数は10万人を超える、と退役軍人省は推定している。さらに150万人のveteransが貧しい暮らしをしており、いつホームレスになるか分からない状態にあるという。軍事大国アメリカの負の遺産である。The Sankei Shimbun (May 31 2010)

antebellum


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 antebellumの語源はラテン語で、anteは英語のbefore(前に)で、bellumはthe war(戦争)。つまり、before the war(戦前)。ただし、ここでいう戦争はCivil War(南北戦争=1861~1865)である。この戦争を経て、南部と北部に分かれていた米国が統一された。antebellumは、日本史では時期的に江戸時代後期に当たるが、同じようなnostalgia(郷愁)をともなって、よく話題に上る。カタカナ読みは「アンティベラム」。
 antebellumnについて最近話題になったのが、初代アメリカ大統領のジョージ・ワシントン(1732~99)が、図書館で借りたまま返すのを忘れていた本のエピソード。ロイター通信(2010年5月20日付)は、“George Washington’s Library Book Returned 221 Years Late”(ジョージ・ワシントンが借り出した図書館本が221年ぶりに返却された)と報じた。ワシントンが1789年10月5日にニューヨークの図書館から借りたE・ヴァッテル著“The Law of Nations”(『国際法』)が、最近になってバージニア州のマウントバーノンに現存する邸宅から見つかった。これまでの延滞料を計算すると30万㌦に上るという。このニュースはニューヨークの地元紙が最初に報じたが、次第に注目を集め、ついに、本を返却された図書館では5月19日に記念のセレモニーを行ったという。
 ところで、南北戦争の後の「戦後」は、「後」を意味するpostが付いて、postbellumという。戦争から約150年が経とうとしているが、AP通信(5月19日付)は、“Civil War Soldier from Wisconsin Awarded Medal of Honor for Battle of Gettysburg Heroics”(ウィスコンシン出身の南北戦争の兵士、ゲティスバーグの戦いでの勇敢な行為によって名誉勲章を授与される)と報じた。その人はアロンゾ・カッシング氏で、ウエストポイントの陸軍士官学校を卒業して北軍に参加。ゲティスバーグでは、南軍1万3000人の侵攻に対して、110人の兵士と6台の大砲を指揮して果敢に応戦し、1863年7月3日、22歳で戦死したとされる。
 それにしても、なぜいま勲章授与なのか。アメリカにも日本の幕末ファンと同様、Civil War History buff (南北戦争歴史ファン)と呼ばれる熱烈な愛好者がおり、彼らが兵士の子孫や出身地の住民と一緒に公的な顕彰を求めて陳情を行う。名誉勲章は大統領から直接授与される最高位の勲章で、国防総省によると、南北戦争の兵士ではこれまで1500人以上に授与されており、直近の授与は2001年だったという。
  さて、最近アメリカのcountry popで大人気なのが、Lady Antebellumの男女3人組。そのヒット曲“I Run to You”で、こう歌っている。“This world keeps spinning faster, Into a new disaster so I run to you”(この世はますます速く回り続けて新たな災難に突入する。だから僕は君の元へ駆けて行く)。今の世相をよく表しているではないか。The Sankei Shimbun (Jun 14 2010)

reboot


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 rebootは日本語でも「リブート」という。コンピューター用語で「再起動」。詳しくいうと、“To reboot a computer is to start it up again after a computer crash.”(コンピューターを「再起動する」とは、クラッシュした後で再び立ち上げることである)。動詞・名詞として比喩的にも使う。別の言い方ではrestart(再スタート)。
 このところ、アメリカの映画界はヒット作品に恵まれず低迷しているが、 NPR(米公共ラジオ=2010年6月4日付)は、“The point of a cinema reboot is most often to refresh a popular franchise by bringing in a new face.”(映画の〝再活性化〟のポイントは、ニューフェイスを投入して人気の興業作品をリフレッシュするに限る)と述べている。ハリウッドで今rebootの焦点になっている作品は、人気シリーズの“Spider-Man”(スパイダーマン)で、主人公のピーター・パーカー役としてトビー・マグワイアの後釜探しが行われた。

(注:Spider-Man Reboot
The Amazing Spider-Man is an upcoming American superhero film based on the comic book of the same name that is currently in post-production. It is the fourth Columbia Pictures film based on the Marvel Comics character Spider-Man and the first film in a rebooted Spider-Man film franchise. The film is being directed by Marc Webb. The cast includes Andrew Garfield as Peter Parker, Emma Stone as Gwen Stacy and Rhys Ifans as Dr. Curt Connors. The film will portray Peter Parker as he is developing his super powers in high school. It is scheduled to be released in 3D and IMAX 3D on July 3, 2012.)

 今日、rebootは映画やTV番組などについてよく使われるが、ハイテクな語感と、前向きな積極性を感じさせる言葉である。
 rebootは、コンピューターの普及にともなってglobal Englishになった。アイリッシュ・タイムズ(2010年6月4日付)は、“Japan’s Ruling Party to Pick New Leader and PM (Prime Minister)”(日本政界の与党は新指導者と首相を選ぶ)との記事で、“Most of the DPJ (Democratic Party of Japan) executive, including Mr. Ozawa, will resign today in an attempt to reboot the party before an upper house election scheduled for July.”(7月に予定される参議院選挙を前に党を一新するため、小沢幹事長ら民主党執行部の大半は今日辞任する)と述べた。すでに、既報となったが、鳩山首相で〝クラッシュ〟してしまった民主党政権は、菅首相に代わって〝再起動〟を図るというニュアンスが込められた。

 (注:Reboots!  Three Prime Ministers in two years. Mr. Hatoyama was crashed. Reboot! Mr.Kan was crashed. Reboot! Now Mr.Noda September 2011)

 ところで、rebootのre-は「再び」を意味する接頭辞。restartやrefreshのre-も同じ。一方、bootは元々長靴のブーツを表したが、上部にあるつまみ皮(bootstrap)を引っ張って足を入れ、長靴をはかせる行為を指すようになった。コンピューター用語では、オペレーティング・システム(OS)を立ち上げる(load)ことをbootと呼ぶ。今では、プログラムをstartする意味で広く使われる。
 さて、人間も時としてクラッシュしてしまうことがある。最も簡単なrebootの方法が“Breathe!”(深呼吸せよ)。大抵の人は呼吸が浅いと言われる。これを英語でいうと、“Most people are ‘shallow breathers.’” それでは二酸化炭素が血液中にたまって、頭の機能が低下しやすい。そこで、“By taking in a few deep breathes, you will get the oxygen to reboot yourself.”(数回深呼吸して、自ら再起動するための酸素を取り入れよう)というわけ。Breathe and reboot yourself!
The Sankei Shimbun(Jun 21 2010)

2011年10月12日水曜日

apples and oranges


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 appleは「りんご」、orangeは「オレンジ」で、いずれも果物ではあるが、その違いは歴然としている。そこで、compare apples and orangesは、本来比較できないものを比較する、日本の「月とスッポン」に近い慣用表現である。apples and orangesはその略で、カタカナ読みは「アプルズ・アン・オレンジズ」。
 ポリティコ(2010年6月9日付)は、“Arena Digest”(政界ダイジェスト)のコラムで、“Is Obama like Carter?”(オバマはカーターに似ているか?)との疑問を投げかけた。カーターとは、ウォーターゲート事件のあと、政治刷新を訴えて当選した民主党のカーター大統領。中東和平を積極的に進めたが、急速な軍縮政策によって軍事プレゼンスが低下し、イラン革命(1979)を招いてしまった。その後、イランの米大使館人質事件で人質救出作戦に失敗、ついに再選を果たせなかった。つまり、“Carter is now the shorthand for the failed presidency.”(カーターは今や、失敗した大統領を表す略号だ)というわけ。
 “Yes, We can!”を旗印に変革を訴えたオバマ氏も、経済の立て直しが順調に進まず、支持率は今や50%を切るようになった。それに追い打ちをかけたのが、メキシコ湾の原油流出事故。被害は拡大し続けており、危機管理能力が厳しく問われている。この事故が〝命取り〟になるのではないか、との見方も出ており、11月の中間選挙で民主党は、苦しい局面に立たされそうだという。
 これに対して、“Whatever you think of the Obama administration’s performance, the comparison to President Carter is apples and oranges to my mind.”(オバマ政権の実績について何と考えようと、カーター大統領との比較は、見当違いの比較、と私には思える)というのが、オバマ支持者の意見。原油流出事故はオバマ氏に直接責任があるわけではなく、支持率はなお回復の余地がある。さらに、野党共和党には、カーター氏を破ったレーガン大統領のような有力なリーダーが、今のところ現れていない、という。
 ところで、apples and orangesの違いは、「月とスッポン」ほど明確であろうか?どちらも同じ果物と考えられるのではないか?
 実は、この慣用表現の用法については、アメリカでも議論がある。たとえば、“Comparing the average wages of workers and managers is like trying to compare apples and oranges.”(労働者と管理職の平均賃金を比較するのは、りんごとオレンジを比較するようなもの)というのが適切かどうか?
 そこで、プロの作家の模範的な使い方を。スティーブン・キング氏は、次のようにいう。
“Books and movies are like apples and oranges. They both are fruit, but taste completely different.”(本と映画はリンゴとオレンジのようなもの。両方とも果物だが、味はまったく違う)。The Sankei Shimbun (Jun 28 2010)

cut corners


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

cutは「切る」という動詞。cornerは「角」。cut a cornerは、角を曲がらずに横切るので、「近道をする」という慣用表現。これが複数形のcornersになり、「何度も近道する」(take shortcuts)となると、「そんなに手抜きして大丈夫か」といいたくなる。転じて、「手を抜く」「切り詰める」ことを意味する。カタカナ読みは「カット・コーナーズ」。
AP通信(2010年6月15日付)は、メキシコ湾の原油流出事故の原因に関連して、“Documents: BP Cut Corners in Days before Blowout”(文書では、英BPは爆発事故前の数日間に〝手抜き〟をしていた)と報じた。この文書は、米下院エネルギー商業委員会に提出された事故原因を裏付ける内部文書(internal documents)。それによると、“BP acted to cut costs in the weeks before the catastrophic blowout in the Gulf of Mexico as it dealt with one problem after another on the doomed rig.”(メキシコ湾の壊滅的な爆発事故の前の数週間に、破滅をもたらした油井の掘削施設に次から次へと問題が起こったが、BPはコスト削減に動いた)という。
たとえば、海底にある油井を固めるためのセメント工事を請け負った会社が、油井に通す鋼管を正確に中央に設置するため、“centralizer”(センターリング装置)を21機使うように推奨したが、BPはこれを拒否して6機しか使わなかったという。その結果、セメント工事が不良に終わった可能性が指摘されている。
ほかにも、cut costs(経費削減)のためにcut corners(さまざまな手抜きが行われた)とされ、内部文書には、BPの技術者が事故の6日前に、この油井について“nightmare well”(悪夢の油井)と批判した電子メールまで含まれているのだ。
BPは、手抜きによって数百万ドルの経費を節約しようとしたが、事故を起こしたことで、被害補償のために少なくとも200億㌦の拠出をオバマ政権に約束するはめになった。“Penny wise and pound foolish.”(一文惜しみの百失い)ということわざがピンと来るが、破壊された地球環境を考えると、“Millions wise and trillions foolish.”(数百万㌦を惜しんで数兆㌦の損害)と糾弾したくなるのは、米国民だけではないだろう。
ところで、景気回復に縁のない庶民としては、家計を切り詰める以外にない。そこで、最近アメリカで広まる“How to Cut Corners Effectively”(効果的に切り詰める方法)。“No smoking and no drinking.”(タバコと酒をやらない)は言わずもがなで、健康を増進させ、一挙両得。“Bring your lunch to work.”(職場に弁当を持っていこう)は、外食より安くつき、目に見えてカネが節約できる。さらに、“Do your grocery shopping late in the evening.”(食料品の買出しは夕方遅くにしよう)。つまり、スーパーで閉店前の見切り品を安く買う―など。家計の防衛対策に国境はない。The Sankei Shimbun (July 5 2010)

Con-Dems 'cutting corners over nuclear plants'

Coalition ministers were accused of jumping the gun today by pushing through a new generation of nuclear power stations without learning the lessons of the Japanese Fukushima disaster.Nuclear chief inspector Dr Mike Weightman is expected to deliver his final report into the implications of the disaster for the British nuclear industry this week.

But Greenpeace believes that the probe has been carried out too quickly to learn the lessons from the ongoing Fukushima crisis that began with an earthquake and tsunami in March.It says that the government jumped the gun by signalling the go-ahead for eight new nuclear plants in June before the Mr Weightman reported his findings.Greenpeace has made a number of submissions to the inquiry regarding the time scale of the report and lack of transparency.

It also argues that the interim report did not provide proper information on radiation exposure and it said lessons could be learnt from Fukushima over spent nuclear fuel stores.And the group has launched a judicial review bid over the decision to give the new nuclear reactors the green light before the final report was published.Greenpeace spokeswoman Louise Hutchins said: "It's not really clear what Mr Weightman's final report is for. The government already jumped the gun and gave the green light to new reactors in Britain without bothering to wait for Mr Weightman's final conclusions on lessons from the Fukushima disaster. The rushed timetable set for this final report looks like a dangerous attempt by the government to cut corners and silence voices of concern, in order to keep pushing forward with its favoured technology."(Morning Star October 9 2011)

poor judgment


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 poorは「貧しい」という形容詞。語源はラテン語のpauper(英語では「貧しい人」という名詞)で、転じて、「乏しい」「不十分な」から「哀れな」「かわいそうな」まで広い意味で使う。judgmentは「判断」。poor judgmentは、思慮を欠いた「浅はかな判断」と訳される。カタカナ読みは「プア・ジャジメント」。
 オバマ大統領は2010年6月23日、アフガニスタンに駐留する米軍のトップ、マクリスタル司令官を解任した。音楽・政治雑誌“Rolling Stone”(電子版6月22日付)に掲載された“The Runaway General”(逃亡将軍)というインタビュー記事で、同司令官が側近らと共にアフガニスタン戦争の内情を暴露し、オバマ政権を痛烈に批判したためだ。
 「ポリティコ」(同日付)の“Obama: Gen.  Showed ‘Poor Judgment’”(オバマ大統領、「司令官は〝浅はかな判断〟をした」)の記事によると、マクリスタル氏はすぐに“It was a mistake reflecting poor judgment and should never have happened.”(それは浅はかな判断による誤りで、起すべきではなかった)と謝罪したが、〝後の祭り〟。オバマ大統領は翌日、ホワイトハウスに司令官を召喚、“The conduct represented in the recently published article does not meet the standard that should be set by a commanding general.”(最近出た記事に表れた行為は、司令官としてあるまじきことだ)と解任の理由を示した上で、ペトレイアス元イラク駐留米軍司令官を後任に充てる人事を発表した。
 マクリスタル氏解任の背景として、アフガニスタン戦争が泥沼化の様相を呈しており、2010年11月の中間選挙を控えて誰かが責任を取らなければ収まりがつかないことが挙げられた。だが、ワシントン・ポスト(6月24日付)は、“McChrystal’ s Lack of Political Skills Led to Downfall”(マクリスタル氏の政治的手腕の欠如が失脚につながった)との記事を掲載し、“At times the general’ s openness, especially with the news media, got him in trouble.”(将軍の、とくにニュース・メディアに対する開けっぴろげなところが、時としてトラブルを招くことがあった)と指摘した。
 “I am sorry for my poor judgment.”(浅はかな判断を悔いています)というのは、ちょっとした過失について謝罪する言い方である。意図的で、重大な結果を招いた場合は、“To call it a lapse of judgment is beyond an understatement.”(それを判断の誤りと呼ぶのは、わざと控えめに言い過ぎだ)などと非難されるから、使い方には要注意。
 ところで、poor judgmentの反対はgood judgment(すぐれた判断)だが、“Good judgment comes from experience, and experience ― well, that comes from poor judgment.”(すぐれた判断は経験から生まれる。そして、経験は、浅はかな判断から生まれる)という諺もあるのだ。The Sankei Shimbun (July 10 2010)

Johnny Depp,the Pirates of the Caribbean star, apologises for his poor judgement

By Daily Telegraph Reporter10:38AM BST 06 Oct 2011
In an interview with Vanity Fair magazine he remarked how he found being photographed “just weird” and added: “You just feel like you're being raped somehow. Raped. The whole thing.”
He later acknowledged his poor judgement after being criticised by the Rape, Abuse & Incest National Network (RAINN), a US organisation which works with sexual assault victims.
In a statement he apologised for “a poor choice of words on my part, in an effort to explain a feeling”.
He said he was “truly sorry for offending anyone in any way - I never meant to". “I understand there is no comparison and I am very regretful.”
“In an effort to correct my lack of judgement, please accept my heartfelt apology,” the actor added.

2011年10月10日月曜日

deep cover


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 coverは「覆い」「カバー」という名詞だが、ここでは諜報用語で、「外国で活動するスパイに提供される偽の名前や身分」(ボブ・バートン著『トップ・シークレット―スパイ・諜報辞典』)。形容詞のdeep(深い)を付ければ、「名前や身分を偽り、何年もかけて潜入する」という意味になり、そうしたスパイをdeep-cover agentという。カタカナ読みは「ディープ・カヴァー」。
 AP通信(2010年6月29日付)は、“The FBI has arrested 10 people who allegedly spied for Russia for up to a decade-posing as innocent civilians.”(FBIは、無辜の民間人になりすまして、10年間にも渡ってロシアのためにスパイ活動をしていた容疑で10人を逮捕した) と報じた。その中で彼らをdeep-cover agentsと呼び、“trying to infiltrate U.S. policymaking circles and learn about U.S. weapons, diplomatic strategy and political developments.”(米国の政策決定組織に潜入し、兵器や外交戦略、政治的進展について知ろうとしていた)と述べている。
  その後、事態は急展開。ワシントン・ポスト(7月10日付)は、“U.S. and Russia Complete Spy Swap”(米露がスパイ交換を完了)との記事で、“They were traded for four Russians who were jailed for years because of their contacts with the West.”(彼ら=10人のスパイは、西側と接触したために数年間投獄されていた4人のロシア人と交換された)と報道。この4人の内1人はKGBの役職にあって、米国のためにスパイ活動をしていたdouble agent(二重スパイ)だったという。
興味深いのは、ここに出て来る“the West”。これは冷戦時代に、共産圏に対する自由主義陣営を指した言葉だ。当時は、米国と旧ソ連のスパイ合戦が活発で、各国でのスパイ摘発も枚挙にいとまがなく、捕まえたスパイの交換も行われた。今回の一連の事件は、冷戦は終わったとされながら、国際社会では相変わらず厳しい諜報合戦が続いていることをあらためて印象付けた。
さて、マスター・スパイと呼ばれたアレン・ダレス元CIA長官は、著書“The Craft of Intelligence”(『諜報の技術』)で、スパイの心得をこう述べている。
 “Someone has to get close enough to a thing, a place or a person to observe or discover the desired facts without arousing the attention of those who protect them.”(欲しい事実=情報を観察あるいは発見するためには、それを守ろうとする人たちの注意を引くことなく、あるモノ、ある場所、ある人に十分に近づかなければならない)
 この言葉は、ジャーナリストとして取材する場合にも大切な教訓を含んでいるように思う。取材先の警戒心を解き、深い信頼関係をつくることができなければ、決して真実に近づくことはできない、と読み替えられないだろうか?The Sankei Shimbun (July 26 2010)

cleanup


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 clean(きれいにする)にupを添えたclean upは、「すっかりきれいにする」。cleanupと一語にすると名詞になり、意味は「大掃除」「一掃」など。野球で「4番」を指すのは、打点が期待できる打者が置かれ、塁上の走者を「一掃」する攻撃の要であるから。カタカナ読みは「クリーナップ」。
 最近、最も深刻なニュースが、“the Gulf cleanup”(メキシコ湾の大掃除)の行方。4月に起きたメキシコ湾の原油流出事故による被害は今も続いている。英石油大手のBPは、やっと流出箇所に〝ふた〟をしたが、完全に止めるまでに至っていない。ニューヨーク・タイムズ(2010年7月17日付)は、“After Oil Cleanup, Hidden Damage Can Last for Years”(石油を一掃した後、隠れた被害は何年も続くだろう)と報じた。だが、“How long will it last?”(どれくらい続くのだろうか)
参考になるのが、1989年3月に米アラスカ州プリンス・ウィリアム湾で起きたタンカー、エクソン・バルディーズ号の座礁事故。当時、米国史上最悪の原油流出事故といわれ、約1100万ガロンの原油が流出、周辺水域が汚染された。その事故では、“By the late 1990s, the oil seemed to be largely gone, but liver tests on ducks and sea otters showed that they were still being exposed to hydrocarbons, chemical compounds contained in crude.”(1990年代末までに大方の油は消え去ったが、カモとラッコの肝臓をテストした結果、彼らがなお原油に含まれる炭化水素の化合物に曝されていることが判明した)という。つまり、被害は10年以上続いたわけだ。
 今回の事故は、もちろん史上最悪を更新。マイアミ・ヘラルド(7月19日付)は、“Nature’s Burden : Clean Up Bulk of Spill”(自然の負担:原油流出の大掃除)の記事で、今回の事故で流出した原油量を2億ガロンと見積もり、人間が掃除できる量をはるかに超えていると指摘する。その上で“The ultimate cleanup will be left to nature and to colonies of oil-chomping microbes.”(究極の清掃は、自然や石油を食べる微生物の群生に任せることになろう)と述べている。
 実際、掃除というものは、きちんとやろうとすれば、膨大な時間を費やさねばならない。
そこで、アメリカ流のハウ・ツーでは、“Clean Up Your House in 30 Minutes or Less”(30分以内に家をすっかりきれいにせよ)がインターネットにあった。そんなことできるわけがない、と思うのが〝素人〟の考え。突然、電話が掛かって、客が来る場合はどうすればよいか?
 “Part of your plan will be to clean the ‘guest ’ areas of your home.”(清掃プランの主要部分は、家の中のゲスト・ゾーンを片付けること)。つまり、客が使う所だけを掃除する。そして、“The trick is to hide everything else.”(コツは、その他のすべてを隠してしまう)。うちでよくやる手です。The Sankei Shimbun (August 2 2010)

Gulf Cleanup Needed, Government Report Says

HOUSTON (AP) -- Coastal states must work together to restore key elements of the Gulf of Mexico that have made it a backbone of the U.S. economy before the ecosystem becomes so weak and polluted that it is no longer habitable for animals or people, according to a preliminary report released Wednesday.

The Gulf Coast Ecosystem Restoration Task Force, established by President Barack Obama after last year's catastrophic oil spill, provided an executive summary of the report to the Associated Press. The draft report seeks to pinpoint the biggest challenges and most pressing issues facing the Gulf and also provide the five coastal states - Florida, Louisiana, Texas, Mississippi and Alabama - with a restoration strategy.

"One of the results of all the meetings is a real sense of urgency," EPA chief Lisa Jackson told The AP. "Person after person came in and said `we're losing the Gulf.' None of it is irreversible, but the longer we wait, the harder it will be."

The Gulf of Mexico's ecosystem, long the victim of upstream efforts to allow easy ship navigation and prevent Mississippi River flooding, has been in a state of environmental decline for decades.

BP's oil spill, the largest offshore spill in U.S. history, drew public attention to the slow, persistent damage done to the area that produced 30 percent of the nation's gross domestic product in 2009. The sudden fear that the oil would permanently harm the marine and coastal area created an urgency to fix those woes.

The task force, made up of representatives from an array of federal and state agencies, laid out four goals requiring immediate attention: restoring and conserving habitat; restoring water quality; replenishing and protecting coastal and marine resources and enhancing community resilience.

The committee also demanded that Congress, which has still failed to dedicate funding to restoration efforts, dedicate "significant portions" of penalties from the oil spill to the recovery efforts. Members also are asking Congress to create a permanent council to oversee, coordinate and manage the restoration.(AP 10/5/2011)

2011年10月9日日曜日

whistleblower


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

whistleは「口笛」あるい「ホイッスル」。blow a whistleで「ホイッスルを鳴らす」。不定冠詞のaを定冠詞のtheに替えて、blow the whistleとすると「悪事をばらす」という慣用表現になる。whistleblowerは「悪事をばらす人」で、特定組織の関係者が内部の不正や犯罪を告発する場合に、「内部告発者」と訳される。カタカナ読みは「ホイッスルブロゥアー」。
世界のジャーナリズム界で最近もっとも注目を集めているのが、“self-described whistleblower organization”(自称内部告発組織)のWikiLeaks. org。ニューヨーク・タイムズ(2010年7月25日付)は“In Disclosing Secret Documents, WikiLeaks Seeks ‘Transparency’”(ウィキリークスは機密文書の公開に〝透明性〟を求める)と報じた。
WikiLeaksは、2006年にオーストラリア出身のジュリアン・アサーンジ氏が「政府の透明性」を求めて設立、複数国にインターネットのサーバーを置いて運営。これまでに、キューバのグアンタナモ米軍基地収容所内の捕虜取り扱いに関する文書や、2007年にバグダッドで起きた米軍の攻撃ヘリによる民間人殺傷事件のビデオを入手、ネット上で公開し、大きな反響を呼んだ。
7月25日には、アフガニスタンでの軍事作戦に関する機密文書など約7万6000点を公開。アサーンジ氏は記者会見し、“(I believe that)  ‘thousands’ of U.S. attacks in Afghanistan could be investigated for evidence of war crimes.”(アフガニスタンにおける米軍の数千の攻撃は、戦争犯罪の証拠として調査可能だと信じる)と述べた。一方、米軍は、WikiLeaksに機密情報を漏えいした容疑で、元情報分析官のブラッドリー・マニングを拘留し取り調べているという(AP通信)。
whistleblowing(内部告発)は、社会的正義に基づく行為と見なされる一方で、告発された側からは組織を裏切る“snitch”(告げ口、密告)と非難されて、しばしば報復の対象となる。そこで、米政府には、順法精神による内部告発者を不当な報復から守る“Whistleblower Protection Act”(内部告発者保護法、1989)などの法律があるが、現実は、内部告発をする方もされる方も〝食うか食われるか〟の闘いである。
ところで、米証券取引委員会(SEC)はこのほど、ヘッジファンドのインサイダー取引事件にからんで、内部告発者の女性に100万㌦の報奨金を支払った、と発表した。女性は、ヘッジファンドにインサイダー情報を流したIT企業社員の元妻で、離婚後に新たな夫と一緒に〝内部告発〟。SECはそれに基づいて立件し、ヘッジファンド側から2800万㌦の罰金を徴収したという。内部告発は、本来個人的な利益を追求するものではない筈だが、ウォール街では“How to Make a Million: Become a Whistleblower”(100万㌦の儲け方、内部告発者になる)の見出しが、注目を集めている。The Sankei Shimbun  (August 16 2010)

PS : White House Issues Cybersecurity Order To Deter Classified Leaks

The Obama administration issued an executive order Friday aimed at preventing the leak of classified data from government computer networks.

But while some experts said the directive calls for important cybersecurity improvements, others said the mandate was long overdue and the government needed to do more to prevent another disclosure of sensitive information like the classified documents released to the whistleblower site WikiLeaks.

"This is not transformative," said Stewart Baker, a former assistant secretary for policy at the Department of Homeland Security. "We're not going to get security on our networks if we wait for disaster and then fix the things that caused the disaster."

The order, which concludes a seven-month review of how the government protects classified data, establishes a task force led by the attorney general and the director of national intelligence to deter "insider threats," or the disclosure of government secrets by its own employees. It also creates a special committee that reports to the president on the progress being made to protect classified information and requires officials from each agency to oversee the protection of sensitive data.

The White House directive was issued in response to the disclosure of hundreds of thousands of sensitive government documents last year by WikiLeaks. In May 2010, Army Pfc. Bradley Manning was arrested on suspicion of leaking the documents, which included more than 250,000 confidential State Department cables, video of a deadly U.S. helicopter attack and logs pertaining to the Iraq and Afghanistan wars. In April, he was transferred to a medium-security prison unit at Fort Leavenworth in Kansas, where he is awaiting trial.

After the Wikileaks disclosure, national security staff created a committee to recommend policies for reducing the risk of another breach of classified information, the White House said. Since then, the government has made "significant progress" in securing government computer systems, such as limiting the number of people allowed to use removable media like flash drives and limiting access to classified networks, the White House said.

The goal of the effort was, "to ensure that we provide adequate protections to our classified information while at the same time sharing the information with all who reasonably need it to do their jobs," the White House said in a statement.(http://www.huffingtonpost.com/2011/10/07/)

brick-and-mortar


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

brickは「レンガ」でmortarは「モルタル」「セメント」。つまり、brick-and-mortarは「レンガとモルタルで出来た」という意味の形容詞。アメリカン・ヘリテージ辞典は、“located or serving consumers in a physical facility as distinct from providing remote, especially online, services”(実際の施設で営業、もしくは消費者を相手にすることで、とくにオンラインなど遠隔でのサービス提供と区別する)と定義している。カタカナ読みは「ブリック・アン・モーター」。
たとえば、brick-and-mortar bookstoreは、インターネットの書籍販売と区別して、〝レンガとモルタル〟の実在の書店を指すが、これが今、大きな曲がり角に差し掛かっている。ウォールストリート・ジャーナル(2010年8月4日付)は、米国最大の書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルが身売りを検討していると報じた。同社は全米で720の大規模店舗を展開し、年間約3億冊の書籍を販売するが、このところ景気低迷の影響で本が売れず、株価が下落しているためだという。
その背景には、“E-Books Rewrite Bookselling”(電子書籍が書籍販売を書き換える=同紙5月21日付)という経営環境の激変が指摘される。記事の中で、“Nowhere is the e-book tidal wave hitting harder than at brick-and-mortar book retailers.”(電子書籍の津波はどこよりも既存の書店を直撃しつつある)という。e-book、つまりelectronic bookは、コンピュータ端末を使って読む本で、今はまだ出始めたばかりだが、将来紙の本に取って代わる可能性を秘めている。e-bookは音楽のMP3ファイルと同様にネットで販売されるので、“It’s sad to say but the bookstore will be a relic like the music store.”(言うのも寂しいことだが、書店はレコード店と同様に過去の遺物になるだろう)との見方がある。
ところで、この書店が直面している問題は、ネットによるe-commerce(電子商取引)の時代に、brick-and-mortar business(店舗を抱える従来型のビジネス)が多かれ少なかれ直面している問題である。“E-commerce is the kiss of death for traditional brick-and mortar business.”(電子商取引は伝統的な従来型ビジネスへの死の口づけ)となるか、あるいは“E-commerce creates new business opportunities.”(電子商取引は新たなビジネスチャンスを生み出す)となるかは、経営者の考えひとつであろう。
さて、bricks and mortar(brickの複数形に注意)は、建築材料として、basic(基礎)とかessential(根本的な)を意味する慣用表現である。だが、アイルランドのことわざに“Bricks and mortar make a house, but the laughter of children makes a home.”(レンガとモルタルは家をつくるが、子供たちの笑い声は家庭をつくる)という。大切なのは、ハコモノよりもその中身です。The Sankei Shimbun  (August 23 2010)

Not Barnes & Noble but Borders

On February 16, 2011, Borders applied for Chapter 11 bankruptcy protection and began liquidating 226 of its stores in the United States. Despite an offer from the private-equity firm Najafi Companies, Borders was not able to find a buyer before its July 17 bidding deadline, and therefore began liquidating its remaining 399 retail outlets on July 22, with the last remaining stores closing their doors on Sunday, September 18, 2011. The Chapter 11 case is ultimately being converted to Chapter 7. Borders.com is still running, but orders are being processed by the larger Barnes & Noble.


Barnes & Noble Email to Borders Customers Rattles Privacy Watchdog

A consumer-privacy watchdog is fuming over a message that Barnes & Noble Inc. executives sent out to millions of former Borders customers who have the next 11 days to decide whether to keep their personal buying history and contact information between them and soon-to-be-ex bookseller.

Consumer-privacy ombudsman Michael St. Patrick Baxter is accusing Barnes & Noble—the grave-dancing bookseller that spent $13.9 million on Borders Group Inc.’s old customer lists—of ignoring important changes in an email that the bookstore sent out to Borders customers last weekend. His editorial tweaks were meant to make it clear that former customers could block the transfer for their contact information and past purchase history to Barnes & Noble.

Borders’s customers have until Oct. 15 to tell Barnes & Noble to leave their name and information off their transfer list.(Reuters OCTOBER 4, 2011)

2011年10月8日土曜日

No Mosque!


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

mosqueは「モスク」、あるいは「イスラム教寺院」のこと。No Mosque! は「モスクは要らない」という意味だが、ここでは“No Mosque at Ground Zero”(グラウンド・ゼロにモスクは要らない)というプロパガンダの省略形。Ground Zeroは、2001年の9・11中枢同時テロで破壊されたニューヨークの世界貿易センタービルの跡地を指す。カタカナ読みは「ノゥ・モスク」。
イスラム教普及団体が、世界貿易センタービルの跡地から2ブロック離れた場所に、古い建物を壊して新たにイスラム教の礼拝所を含む13階建ての文化施設を建設する計画を公表した。この計画に対して、9・11の犠牲者の遺族らが反発、“No Mosque!”の声が上がり出した。これに保守派が同調し、anti-Islam(反イスラム)の政治運動に発展しつつある。
元下院議長のニュート・ギングリッチ氏(共和党)は公開書簡(7月28日付)で、“No Mosque at Ground Zero”という同名タイトルの評論を発表。その中で、イスラム過激派はイスラムによる支配のために、テロに訴えるだけではなく、非暴力の文化的、政治的、合法的な〝聖戦〟を挑んでいると述べた。そのシンボルが“the Ground Zero mosque”と指摘、“For radical Islamists, the mosque would become an icon of triumph, encouraging them in their challenge to our civilization.”(イスラム過激派にとって、そのモスクはわれわれの文明に対する彼らの挑戦を勇気付ける勝利の象徴になるだろう)と糾弾した。
だが、文化施設は跡地から2ブロック離れているのだから、“at Ground Zero”とか、まして“the Ground Zero mosque”と呼ぶのは誇張である。また、礼拝所(masjid)をmosqueと表現することも、中東にあるような巨大なイスラム教寺院を連想させるだけに、誤解を生じかねない。
この建設計画に対して、ニューヨーク市の歴史的建造物委員会は8月3日、建設予定地にある古い建物の解体を許可する評決を下し、施設は建設可能になった。ブルームバーグ市長(共和党)は、“Should government attempt to deny private citizens the right to build a house of worship on private property based on their particular religion?”(民間人がその人の宗教にもとづいて私有地に礼拝所を建てる権利を政府が否定すべきか)と問いかけた上で、“That may happen in other countries, but we should never allow it to happen here.”(それは他国で起こるかも知れないが、ここでは決して許さない)と述べた。
また、オバマ大統領も8月13日、信教の自由を強調し、建設を擁護する立場を表明している。
だが、“No Mosque!”は、9・11直後に米国内に急激に広がったIslamophobia(イスラム恐怖症)と呼ばれるanti-Islam感情を想起させるだけに、これからの成り行きが注目される。The Sankei Shimbun (August 30 2010)

PS: 'Ground Zero mosque' opens with no protests as art exhibit of world's kids goes on display

BY MIKE JACCARINO DAILY NEWS STAFF WRITER Thursday, September 22nd 2011,

The so-called Ground Zero mosque, where proponents of religious freedom clashed with conservative pols and the families of 9/11 victims for nearly two years, opened Wednesday without controversy.
Instead of protesters, who tried to shut down the Park51 center several times, spectators milled about the center before entering to view a photographic exhibition.
NYChildren, as the exhibit was titled, was as much a tribute to New York City's diversity as a display of mere photographs. It includes snapshots of a city children representative of 160 ethnicities from around the world.
The photographs were compiled by a 44-year-old Jewish shutterbug from Brooklyn, Danny Goldfield.
Meanwhile, the developer behind the cultural center conceded he was partly to blame for the virulent opposition the project has encountered.
"We made incredible mistakes," Sharif El-Gamal told The Associated Press in an interview in his Manhattan office. "The biggest mistake we made was not to include 9/11 families."
At first, "We didn't understand that we had a responsibility to discuss our private project with family members that lost loved ones," he said.
He added that he did not "really connect" with community leaders and activists while planning the project.
El-Gamal added that the center's advisory board now includes at least one relative of a 9/11 victim.

Read more:
http://www.nydailynews.com/ny_local/2011/09/22/2011-09-22_ground_zero_mosque_opens_no_protests_as_exhibit_of_worlds_kids_displayed.html#ixzz1aBLqauBk



birth tourism


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

birthは「誕生」「出産」で、tourismは個々のtourではなく、総称としての「旅行」。そこで、birth tourismは「出産旅行」。妊娠中の女性がbirthright citizenship(生得権としての市民権)が認められる国へ旅行して、そこで出産すること。生まれた子供にその国の市民権を取得させることが狙い。カタカナ読みは「バース・トゥーリズム」。
合衆国憲法は、修正第14条でbirthright citizenshipを認めている。すなわち、“All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the State wherein they reside.”(米国に出生、または帰化し、その法治下に置かれたすべての者は、米国及び居住する州の市民である)。そこで、外国から米国の市民権を得るためのbirth tourismが問題になる。
ABCニュース(2010年8月4日付)は、“Debate Over Birthright Citizenship Aims at ‘Baby Tourists’”(生得権としての市民権をめぐる議論は、ベイビー・ツーリストを標的にしている)と報じた。
“Baby Tourist”は、birth tourist(出産のための旅行者)を言い換えたもの。議論は、共和党のリンゼイ・グラハム上院議員が、修正第14条の改正を提案したことから始まった。
“Birthright citizenship, I think, is a mistake. …People come here to have babies. They come here to drop a child. It’s called ‘drop and leave’.”(生得権としての市民権は、誤りであると思う。…人々は出産のためにここに来る。そして、ここで子供を産み落とす。いわば、産み落として置いて行く)とした上で、問題は、産み落とされた赤ん坊が“anchor”(錨)になって、その家族が将来、米国での居住権を合法的に獲得する事態になっている、と指摘した。つまり、birth tourismが移民の〝抜け穴〟になっているというわけ。
ただ、憲法修正条項の改正は、日本での憲法改正と同様に、現実には困難であることを付け加えておく。 
ところで、米国でbirth tourismによる出産がどのくらいあるのか?ABCニュースによると、2006年の国勢調査のデータを分析した結果、出生届が出された427万3225人のうち、7670人が米国に非居住の母親から生まれており、そのうちの何%かであろうという。母親の国籍では、メキシコ、韓国、中国などが多いとも指摘している。
birth tourismへの批判が高まった背景には、景気が低迷を続ける中で、不法移民の取り締まりなど、政府の移民政策に対する不満がある。批判者の本音は、これ以上移民を許すなということ。だが、アメリカは建国以来、移民がつくってきた国であり、作家のドン・デリーロがいうように、“America was and is the immigrant's dream.”(アメリカは今も昔も移民の夢である)。その夢がなくなれば、アメリカではなくなるのだ。The Sankei Shimbun  (September 6 2010)

2011年10月7日金曜日

tough economy


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

toughは日本語でも「タフ」という。その場合は、「頑強な」「不屈な」など良い意味で使う。だが、英語のtoughは、difficult(難しい)やhard(厳しい)など悪い意味で使うことが多い。tough economyも「困難な経済」「厳しい経済」という意味。カタカナ読みは「タフ・エコノミー」。
最近の米メディアではtough economyの見出しを頻繁に目にするが、これは言わずと知れた“this difficult economy”(この困難な経済)である。景気は低迷、株価は振るわず、雇用情勢もよくならない。“The US Is Headed For A Double-Dip Recession”(米国は二番底の景気後退に向かう=デイリー・マーケッツ)とか、“The Double-Dip Recession: No Longer So Far Fetched”(二番底の景気後退:もはや誇張ではない=シアトル・タイムズ)といった悲観論が強まっている。日本経済も同様の状況で、給料の明細を見て「キツいなー」と思うことが多い。この感じがtoughである。
クリスチャン・サイエンス・モニター(2010 年8月26日付)は社説で、“A Tough Economy Toughens Up America”(厳しい経済がアメリカを鍛え上げる)と述べている。toughenはtoughの動詞形で、upが付いて「鍛え上げる」。これは、どういうことか?
厳しい経済状況のもと、どこともに〝節約志向〟が進んでシェイプアップされ、長期的に見ると経済全体の強化につながるという論だ。すなわち、“Consumers have tightened their belts several notches by lowering debt and increasing savings.”(消費者は、借金を減らして貯金を増やすことで、家計のベルトの穴を数個分引き締めている)。日本語で「財布のヒモを締める」という意味で、お金をなるべく使わない。一方、企業も投資を控え、人員を削減。そして、政府も財政赤字を減らすために、早急に予算を削減し支出を抑制しなければならない、という。
その結果、本当に米国経済は強くなるのか?
ノーベル賞受賞経済学者のポール・クルーグマン氏はニューヨーク・タイムズ(2010年8月8日付)のコラムで、“America Goes Dark”(アメリカは暗くなる)と述べている。コロラドスプリングスでは、節約のために街灯の3分の1を消したが、全米で同じような支出削減が行われていると指摘。こうした事態が進むと、“The lights are going out all over America.”(アメリカ中で灯が消えてしまう)と警告する。
すなわち、家計や企業が節約して金を使わなくなり、政府も支出を削減すれば、いったい誰が経済をけん引するのか?経済全体が縮小し、不況から脱出する道が閉ざされてしまう、というのだ。
どちらが正しいのだろうか?いずれにしても“We have to make tough choices.”(われわれは難しい選択をしなければならない)。それだけ、“We are in tough times.”(厳しい時代にいる)と言える。The Sankei SHimbun  (September 20 2010)


Positive side : Tough economy may be keeping more drunks off roads

ATLANTA | Tue Oct 4, 2011 4:22pm EDT
(Reuters) - The economic slowdown could have an upside: a dramatic decline in the number of drinking and driving incidents, a new federal study suggests.

A 2010 national telephone survey of 451,000 people found the lowest level of alcohol-impaired driving since 1993 and a 30 percent plunge since the peak in 2006, the Centers for Disease Control and Prevention reported on Tuesday.The CDC estimates there were approximately 112 million alcohol-impaired driving episodes last year.Although the exact cause of the drop is uncertain, a slow economy could be a factor, the CDC said.

"One possibility is that people are drinking at home more and therefore driving less after drinking," the CDC's director, Dr. Thomas R. Frieden, told reporters during a media briefing.

The Midwest region had the highest rates of drinking and driving, the CDC said.In 2009, 10,839 people died in crashes involving impaired driving, about a third of all U.S. traffic deaths, according to the CDC.

The agency recommended increasing sobriety checkpoints, raising taxes on alcohol and implementing stricter liability laws for establishments that serve alcohol, as measures to further reduce drunk driving.

polarizing figure


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

polarizeは、物理学では「極性を与える」という動詞だが、ここでは、転じて“break up into opposing factions or groupings”(2つの対立する派やグループに分裂させる)という意味。figureは「人物」。そこで、polarizing figureは、その人に対する意見や好き嫌いが「2分する人物」をいう。カタカナ読みは「ポゥラライジング・フィギュア」。
この種の人物はどこの世界にもいるが、とくに勝敗を競うスポーツや政治にはつきもの。たとえば、大相撲の元横綱、朝青龍や民主党の前幹事長、小沢一郎氏はpolarizing figureと呼べるだろう。“People really love or hate him. There is no middle ground.”(人々は彼が本当に好きか嫌いかで、中間というものがない)というわけ。
米国政界でpolarizing figureとしてメディアの注目を集めるのが、2008年に共和党の副大統領候補に選ばれたサラ・ペイリン元アラスカ州知事。あの縁なしメガネがトレードマークの“hockey mom”(ホッケー・ママ)である。
カナディアン・プレス(2010年8月12日付)は、“From Failed Candidate To Political Powerhouse, Palin Becomes Permanent Political Celebrity”(落選候補から政治の〝発電所〟へ、ペイリンはセレブ政治家への道を歩む)と報じた。彼女は今や、オバマ政権攻撃の急先鋒であり、保守派の“Tea Party”(「ボストン茶会」にちなんだ増税反対の草の根運動)のスター弁士であり、fundraising machine(政治資金の集金マシン)でもある。
ワシントン・ポスト(9月2日付)は、“Sarah Palin Is Everywhere ― And Going Nowhere”(サラ・ペイリンはどこにでもいて、どこにも行かない)というブログ記事で、世論調査での彼女の人気の推移を紹介。副大統領候補に選ばれた当時は、「好ましい」という評価が「好ましくない」よりも圧倒的に多かったが、選挙直前の2008年10月に評価が逆転。最近は「好ましい」が36・4%に対して「好ましくない」が52・7%で、polarizing figureであることを改めて印象付けている。
政治的に極端な世論が台頭し勢力を得ることをpolarization(分極化)と呼ぶが、ペイリン氏の主張は保守派でも右寄りで、polarizationを扇動する傾向にあるといえる。
さて、政界の関心は11月の中間選挙、次いで2012年の大統領選挙の候補者選びに移る。ペイリン氏が、共和党の候補に名乗りを上げるかどうかが注目されるところである。常識的な考えではpolarizing figure が選ばれる可能性は少ないから、「立候補もないだろう」と見る。だが、彼女は“Going Rogue : An American Life”(群れない:あるアメリカ人の生き方=自叙伝のタイトル)で、何をしでかすかわからないところが魅力。それだけに、「好ましくない」と評価する人々も、彼女がスターであると認めずにはいられない。The Sankei Shimbun (September 27 2010)

Palin's out, but her endorsement still packs a punch
Craig Medred

A day after Sarah Palin decided not to pursue the GOP presidential nomination, commentators began buzzing about whether she will endorse any of the candidates remaining.In the midterm elections nearly two years, Palin's endorsement sometimes packed a wallop, and she was label and king and queen maker.
Who might get it this time? (Palin Watch : Alaska Dispatch Oct 06, 2011)

third-hand smoke


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

smokeは、「煙」だが、ここでは「喫煙」。喫煙による健康被害では、secondhand smoke(2次的喫煙)、つまり、他人が吸ったタバコの煙を周囲の人が吸わされる受動喫煙(passive smoking)がこれまで問題になってきたが、さらにその残滓にも有害物質が含まれるとして、残り香を吸うことがthird-hand smoke(3次的喫煙)と呼ばれ、リスクが指摘される。カタカナ読みは、「サードハンド・スモゥク」。
ニューヨーク・タイムズ(2009年1月3日付)は、“A New Cigarette Hazard: ‘Third-Hand Smoke’”(新たなタバコの危険性:3次的喫煙)で、ボストンのマスジェネラル小児病院などの医師らが、喫煙残滓に含まれる有害物質の乳幼児へのリスクを調査研究、その中でthird-hand smokeの新語がつくられた、と紹介している。
すなわち“Third-hand smoke is what one smells when a smoker gets in an elevator after going outside for a cigarette.”(3次的喫煙とは、タバコを吸いに外へ出た人がエレベーターに乗って来たときに、臭うものだ)と説明した上で、“Your nose isn’t lying. The stuff is so toxic that your brain is telling you: ‘Get away.’”(鼻はウソを言わない。残り香は毒性があるので、頭脳が「逃げろ」と告げているのだ)と述べている。
研究によると、3次的喫煙の有害物質には、シアン化水素、ブタン、トルエン、ヒ素、鉛、一酸化炭素、さらには放射性物質のポロニウム210まで含まれているという。“Eleven of the compounds are highly carcinogenic.”(化合物の11種は発がん性が高い)と指摘している。つまり、分煙をしたり、建物の外で喫煙したとしても、喫煙者がタバコの臭いをさせているだけで、有害物質をばらまいて歩くことになる、というわけ。
CBSニュース(2010年9月15日付)は、“Smokers Beware! Proposed New York City Smoking Ban Targets Outdoor Facilities”(喫煙者は要注意!ニューヨーク市が提示した新たな禁煙対象は、屋外施設)と報じた。市では、すでにレストランやバーでの喫煙が禁止されているが、ブルームバーグ市長は、公園やビーチ、歩行者専用区域でも禁煙を実施する計画という。その根拠はsecondhand smokeの危険性で、“The science is clear: prolonged exposure to secondhand smoke, whether you’re indoors or out, hurts your health.”(科学は明らかだ。室内、屋外にかかわらず副流煙に長くさらされると、健康を害する)と、市長は声明で述べている。
この論法で行くと、third-hand smokeは、まさに“Kissing a smoker is like licking an ashtray.”(喫煙者へのキスは、灰皿をなめるようなもの)ということになろう。アメリカの禁煙運動は、ここまで来ている。愛煙家にとっては、厳しい〝受難の時代〟が続く。タバコを止めるまで…。The Sankei Shimbun (October 4 2010)

U.S. hospital bans 'third-hand smoke'
Postmedia News October 5, 2011

Christus St. Frances Cabrini Hospital in Louisiana is banning third-hand smoke, which means no more smoke breaks for employees.

Read more: http://www.canada.com/health/hospital+bans+third+hand+smoke/5506229/story.html#ixzz1a4GqNxwj

attack ad


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

attackは「攻撃」で、adはadvertisement(広告)の略。attack adは「攻撃広告」だが、何を相手にするのかといえば、政敵である。つまり、選挙で敵対する候補者や政党を攻撃する広告のことで、とくに、相手の政策、人格や行動に関する問題点を非難するnegative campaigning(ネガティブ・キャンペーン=簡単にいえば、悪口のこと)が中心になる。カタカナ読みは「アタック・アド」。
アメリカは2010年11月初めの中間選挙(mid-term elections)を控え、選挙戦もいよいよ大詰めとなり、テレビ・コマーシャルには、アメリカの〝お家芸〟であるアタック・アドが続々登場。英国のBBC(2010年10月6日付)は、この選挙戦をリポートして、“Do Attack Ads Crush the Opposition?”(アタック・アドで相手をやっつけられるか)と報じた。
“Early in the campaign you will see a lot of positive advertising as a candidate introduces himself.”(選挙戦の初めは、候補者が自己紹介するので、肯定的な広告、つまりよい内容のものが多く見られる)とハーバード大学のアンソラビヒア教授は指摘する。だが、“What’s then left is to try and discredit the other guy.”(その後に残っているのは、相手のアラを探して、信用を傷つけることだ)。つまり、相手のdiscreditがattack adの狙い。そこで、“Later in the campaign you see them trying to call attention to the failings.”(選挙戦の終盤には、候補者同士が相手方の欠点について注意を引こうとする)という。 
最近のattack adは30秒程度のテレビ・コマーシャルで、選挙区に集中的に流される。たとえば、上院議員選挙のある地方の広告は、相手候補について、“He covered one lie with another.”(彼は1つのウソを別のウソで隠した)とナレーションが流れる。そして、“What else is he lying about?”(ほかにどんなウソをついているのか)。実際、中傷以外の何ものでもないが、相手も負けていないから、まさに泥仕合(mudslinging)になる。
だが、それだけではない。米公共ラジオNPR(2010年10月2日付)は、“Following The Money Behind Mystery Attack Ads”(謎のアタック・アドの背後にあるカネを追う)とのリポートで、米最高裁判所が今年初め、企業が政治広告へ資金提供することについての制限を緩和する決定を下したため、attack adに広告主や資金提供者を明示しなくてもよくなったと指摘。この決定後、“Concerned Taxpayers for America”(アメリカを心配する納税者)と名乗るグループが、オレゴン州で民主党候補を攻撃するattack adを流したことを報じた。攻撃された候補は広告主を突き止めようとしたが、首都ワシントンのグループの住所地には郵便受けがあり、共和党の関係者が管理しているのが分かっただけで、それ以上は追及しようがないという。
ここまで来ると、アメリカの民主主義はどうなっているのか、と首をかしげたくなる。The Sankei Shimbun (October 25 2010)

Now Romney Accuses Perry Of Lying In Attack Ad

Former Massachusetts Gov. Mitt Romney's campaign attacked Texas Gov. Rick Perry Wednesday for having a "problem with the truth," demonstrated by running an ad that was called "phony" by The Washington Post.
Romney said in last week's GOP debate that he stands by what he wrote in his 2010 book "No Apology" — while criticizing Perry for flip-flopping on his positions in his own book "Fed Up."
Perry has used that clip, and differences between the hardcover and print editions of the Romney book to paint his opponent with the same charge — but so far his attacks don't stand up to scrutiny.

(businessinsider.com/2011-09-28)



2011年10月6日木曜日

anti-gay


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

anti-は「反対する」という意味の接頭辞。日本語でも「アンチ○○」という。gayはhomosexual(同性愛)のこと。anti-gayは「同性愛に反対する」「同性愛敵視の」という形容詞。カタカナ読みは「アンティゲイ」または「アンタイゲイ」。
ニューヨーク・タイムズ(2010年10月8日付)は、“Lured Into a Trap, Then Tortured for Being Gay”(罠に誘われ、同性愛者であることを理由に拷問される)との記事を報じた。10代の2人を含む3人の男性が、10~20代の男9人のグループに、ニューヨーク・ブロンクスの一角にあるレンガ造りの家に誘い込まれ、同性愛を告白するまで何時間も暴行されたという。一方、AP通信(同日付)も“Anti-Gay Torture Allegations Stun Neighbors in NYC”(同性愛敵視の拷問容疑事件がニューヨーク市内の近隣住民に衝撃)と報道。すなわち、“Gay men and women live openly in the largely Hispanic neighborhood.”(同性愛者の男女が、近隣の大きなヒスパニック居住地に大っぴらに住んでいる)ためで、9人は逮捕されたが、同性愛者に対するhate crime(憎悪犯罪)に市当局は神経をとがらせているという。
AP通信(10月9日付)はさらに、“Suicide Surge: Schools Confront Anti-Gay Bullying”(自殺の波:学校が同性愛敵視のいじめに直面)というリポートを掲載。その中で、ルームメートに同性愛の行為を盗み撮りされた上、インターネットに映像を流されたラトガース大学の新入生がジョージ・ワシントン橋から投身自殺を遂げた―などの事例を挙げ
て、教育現場でanti-gay bullyingが新たな問題になり始めている、と指摘している。
アメリカでは、20世紀半ばからgay rights movement(同性愛者の権利擁護運動)が注目され、その後はsexual orientation(性的志向)による差別を撤廃する法律が各州で生まれた。また、coming out(同性愛者であることの告白)も盛んになる。21世紀に入ってからは、gay marriage(同性愛結婚)を法的に認めるかどうかが、政治的な焦点になっている。
その一方で、anti-gay movement(同性愛に反対する運動)も続いている。男女の結婚を家族制度の基本と考える人々は、gay marriageを法的に認めることに反対。さらに、キリスト教右派の人々は、同性愛を〝罪悪〟として糾弾するなど、保守派にはhomophobia(ホモフォビア=同性愛に対する嫌悪や恐怖)が根強い。
だが、anti-gayの感情が、拷問事件や学校でのいじめに発展する事態には、人権派だけでなく保守派の人たちの間でも憂慮する声が高まっている。
“This shouldn’t be a political issue any more. It’s a human issue that needs to be dealt with.”(これは、もはや政治問題とすべきではない。人道的問題として扱う必要がある)。その通りかもしれないが、解決への道は遠い。The Sankei Shimbun (November 1 2010)
PS :A modern Christian slogan expressing anti-gay view is "God made Adam and Eve, not Adam and Steve".

2011年10月5日水曜日

man up


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

manは「男」を指す名詞だが、ここでは動詞として使う。upは動詞の後の副詞で、「上向きに」。そこで、man upは、文字通りでは「男を上向きにする」だが、慣用的に“be a man about it”(一人前の男としてそれに向かう)、つまり「男らしくする」という意味になる。“Man up!”は「男らしくしろ!」。カタカナ読みは「ミャナップ」。
共和党が民主党に大勝した米中間選挙では、共和党の〝女性闘士〟が男性側に“Man up!”を連発して注目を集めた。
CNNは2010年10月18日に“Former Alaska Governor Sarah Palin had a message for the GOP Monday ―‘man up’ and support the Tea Party.”(サラ・ペイリン前アラスカ州知事は月曜日、「男らしく、ティー・パーティーを支援して」と共和党へメッセージした)と報じた。GOPは“Grand Old Party”の略で、共和党の別称。Tea Partyは、1773年のボストン茶会にちなんだ増税反対を標榜する保守派の草の根運動で、今回の選挙でオバマ政権批判の旋風を巻き起こした。ペイリン氏はティー・パーティーで演説、共和党のお歴々を“They’ re too chicken to support the Tea Party candidates.”(彼らは臆病すぎて、ティー・パーティーの候補者を支援できないのよ)と挑発した。
ネバダ州の上院議員選では、民主党の上院院内総務を務めるハリー・リード議員に、共和党のシャロン・アングル候補が挑んだ。エンジェル候補は立会討論会で、“Man up, Harry Reid. You need to understand we have a problem with Social Security.”(本気でやって、ハリー・リード。社会保障制度に問題があることをあなたは理解する必要がある)とかみついた(10月15日付のABCニュース)。彼女は、「小さな政府」を目指す保守派らしく、社会保障制度の民営化を主張している。ここでのman upは「男らしく」よりさらに一歩踏み込んで“suck it up”(本気を出す)に近いように思える。
また、米国では近ごろ“Man Up Campaign”という運動が進められている。“Man Up is a global campaign to activate youth to stop violence against women and girls.”(マン・アップは、女性たちに暴力をふるわないよう、若者に促がす地球規模のキャンペーン)というもの。女性に対して暴力をふるうのはunmanly(男らしくない)行為と考えるならば、ここでのman upは「男として責任を持て」とでも訳せるだろう。
ところで、manly(男らしい)など性別を強調する言葉は、gender free(性差別否定)のトレンドの中でpolitically incorrect(政治的に正当でない)とされ、公の場から姿を消しつつある。それにもかかわらず、保守派の女性たちは今なおmanlyな男を求めているのだ。“Man up!”などとハッパを掛けられると、筆者のように気の弱い男はman downして、引いてしまいそうである。The Sankei Shimbun (November 8 2010)
Man up owes its early popularization to another American sport: football, where it originally had a more technical meaning relating to man-to-man pass defense.....In recent years, man up and cowboy up have been joined by other “X up” macho-isms. Some evoke what might be politely termed testicular fortitude, like sack up and nut up, dated by the slang lexicographer Grant Barrett to 1994 and 1999, respectively. Last year’s movie “Zombieland” even showcased the provocative tagline “Nut up or shut up.” (On Language By BEN ZIMMER The New York Times: September 3, 2010) 「グローバル・English」はこちらへ