日本語の「やらせ」の原型は動詞の「やらせる」。これを英語でいうと、強いてやらせるときはmakeを使って、make someone do something。自由にやらせるときはletを使って、Let him try.(あいつにやらせてみたら)などとなる。
だが、TVの番組が「やらせ」という場合は、「仕組まれた」という意味だから、makeやletは使えない。むしろ、「仕組む」という意味合いのset upから派生した名詞のsetup(セッタップ)がドンピシャ。見出語のIt was a setupは、「それは仕組まれたものだ」の意味で、不定冠詞のaが付くのがミソ。
一方、「やらせの」と形容詞的な表現はどうなるか?ここでsetupを使うのは違和感があり、この場合はstaged(ステイジド)がよく使われる。つまり、「(舞台のために)仕組まれた」というニュアンス。「やらせの交通事故による詐欺」は、fraud over staged car crashesである。
ところで、set upは、むろん普通に「何かをセットする」「組み立てる」などの意味でも使う便利なイディオム。“I’m setting up Windows 10 for my PC on July 29.” (7月29日にウインドウズ10をパソコンにセット・アップします。注:アップグレード版はタダですから)
俗語としてのset upは、上記の「やらせ」の結果として「はめる」「はめられた」となる。例えば、“You set me up!”といえば「オレをはめたな」となる。反対に“You were set up.”といえば「お前はハメられたのさ」である。いずれも過去の表現であるのが注意点。
EUが財政緊縮策を求めて来たギリシャで、欧州委員会と欧州中央銀行、そしてIMFとの債務交渉が再開されたが、その直前に突如辞任したバルファキス前財務相は、なぜギリシャがこんなことになったのかについて、こう言い放った。“We were set up.”(われわれはハメられたのさ)。