Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
houseは「家」でhusbandは「夫」。housewife(家庭の主婦)が伝統的に行ってきた家事・育児を専業にする夫を指すのがhousehusband。カタカナ読みは「ハウスハズバンド」で、日本語では「主夫」。アメリカでは20世紀の後半から急増し、今では珍しくない。
ウーマンリブの活動家らは、housewifeが性差別を助長する言葉だと糾弾し、それに代わってhomemakerという言葉を採用した。男女を問わず家事をする者という中立的な言葉で、英和辞書には「家政担当者」の訳が載っている。political correctness(差別廃止を訴える政治的正当性、 ㌻)からすると、househusbandも「差別用語」である。
househusbandは、嘲笑や自嘲をともなって使われることが多い。Wordreference Forumsというネットの意見交換では、「unemployed(失業)のことだ」という指摘があった。つまり、失業した夫の代わりに妻が働きに出て、結果的に夫が家事・育児を引き受けることになる、というわけだ。これは、一面の真理である。
米国では共働き夫婦において、妻の方が夫よりも昇進し高給を取るケースが少なくない。長期出張や単身赴任など第一線で妻が活躍するには、夫の理解と援助が必要。househusbandはその1つの表れだ。家事に対しても若い世代では、女性の仕事だという伝統的な考えが薄れてきている。最近は、日本でも子供の教育を女房に任せきりにせず、自ら買って出る男性が増えているが、この傾向は米国が先行している。
CNNのキャシー・スロボギン記者は、“For a working mother, it’s a fantasy.”(働く母親には夢だ)と語っている。職場から帰宅すると、家の中は掃除が行き届き、洗濯も終わって、台所には暖かい夕食が用意されている。子供の宿題もすでに完了しているから、小言をいう必要もない…。
元新聞記者のアド・ハドラー氏は、妻が昇進したため主夫になった経験をもとに、小説“Househusband”(2004年)を出版。家事の楽しさを描いて、一躍人気作家となった。CNNのインタビューに対して、“My job is the toughest I’ve ever done.”(仕事は今までで一番大変)というのが主夫の感想。だが、よい面もある。“I don’t carry the stress with me every day of earning the money that keeps the family going.”(家庭生活を維持するために毎日カネを稼がねばならないストレスから解放される)ということ。
もっとも、“Sometimes I forget I’m a man. And she forgets she’s a woman. And we’ll be laying in the bed and looking at each other and go, ‘Oh yeah.’”(時に私は自分が男であることを忘れ、妻は自分が女であることを忘れている。ベッドに横になり、見つめ合って初めて『ああ、そうなんだ』と思う)と告白している。The Sankei Shimbun(September 24 2006)
0 件のコメント:
コメントを投稿