Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
escapeは「逃げる」「のがれる」「脱出する」という動詞で、名詞としても使う。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、語源は古ノルマンフランス語のescaper、ex-(out of =外へ)+cappa(cape=フード付きのマント、日本でいうカッパの語源)。つまり、逃げるときに、“get out of one's cape, leave a pursuer with just one's cape”(自分のマントから抜け出して、追跡者にマントだけつかませて置き去りにする)というわけ。
英ガーディアン(2011年4月25日付)は、“Hundreds of Taliban escape from Kandahar jail”(数百人のタリバンがカンダハールの刑務所を脱走)と報じた。タリバンは、イスラム原理主義者として知られるアフガニスタンの旧支配勢力。2001年9・11米中枢同時テロ以来、国際テロ組織アルカーイダを支援したとして米英軍が〝テロとの戦い〟を開始したが、頑強な抵抗を続けて今に至っている。ところが、米英軍らが拘束したタリバンの戦闘員約480人がトンネルを掘って脱獄。“A spokesman for President Karzai described the escape as a ‘disaster’.”(カルザイ大統領の報道官は脱獄を〝災厄〟だと述べた)という。
英BBC(同)は、“Taliban reveal details of daring Kandahar prison escape”(タリバン側が大胆なカンダハールの刑務所脱走の詳細を明かす)と報道。その中で「トンネルは360㍍で完成に5カ月かかった」と説明、“The escapees were taken in vehicles to a ‘safe place’.”(脱走者は車で安全な場所に運ばれた)と述べている。
ここで思い出すのが、1963年に公開されたアメリカ映画 “The Great Escape”(「大脱走」)。これは第2次大戦中、ドイツの戦争捕虜収容所から連合国軍の捕虜がmass escape(集団脱走)した史実に基づいて制作され、日本でもヒットした。
さて、2011年4月29日には英国でウィリアム王子の結婚式が行われた。それを前に仏AFP通信は、“The great escape: Brits flee royal wedding”(大脱走:英国人はロイヤル・ウェディングを避ける)との記事を配信した。BritとはBritish personの俗語でからかいを含めた言葉。それからして記事のシニカルな意図が透けて見えるが、多くの英国人(?)は、ロイヤル・ウェディングによるロンドンの喧騒を避けてバカンスに出かける計画を立てていたという。このescapeは避難の意味である。
これがひどくなると、“the tendency to escape from daily reality by indulging in daydreaming, fantasy, or entertainment” (夢想や空想、娯楽にふけって日常の現実から逃げる傾向)が生まれる。これをescapism(現実逃避)と呼び、さらに高じると、立派な病気になるのだ。現実の嫌なことからは誰しも逃れたいものである。しかし、“The best way to escape from your problem is to solve it.”(問題から逃れる最善の方法は、それを解決することである)と付け加えておく。
The Sankei Shimbun(May 9, 2011)
The Sankei Shimbun(May 9, 2011)
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