2012年7月31日火曜日

market turmoil 格差社会うむ「カジノ経済」・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


marketは「市場」。turmoilは「混乱」「騒ぎ」を意味する名詞で、market turmoilは「市場の混乱」。カタカナ読みは「マーケット・ターモイル」。
“Lehman Brothers Collapse Stuns Global Markets”(リーマン・ブラザーズの破綻が世界市場を直撃)とCNNが報道したのは、2008年9月15日。“Stock prices plunged in Asia, Europe and the United States.”(アジア、ヨーロッパ、米国で株価が暴落)。その後もglobal stock sell-off(地球規模の株式売却)が起り、世界同時株安の様相を呈するmarket turmoilが注目を集め、その後も余波が続いた。米国の住宅市場のバブル崩壊に端を発した金融危機で、破綻したリーマンをはじめ米国・ヨーロッパの有力証券・銀行が大量の不良債権を抱えていることが明るみに出て、その衝撃でglobal financial crisis(地球規模の金融危機)に発展した。
前哨戦は、2007年2月末のニューヨーク株式市場で起こった。2001年9月の中枢同時テロ直後以来の暴落を記録したのだ。事の起りは連邦準備制度理事会(FRB)前議長、グリーンスパン氏の講演。AP通信社などが世界に打電したその内容は、「米国の住宅市場のバブル崩壊が進めば、その影響が他の経済分野に波及して、米国経済はpossible recession(不況に陥る可能性)がある」。これが市場へのjawboning(口先介入)となった。
グリーンスパン氏は議長だった1996年12月にも、「米国の株式市場をirrational exuberance(根拠なき熱狂)が支配している」と、バブルを警告した。その後、アジアの金融危機が起り、海外のドルが米国に流れ込んで株式・債券を買いまくった結果、本当にバブルが出現。米国民は〝バブル景気〟に酔い、“Roaring Nineties”(怒涛の90年代)などと浮かれた。
ところが、思わぬ落とし穴となったのが、住宅市場。クリントン政権以来の住宅優遇税制のおかげで、中低所得者まで「我が家」の夢が持てたのはよかったが、住宅抵当ローンのなかに、高金利だが焦げ付きリスクも高い “subprime mortgage”(サブプライム抵当ローン)がはびこったのである。しかも、“high risk, high return”(リスクは高いが、儲けも大きい)を狙ってそこへカネが流れ込み、住宅ブームが出現。
だが、ブームはいずれ去る運命にある。2006年初めに200万戸以上だった新規住宅着工戸数が、2007年初めには150万戸以下に激減、バブル崩壊が警告されるようになった。グリーンスパン氏はこう続ける。“If prices go down, we will have problems.”(もし価格が下がれば、われわれは問題を抱えるだろう)。この問題が、market turmoilだ。金融市場の期待は、日常生活の常識と正反対で、価格の上がるのをよしとする。だが、相場の上下は世の常であるだけに、market turmoilは続く…。The Sankei Simbun(April 8 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月30日月曜日

friendly fire


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 friendly fireのカタカナ読みは「フレンドリー・ファイア」だが、友人と囲むcamp fire(キャンプファイア)やbonfire(焚き火)の類ではない。ここでのfriendlyは「味方」、fireは「発砲」を指す。つまり、戦場での味方の発砲による同士討ちを意味する。軍隊の用語で、enemy fire(敵による発砲)に対する言葉として生まれ、fratricide(兄弟殺し)と呼ばれることもある。実体を誤解させるweasel word(イタチ言葉)だ。
 この言葉が注目を集めたのは、2001年の9.11中枢同時テロを機に、愛国心に燃えて陸軍の特殊部隊に志願した米プロフットボール(NFL)カージナルスのスター選手、パット・ティルマン氏の戦死が、敵との戦闘によるものではなく、実はfriendly fireよるものと分かったからだ。ティルマン氏は2004年4月、アフガニスタン戦線に従軍して死亡。当初は、作戦チームのリーダーで、自らの命を犠牲にして仲間を救ったとして銀星章(Silver Star)を贈られ、英雄的行動を称えられたが、国防総省は2007年3月27日、同氏は仲間の過失によって死亡したと発表した。
 friendly fireは、“Fog of War”(戦場の混乱した状況)下で、作戦のミスや敵と味方を取り違えるなどの過失によって起る場合と、意図的なmurder(殺人)とに分けられる。
 疑心暗鬼を生み、部隊の士気に壊滅的な打撃を与えるのは、もちろん殺人の方で、軍隊の俗語ではfragと呼ばれる。fragmentation grenade(破砕性手榴弾)の頭の4文字を取った言葉で、ベトナム戦争のときに、恨みのある上官を戦闘に紛れて殺すために、指紋が残らない手榴弾が頻繁に使われたことに由来する。1969年から73年までの戦争で、少なくとも600人の米兵がfragging incidentsで殺され、さらに1400人の不審死が報告されている、とテキサスA&M大学のテリー・アンダーソン教授(歴史学)は述べている(2003年3月24日付シカゴ・サンタイムズ)。ベトナム戦争でのfriendly fireによる死者は8000人、戦死者全体の14%にも上ると推定されている。
 その後、fragは影を潜めるが、friendly fireの被害は跡を絶たない。1991年の湾岸戦争で戦死した米兵148人のうち35人がfriendly fireによるものだったと国防総省は報告。2001年以降のアフガニスタン侵攻やイラク戦争については、これまでに「少なくとも2dozen(24人)の米兵が、その被害者となった」(ABCニュース)という。
 だが、friendly fireの実態は、米軍の情報統制下にあって、遺族でさえも〝検死証明書〟を受け取って初めて知るにすぎない。実際、ティルマン氏のケースでも、遺族は死後1カ月たってから真実を伝えられた。彼の母親のメアリーさんは、ワシントン・ポストのインタビューに対して、「彼ら(軍の人間)が後々までウソをついていた事実には、吐き気がする」と語っている。The Sankei Shimbun(April 15 2007) 「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月29日日曜日

voluntourism


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 voluntourismはvolunteerism(ボランティア活動)とtourism (観光旅行)を合体させた言葉で、「ボランティア旅行」。観光やリゾートに、ボランティア活動を組み込んだ旅行のこと。カタカナ読みは「ボラントゥーリズム」。
 2004年12月にスマトラ島沖の大地震によって引き起こされたインド洋大津波は、22万人以上の死者・行方不明者を出す大惨事となった。被害を受けたタイ、スリランカなどでは、世界中から多くのボランティアの人々が駆けつけて救援活動を行ってきた。欧米では従来のNPOだけでなく、Tsunami volunteering assistance(〝ツナミ〟のためのボランティア支援)に乗り出す旅行業者が現れ、voluntourismの言葉が知られるようになった。
voluntourismは国の内外を問わず、貧しい国や地域での支援活動を含む。似た言葉に、環境保護のためのecotourism(ecoはecology=「環境」の意味で「環境保護旅行」)がある。
 AP通信(2007年3月28日付)は“Volunteer Vacations Are Popular”(ボランティア休暇が人気)という記事で、voluntourismを扱う米国の旅行業者や団体の数は、過去3年間で倍増の勢いだと伝えた。なかでも興味深いのは、ボランティアの多くが戦後生まれのbaby boomer(ベビーブーマー)であること。「退職後の余った金と時間を人助けに使いたいと望んでいる。何をやろうかと考える時に、ふと思いつくのが9.11テロやハリケーン・カトリーナなどの被害者救援活動だ」。
 また、米国の高校や大学では、ボランティア活動をextra curriculum(課外活動)として評価する。実際に就職や進学で、ボランティアの実績がけっこうモノを言うのだ。それだけに「ボランティアを兼ねた休暇旅行は一石二鳥」と考える学生も増えている。
 南米のホンデュラスで、マヤ遺跡を観光する一方、地元民のために便所や豚小屋を建てる手伝いをした55歳の学校教師の場合、参加費用は航空運賃を除いて12日間でざっと1000㌦。宿泊と食事、支援活動のための交通費や道具類の購入などを含め1日1万円ぐらいで、普通の観光旅行と変わらない。彼は、「労働はきついが、ここでは心配事がない。電話で呼び出されることはないし、日ごろの仕事のプレッシャーから解放される素晴らしい機会だ」と話し、〝心の平安〟を強調する。
 さて、米国は自由市場経済が社会の底まで浸透し、ビジネス優先だが、一方でボランティア活動による社会貢献も盛んだ。volunteerの語源はフランス語で1600年に「志願兵」として登場、後に戦争以外にも使うようになった。もとはvoluntaryで、of one’s free will(自由な意思に基づく)を意味した。カネに縛られてあくせく一生を送るのはあまりに空しい。自由な自分を取り戻したい、と心のどこかで渇望しているのかもしれない。The Sankei Shimbun(april 29 2007)

2012年7月27日金曜日

tiltrotor もっとオスプレイのことを勉強しよう・・・



 tiltは「傾ける」という動詞で、rotorはローターエンジン。tiltrotorはローターエンジンを傾けて角度を変えることで、垂直上昇したり水平飛行できるタイプの航空機。
 For vertical flight, the rotors are angled so the plane of rotation is horizontal, lifting the way a helicopter rotor does. As the aircraft gains speed, the rotors are progressively tilted forward, with the plane of rotation eventually becoming vertical.(垂直飛行の場合、ローターは真っ直ぐになり、回転面は水平で、ヘリコプターのエンジンのように機体を持ち上げる。航空機のスピードが出てくると、ローターは前方に傾いていき、最後に回転面が垂直になる)という仕組みだ。
 tiltrotorは離着陸時のスペースが小さくてすむので機動性が高いのが特徴。1930年代から開発が進められてきたが、垂直上昇し、空中静止状態(hovering)から水平飛行に移る際の姿勢制御が難しいのが最大の課題となってきた。
 在日米軍が日本に配備を計画しているBell Boeing V-22 Osprey(osprey=fish hawk、ミサゴ)もtiltrotor aircraftである。1981年から米国防総省の垂直離着陸(JVX) 航空機のプログラムとして実験が始まり、1983年にBell HelicopterとBoeing Helicoptersが開発計画に契約。1989年に1号機が就航した。だが、ここでも機体の姿勢制御に関する問題で事故が多発し、設計変更が行われた。
 V-22は、海兵隊が2007年から、米空軍が2009年から実戦配備し、これまでイラク、アフガニスタン、リビアで使用されてきた。
 海兵隊は、V-22 の事故に関して、”The fact is, that since the Osprey was redesigned, the Marine Corps has not had a crash similar to the ones it experienced over a decade ago in which we lost pilots and crew,” the statement continues. “The MV-22 is now saving lives, not taking them.”(「オスプレーはデザイン変更されて以来、過去10年間に機長や乗組員を失ったような種類の墜落事故は経験していない」と声明を発表。「MV-22は今や人命を救うもので、人命を取りあげるものではない」)
 ただし、操縦ミスによるとみられる事故は最近も起こっている、と指摘しておきたい。
 ところで、米軍はなぜV-22 Ospreyの配備にこれほど力を入れているか?
 AINONLINE(7月9日付)は、“Bell Pushes On With V-22 Tiltrotor Sales Drive”(ベルヘリコプター社はV-22ティルトローターの販売に拍車)との記事で、Bell is seeking for international customers for the Bell Boeing V-22 Osprey tiltrotor.(ベルは、オスプレイの海外顧客の開拓を進めている)と述べている。詳細はそこに譲るが、tiltrotorは将来、民間航空機として販売することが計画されており、海外の米軍基地への配備や他国の軍隊への売り込みは、その前哨戦であると考えられる。
  とすれば、なおのこと安全性にはもっと念には念を入れないと、民間航空会社に売り込むのはとてもじゃないが難しいだろう。


copycat crime 真似するやつが必ずいる・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 copycat crimeは「模倣犯罪」。カタカナ読みで「コピーキャット・クライム」。crime(犯罪)がcriminalになると「模倣犯」。copycatは、名詞では「人のまねをする者」「模倣する人」で、形容詞・動詞としても使う。
 さて、重大事件が発生すると必ず心配されるのが、連鎖反応というべきcopycat crime。2007年4月16日に起ったバージニア工科大学の韓国人学生による銃乱射事件の後も、カリフォルニアやミシガン州などで大量殺人をほのめかす脅迫電話がかかったり、電子メールが送り付けられたりした。FBI(米連邦捜査局)の報告によると、学校に対する何らかの脅威は5日間で40件に達したそうだ。さらにその後、テキサス州ヒューストンのNASA(米航空宇宙局)ジョンソン宇宙センターで、銃を持った男が人質を取って立てこもり、人質を射殺したうえに自殺する事件まで起きた。
 copycat crimeは、殺人に限らず、銀行強盗、万引き、ネット犯罪に至るまで枚挙に暇がない。犯罪学における“Learning Theory”(学習理論)という考え方に基づくと、人間は poor choices(間違った選択)であることを無視して、modeled successful strategies(成功したモデルケース)をまねようとする傾向がある、とされる。圧倒的多数の人は社会的な利害得失を考えて、バカなまねはしない。だが、まったくの無知や情緒的な障害、publicity seeker(目立ちたがり)などの理由から模倣犯が生まれるという。また、マスコミが事件をセンセーショナルに報道するから模倣犯罪が後を絶たない、という批判や議論も盛んだ。
 ところで、copycatはcopy(コピー)とcat(ネコ)に分解できる。copyの語源は、ラテン語のcopia(plenty=たくさん)。14世紀にはwritten transcript(手書きの写本)を意味したのが、その後、書き物だけでなく他のreproduction(複製)やimitation(模造品)にも拡大。copyが複写を意味する動詞として使われるのは、17世紀からだ。
 copycatの登場は19世紀だが、なぜ「コピー・ネコ」なのか?一説では、kitten(子ネコ)が母親の行動をまねしながら学習することに由来するという。だが、これはウソ。オックスフォード英語辞書(OED)によると、このcatはアメリカ英語の俗語で、人間の蔑称だ。「まねするヤツ」、あるいは「ものまね野郎」くらいの意味であろう。
 実際、まねをするのはネコではなくて、サルを始めとする霊長類。英語のことわざでも“Monkey see, monkey do.”(サルまね)と言い、多分に軽蔑的なニュアンスが強い。最近の研究によると、人間やサルの赤ん坊は母親の顔の表情を見て、口をアーンと開けたり、舌を突き出したり、様々なまねをするが、それにはmirror neurons(鏡ニューロン)と呼ばれる脳細胞が大きな役割を果たしているという。われわれが人のまねをするのには、科学的な根拠があるのだ。The Sankei Shimbun(May 6 2007)

2012年7月26日木曜日

cool この言葉に潜む深い意味・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 coolは暖かくもなく、さほど寒くもない状態を指す形容詞。日本語では「涼しい」だが、最近は音読みして「クール」ということが多い。ただし、米語の発音では、lは舌先を上前歯の内側に当てるだけなので、「クォ」と聞こえる。
環境省が提唱する「クール・ビズ」(cool biz)は和製英語。bizはビジネス(business)の略称だが、日本のことを知らない外国人にはちょっと、省エネ運動のキャッチフレーズだとは分からない。
 米国でも省エネは大きな課題で、coolは頻繁に登場する。USA TODAY(2007年4月25日付)に“Use the Sun to Cool Down Our Planet”(太陽を利用して地球を冷やせ)という記事が出ていた。ここでのcoolは動詞。記事の内容は、地球温暖化の防止が叫ばれるなかで二酸化炭素の放出を削減するため、solar power(太陽エネルギー)を活用して石油など埋蔵資源の消費量を減らそうというもの。とくに、最大の電力使用は夏場のエアコンで、その発電のために火力を使えば気温をさらに上昇させることになる。火力の代わりに太陽発電を行えば、気温を上げることなくcool down summers(夏を涼しくする)という。
 さて、coolは俗語として「カッコいい」の意味でも使われる。アメリカン・ヘリテージ辞書によると、1930年代に黒人英語でexcellent(優れた)やsuperlative(最高)の意味として登場。40年代にジャズ・ミュージシャンによって広められた。戦後は英語圏の国々だけでなく、フランスやドイツでもそのままcoolで通用するようになり、日本でも「クール」で定着した。
では、何がカッコいいのか?coolにはnot excited(興奮していない)、composed(落ち着いた)、under control(感情を抑制した)などの意味がある。“to remain cool in the face of disaster”(災難に直面しても冷静であること)は、誰にでもできることではなく「カッコいい」ことなのだ。
 この俗語の生まれた背景には、もう少し深いものがある。言語学者ジニーバ・スミザマン女史の著書“Black Talk”(黒人の話し言葉)によると、奴隷制の時代に黒人はたびたび白人の集団からリンチを受け、酷い目に遭わされた。リンチを遠巻きにして見守る黒人の仲間は、はらわたが煮えくり返る思いだったが、止めに入れば、今度は自分たちがリンチを受けるハメになる。彼らは屈辱を忍んで、平静を装わねばならなかった。“to maintain your cool as a survival strategy”(クールに振舞うことが生き残る道)だったと述べる。
 だが、coolは今や歴史の闇から飛び出して、ファッションの最先端にある。cool-hunterなどという商売もあり、流行のトレンドをいち早くキャッチして、斬新なアイデアをアパレルメーカーなどに売り込むという。流行に敏感な人をcool catなどと呼ぶ。どの世界でも生き残りのカギは、coolであることのようだ。The Sankei Shimbun(May 13 2007) 「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月25日水曜日

chronic inflammation 死病の裏に潜む重大なリスク



inflammationは日本語では「炎症」。chronic inflammationは「慢性炎症」である。inflammationを英語で定義すると、the reaction of living tissue to injury or infection, characterized by heat, redness, swelling, and pain(けがや感染に対する生体組織の反応で、発熱、発赤、はれ、痛みに特徴付けられる)。一般的に急性炎症(acute inflammation)は、生体の〝防衛反応〟と受け止められるが、chronic inflammationは、重大な結果をもたらす病気である。
ウォールストリート・ジャーナル(7月16日付)は、“The New Science Behind America's Deadliest Diseases”(アメリカの死亡原因でとなっている病気の背後に新たな科学)との記事で、chronic inflammationを論じている。
“What do heart disease, diabetes, Alzheimer's, stroke and cancer have in common?”
(心臓病、糖尿病、アルツハイマー症、卒中、がんに共通するものは何か?)それが、慢性炎症であると科学者は指摘しているという。
たとえば、虫歯を放置し、歯根や歯茎まで炎症を起こしている状態を想像すれば分かる。痛みとはれと発赤、そして発熱が持続する。こうした、慢性炎症は、diet of high-fat foods(高脂肪の食事)too much body fat(多すぎる体脂肪)smoking(喫煙)によって助長され、“The immune system can spiral out of control and increase the risk for disease.”(免疫システムはコントロール不能となり、病気のリスクを増大させる)という。
“Experts say when inflammation becomes chronic it can damage heart valves and brain cells, trigger strokes, and promote resistance to insulin, which leads to diabetes.”(専門家は、炎症が慢性化すると、それが心臓の弁や脳細胞にダメージを与え、卒中の引き金となり、インシュリンへの抵抗を高め、糖尿病を誘発すると述べている)
では、それを防止するにはどうすればよいのか?食生活を改善することだ。
Dietary fiber from whole grains, for instance, may play a protective role against inflammation, a recent study found.(たとえば、全粒粉の食物繊維は炎症を防ぐ役目を果たすことが、最近の研究で分かってきた)つまり、なるべく繊維質の食物、野菜を食べるようにすること。
The American Heart Association recommends consuming both omega-3 fatty acids, found in cold-water fish like salmon and canola oil, and omega-6 fatty acids, found in nuts, seeds and vegetable oils such as corn oil.(アメリカ心臓協会は、サケやカノーラ油に含まれるオメガ3脂肪酸やナッツ類やコーン油のような植物油に含まれるオメガ6脂肪酸を摂ることを薦めている)など。
ところで、肥満が著しく炎症を助長すると、Peter Libby, chief of the division of cardiovascular medicine at Brigham and Women's Hospital in Boston and a professor at Harvard Medical Schoolは指摘する。
“We've learned that abdominal fat tissue is a hotbed of inflammation that pours out all kinds of inflammatory molecules”(私たちは腹部脂肪組織が炎症の温床となり、あらゆる種類の炎症細胞を注ぎ出す)という。つまり、肥満して突き出た腹は〝諸悪の根源〟となるのだ。それだけに、死にたくなければ、lose excess weight(不要な体重を落とし)、スマートになることだ、と。

nepotism Free society in name only...


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 nepotismは、英和辞書では「縁者びいき」とか「縁故採用」という訳がついている。人事や取引などで家族や親戚、友人などをひいきにすることを指す。カタカナ読みは「ネポティズム」。
 米国人が歴代総裁職に就く世界銀行で、ウォルフォウィッツ総裁が2007年5月、自分のgirl friend(恋人)である女性職員を人事で厚遇し異例の昇給を指示したことがnepotismだとされた。世銀内に特別調査委員会が設けられて倫理規定違反の疑いで追及され、辞任に追い込まれた。ニューヨーク・タイムズ(同年4月25日付)は、nepotismの代わりにfavoritismとの語を使って報道したが、これも「えこひいき」「情実」の意味だ。ほかにもcronyismという同じ意味合いの言葉がある。これらの違いは、語源を調べると明瞭になる。
 favoritismは、favorite(お気に入り)に接尾辞の-ism(主義)をつけて「えこひいき」を総称する。favoriteの元はfavor(好意、偏愛)。オックスフォード英語辞書(OED)によると、favoritismは1763年が初出だ。nepotismはそれより古くて1670年。語源はラテン語のnepotem(nephew=いとこ)だが、なぜ「いとこ主義」が「縁者びいき」になるかというと、中世のカトリック教会では、法王をはじめ僧侶は禁欲と純潔を誓ったから嫡子がいない。だから、後継の地位にいとこや親戚を優遇する習慣があったのだ。cronyismは比較的新しく19世紀からで、crony(昔なじみ)のひいきを意味する。
 興味深いことに、自由競争を奨励しwindow of opportunity(出世の機会の窓)はすべての人に開かれていると謳う米国社会だが、実際には昔ながらの人脈がモノを言い、縁故や情実がはびこっている。米国には、政府の高級官僚がpolitical appointment(政治任用)で選ばれる制度があって、共和党政権下では共和党人脈、民主党政権下では民主党人脈が生きるわけ。ジョン・F・ケネディ大統領が、実弟のロバート・ケネディを司法長官に任命した例もあり、往々にしてnepotismがはびこる下地があると言える。
 ブッシュ政権のトップ人事を見ても、チェイニー副大統領は、父親のブッシュ大統領下の国防長官で、息子の〝後見役〟として副大統領に就任。イラク戦争の不始末の責任をとって辞めたラムズフェルド前国防長官は、フォード政権下でも国防長官をやっていたが、その時にホワイトハウスの首席補佐官だったのがチェイニー氏。ライス国務長官は、父親のブッシュ政権時代に国家安全保障会議の東欧ソ連部長を務め、息子の代に国家安全保障担当の補佐官に昇格した。そのほかの閣僚人事も、共和党の古い人脈と父親のブッシュ元大統領の知人や友人がほとんどだ。ウォルフォウィッツ世銀総裁も、ブッシュ大統領の〝鶴の一声〟で国防副長官から世銀総裁に転身。〝恋人の件〟も「上を見習っただけ」と思ったのかもしれない。The Sankei Shimbun(May 20 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月24日火曜日

avenge vs revenge 違いが分かるか?



avengeもrevengeもともに「復讐する」ことで元の名詞はvengeance(復讐)である。現代の用法では、avengeもrevengeも大きな違いは見られない。だが、ここはという表現になると、その違いが明確になる。すなわち、avengeは「仇討ち」あるいは「正義のための当然の復讐」である一方、revenge「憎悪など個人的な動機による復讐」との意味で使われる。

その違いが、コロラド州デンバー近郊オーロラの映画館で起こった銃乱射事件の報道でも明確になっている。

YahooのLookoutニュース(7月23日)は、こう報じた。The brother of Jessica Ghawi was not present on Monday for suspected shooter James Holmes' first court appearance because he feared he might try to avenge his sister's death.(犠牲者ジェシカ・グアーィさんの弟は月曜日、容疑者ジェームズ・ホームズの初出廷に出席しなかった。なぜなら、彼は姉の敵討ちをしやしないかと恐れたからだ)と述べている。
弟のジョーダンさんは実際には、"I was afraid that I may try to get my hands on that man”(私はあの男に手をかけてしまいそうなのが怖い)といったという。記者の側では、その気持ちを察して、もし彼が復讐したとしても当然だろうと心の中で同情たといえる。
ところで、裁判所では、Holmes appeared dazed as a judge told him he would be held without bond on suspicion of first-degree murder.(裁判官が第1級殺人の容疑で保釈はないと言い渡すと、ホームズは呆然としていた)という=写真。

一方、今回の事件で、ホームズの動機について、Was Mass Murderer James Holmes Mentally Ill Or Seeking Revenge?(大量殺人犯のジェームズ・ホームズは精神障害か、復讐を求めたものか)と多くの人が疑問を投げかけている。

ボストンのノースイースタン大学の犯罪学教授のJames Alan Foxは、MSNBCに対してこう述べている。
“They basically want revenge. Contrary to the common misperception that these guys suddenly snap and go berserk, these are well-planned executions.”(大量殺人犯は基本的に個人的な復讐を求めている。この連中が突然ポキッと折れて凶暴になるというのは間違った考え方で、これらは用意周到に計画された死刑執行なのだ)と。
Holmesが、いかに用意周到に準備し、防弾チョッキまで着て犯行に及んだことや、残された家にはbooby trapまで仕掛けられていたことを考え合わせると、His madness might be just a disguise for insanity defenseと考えられる。


apple


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 appleはリンゴ。だが、最近「アップル」と言えば、すぐに思い浮かぶのは携帯型デジタル音楽プレーヤー、iPodの生みの親である米企業のApple Inc.であろう。1976年の創業以来Apple Computer, Inc.と呼んできたが、2007年1月に社名からComputerが抜けた。もはや主力製品がコンピューターだけではなくなったためだ。
 Apple Inc.のロゴマークの変遷を見ると、創業者のスティーブ・ジョブズ氏が最初に考案したデザインは、リンゴの木の下でアイザック・ニュートンが座っている図。リンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見した、という故事に因んだものだ。社名もそのリンゴに由来する。その後、マークは齧りかけの虹色リンゴになり、今は色がグレーになった。
 ところで、appleの起源はインド・ヨーロッパ語のabelで「木の果実」の意味。聖書でイブがアダムに勧めた“fruit of forbidden tree”(禁断の木の実)のことともいわれる。ちなみにAdam’s appleといえば、男性の喉仏のこと。
リンゴの原産地は中央アジアのカザフスタンで、16、17世紀にヨーロッパで栽培が盛んになった。米国に入るのは英国清教徒団「ピルグリムファーザーズ」の入植以降だ。開拓時代、普及に最も大きな役割を果たしたとされるのがJohnny Appleseed(リンゴの種のジョニー)。本名はJohn Chapman(1774-1847)で、マサチューセッツ州に生まれ、キリスト教の布教活動をしながら、リンゴの苗木を育てて売り歩いた。だが、ぼろ儲けをしたのではない。わずか数ペニーで苗を売った。現金がない場合には、食べ物や古着などと交換した。ジョニーはその古着をまとい、裸足で歩いたという。ジョニーの活動は、ニューヨーク、ペンシルベニアから、オハイオ、ミシガン、インディアナ、イリノイ州に及ぶ。リンゴの木は、どこの農家の庭にも見られるようになり、家庭で焼くapple pieは〝お袋の味〟になった。
 20世紀初めに登場した米俗語に「ごますり」を意味するapple-polisher(リンゴを磨く人)がある。学校の生徒が先生に取り入るために、ピカピカに磨いたリンゴを先生の机に置いたことに由来する表現。また、ニューヨーク市のことを“Big Apple”と呼ぶのは、黒人ジャズ・ミュージシャンが大都市をappleと呼んだことに由来する。ニューヨークは、その中でもとくに中心地であるから“the Apple”でありbigの形容詞がついた。このほかにも、appleにちなんだ俗語表現は数十に上る。
 言語学者のジョセフ・シプレー氏は「英単語の起源」(ジョンズ・ホプキンス大学刊)で、「リンゴは米国の起源ではないが、民衆文化にすっかり溶け込んでしまった」と述べ、“as American as apple pie”(アップルパイほどアメリカ的)という表現に、少しも違和感がないまでになったと指摘している。The Sankei Shimbun (May 27 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月22日日曜日

The impact of a photo



 The impact of a photoは「一枚の写真の衝撃」。Photo speaks a thousand words(写真は千の言葉を語る)と言った人がいる。「百聞は一見に如かず」(Seeing is believing)に通じるもので、写真のもつ影響力について語っている。が、ここでは、internetでの写真のもたらす影響である。
 Tecca(7月20日付)は、あるレストラン・チェーンの従業員が撮影したa disgusting photo(胸くそが悪くなる写真)が、ネットに掲載され、その後追跡が行われて、従業員が解雇されるまでの経緯を述べている。
 The amazing part is what happened immediately after the photo was posted to the website 4chan at 11:38 PM.(驚くべきは、午後11時38分に4チャンネルに写真がポストされた直後に起こったことだ)
 By 11:47, one fellow website poster was able to determine the city the restaurant was located in using Exif GPS data attached to the picture(11時47分までに、あるウエッブ投稿者が、写真に付いていたGPSデータの標識を用いてレストランのアル町の位置を特定できた)
; by 11:50, the exact restaurant location was determined. (11時50分にはレストランの正確な位置が特定された)
At 11:58, a link to the restaurant chain comment form was posted. (11時58分にレストランチェーンのコメントへのリンクが貼られた)
The manager of the restaurant in question was reached directly by phone shortly after, who quickly identified the party responsible.(問題のレストランの支配人に、そのすぐ後でそのいたずらをしたグループを特定した人から直接電話が入った)
The original poster of the picture was fired.(写真を投稿した首謀者は解雇された)
 この間、わずか20分。
 The impact of the photo would have been devastating to the restaurant chain, if it were freely circulated on the internet. But the smart and fast nabbing of misbehaver will be shocking to all internet users.(問題の写真がインターネット上に自由に出回れば、レストランチェーンにとっては写真の衝撃は破壊的だったろう。だが、いたずら者をこんなに賢く素早く捉まえたことは、すべてのインターネットユーザーに衝撃的であろう)



2012年7月21日土曜日

The joker, Madness is the emergency exit!



jokerはa person who jokes(ジョークをいう人)。トランプのジョーカーはthe joker。そして、もう一つan unexpected or final factor that reverses a situation completely(予期しない最後の要素、それによって事態は完全に覆される)
 The Huffington Post (7月20日付)は、“James Holmes: 'I Am The Joker', Aurora Shooting Suspect 'Claimed To Be Batman Nemesis'”と報じた。
  コロラド州デンバー近郊のオーロラの映画館で起きた銃乱射事件で逮捕されたコロラド大大学院で神経科学科の院生ジェームズ・ホームズ容疑者(24)=写真=は、警察に対して「おれはジョーカーだ」と話している。この日は、映画バットマンシリーズのDark Knight Risesの初日で、容疑者はバットマンのアクションシーンが始まるや銃を乱射し始め、12人を殺害、58人以上を負傷させた。

ウォールストリート・ジャーナル(同)によると、観客の1人は、"I heard the gunshots go pop, pop, pop, and I fell to the floor, crawling on the ground to try to get out,"(ポン、ポン、ポンという銃撃音が聞こえたので、床倒れてはって脱出しようとした)と語ったが、乗客の中には映画のアトラクションかと勘違いした人もいたという。
ところで、ジョーカーはバットマンの敵役で、Dark Knightのときには、ヒース・レジャーが演じたのは記憶に新しい。
The Joker is a master criminal with a clown-like appearance.(ジョーカーは、道化師の外見をした犯罪のマスター)Initially portrayed as a violent sociopath who murders people for his own amusement(元は自分の楽しみのために人を殺す暴力的な反社会的人物として描かれた)the character became now depicted as a vicious, calculating, psychopathic killer.(キャラクターは今悪辣で打算的で頭の狂った殺人鬼となった)
ホームズ容疑者はカリフォルニア州サンディエゴ出身。カリフォルニア大を1昨年に卒業、コロラド大大学院に進学。事件現場の映画館に近いアパートに一人で暮らしていたという。大学時代の成績は”Top of the Tops”と報じられているが、大学院では成績が振るわず、退学に向けた手続きを進めていたという。
ジョーカーは、こう言っている。
"Madness is the emergency exit. You can just step outside, and close the door on all those dreadful things that happened. You can lock them away... forever."(狂気は非常出口だ。タダ外へ出て、今起こった恐ろしいことのすべてを後にドアを閉める。そして、それらを秘密にしておくのだ…永遠に)


glamorize


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 glamorizeは「魅力的にする」とか「美化する」という動詞。カタカナ読みは「グラマライズ」。
glamorize the bathroom with expensive fixtures(高価な設備でバスルームを豪華にする)などと実際の装飾を指す一方、glamorize war(戦争を美化する)などと使う。
 2007年5月に問題になったのが、「映画が喫煙を美化している」との〝禁煙運動家〟らの批判。アメリカ映画協会(MPAA)はこれを受けて今後、喫煙シーンを暴力やセックスなどと同様に、rating(年齢制限区分)の対象とすることを決めた。ダン・グリックマン会長は「喫煙はますます社会的に受け入れがたい。ニコチン中毒による健康被害への懸念が大きく、どの親も子供にタバコを吸ってほしいとは思わない」と理由を述べ、“Raters will consider whether smoking is glamorized.”(レーティング担当者は、喫煙が美化されているか否かを検討する)と話した。美化されていると見なされれば、17歳未満の子供は保護者同伴でしか鑑賞できないR指定にされるという。
 だが、喫煙を美化しているとは、どの映画を指すのか?ワシントン・ポスト(2007年5月11日付)は、“Put it out, Sweetheart”(あなた、タバコを消して)の記事で、「『カサブランカ』もXXX(成人向け)にされただろうか?」と問いかけた。1942年のこの映画で主演のハンフリー・ボガードが小粋にタバコを吸ってみせて以来、ハリウッドではタバコが〝カッコよさ〟の象徴となった。子供は映画スターがタバコを吸うのを見て喫煙習慣にはまる、という研究もあり、1998年のタバコ訴訟以来創設された最大の禁煙運動団体American Legacy Foundationは、「喫煙シーンのある映画は自動的にR指定にすべきだ」と譲らない。
 オックスフォード英語辞書(OED)によると、glamorizeが初めて使われたのは、映画雑誌“Silver Screen”(銀幕)の1936年12月5日号。“They (film stars) are so glamorized…”(映画スターは美化されたものだ)とある。語源は名詞のglamourで元は魔法とか呪文を意味した。形容詞化して“She is glamorous.”(彼女はグラマーだ)というと「性的魅力にあふれた女体」を想像するが、本来は「華やかな魅力」を表し、そこには、大したことがないものを魔法の力で美しく見せかけるという含みがある。同義語にromanticizeがあり、romantic(ロマンチック)に見せるという意味。
 映画は、そもそも現実をromanticizeし、glamorizeするから面白いのだが、観客の中に、それを真に受ける人がいることが問題になるわけだ。だからといって、「カサブランカ」でボガードが、朝、歯ブラシをくわえて吐き気を催し、ゲーゲーと声を上げ、タバコのヤニで茶色に染まった歯を鏡で見詰めるようなシーンを挿入すれば、ぐっとヘビースモーカーの現実に近付くが、そんな映画は誰も観たくないだろう。The Sankei Shimbun(June 3 2007)

2012年7月20日金曜日

Provigil 眠気を吹っ飛ばすクスリが売れている・・・



 Provigilはnarcolepsy(居眠り病)、 sleep apnea(睡眠時無呼吸症)の治療薬の商標名で、成分は1970年にフランスで開発されたModafinilという中枢神経を刺激するanaleptic drug。処方薬である。
 ところが、商標名のpro-(有利な)+vigil(寝ずの番)から想像が付くように、米国では眠気を吹っ飛ばして、集中力を高めるクスリとして人気を集め、学生やビジネスマンの需要が拡大しているという。
 ABCニュース(7月17日付)は、“Provigil: The Secret to Success?”(プロビジル:成功の秘密か)と報じた。その中で、あるコンピューター・プログラマーは、“It helps you focus up for exceptionally long periods of time,"(ものすごく長い間集中できる)とか、あるリサーチャーは、“It's just a clear day. The fog isn't there.”(それはまさに晴れの日。霧一つかかっていない)と服用した感覚について語る。仕事も勉強も大いにはかどるというわけ。それだけにViagra for the brain(頭脳のバイアグラ)と、呼ばれる。
 Prescription sales for this class of drugs has increased by 73 percent in four years, from $832,687,000 in 2007 to $1,440,160,000 in 2011, according to IMS Health.(IMS Healthによると、このクラスのクスリの処方箋ベースの売上高は、2007年の8億3268万7000㌦から、2011年の14億4016万㌦まで、過去4年間で73%を増加したという)。
 さらに、各国の軍隊では、眠ることができない戦闘現場でamphetamines(覚醒剤)の代用品として使えるか研究が続けられている。
 だが、様々な研究にもかかわらず、成分modafinilの働きは分かっていない。
 Drexel大学医学部のDr. Joanne Getsyは、“Provigil is not a substitute for sleep. Sleep deprivation can cause and worsen heart disease, diabetes and high blood pressure”(プロビジルは睡眠の代わりにはならない。睡眠を奪うことは、心臓病や糖尿病、高血圧症の原因ともなり、それらの症状を悪化させる)という。さらに、長期間にわたる副作用も分かっていない。
 日本では、2006年9月に第1種向精神薬に指定されている。





surface mail


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 surface mailは「普通郵便」。カタカナ読みでは「サーフィス・メイル」。air mail(航空郵便)に対して地上や海上のような地表を運ぶので、surface(表面)の語を当てている。国際向けは、米国と国境を接するカナダとメキシコ以外は「船便」のことで、航空便より配達時間は大幅にかかるが、格安料金なのが魅力だ。
 ところが、米国からの従来の「船便」が2007年5月14日から突然廃止された。米国に住む外国人らは、小包を本国に送るために郵便局に行って、窓口で初めて「船便」がなくなったことを知らされ、困惑した。インターネットのブログやフォーラムには、“International Surface Mail Going Away”(国際普通郵便がなくなった)などの訴えが相次いだ。これまで、個人の引越荷物や大量の雑貨などを船便送りしていたのが、今後は航空便に頼る以外にない。自前の海上輸送手段を持たない個人輸入や中小の業者は、少なからず影響を受けることになった。
 U.S. Postal Service(米国郵政公社)は、この日からfirst-class stamp(一種郵便切手=定型の封書の料金)の値段を39㌣から41㌣(※)にするなど、全体で7.6%の料金値上げを実施した。この値上げは、2006年1月の前回値上げから1年半も経っていない。しかも、ロサンゼルス・タイムズ(5月14日付)の“What’s Behind the Postage Hike”(郵便料金値上げの背景にあるもの)によると、郵便事業は2006年に約9億ドルの利益を上げるなど4年連続の黒字で儲かっているという。
 だが、郵政公社は現在80万人近い職員を抱え、年金や健康給付金が年々増加しているうえに、原油価格の高騰で21万台以上ある郵便配達車両のガソリン代が大幅に増えたことなどを値上げの理由に掲げた。つまるところ、従来の「船便」は儲からないので〝合理化〟されたのだ。
 米国の郵便事業は、建国の父の1人であるベンジャミン・フランクリンが、1775年にフィラデルフィアで初代のPostmaster General(郵政長官)に就任してスタートした。その理念は、「すべての地域に郵便サービスを提供して国民の結合をはかる」というもの。1792年には、全米に郵便局と郵便道路網を建設するために郵政省が発足。国家を支える情報インフラとして重視され、ずっと大統領に直属してきた。1971年に現在の公社に移管されたが、事業は今も〝独占体制〟である。自由競争がモットーのなかで、郵便事業だけは別。上記の理念実現のため、独占は〝必要悪〟として容認されてきた。だから、料金値上げやサービス内容の変更も否応なしに行われる。
 さて、surfaceには動詞として「表面化する」という意味がある。今回の料金値上げでは、surface mailの廃止とともに、“The evils of monopoly have surfaced.”(独占事業の弊害が表面化した)と思える。(※2008年5月12日に42㌣に値上げ)The Sankei Shimbun(June 17 2007)

2012年7月19日木曜日

Fragrance Ad Too provocative!



 fragranceは「香水」で、adはadvertisement(広告)の略。Fragrance Adは「香水の広告」。Marilyn Monroeが1954年にインタビューで何を着て寝るか聞かれたときに、"five drops of Chanel No. 5"(シャネルの5番を5滴)と答えて以来、香水と美女の裸体は切っても切れないが、今はさらに過激になってきた。
 7月16日発表されたのが、Lady Gaga Gets Naked for Fame Fragrance Ad(レディーガガが裸体で売り出すFame=名声=という名の香水の広告)

   In the black-and-white shot, Gaga wears a black face mask and nothing else. There appear to be tiny men climbing up the singer's lithe figure, strategically covering up her private areas.(白黒写真で、ガガは黒のマスク以外は何も身に付けていない。小さな男たちがしなやかな体に登っているようにみせて、彼女のあの部分をそっと隠している)
 "[Blood and semen] is in the perfume, but it doesn't smell like it. You just get sort of the after feeling of sex from the semen, and the blood is sort of primal," she explained. "And the blood was taken from my own blood sample, so it's like a sense of having me on your skin."(「血とザーメン入りの香水。でも、そんな香りじゃないわ。ザーメンからセックスの後味がする。血は原体験的ね。」と彼女は説明する。「そして、血は私自身から採ったもの。そう、あなたの肌に私を感じられるのよ」)
 一方、Beyonce’s released an ad for her new perfume, Midnight Heat.(ビヨンセは、新しい香水Midnight Heat=真夜中の熱=の広告を発表した)

 According to the product's website, Midnight Heat is "the ultimate evening scent, sensual and enticing with just a hint of mystery."(ウエブの製品サイトによると、Midnight Heatは、〝究極の夜の匂い。セクシーでミステリアスに魅惑的〟)
 ところで、マドンナが5月に発表した香水Truth or Dare(真実か挑戦か)のコマーシャルは、これら2つに先行し、さらにprovocative(挑発的)だった。

 それだけに、Is this commercial too scandalous for primetime?(このコマーシャルは、ゴールデンタイムにはあまりにスキャンダラスではないか)と言われた。

Serve you right ざまあ見ろ!


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 serveはサービス(service)の動詞形。原義は「仕える」で、そこから派生していろいろな意味で使うが、to serve someone rightとするとto be deserved(~するに値する)と同じになる。たとえば、“It will serve him right for what he has done.”(それは、彼がやったことの当然の報いだ)などと言う。また“Serve you right!”(ざまあ見ろ)となる。
 今回の主役は、米国の〝お騒がせセレブ〟パリス・ヒルトン嬢(26)。飲酒運転の罪で保護観察中に運転したとして45日間の禁固刑を言い渡されたものの、実質3日あまりで刑務所から仮出所した。彼女は世界的ホテルチェーン、ヒルトンの創業者の曾孫で、モデル兼タレント。「仮出所は有名人を優遇し、司法の公平性を揺るがすものだ」との批判が噴出し、ロサンゼルス地裁は6月9日、残りの刑期を終えるように命令。彼女は再び収監された。その後、インターネットのブログに寄せられた意見では、“Serve you right, Miss Prissie!”という声が多かった。
 “Miss Prissie”というのは、元の語はprissy。「上品ぶった」という女性に対する形容詞で、ハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの“The Little Sister”(1949年、邦題「かわいい女」)にも出てくる古い言葉。最近では「自分勝手で傲慢な女」の意味で、とくに女性セレブなどに対する悪口としてよく使われる。上記の文句を訳すと、「ざまあ見ろ、気取り屋お嬢さん」。
 事件を担当した警察官も、裁判所の決定について“She had it coming to her.”とコメント。これも当然の報い、の意味だ。
 パリス嬢は、多数のメディアが取り巻く中で、“Mom, mom, it’s not right!”(ママ、ママ、こんなのおかしい)と泣き叫びながら法廷から連れ出され、パトカーに乗せられた。“Screaming Paris Hilton Taken Back to Jail! Are You Happy?”(泣き叫ぶパリス・ヒルトンが刑務所へ逆戻り!君はスッとしたか?)というブログにも、“She deserves jail.”(刑務所行きは当然の報い)とあった。“Jail is definitely not pleasant. It brings me great pleasure to know that some spoiled little bitch is going to be spending a month there.”(刑務所は確かに快適なところではない。甘やかされて育った小娘がそこで一月過ごすと思うと大いにうれしいね)など、鬱憤晴らしのコメントがあふれた。
 ところで、セレブは米語でもcelebで、celebrityの略語。オックスフォード英語辞書(OED)によると、語源はceremony(式典)とか celebration(お祝い)で、人の意味に使うのは、その人の行為が公に賞賛され、その結果有名人になるというわけ。だが、有名人は、有名になりたくてもなれない人たちのやっかみや妬みを受けねばならないのが世の常で、一歩間違えれば「それ見たことか」ということになる。The Sankei Shimbun (June 24 2007) 「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月18日水曜日

jet-setting グローバリズムとはこういうことだ!



 jetは「ジェット機」のことで、setは社会の階層、階級のこと。jet setは文字通りでは「ジェット機階層」。ジェット機が現在のように大衆化していなかった1950年代に登場した言葉で、a fashionable social set composed of wealthy people who travel frequently by jetliner to parties and resorts.(パーティやリゾートに行くのに頻繁にジェット機に乗って旅行する金持ちの上流階層)個人の場合はjet-setter、形容詞はjet-setting。
 AP通信(7月18日付)は、“Jet-setting Hillary Clinton breaks travel record”(〝ジェット機で飛び回る〟ヒラリー・クリントンは旅行記録を破る)と報じた。
 7月17日、クリントン国務長官はワシントン郊外のアンドリュー空軍基地に到着、2万7000マイル(地球一周より2000マイル長い)の旅から帰国した。そのコースに関して、One well-traveled Clinton staffer described the France- Afghanistan-Japan-Mongolia-Vietnam-Laos-Cambodia-Egypt-Israel itinerary as "especially absurd, even for us.”(旅慣れしたクリントンのスタッフは、フランス、アフガニスタン、日本、モンゴル、ベトナム、ラオス、カンボジア、エジプト、イスラエルの旅程は、私たちにとってさえ、ばかげたものだ、と述べた)
 "My traveling team is anxious to get home. I'd like to be hanging out in Jerusalem, but, you know, I have to do my duty," she said with a sigh. (「私の旅行チームは家に帰りたがっているのよ。私はエルサレムで過ごしたいんだけど、私はお勤めを果たさないといけないし」と、イスラエルで記者団にため息をついた)という。
 Since becoming secretary of state in 2009, Clinton has logged 351 days on the road, traveled to 102 countries and flown a whopping 843,839 miles, according to the State Department.(国務省によると、クリントン長官は2009年に就任して以来、351日、102カ国を旅行、84万3839マイルを飛行した)
 ところで、CNNは2003年6月5日、“Jet-setting pope marks 100 trips”(〝ジェット機で飛び回る法王〟は100回目の外遊)と報じたことがある。これは、前法王のジョン・ポール2世のこと。彼は別名、the flying pope(空飛ぶ法王)と呼ばれた。
 From the beginning of his papacy, he made clear that he intended to travel to all four corners of the world. Since then, he has spent more than a year and a half away from the Vatican in Rome and visited 201 countries.(法王主任の初めから、かれは世界の隅々まで旅行する意向を明らかにした。以来、1年半以上ローマのバチカンを留守にして、201カ国を訪問した)
 ジョン・ポール2世のためたマイレージは、その時点で約72万マイルに達したという。
 法王は2005年4月2日84歳で亡くなった。



fatigue a feeling of being extremely tired...


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 fatigueは「疲れ」とか「疲労」と訳される名詞。動詞としても使う。カタカナ読みは「ファティーグ」。日常会話でよく使うのは“I’m tired.”(私は疲れている)のtire(動詞)だが、両者のニュアンスは少し違う。
 tireは疲れて物事に飽き、うんざりした状態を指す。18世紀に「英語辞典」を編纂したサミュエル・ジョンソンの有名な警句に、“When a man is tired of London, he is tired of life.”(ロンドンに飽きた人は、人生に飽きた人だ)というのがある。理由は、当時のロンドンには人生が与えてくれるものが何でもあったからだという。だが、現在の都市生活には何でもあり過ぎて、余計なことに追いかけ回され、ストレスと過労で疲れ切った状態に追い込まれる。それがfatigueである。
 fatigueは健康や精神衛生の分野では、「特定の病気ではないが、symptom(徴候)を示すもの」とされる。だが、肉体的・精神的に強い疲労感が長期間にわたって続くようになると、Chronic Fatigue Syndrome(CFS=慢性疲労症候群)という本当の病気になってしまう。
 ところで、インターネットをはじめIT分野で、fatigueのついた言葉が続々登場している。例えばpassword fatigue(パスワード疲れ)。ネットの会員サイトへのアクセス番号から、クレジットカードの暗証番号、さらに自分の住んでいるアパートに入るためのopen-sesame(開けゴマ)まで、たくさんのパスワードを憶えなくてはならないうえに、絶えず誰かにパスワードをskimming(掠め取り)されないかと戦々恐々とし、疲れ果ててしまうことを指す。また、インターネットで毎日、大量のjunk mail(くずメール)を受け取り、うんざりしてしまうe-mail fatigue(電子メール疲れ)や、ブログが溢れんばかりに増え続け、見るのも書くのも飽き飽きするというblog fatigue(ブログ疲れ)も他人事ではなくなっている。
 オックスフォード英語辞書(OED)によると、fatigueの語源はフランス語のfatigueで、初出は1669年。フランス語では“Je suis fatigué.”(私は疲れている)というが、これは英語のtireと同じ使い方。元はラテン語のfatigare(働き続けて消耗する)から来た。英語では18世紀に、軍隊で兵士が嫌がる「雑役」を指すことになり、そのときに着る「作業服」は、今もfatigue(ファティーグ)と呼ばれている。飛行機事故などで問題になるmetal fatigue(金属疲労)は、19世紀からの使い方である。
 さて、9.11中枢同時テロ事件から時間が経つにつれて、米国社会にthreat fatigue(脅威疲れ)が見え始めた。政府当局などがひっきりなしに発表するテロの脅威や警告に慣れっこになってしまい、今では国民の間からは“Danger? What danger?”(危険?何の危険なんだ?)と、脅威を侮る声も聞こえてくる。The sankei Shimbun(July 1 2007) 「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月17日火曜日

roadside bomb


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

roadside(路肩)のbomb(爆弾)でroadside bomb。カタカナ読みは「ロウドサイド・ボム」。道路の端や側溝に仕掛けられた爆弾で、通り掛かった戦闘部隊や戦車を攻撃する。軍事用語ではimprovised explosive devices(IEDs=即席爆発装置)。爆発物と起爆装置などで作られた手製の爆弾で、homemade explosives(HME=ホームメイド爆弾)ともいう。
イラクに駐留する米軍兵士の〝最大の敵〟は、insurgent(反政府武装勢力)が仕掛けるroadside bombs(複数形)と言われる。2007年には米兵の死亡原因の8割がroadside bombsによると報告された。世界1のハイテク武器を装備した米軍が、手製の爆弾を防ぐことができないのか?
タイム誌(2007年6月25日・7月2日合併号)は、“The Enemy’s New Tools”(敵の新兵器)と題する記事で、米軍がroadside bombsにてこずる原因を追及。結論からいうと、手製爆弾とはいえ、予想以上にハイテク化が進んでおり、米軍の防御システムが追いつかないのだ。
国防総省がIEDsによる爆弾攻撃に危機を感じ、専門の対策チームを立ち上げたのは2005年。MIT(マサチューセッツ工科大学)の科学者が中心となって、new detection technology(新しい検知技術)の開発に取り組んだ。テクノロジー・レビュー(2006年2月10日付)によると、爆発物としてTNT火薬が多く使われるので、その飛沫を検知する高感度検知器を製造。検問所などで使われて、爆弾製造者の発見に威力を発揮している。
だが、問題は起爆装置。その遠隔操作の時限装置にはgarage-door opener(車庫の開閉装置)やwashing-machine timer(洗濯機のタイマー)、さらにcell-phone(携帯電話)が使われる。そのなかでもとくに、携帯電話を鳴らして信号を送るメカニズムが広く用いられている。米軍は対策としてelectronic jamming device(電子信号妨害装置)を戦闘機や車両に搭載しているが、これが敵のハイテク技術によって骨抜きにされた結果、米軍の被害が拡大しているという。
さて、タイム誌は、アブダラと名乗る匿名のterrorist geek(テロリストのハイテク技術者)にインタビューした。彼は、複数のinsurgentのグループにIEDsの技術を提供しているとされ、「彼ら(米軍)は技術でおれを打ち負かすことはできない」と公言。インタビューの最後に、実際に妨害信号を流す実験を行い、一緒に部屋にいた人々のケータイが通話不能に陥るなかで、彼のケータイだけが唯一通話できることを披露し、技術の差を見せつけたという。アブダラは、かつてMITでの博士号取得を夢見たことがあり、別の人生を歩んでいたら〝IEDs対策チーム〟の一員であったかもしれない。だが、“God decided I should be on the other side.”(神の思し召しで反対側にいる)と語る。何とも皮肉な話である。The sankei Shimbun(July 8 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月16日月曜日

swastica 本来は吉祥だが、欧州では悪の紋章・・・



語源はサンスクリット語のsvastika。"su" は"good," "asti"は"to be," そして "ka"は接尾辞。本来の意味は“to be good”(よきこと)、つまり吉祥である。そのシンボルが卍(かぎは左向き)、かぎ十字だ。Swasticaは古代インドで生まれ、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教では幸運のシンボルとなった。
ところが、西洋では20世紀以降、このマークは〝悪の紋章〟として忌み嫌われる。1920年ドイツのナチスがこのマークをシンボルとして用いたためである。ドイツ語ではHakenkreuz (hook-cross)。
ナチスは、これをアーリア人のシンボルとみなし、アドルフ・ヒットラーが政権を掌握した1933年に、右向きのかぎ十字を旗章にした。
ユダヤ人虐殺(Holocaust)をはじめナチス・ドイツの悪行は、欧州のtraumaとなり、今も各国でこのマークを公共の場に掲げることが禁止されている。
ところが、デイリーメール(7月15日付)は、“Madonna faces legal action for using image of Swastika pasted onto French National Front leader Marine Le Pen's head”(マドンナは、フランスの「国民戦線」(FN)のルペン党首の額にかぎ十字を貼ったイメージ=写真=を用いたことで、訴訟に直面する)と報じた。
 
14日パリで行われたコンサートで、マドンナが歌う背景のスクリーンにルペン党首の顔が映し出され、額にかぎ十字が浮かび上がった後、ヒットラーに似た人物が映され、観衆は騒然となったという。この挑発に激高した国民戦線はマドンナを訴えるというわけ。
「国民戦線」は、父親のJean-Marie Le Pen氏が創設した極右政党で、人種差別で反ユダヤ主義を標榜、第二次大戦中のHolocaustを否定して話題を呼んだ。最近では、移民排斥を打ち出して、仏国民の支持を集めてきたが、昨年、娘(43)に党首の地位を譲った。娘のルペン党首は、4月の大統領選挙の第1回投票で18%の票を獲得している。
マドンナが、どういう意図でこうした映像を公開したのか?
おそらく、話題の人物を揶揄することで、欧州での話題をさらうことを企画したのだろう。
国民戦線の副党首のFlorian Philippot氏は、“This is just another provocation in Madonna's world tour so that people will talk about her.” (これはマドンナの世界ツアーでの、いつもの挑発で、人は彼女について騒ぐだろう)といいながらも、腹の虫が治まらない。
 “Marine Le Pen will defend not only her own honour but her supporters and the millions of National Front voters.”(マリン・ルペンは彼女の名誉だけでなく、彼女の支持者や何百万の国民戦線への投票者の名誉も守らねばならない)と述べている。




fake food 偽物を食わされる世の中・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


fakeは、動詞では「捏造する」「偽造する」「見せかける」という意味で、名詞では「にせ物」。だから、fake foodは本物に見せかけた「にせ物食品」。カタカナ読みは「フェイク・フード」。
米国でこれを取り締まるのが、食品医薬品局(Food and Drug Administration=FDA)。fake foodは正式には“economic adulteration of food”という。adulterationはズバリ「混ぜ物をすること」。economicは「経済的」だが、ここでは「金儲け」を意味し、「金儲けのために、食品に粗悪物を混ぜて販売し、消費者をだます」という犯罪行為だ。
FDAの消費者マガジン(1999年3・4月号)の“Fake Food Fight”(にせ物食品との戦い)の記事は、牛乳を水増しして販売したfake milk 以来、FDAの取り締まりの歴史を描いている。オレンジやリンゴのジュースに砂糖や水などを入れて増量したり、安物のコーン・シロップをメープル・シロップや蜂蜜に加えたり、健康食品の朝鮮ニンジンにオガ屑を混ぜる―など、手を変え、品を変え、fake foodは後を絶たない。
FDAの起源は1906年。だが、現在の体制に整ったのは1938年の連邦食品・医薬品・化粧品法による。実は、その前年の37年にテネシー州でジエチレン・グリコールが含まれた薬品が販売され、100人以上が死亡した事件がきっかけ。ジエチレン・グリコールは不凍液などとして用い、毒性が強く食品への添加を禁じられているが、価格が安く、今でも性懲りもなく使われる。2006年、パナマで販売された中国製の咳止めシロップに混入され、再び100人以上死亡する惨事が引き起こされたばかりか、翌年6月には、ジエチレン・グリコールで甘みを付けたfake toothpaste(にせ練り歯磨き)が米国内に出回る騒動が起きている。
にせ物食品販売の罰則は、文書による警告から刑事罰に及ぶ。混ぜ物をしたオレンジジュースを11年に渡って1億5000万㍑以上販売した業者は、罰金10万ドルと懲役5年の刑が言い渡され、香料と砂糖で味付けした水を〝100%リンゴジュース〟と偽って販売したベビーフード会社には、218万ドルの罰金が科せられた例がある。
さて、オックスフォード英語辞書(OED)によると、fakeは19世紀ロンドンの泥棒仲間の俗語として登場。最初はdo for ~(やっつける)、plunder(奪う)、kill(殺す)の同義語で、それから〝にせ物〟の意味に変化したのは、世の中にそれだけにせ物がはびこってきた証拠であろう。
ところで、第16代大統領リンカーンはこう警告する。“You can fool some of the people all of the time, and all of the people some of the time, but you can not fool all of the people all of the time.”(ある人たちをずっとだますことはできる。また、すべての人を一時的にだますこともできる。だが、すべての人をずっとだますことはできないのだ)The Sankei Shimbun(July 15 2007)

2012年7月15日日曜日

relaxation drink



 relaxationは「リラックスさせること」。drinkは「飲み物」。relaxation drink は、“A nonalcoholic drink formulated to help promote relaxation and relieve stress.”(リラックスを助け、ストレスを和らげるように調合されたノンアルコー飲料)という。日本語では「リラックス・ドリンク」とでも呼べるだろうか。
  そんなものが本当にあるのだろうか?
 ABCは2011年8月7日、“The Truth About 'Relaxation' Drinks”(リラックス・ドリンクの真実 )のレポートで、“More than 350 varieties of so-called relaxation drinks have hit the shelves, with revenues expected to reach $73 million this year.”(いわゆるリラックス・ドリンクと呼ばれるものは全米で350種類が棚に並び、市場規模は7300万㌦に達すると予想される)という。
 そこで挙げられている商品は、Unwind(ときほぐす)、宣伝文句は "Ultimate Relaxation"(究極のリラックス)▽ MiniChill(ミニ・チル)、chillはrelaxのこと。"Dr. formulated to make you feel calm, focused, and happy" (あなたをくつろがせ、集中力を高め、幸せにするために、ドクターが調合)▽RelaxZen(本当の禅)、"Promotes sleep, wake refreshed, reduce stress"(ぐっすり眠れて、目覚めは爽快、ストレス解消)▽Dream Water
(夢のウォーター)、"Drink to dream" (飲んで夢見る)▽Mary Jane's Relaxing Soda(マリー・ジェーンのリラックスするソーダ)、"Enjoy euphoric relaxation that's all natural, plain and simple"(夢のようなくつろぎを楽しんで、すべて自然で純粋、そしてシンプル)など。
 実は、多くの消費者は、これらの商品名や宣伝文句につられてドリンクを買って飲んでみる。すでに、心はいやしを求めており、暗示にかかりやすく、placebo(プラシーボ)効果は大きい。
 ところで、その成分はmelatonin(メラトニン)、 hops(ホップ)、linden(リンデン)、kava extract (カバジュース)、valerian(カノコソウ) L-theanineなど。
 ほとんどは、placebo効果以上の効き目はないようだが、問題はmelatonin。動物のホルモンの一種で、脳の松果腺から分泌される。メラトニンは睡眠と深い関係があり、血中濃度は、昼間は低く、夜は高くなる。また、子供は分泌量が多く、恒例になるほど少なくなる。米国ではsupplementとして販売され、不眠や時差ぼけの解消に用いられている。だが、メラトニンはやはり薬である。ドリンク剤として飲む代物ではないのだ。とくに、ドライバーや子供が飲むと大きな危険をともなうので、医者は注意を呼びかけている。
 どうしても、relaxation drinkを飲みたい人は、成分表示をよく確かめた上にすること。

spoiler


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 spoilerは英和辞書では「台無しにする人(物)」。カタカナ読みは「スポイラー」。元の動詞のspoil(スポイル)は「ダメにする」「損なう」の意味があり、to spoil a child by pampering him(子供を甘やかしてダメにすること)から、spoilerは「甘やかす人」でもある。だが、最近は“Spoiler!”といえば、「ネタばれ注意」。すなわち、映画や小説のプロットをばらして、観客や読者の感興を損なう「ネタばらし」のことだ。
 2007年7月21日、英語版ハリー・ポッター・シリーズの最終第7巻“Harry Potter and the Deathly Hallows”(邦題『ハリー・ポッターと死の秘宝』)が一斉発売されたが、関係者は発売前のネタばれを防ぐため、数カ月前から周到に準備したという。その模様をタイム誌(2007年7月9日号)が、“Harry Potter and the Sinister Spoilers”(ハリー・ポッターと邪悪なネタばらしたち)の記事で伝えた。
 このシリーズは、1997年の第1巻の発売以来、第6巻に至るまで、全世界で60以上の言語に翻訳され、3億部以上を売ったという空前のベストセラー。世界中の子供たちが最終巻の発売を待ち望む一方で、ハリー・ポッターの成功を妬む連中の嫌がらせも絶えない。作者のJ.K.ローリングさんに対しても、すでに4月ごろから「ネタをばらしてやる」と脅迫するpotential spoilersがあったようだ。最大部数のUS版を出版するスカラスティック社では、印刷工場から全米の販売代理店に至るまで、不祥事が起らないように〝厳戒態勢〟を敷いたという。
 ところで、spoilerは選挙にも登場する。自分は当選する可能性がほとんどないが、ほぼ同じ主張をするライバル候補の票を奪って、かく乱要因となる候補者をspoilerと呼ぶ。共和・民主の2大政党が対峙する米国では、independent(日本でいう無所属?)がしばしば〝台風の目〟となる。たとえば、2000年の大統領選挙では、共和党のブッシュ大統領と民主党のゴア元副大統領が争ったが、環境派のラルフ・ネーダー氏がindependentで出馬して三つ巴となり、ネーダー氏がゴア氏の票を奪ったことでブッシュ氏が勝った、とする分析がなされた。
 さて、オックスフォード英語辞書(OED)によると、spoilはもともと「動物の剥いだ皮」を意味した。それが、「皮を剥ぐ」という動詞に転じ、さらに、戦場で勝者が敗者の武器や甲冑を奪い取る、暴力で人の持ち物を奪うこととなり、現在の意味に発展した。
 spoilerの他にも、人の楽しみを奪うものをspoilsportという。新作ミステリーの結末をしゃべるヤツなど、「この野郎!」と思わず罵りたくなる。あなたもspoilerにならないように、“Please do not tell the ending of this column to anyone.”(どうか、このコラムの結末を人に言わないで下さい)The sankei Shimbun (July 22 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月14日土曜日

busy brain われわれの脳はいつもビジーだ!



 brainは「脳」で、busyは「忙しい」。busy brainは「忙しい脳」では、何のことか分からない。このbusyはfully engaged あるいはoccupiedとかんがえて、busy telephone line(電話のライン)やbusy computerというように、brainがnot accessible(アクセス不能)の状態を想像していただきたい。
 すなわち、"When the mind is racing and stressed out, it can be difficult to focus and think clearly during the day, or sleep well at night. We call this 'misfiring,' or 'busy brain.'”(心が考えごとで一杯になり、ストレスでやられてしまい、集中できなくなって、昼間でも考えが明瞭でなくなる。夜は眠れない。この状態を〝不発〟あるいはビジー・ブレインと呼ぶ)
 読者の大多数は、brain worker(頭脳労働者)であり、朝から晩までコンピューターに向かって仕事をしているだろう。だが、それは脳全体の機能を均等に使うのではなく、一部分を酷使するものだ。しかも、頭脳労働者の常として、神経が疲れ切ってしまい、身体は胃腸のほかは、慢性的な運動不足に置かれている。その結果は、insomnia(不眠症)である。
 My brain will not shut down. It goes from one thought that triggers another thought and another next thing I know the clock reads 3:30am, 4:30 am. Finally, maybe around 5, 5:30 my brain shuts down and I fall asleep.
 (私の脳はシャットダウンしない。脳は1つの考えから、次の考えを呼び起こし、そしてもう1つの次のことに移る。時計は午前3時半、4時半になったのを知る。ついに、5時か5時半ころに、ようやく脳はシャットダウンし、私は眠る)
 以上が、busy brainを訴える〝患者〟の実際の文章であり、その乱れにも注意。面白いのは脳がshut downするという表現である。この人は、自分の脳をcomputerのアナロジーとして捉えているのだが、これも現代社会の特徴といえる。
 実際には人間の脳はcomputerより計算機能は劣るものの、はるかに精巧な機能を有していることを忘れてしまっている。
 だが、当人は逃れようのない苦しみを感じている。What can I do about my busy brain? (私はビジー・ブレインをどうすればよいの?)と悲鳴が上がる。だが、busy brain relieverなどのsupplementを飲んでもほとんど効果はない。
 答えはTake a rest!(休むこと)それ以外にない。バカンスをとって海や山に行くか、日本ならば温泉につかって心身を休めること。
 Soak and relax in the hot spring!
 
 

2012年7月13日金曜日

pullback 撤退は侵攻よりも難しい・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 pullbackは、後ろ(back)に引く(pull)ことで、「引き戻すこと」という名詞。カタカナ読みは「プルバック」。軍事用語では「軍隊の撤退」を意味する。別の言い方としてdrawbackなどがある。正式にはwithdrawalで、軍隊を退却させる行動一般を指す。動詞はwithdraw。
 米外交の大きな課題は、“on Iraq pullback”(イラク駐留米軍の撤退問題)、そしてon Afghanistan pullback (アフガニスタンの撤退問題)。
 ブッシュ大統領は2007年7月12日、イラク情勢に関する米軍の中間報告を発表、「複雑で多難な状況」が続いていると指摘した。大統領は、この春以来のtroop surge(増派)による約3万人の配備がようやく終ったばかりで、“I believe we can succeed in Iraq, and I know we must.”(私はイラクでの成功を信じる。われわれは成功しなければならないのだ)と言明した。だが、野党民主党が多数派を占める米議会下院はその日、2008年4月1日までに米軍を撤退させる法案を223対201の賛成多数で可決した。ブッシュ大統領は拒否権を行使し、法案は廃案になった。だが、オバマ政権は撤退を決定。イラク駐留米軍は2011年12月18日、国境を越えて隣国クウェートに入り、撤退を完了した。ブッシュ前米政権が2003年に始めたイラク戦争は、約8年9カ月を経て完全に終結した
 ところで、軍隊の撤退にはtactical withdrawal(失地回復のための戦術的撤退)、feigned retreat(敵をおびき寄せるための見せかけの退却)、rout(敗退、退散)があるが、ブッシュ大統領が恐れて二の足を踏んだのは、ズバリrout。共和党政権の元国務長官であるジョージ・シュルツとヘンリー・キッシンジャーの両氏が、2005年1月にインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに、“A rout is not an exit strategy.”(敗退は退去戦略ではない)との論文を発表したとおりだった。
 米タイム誌(2007年7月19日付)の“How to Leave Iraq”(いかにしてイラクから立ち去るか)の記事によると、駐留米軍16万人の撤退は口で言うほど簡単なことではないと述べている。かつて、アフガニスタンに侵攻した旧ソ連軍が約12万人の兵を隣国に撤収するだけで、1988年5月から9カ月かかり、敵の追撃を受けて500人以上の兵士が死亡したという。 
 アフガニスタンについては、オバマ米政権は現在9万1千人の駐留米軍を、2012年秋までに6万8千人に減らす方針を示している。だが、その後はどうなるのか?
 19世紀初めのプロイセンの軍事学者、クラウゼヴィッツは著書「戦争論」で、“War is a continuation of political activity by other means.”(戦争は他の手段による政治の延長)と述べたが、アフガニスタンの運命のカギを握るのも、米国の政治であることだけは確かだ。The Sankei Shimbun(july 28 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月12日木曜日

online predator ネットに潜む肉食獣



predatorは「捕食動物」「肉食動物」であるが、ここではan adult who exploits vulnerable children or teens, usually for sexual or other abusive purposes(セックス、あるいは虐待目的でいたいけない子供や10代を食い物にする大人)を指す。そのPredatorがonline(オンライン)で子供を誘惑しようとするのだ。Internet sex predator(ネットの肉食獣)ともいう。
ロイター通信(7月11日付)は、“Social networks scan for sexual predators, with uneven results”(ソーシャルネットワークが肉食獣をスキャンするが、その結果はまちまち)と報じた。
Facebookは今年3月、あるソフトウェアを使って30代の若い男がチャットでフロリダ州13歳の女児とセックスの話しをし、翌日中学校が引けてから出会う約束をしたのを突き止め、警察に通報。警察は女児のコンピューターを押収し、男を逮捕したという。
Facebook is among the many companies that are embracing a combination of new technologies and human monitoring to thwart sex predators.(フェイスブックは、肉食獣の企みを阻止するために新しい技術と人間による監視を併用する企業の1つだ)という。
というのは、ソーシャルネットワークやインターネット・フォーラムなどを使って、未成年者がこうした性的虐待者 (sexual abusers) の犠牲になるケースは今も後を絶たないからだ。が、こうした監視は、プロでなければ難しいといい、結果は必ずしも成功例ばかりではない。
一方、クリックオン・デトロイト(7月11日付)には、”Internet sex predator waits for teen at school bus stop”(ネットの肉食獣は、スクールバスの停留所で10代の児童を待つ)という記事を掲載した。
According to the FBI, there are 500,000 adult predators online every single day, looking for their next young victims. These people start out as a kid's "friend," but then they want much, much more.(FBIによると、ネット上には毎日50万人のセックスを狙う肉食獣が出没し、次なる若い犠牲者を探し回っているという。これらの連中は、最初は子供の友達ということで始め、その後どんどんと求めてくる)という。
The FBI found 20 percent of teenagers have sent naked photos of themselves over the phone—more girls than boys.(FBIは、10代の20%が自分の裸の写真を送っており、その数は少年よりも少女が多いと見ている)つまり、子供たちの性的な関心をかき立てて、次第に深みに引きずり込む手口なのだ。
それだけに、ネットをいかに監視したとしても、子供たちが犯罪の罠があることを自覚し、自ら近づかないようにしない限り、online predatorsの跳梁を阻止することはできないのだ。


juggle



 juggleは、日本でも「ジャグリング(する)」という。和風では「お手玉」。ボールなどを下に落とさないように空中に投げ続ける〝曲芸〟を指す名詞・動詞。そこから、比喩的に、曲芸のように物事をやり繰りすることにも使う。
 USA TODAY(2007年6月25日)の“Some firms offer help as more employees juggle work, care for aging parent”(年老いた親の介護と仕事をジャグリングする従業員が増えるなかで、会社が援助)との記事では、サウスダコタ州に住む51歳のシェリー・アンダーソンさんが、87歳になる母親の介護をしながら、コンサルタント業で飛び回る様子を描き、親の介護と仕事の両立は“Herculean task”(ヘラクレス並のエネルギーが要る困難な仕事)という。つまり、両方とも落とすことができないjuggling ballsなのだ。
 高齢社会の到来とともに、仕事にだけ打ち込んでいればよかった時代は過ぎ去りつつある。米介護連盟(NAC)などの調査によると、親などの介護をしている男性の60%、女性の41%が今やフルタイムで働いているという。企業の側でも社員の抱える負担を無視できなくなっている。介護サービスの斡旋や緊急時ケアのサポートなどに取り組む企業が出てきた。
 一方、離婚の増加によって、“single mom”(シングルマザー)の負担増もクローズ・アップ。ニュージャージー州に本拠を置くスター・レジャー(2007年7月15日付)の“Divorced mom needs to juggle two big goals”(離婚ママが2つの大目標をジャグリング)という記事によると、2人の子供を抱えて離婚したメリンダさん(44)は、現在17歳と14歳になる子供たちを大学に進学させるとともに、自分自身の退職後の生活に備えるため、学費の捻出と老後の蓄えという〝至難の業〟にチャレンジしなければならないという。
 いずれも洋の東西を問わない話で、juggleの語がメディアに頻繁に登場する理由もうなずける。
 ところで、本物のジャグリングは古代エジプトのころからあったそうで、アトラクションとして人気を博して来た。今では大衆化され、各国に愛好団体も生まれ“the ultimate sport”(究極のスポーツ)として楽しまれている。投げ上げるものは、ボール、リング、帽子から、ナイフ、燃える松明、さらにチェーンソーなどと、見ていてハラハラさせられるものまである。が、〝究極のジャグリング〟はタマゴではないだろうか?
 juggle eggsは、コンピュター・プログラマーが頭の中で非常に複雑なプログラムを組み立てるときのように、ちょっと思考が中断されてもおじゃんになるような知的作業に取り組むことをいう。このコラムを書くのもまさにそれで、“Don’t bother me now, I’m juggling eggs.”(邪魔しないでくれ。取り込み中なんだ)The Sankei Shimbun (August 5 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月11日水曜日

Kegel exercise 尿漏れ防止効果は絶大・・・



pelvic floor exercise(骨盤底体操)あるいはpelvic exercise(骨盤体操)のこと。米国では1948年にアイオア州出身のgynecologist(婦人科医)Dr. Arnold Kegel(ケーグル)が、Kegel exercisesとして、 squeezing of the muscles of the pelvic floor(骨盤底の筋肉を絞る運動が、non-surgical treatment of genital relaxation(女性器のゆるみを直す非外科的治療法)として提唱したことから、この名称が付いた。
Kegel exercises are said to be good for treating vaginal prolapse(脱出症=正常な位置から沈み込むこと) and preventing uterine prolapse in women.その結果、子宮の締まりがよくなり、 they may also increase sexual gratification(セックスの満足感が増大する)という。
Kegel exercises strengthen the pelvic muscles to increase the flow of blood circulation in the pelvic region, thus improve their tone and sensitivity.(骨盤の筋肉を強化することで、そこの部分の血流がよくなり、伸縮性や感度が改善される)としている。
  だが、メリットは女性だけでなく男性にもある。
Kegel exercises can help men achieve stronger erections, maintain healthy hips, and gain greater control over ejaculation.(ケーグル体操は、男性の勃起力を高め、健康な臀部を維持し、射精が自由自在になる)となれば、やらない訳にはいかない。
In men, this exercise lifts up the testicles(睾丸), also strengthening the cremaster muscle(挙睾筋), as well as the anal sphincter muscles(肛門の括約筋), as the anus is the main area contracted when a Kegel is done.(注:男性はケツの穴を締めるように心がけること)
さて、最後に高齢者にもよい。すなわち、Kegel exercises help control urine leakage(尿漏れを防ぐ)
さて、どの筋肉が、引き締めるための骨盤底の筋肉か実感する必要がある。
You do so by stopping the flow of urine in midstream. You stop the flow only to learn how to contract the pelvic muscles(小便の流れを途中で止めることで、それが分かる。どのようにしたら骨盤底の筋肉を引き締められるか知るには、流れを止めてみること)






math phobia 数学が好きになるには・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


mathはmathematics(数学)の略称で、phobiaはacrophobia(高所恐怖症)、claustrophobia(閉所恐怖症)などの「恐怖症」。math phobiaは「数学恐怖症」だが、phobiaには「忌み嫌う」の意味もあるので、「数学嫌い」。カタカナ読みは「マス・フォビア」。
さて、数学嫌いは世界共通の現象で、その結果は成績に如実に反映される。2005年の全米統一学力テスト(NAEP)の12年生(日本の高校3年生に相当)の数学の結果は、advanced (優)、proficient(良)、basic(可)、below basic(不可)の4段階評価で、「可」以上の成績は61%で、そのうち「良」以上は23%。39%が「不可」だった。また、男子の平均点が女子を上回った。米国でも女性の方に数学嫌いが多いようだ。
全米数学教員評議会(NCTM)は1989年に、“reform mathematics”(改良数学)を打ち出した。数学が〝得意〟な一部の児童・生徒だけでなく、すべての子供たちに分かりやすく、さらに高度な知識を身につけることができる、というのが謳い文句。数学嫌いの子供は、addition(足し算)、subtraction(引き算)、multiplication(掛け算)、division(割り算)の四則計算(four rules of arithmetic)から苦手で、とくにmultiplication table(日本の九九に相当)が身についていないのが特徴だ。reform mathでは、計算機が普及している時代に初等計算でつまずくのはunproductive(非生産的)なことだとして、計算機の積極的な使用を奨励。そして、負担が軽くなった分、小学校からalgebra(代数)などを、中学校の初めからcalculus(微積分)などを教えることにした。多くの人がこの考えに賛同し、学校も相次いでreform mathを採用したのだ。
ところが、reform mathはなかなか狙い通りの成果を上げられなかった。かえって、初等計算さえできない子供が続出。そこで、“traditional mathematics”(伝統的数学)を学んだ親や、それを重視する教師らは、reform mathに反対するようになった。「簡単な計算もできないで、何が高等数学だ」という苦情が相次ぎ、ついに各地でreform mathかtraditional mathかという“Math Wars”(数学戦争)に発展。2006年にNCTMは、基礎的な算数の指導を強化することで、これまでの路線を若干軌道修正した。
reform mathの信奉者は、九九をはじめ憶えさせることの多いtraditional mathをparrot math(オウム返しの数学)などと批判する。確かに数学はrote memorization(丸暗記)の学科ではないが、それは憶えなくてよい、ということではない。計算の手順(algorism)はちゃんと憶えないと理解が進まない。math phobiaをいかにして克服するか? 結局のところ、処方箋は“The more math you do, the less scary it becomes.”(数学はやればやるほど、怖くなくなる)という以外にない。The sankei Shimbun (August 12 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月10日火曜日

miracle drug これ一錠で何でも効く・・・



 miracle drugは「奇跡のクスリ」すなわち「万能薬」。どこの国でも、万能薬と信じられているクスリはあるが、アメリカではaspirin。100年以上も前に誕生しながら、現在に至るまで何にでも効くとの信仰を集め、飲み続けられている。
 Bayer社に勤めていたドイツ人化学者Felix Hoffman氏がacetylsalicylic acid (ASA=アセチルサルチル酸) を作り出したのは1897年。Bayerはaspirinの商標で販売し始めた。
 長年に渡りheadaches(頭痛)muscle aches(筋肉痛)を緩和し、解熱の効能をうたってきた。
 1970年代に英国の薬学者John Vane氏が、aspirinに含まれるprostaglandinsという物質が、体内のcyclooxygenaseという酵素を阻害することで痛みが緩和されることを突き止めた。Vane氏はその功績で1982年にノーベル賞を授与された。
 また、A daily low dose (around 75 milligrams) of the anti-inflammatory has also been said to reduce the risk of cardiovascular disease, ease arthritis pain and stop the formation of blood clots, since it acts as a blood thinner.(毎日低量=約75ミリグラム=を炎症止めとして服用すると、血液をさらさらにするので、心臓病のリスクを減らし、血栓を防ぐといわれる)
 さらに、Oncologists already know that a long-term, low daily dosage of Aspirin may reduce cancer-related deaths, specifically colon cancer.(がん研究者の間では、長期間にわたり毎日低量のアスピリンを服用することで、がんによる死、とくに大腸がんを減らせるのではないかと考えられている)という。
 だが、副作用も当然ある。血液をさらさらにするということは、出血した場合には血が止まりぬくくなる。毎日飲んでいるとgastrointestinal bleeding(胃腸の出血)、 bleeding strokes(出血性の発作)、brain hemorrhaging(脳出血)を起こしかねないという。
 にもかかわらず、ブッシュ大統領(ジュニア・第43代)をはじめ、多くの米国人が健康法として毎日アスピリンを飲んでいる。
 ところで、共和党の大統領候補指名を争ったRick Santorum氏の支持者で億万長者のFoster Friess氏は、今年2月にテレビ番組でこういった。
 “Back in my day, they used Bayer aspirin for contraceptives. The gals put it between their knees and it wasn't that costly.”(昔は、バイエルのアスピリンを避妊に使った。女どもは膝の間にそいつを挟んでいた。これには費用もかからない)
 視聴者は、驚いたようだが、ここまで行くと、obsession(妄念)を通り越してcultであろう。

e-mail addict 気になって仕方がない・・・


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


e-mailは「電子メール」で、addictは「中毒患者」または「常用者」だから、e-mail addictは、電子メールに病みつきになった常用者のこと。カタカナ読みは「イーメイル・アディクト」。to be addicted to ~で「中毒になる」と動詞形でも使う。「中毒」という名詞はaddiction。「電子メール中毒」はe-mail addictionである。
e-mail addictは、今やわれわれの周りにも心当たりが多いが、米国ではe-mailが盛んになり始めた1990年代前半から登場。これが、addictionの一種だと認識されるようになったのは21世紀に入ってからだ。〝重症〟になると、5分置きにe-mail inbox(受信箱)をチェックしないと気がすまない。パソコンにしがみ付いていないときは、PDA(携帯情報端末、注:今はスマートフォン)を持ち歩き、電車の中はもちろん、トイレでもメールを読む。2、3日メールを見ないと、「世界とのつながりを失いそうで、不安でたまらなくなる」という。インターネットに関する行動心理学の専門家、デイブ・グリーンフィールド博士は、電子メールユーザーの6%がe-mail junkies(電子メール中毒者)だと指摘する。
ところで、タイム誌(2007年7月23日号)は“How We Get Addicted”(いかにして中毒に陥るか)の特集記事で、米国人の陥っている〝中毒症状〟の数々について解説した。米国で一番問題になっているのが、alcoholism(アルコール中毒)とdrug abuse(薬物乱用)だ。アル中患者は1870万人で人口の7.7%に上り、約200万人が“Alcoholics Anonymous”(匿名のアル中患者救済協会)で〝禁酒〟のリハビリに取り組んでいる。麻薬などの薬物依存症患者は360万人と推定され、若者への拡大が社会問題化。U.S. National Institute on Drug Abuse(NIDA=国立薬物乱用研究所)のノラ・ボルコー博士は「誰もが、アルコールや薬物を常用すれば、中毒になる。脳の機能が慣らされてしまうからだ」と語る。
このほかに、タバコやカフェインも中毒性が指摘されるが、さらにギャンブルやショッピング、セックスなどの行動も問題となっている。〝セックス中毒〟に苦しむアメリカ人は1600万人に達し、その3分の1は女性で、全体の60%は子供のころに性的虐待を受けた経験を持つという。そして、最近急増しているのが、電子メール中毒をはじめとするinternet addiction(インターネット中毒)。どんな行動でも度が過ぎるほどやると、中毒症状が生まれるという。われわれの脳が、「それはいいことだから、もっとやれ」というように反応するらしい。
心理学者のカール・ユングいわく、“Every form of addiction is bad, no matter whether the narcotic be alcohol or morphine or idealism.”(どんな形であれ、中毒はよくない。それがアルコールだろうが、モルヒネだろうが、理想主義だろうが)。何ごともほどほどに。The Sankei Shimbun(August 19 2007) 「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月9日月曜日

freak out 正気じゃないぜ・・・



freakは「異常な出来事」「異常なもの」で、これを人や動物とすると、「奇形」「化け物」である。freak outは、突然の異常事態に投げ込まれ、パニック状態に陥ることをいう:Seeing the dead body freaked him out.(彼は死体を見て気が動顛した)あるいは、Don't freak out, it's not the end of the world.(パニクるなよ。世界の終わりというわけじゃないさ):また、薬で頭が変になることをto be freaked out on LSD(LSDでラリっている)などと使う。
7月3日のFOXニュースは、“JetBlue pilot who had midair freak out found not guilty by Texas judge”(テキサスの地裁は、飛行中に変になったジェットブルーの機長の有罪を否定)と報じた。
この事件は、クレイトン・オズボーン機長が今年3月27日、ニューヨークからラスベガスに飛行中に起こした。
Osbon started rambling about religion to the first officer, according to court documents.(裁判記録によると、オズボーン氏は副操縦士に宗教についてとりとめのないことを話しはじめた)
 He scolded air traffic controllers to quiet down, then turned off the radios altogether and dimmed the monitors in the cockpit.(彼は管制官に静かにしろと怒鳴りつけ、無線を切ってしまい、コックピットのモニターを消した)
He said aloud that "things just don't matter" and encouraged his co-pilot that they take a leap of faith.(彼は大声で「大したことじゃない」といい、副操縦士に「信じなさい」と励ました)という。
"We're not going to Vegas," Osbon said, according to the affidavit. (宣誓供述書によると、「私たちはベガスには行かない」とオズボーン氏はいった)
こういうのがfreak outの前段で、後段はこうなる。
Passengers say they had to wrestle him to the floor after he left the cockpit mid-flight and ran through the plane's cabin yelling about Jesus and Al Qaeda.(乗客の話では、機長がコックピットを途中で離れ、キリストやアルカ―イダの名前を叫びながらキャビンを走り出したので、みんなで床に組み伏せた)という。
裁判官は、機長の突拍子もない行動を精神障害によるものと判断したのである。
さて、7月2日のHollywood.comによると、“J.K. Rowling's New Book Cover Revealed: Everyone Freak-Out!”(JKローリングさんの新作の表紙が明らかになった。みんな変になる)と報じた。
ハリーポッターの作者、ローリングさんは9月27日に新作を発売する。乞うご期待!

2012年7月8日日曜日

aerobic exercise 元気で長生きの秘訣・・・



aerobic のaero-は、ギリシャ語由来でair(空気)を意味する連結形。aerobic で「空気(酸素)を必要とする」という形容詞。exercise は「運動」「練習」という名詞。動詞にも使う。aerobic exerciseは「空気(酸素)を必要とする運動」で、「有酸素運動」と訳される。
長距離を歩く、走る、泳ぐ、自転車をこぐなど、激しさが中程度の運動を長い時間をかけて行うのがaerobic exercise。多量の酸素を体内に取り込むことによって、まずglycogen(グリコーゲン=糖質)を、ついでfat(脂質)を分解し、筋肉を収縮させるエネルギーに変える。心肺機能がたかまり、生活習慣病の予防や改善、シェイプアップにもつながるので、世界中で人気を博している。また、ややきつめのaerobic exerciseは、骨の成長を促がし、男女ともに骨粗鬆症のリスクを下げることが明らかにされている。
この言葉の生みの親は、米空軍の運動生理学者だったケネス.H.クーパー博士。1969年に著書「エアロビクス」を出版し、有酸素運動の科学的プログラムを世に送り出した。 運動不足が問題になり始めたころで、この本はたちまちベストセラー。以後、博士はクーパー研究所を設立し、運動の普及に努めている。aerobic exerciseの一つで、アップビートの音楽に合わせて体を動かすAerobicsも博士の考案。女優のジェーン・フォンダが発表したworkout(練習)ビデオが大当たりし、80年代に大流行することになった。
aerobic exerciseは、今や多様化。米国のジュディ・シェパード・ミセット女史が70年代から始めたフィットネス・ダンスのJazzercise(ジャザーサイズ)は、世界中で展開されているほか、ボクシングの動きを取り入れたエアロビクス体操のcardio-boxing(カーディオ・ボクシング)も90年代以降流行している。
さて、aerobic exerciseを長年続けるとどうなるか?―スタンフォード大学医学校の研究チームは、中高年者の習慣的なランニングの効果について21年間にわたって調査、2008年8月11日付の医学誌アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシンに発表した。論文のタイトルはずばり、”Reduced Disability and Mortality Among Aging Runners”で、「ランニングをする高齢者は、しない人よりも長生きし、身体に障害を抱えることも少ない」という結論。 
調査の開始は1984年で、50歳以上が対象。ランニング・クラブに所属するグループと、運動習慣のない健康なグループを追跡調査し比較すると、19年後、運動習慣のない人の34%が死亡したのに対し、ランニングをする人の死亡率は15%だったという。当然といえば当然だが、〝無理は禁物〟。Take it easy!

boot camp


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 boot campは英和辞書では「新兵訓練所」と訳されているが、これは米軍の俗語。正式にはRecruit Training Depotだが、海兵隊(Marine Corps)と沿岸警備隊(Coast Guard)、海軍(Navy)に限ってboot campと呼ぶ。
 2007年に、米国人の空手世界チャンピオンでフィットネス・エキササイズの指導者、ビリー・ブランクス氏が販売した短期集中型エクササイズDVD「ビリーズブートキャンプ」が米国だけでなく日本でも大当たりしてboot campが〝ブートキャンプ〟と英語の発音そのままで知られるようになった。
 ところで、世界最強を誇る海兵隊の本家本元のboot campは非常に厳しいことで知られる。所在地はサウスカロライナ州のパリスアイランドとカリフォルニア州サンディエゴの2カ所。新兵は男女とも高卒以上が対象で、年間約4万人が訓練に励む。男の場合、入隊するや頭をバリカンでクルーカットに刈り上げられ、〝軍隊の洗礼〟を受ける。上官に怒鳴りあげられながら、いかなる命令にも“Aye, aye , sir!”(アイ、アイ、サー)と答えるまで、ビシビシしごかれる。
 basic exercises(基礎訓練)は持久力と腕っ節の強さに重点が置かれ、こなせない者は通常3週間のPhysical Conditioning Platoon(体力調整小隊)に放り込まれる。ここで懸垂が3回以上、腹筋運動が2分で40回以上、3マイル(4・8㌔)が28分以内に走れるようになるまで出してもらえない。また、overweight(体重過多)の者は、食事が“Diet Tray”(減量トレイ)になる一方、underweight(体重不足)の場合は、“double-rations”(2倍盛り)を食べさせられるという。これもなかなかきつい。その後は本格的な軍事教練に入り、日曜、祭日もあってないようなもので、延々12週間続く。
 さて、bootは「長靴」、「ブーツ」のこと。オックスフォード英語辞書(OED)によると、語源は14世紀に遡り、最初は乗馬用ブーツを指したという。米国では19世紀から“kick”(蹴る)の意味の動詞として使われる。boot campという熟語は20世紀の半ばから登場。一説には米兵のはいた長靴に由来するという。boot campで、新兵はbootとも呼ばれる。
 1980年代から、boot campをモデルにした少年犯罪の軍隊式教育による更生施設が各州で導入され、やはりboot campと呼ばれるようになった。最近では指導員の〝しごき〟による死亡事故が起こって、廃止される所もある。
 さて、いずれのboot campでも新入りはこう言い渡される。“You must do everything you are told to do, quickly and willingly.”(やれと言われたことは何でも、すばやく喜んでやらなければならない)。そして、“You must never quit or give up.”(決してやめたり、あきらめたりするな)。boot campは忍耐力と根性を鍛えるところでもある。The sankei Shimbun (August 26 2007) 「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月7日土曜日

gut feeling 何を信じるべきか?



 gutは「はらわた」だから、gut feelingは「はらわたの感じ」。gut reactionともいう。日本語でいう「ぴんと来る」。学問的にいうとinstinct(本能)intuition(直観)。an immediate or basic feeling or reaction without a logical rationale(論理的な合理性なしに、即座の直感あるいは反応)。
 たとえば、私はいつも自分の直感を信じる、というのはI always trust my gut feeling.また、直感に従う、というのはfollow one’s gut feeling、また、単にgutでよい。
 Appleの創業者であったSteve Jobsはこう言っている。
 Again, you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something - your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.(もう一度言う。あなたは未来を見るのに点を結びつけて考えることはできない。過去を振り返る場合にだけ、点を結びつけて納得することができる。そこで、あなたは自身の将来において点が結びついていると、ただ信じなければならないのだ。つまり、あなたは何かを信じなければならない-あなたの直感、運命、人生、カルマ=業、などなど。こう考えることは、私を意気消沈させなかった。むしろ、私の人生を全く違ったものにしたのだ)
  逆境から立ち上がり、米国のテレビのトップのトークショウのホストとなったOprah Winfreyはいう。
 "Follow your instincts. That's where true wisdom manifests itself."(本能に従うこと。そこには、本当の智慧が顕在化する)。
 Albert Einsteinはこういう。 “The only real valuable thing is intuition.”(本当に値打ちのあるのは、直感だけだ)
 最後に松下幸之助の言葉。
 “No matter how deep a study you make. What you really have to rely on is your own intuition and when it comes down to it, you really don't know what's going to happen until you do it.”(あなたがどれほど深く勉強したとしても、本当に信頼しなければならないのは自分自身の直感である。そして、直感ということになると、あなたはそれを実行するまで、何が起こるか知ることはできない)
 

body odor


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 bodyは「身体」で、odorは「臭気」だから、body odorは「体臭」。カタカナ読みは「ボディ・オウダー」。「体臭」という日本語のニュアンスと同じで、unpleasant odor(不快な臭気)を指すことが多い。その辺を強調する米俗語が、body odorの頭文字を取ったBO(発音はビー・オウ)。問題になるのは、bad breath(口臭)、underarm odor(わきが)、foot odor (足の臭い)だ。
 “Odor-Eaters”(オドイーター)ブランドの米消臭剤メーカー、コーム社の最近の調査によると、他人の体臭が気になっても、半数以上(59%)の人は言い出せないという。職場の同僚の口臭を注意すると回答したのは20%、わきがについては12%、足の臭いは9%と激減する。“Don’t exhale. Think you have bad breath?”(息を吐くな。口がクサいじゃないか)などと言える人は、よほどの心臓。単刀直入のアメリカ人でも、body odorについての会話は〝タブー〟というわけ。
 だが、内心はどう思っているのか?ある化粧品メーカーの調査によると、6割以上の男女が「相手に興ざめする一番の要因は体臭」と答えている。さらに、男性の47%、女性の41%が、「口のクサい相手とは2度とデートはしない」と回答。とくに、男性の42%は、「相手の女性がタバコを吸うと分かれば、デートは断る」という。デートの相手は、“So clean, so cute.”(清潔なほどかわいい)。
 body odorは、汗とともに皮膚から分泌される脂質が酸化し、雑菌が繁殖するのが主な原因だが、人により個人差が大きい。そこでdeodorant(防臭剤・消臭剤)となるが、de-(取り除く)odor(臭気)-ant(~するもの)で、実際は香水がほとんど。体臭を根本的に改善するには、lifestyle(生活様式)を変える以外にない。健康アドバイザーが薦めるのは、まず第1にbathing(入浴)。毎日入浴して肌を清潔に保つ。第2にclothing(服装)。とくに汗かきの人は通気性のよい服を着て、まめに洗濯する。ここまでは当たり前のことだ。
 実は、体臭に最も影響を与えるのはdietary(食事)。“What comes out of your body reflects what you put in.”(身体から出るものは、摂り入れたものを反映する)ということから、肉食は体臭の第1の原因。ABCニュース(2007年8月2日付)の“Study Says Vegans Find Meats Eaters Sexually Repulsive”(研究によると菜食主義者にとって肉食者は性的嫌悪の的)という記事では、vegans(厳格なベジタリアン)の多くがmeat eaters(肉食者)に対して、“Their body odor is pungent. Their sweat is extremely smelly. Vegetarian people are not so smelly.”(かれらの体臭は強烈で、汗はとてもクサい。菜食の人はそれほど臭いがしない)と感じているそうだ。クサいのは真っ平ごめんで、“Vegansexuals do it with each other.”(〝菜食主義性愛者〟は似たもの同士がベッドを共にする)という。The Sankei Shimbun(September 2 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月6日金曜日

cash incentives


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 cashは「現金」、incentiveは名詞で「励み」とか「報奨金(物)」。cash incentives(複数形に注意)は「現金報奨」といったところ。つまり、「カネをやるからガンバレ」という意味。カタカナ読みは「キャッシュ・インセンティヴズ」。
 incentiveの語源は、ラテン語のincentivus。元の動詞はincinereで「駆り立てる」という意味。経済学の用語として、日本でも「動機付け」とか、「インセンティブ」とそのままで使う。cash incentives自体はどこにでもあり、珍しくない。だが「子供が学校に来て勉強したら現金をやる」というのは、米国独自の発想ではないかと思う。
 ニューヨークのブルームバーグ市長は2007年6月、anti-poverty program(貧困対策プログラム)の一環として、学校への出席率が低くドロップアウトも多い市内の貧困層に対し、小学生から高校生を持つ家庭に、子供の出席率が95%になれば1カ月最大50㌦の報奨金を出す方針を打ち出した。さらに高校では、州の統一試験に合格し進級すれば最高600㌦、卒業すれば400㌦のボーナスがもらえるという。新学年度の同年9月から市内70校で実施し始めた。このプログラム全体は“Opportunity NYC”(ニューヨーク市のチャンス)と呼ばれ、大富豪の市長自ら私財を投じたほか、ロックフェラー財団などが資金を提供している。
 その後、このプログラムは“‘Learn & Earn’ payment program”(〝学んで稼ぐ〟支払いプログラム)と称され、他州にも急拡大している。
 だが、教育上の賛否は大きく分かれる。USA TODAY(2007年8月17日付)は社説で、報奨金の提供方法を慎重に、という条件付きで賛成。理由は、富裕な家庭の子供たちは、よい成績を取ればご褒美に小遣いをもらったりするので、cash incentivesは、すでにまかり通っているというわけだ。一方、心理学者のバリー・シュワルツ・スワースモア大学教授は、“The assumption that adding incentives always helps is false.”(動機付けを加えることがいつも有効である、と考えるのは誤りだ)と疑問視する。学ぶことにはそれ自体喜びがあるはずだが、カネを与えるようになれば金儲けが目的になる。一時的には出席率もテストの成績もよくなるかもしれない。だが、報奨制度がなくなれば、学習意欲はなくなるだろう…。
 ここで思い出すのは、米国の行動心理学の草分けであるB.F.スキナー(1904~90)が行なった「スキナー箱」の実験だ。内部のレバーを押すと自動的に餌が出る仕組みになった箱に、ネズミを入れる。ネズミはレバーに飛びつくと餌が得られることを知り、その行為を繰り返すようになる。だが、餌が出ないようにすると、ネズミはレバーに飛びつくのを止めてしまう…。
“Yes, it’s very sad that education has come to this. ”(そう、教育がこんなことになってしまったのはとても悲しいことだ)The Sankei Shimbun(September 9 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月5日木曜日

cougar 学校に潜む邪悪な生き物・・・



 cougarは、ネコ科の動物、ピューマ。アメリカでは、クーガー、あるいはAmerican lionと呼ぶ。単独で生活し、シカや小動物を捕食する。そこから、若い男とのセックスを求める中年女性を暗示的に指す。
 cougarとは、どんな女性か手っ取り早く調べるには、googleのサーチで“sex with student”と打ち込めば、ニュース欄にはずらりと事件が並び、イメージ欄には、その顔写真が登場する。
 米国では、生徒を狙ってセックスをする女性教師の事件は枚挙にいとまがない。
 英国のゴシップ紙、デイリーメール(7月5日付)は、“School teacher, 40, who made sex tape with daughter's 16-year-old boyfriend and 'raped' another teen, 16”(学校教師、40歳、娘の友達の16歳の少年とのセックスをビデオに撮ったほか、もう1人の16歳の男子を〝強姦〟した)と報じた。オクラホマ州の小学校教師だ。
 同紙(7月2日付)は,“Tacoma middle school teacher accused of having sex with student”(ワシントン州のタコマ中学校の女教師が生徒とセックスをした容疑がかけられている)と報じた。すでに5年前の事件が今問題になっている。
 また、“Teacher and mother-of-three, 36, who had sex with student, 13, escapes jail”(教師で3児の母で36歳の女性が13歳の生徒とセックスをしたが、収監を免れる)という。
 それぞれのニュースの詳細は、ここでは割愛するが、教師という立場を利用して男子生徒を持て遊びアドベンチャーを楽しんだようだが、子供の心には深い傷を残すことになり、非常に悪質な犯罪と言わねばならない。
 さて、cougarの特徴として、First, you'll notice that make-up has been liberally applied to the mouth and eye area. (第1に、口元、目元の化粧が濃い)
 Second, her clothes will be cloaked in a heavy veil of overly floral perfume (第2に、フローラル系の香水のどぎつい匂いに包まれている)
 and, third, quite unlike the younger members of the female species, she'll have no qualms about getting raging drunk.(そして、第3により若い女性と違って、べろべろに酔っ払っても何の良心の呵責も感じない)という。
 これは、南アのサンデー・タイムズ(2010年10月17日付)からの引用である。どこでも、cougarはいるのだ。
 Protect your boys from cougars !

sexually active Have a nice sex!


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


sexuallyは「性的に」という副詞。activeは「活動的な」「活発な」という形容詞で、軍事用語としては「現役兵の」という意味もある。sexually activeは「性的に活動的」で、カタカナ読みは「セクシュアリー・アクティブ」。よくセックスをするということだが、ハッキリそういうのが憚られる場合にこういう遠回しな言い方をする。weasel word(イタチ言葉、  ㌻)の1つと言える。
米国で大きな社会問題になっているのが、“sexually active teens”(性的に活発な10代)。その結果として、意図せず妊娠したり、性感染症(STD)にかかる子供たちが多いからだ。米疾病対策センター(CDC)は定期的に「10代の性」を調査しているが、そこではsexually activeを「過去3カ月以内にsexual intercourse(性交)をした」と定義している。2005年の高校生を対象とした調査では、9年生(日本の中学3年生に相当)の21.9%、10年生(同高校1年生)の29.2%、11年生(同2年生)の39.4%、12年生(同3年生)の49.4%-全体では33.9%、つまり、3人に1人がsexually activeだった。調査には「3カ月以前の性行為」は含まれていないから、〝経験者〟を加えるとさらに数は増えるという。
一方、シカゴ大学は、57歳から85歳の男女3005人にヒアリングした「中高年の性の実態調査」の結果を、医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(2007年8月23日付)に発表した。この世代に対する調査は〝羞恥心の壁〟が厚く、これまで難しかっただけに、今後高齢社会の性問題を考えるうえで貴重なデータであるという。ワシントン・ポスト(同日付)は“Elderly Staying Sexually Active”(年を取ってもまだまだ〝現役〟)、ニューヨーク・タイムズ(同)は“Many Found Sexually Active Into the 70s”(70代でも多くは〝お盛ん〟)と報じた。
この調査では、sexually activeを「過去12カ月以内に自主的にsexual contact(性交渉)を持った」と定義。調査結果では、57歳から64歳の73%、65歳から74歳の53%、75歳から85歳の26%がイエスと回答しており、その大半が「月に2、3回かそれ以上、性交渉がある」と述べている。
「高齢者の性」の障害になるのは、男性の場合erectile difficulties(勃起困難)が37%、女性の場合はlow desire(欲求低下)が43%などで、多くの高齢者が障害を乗り越えようと懸命の努力をしているという。“Sex is an important indicator of health.”(セックスは健康の重要なバロメーター)と言い、セックスの障害は往々にして糖尿病や感染症、がん、その他の健康状態悪化の〝徴候〟でもある、と研究者は指摘する。
“Life without sex might be safer, but it would be unbearably dull.”(セックスの無い人生はより安全かもしれないが、耐え難いくらい退屈だろう=H.L.メンケン)TheSankei Shimbun(September 16 2007)「グローバル・English」はこちらへ

2012年7月4日水曜日

five o’clock shadow or designer stubble?



 five o’clock shadowは、読んで字のごとく「5時の陰り」。Beard regrowth that darkens a man's features late in the day, following a morning shave.(朝剃った男のあごひげが再び濃くなり夕方には顔が黒く見えることをいう)。
 だが、なぜ午後5時なのか?19世紀の英国の上流階級の風習では午後5時にお茶を召し上がったことに由来するとの説があるが、一般的に午後5時になると日が陰るので、夕方らしい陰りと捉える方が素直であろう。
 アメリカで生まれた表現で、1930年代にはGem Safety Razor Companyがマーケティングに使った。
 ところで、よく似たあごのひげが、designer stubble。こちらは、A short growth of beard, aimed to affect a rugged masculine or deliberately unkempt appearance.(短く生やしたあごひげで、無骨な男らしさやわざと無造作な外見を気取ったもの)。20世紀になって、clean-shaven appearance(きれいにヒゲを剃った外見)が好ましいと考えられるようになったが、1980年代になると、男のファッションとしてfive o’clock shadowが人気を呼ぶようになり、わざとする者も出てきた。とくに、Clint Eastwoodなど映画俳優がspaghetti western(日本ではマカロニ・ウエスタン)で繰り広げたカウボーイのひげ面の影響が大きかった。
 さて、今の若い女性は、男のひげ面をどうおもっているのか?
 Do You Find Five O’Clock Shadow Sexy or Scruffy?(セクシーか、それともだらしないか)との質問がネットにあった。
 たとえば、カナダの俳優Ryan Renolds=P=のような男だったらI think the scruff looks good on him, not so much the others. However, the clean shaven thing works better 90% of the time with boyfriends.(だらしない格好もよいと思うけど、ほかの男はダメ。ボーイフレンドは、ほとんど9割の時間はきれいにヒゲをそってほしい)というのが、大方の若い女性の感想のようだ。