Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
voluntourismはvolunteerism(ボランティア活動)とtourism (観光旅行)を合体させた言葉で、「ボランティア旅行」。観光やリゾートに、ボランティア活動を組み込んだ旅行のこと。カタカナ読みは「ボラントゥーリズム」。
2004年12月にスマトラ島沖の大地震によって引き起こされたインド洋大津波は、22万人以上の死者・行方不明者を出す大惨事となった。被害を受けたタイ、スリランカなどでは、世界中から多くのボランティアの人々が駆けつけて救援活動を行ってきた。欧米では従来のNPOだけでなく、Tsunami volunteering assistance(〝ツナミ〟のためのボランティア支援)に乗り出す旅行業者が現れ、voluntourismの言葉が知られるようになった。
voluntourismは国の内外を問わず、貧しい国や地域での支援活動を含む。似た言葉に、環境保護のためのecotourism(ecoはecology=「環境」の意味で「環境保護旅行」)がある。
AP通信(2007年3月28日付)は“Volunteer Vacations Are Popular”(ボランティア休暇が人気)という記事で、voluntourismを扱う米国の旅行業者や団体の数は、過去3年間で倍増の勢いだと伝えた。なかでも興味深いのは、ボランティアの多くが戦後生まれのbaby boomer(ベビーブーマー)であること。「退職後の余った金と時間を人助けに使いたいと望んでいる。何をやろうかと考える時に、ふと思いつくのが9.11テロやハリケーン・カトリーナなどの被害者救援活動だ」。
また、米国の高校や大学では、ボランティア活動をextra curriculum(課外活動)として評価する。実際に就職や進学で、ボランティアの実績がけっこうモノを言うのだ。それだけに「ボランティアを兼ねた休暇旅行は一石二鳥」と考える学生も増えている。
南米のホンデュラスで、マヤ遺跡を観光する一方、地元民のために便所や豚小屋を建てる手伝いをした55歳の学校教師の場合、参加費用は航空運賃を除いて12日間でざっと1000㌦。宿泊と食事、支援活動のための交通費や道具類の購入などを含め1日1万円ぐらいで、普通の観光旅行と変わらない。彼は、「労働はきついが、ここでは心配事がない。電話で呼び出されることはないし、日ごろの仕事のプレッシャーから解放される素晴らしい機会だ」と話し、〝心の平安〟を強調する。
さて、米国は自由市場経済が社会の底まで浸透し、ビジネス優先だが、一方でボランティア活動による社会貢献も盛んだ。volunteerの語源はフランス語で1600年に「志願兵」として登場、後に戦争以外にも使うようになった。もとはvoluntaryで、of one’s free will(自由な意思に基づく)を意味した。カネに縛られてあくせく一生を送るのはあまりに空しい。自由な自分を取り戻したい、と心のどこかで渇望しているのかもしれない。The Sankei Shimbun(april 29 2007)
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