2011年11月30日水曜日

jump-start


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 jump-startは、jump(ジャンプ)してstart(スタート)する、という文字通りの言い方。エンジンがガツンとかかって、自動車が躍り上がって走り出す様を想像してほしい。つまり、バッテリーが上がったdead car(死んだ車)を、booster cable(ブースター・ケーブル)でもう一台の車のバッテリーにつないで蘇生させること。あるいは、坂道を転がしてエンジンをスタートさせる「押しかけ」。そこから転じて、停止状態にあるものに「活」を入れて蘇らせることをいう。
 2008年9月の金融危機以来、米国だけでなく世界各国の緊急課題は、“to jump-start the economy”(経済をジャンプスタートさせること)。タイム誌(2009年1月8日付)は、“Obama’s Stimulus: Jump-Starting His Long-Term Agenda”(オバマ氏の景気刺激策、長期的課題をジャンプスタート)と報じたが、新政権が発足して100日を経過、ようやく景気対策が動き出した。だが、景気回復への道のりは平坦ではない。(注:これまで3年近く手を変え品を変え景気対策を打ってきたが、米国の景気は悪化の一途をたどっている)
 さて、景気回復のカギを握ってきたのが自動車メーカーのビッグ3。ワシントン・ポスト(2009年3月14日付)は、“Could the Volt Jump-Start GM?”(ボルトはGMをジャンプスタートさせられるか?)と報じた。このVoltは、GM が2010年に投入を検討している電気自動車Chevrolet Voltで、果たしてそれがGMの起死回生策になるか、という意味。今回の景気後退の背景には、石油依存からクリーン・エネルギーへの経済システムの転換という大きな課題があるだけに、GMだけでなく自動車産業全体がその矢面に立たされている。
 さて、ジャンプスタートさせねばならないのは、自動車や経済だけではない。“Jump-start your brain!”(頭脳に活を入れろ)というのが、「脳ブーム」に沸く昨今のポピュラーな表現。つまり、発想の転換をはかって、マンネリから抜け出そう、という意味で使う。
 フォードの創業者であるヘンリー・フォード(1863~1947)は、発想の転換について、こう述べている。“When everything seems to be going against you, remember that the airplane takes off against the wind, not with it.”(すべてのことが、あなたに逆行するように思われる時には、思い出せ。飛行機は追い風ではなく、向かい風で飛び立つということを)。この飛行機は無論、昔のタイプで、向かい風にこそ揚力が働く、という航空力学の原理を指摘。
 また、彼はこうも言う。“Don’t find fault, find a remedy.”remedyは病気の治療法とか、欠点の改善策。粗探しは止めて、前向きに解決策を探そうという意味。そのココロは?“Jump-start your motivation!”(やる気を出そう)。The Sankei Shimbun (May 11 2009)


flaming


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

flameは「炎」(名詞)で、「燃える」あるいは「カッカする」という動詞としても使う。だが、コンピューター関連の俗語では、インターネット上などで侮辱、挑発する行為を指す。その結果、起こるのがflame war(非難の応酬)で、無用の論争に発展するのがflaming。いわゆる、日本語でもネットの流行語になった「炎上」である。カタカナ読みは「フレイミング」。
日本では、ブログに挑発的なメッセージが掲示され、反発するコメントが殺到する現象が目立つ。 わざと挑発的なメッセージを送ることをtroll(トロール)という。元の意味は「流し釣り」だが、挑発に乗ってくる者を探す目的で行なわれる。これは確信犯である。
flameは1960 年代に学生俗語として登場。ランダムハウス米俗語歴史辞典によると、1968年には、酒を飲んでわめき散らすことを意味した。電子メールやオンライン・フォーラムが本格的に普及し始めた1990年代から、ネット上でflamingが問題になる。ハイテク難語辞典Jargon File 4.2.0は、flame(動詞)を“to post an e-mail message intended to insult and provoke”(侮辱や挑発をする電子メールを送ること)と定義している。
ところで、電子メール、あるいはデジタル・メッセージは、本人が挑発を意図したわけではなくても、誤解される場合が多々ある。
シカゴ大学のニコラス・イプレイ教授(行動心理学)らは、2004年に“When what you type isn’t what they read: The perseverance of stereotypes and expectancies over e-mail”(あなたが書いたものが、その通り読まれるとは限らない時:電子メールをめぐる根強い固定観念と期待の影響)と題する論文を発表した。
たとえば、“Don’t work too hard.”(あまり働きすぎるなよ)というメールが今朝同僚から届いたとする。このメッセージは「真面目」なのか、「皮肉」なのか。同僚がいつも〝皮肉屋〟だったら、「あまり、要らんことをして迷惑をかけるなよ」と、イヤミに受け取られる場合がある。面と向かっての会話ならば、相手の表情や態度から言葉のニュアンスを誤ることは少ないが、唐突なテキストのメッセージでは、むしろこちらの固定観念や期待に左右されて誤解を招きやすい。これが、flame war の原因の1つであるという。
さらに、ネット上では、匿名が横行しているから、面と向かえば決して言えないような悪口にもブレーキが掛からなくなり、頭に血がのぼると言いたい放題になりやすい。そんな場合には、誰かが声を掛けて沈静化を図る必要がある、とJargon File 4.2.0は述べる。“Now you’re just flaming.”(お前ら燃え上がっているだけだ)とか“Stop all that flamage!”(「炎上」を止めろ)。つまり、ネットのfirefighter(消防士)の出番だ。The sankei Shimbun (May 18 2009)

PS: ご意見、ご感想をお待ちしております。

2011年11月29日火曜日

stress test


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

stressは「圧力」「緊張」、また、カタカナ読みのままで「ストレス」。testは「テスト」「検査」。stress testは文字通り、stressに対するテストである。だが、テストの対象によって内容は異なる。
この言葉から連想するのは、心臓の検査(cardiac stress test)。循環器系の病院ではtreadmill test とかexercise testと呼ばれ、マシンを使って歩くなどの運動をしながら、心拍数や血圧・心電図を計測する。つまり、運動によって心臓にstress(負荷)をかけて、心臓の働きをチェックするところから、その名称が生まれた。
ところで、昨年秋の金融危機以来、懸念されるのが銀行の経営状態。アメリカの金融当局は2009年5月7日に、銀行の健全性を調査した“Bank Stress Test”(銀行のストレス・テスト)の結果を公表した。ウオールストリート・ジャーナル(同5月8日付)によると、“The federal government projected that 19 of the nation’s biggest banks could suffer losses of up to $599 billion through the end of next year if the economy does worse than expected.”(大手銀行のうち19社は、もし経済が予想以上に悪くなれば、来年の末までに最大5990億㌦の損失を被ることになるだろう、と連邦政府は推計した)
銀行の健全性とは、銀行がどれだけしっかりした資産を保有しているか、ということ。今後さらに景気が悪化して株価が下がり、貸付が焦げつくなどのstressがかかる場合を想定し、各銀行の被る損失を推計して、経営破綻を回避できる資産保有の下限を割り出すのが、stress test。だから、日本語では「資産査定」と訳された。
その結果、“It ordered 10 of them to raise a combined $74.6 billion in capital to cushion themselves.”(連邦政府は10社に対して、そのダメージから保護するために、計746億ドルの資本の増強を命じた)という。
さて、一般的にストレスといえば、mental stress(精神的ストレス)。“How stressed are you?”(あなたはどれぐらいストレスがかかっているか)というわけで、stress test(あるいはstress quiz)は、インターネット上で人気のプログラム。
よくあるのが以下の質問。“Do you get angry when you are kept waiting?”(あなたは待たされると腹が立つか)“Do you keep everything inside?”(あなたは何でも内に背負い込む方か)“Do you spend a lot of time complaining about the past?”(過去のことについて長々と愚痴をいうか)、そして“Do you get too little rest?”(全然くつろげないか)―。Yesの答えが多くなるほど、あなたのストレス・レベルは上がっていく。
では、ストレスに苦しむ人に、次の言葉をどうぞ。“Give your stress wings and let it fly away.”(あなたのストレスに翼を与え、飛ばしてしまえ=カリン・ハートネス)。The Sankei Shimbun (May 25 2009)

PS: ご意見、ご感想をお待ちしております。

wake-up call


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

“Wake up!”は「起きろ!」で、callは「電話のコール」。カタカナ読みは「ウエイカップ・コール」。ホテルのモーニングコールのこと。“Will you give me a wake-up call at six?”(6時にモーニングコールをお願いします)などという。転じて、危険などを知らせるsign(予兆)やwarning(警告)の意味で比喩的に使う。
メキシコから発生した新型インフルエンザについて、タイム誌(2009年5月18日号)は“How to Prepare for a Pandemic”(世界的大流行にいかに備えるか)の記事を掲載。その中で、コロンビア大学にある米防災センター(NCDP)のアーウィン・リドリナー所長は“We should look at this as a wake-up call, not one more snooze alarm.”と語った。snoozeは「居眠り」でalarmは「目覚まし」。目覚まし時計で、もうちょっと寝るため一時的にベルの音を止めるスイッチをsnooze buttonと呼ぶ。つまり「今回の出来事は、単なる目覚まし時計の〝まどろみ〟用ベルの一回ではなく、『起きろ!』という警鐘だ」。
同誌は、「H1N1ウイルスはいずれ終息するかもしれない。だが、地球規模の警告システムを強化しなければ、新しい病気が常にわれわれを脅かすことになるだろう」と警告する。つまり、今回のインフルエンザは幸いに「弱毒性」で、重症に陥るケースは少ないが、今後、もっと毒性の強い感染症の流行に備える必要がある、という。将来の流行には、“H1N1 could return next winter in a more lethal form―just as the virus that caused the catastrophic 1918 pandemic did.”(1918年に「スペイン風邪」の大流行の原因となったウイルスとちょうど同じように、H1N1がより致死的な形で今冬戻ってくる)との可能性も含まれると指摘する。
ところで、スタンフォード大学フーバー研究所のヘンリー・ミラー博士も、シカゴ・トリビューン(2009年5月8日付)に“The Flu Leaves Us With a Wake-Up Call”(インフルエンザはわれわれに警鐘を残す)との論文を寄稿した。だが、その内容は少し違う。WHO(世界保健機関)が、今回のケースで警戒を「レベル5」まで引き上げたのは、現実のデータを無視したものだ、という。その結果、各国の政府や国民に、不必要な休校措置や抗インフル薬のネットでの売買を助長するなど、無用の混乱を巻き起こしている、と批判した。新型よりも通常の“seasonal flu”(季節性のインフルエンザ)の方が、被害の可能性が大きく、ワクチンをはじめ十分な備えが必要であると指摘する。
ミラー博士によると、今回の流行は、別の意味でのwake-up callになる。なぜなら、“It could make us think critically about who will be entrusted with public health policy decisions in the future.”(将来の公衆衛生の政策決定で、誰を信用すべきかをわれわれに考えさせるものだ)。The Sankei Shimbun (June 1 2009)

PS: 2009年の豚インフルは世界的な騒ぎを引き起こしたことは記憶に新しい。だが、グローバル化の時代だけに、新たな感染症の脅威は去らない。

New swine flu virus alarms health officials

According to the Centers for Disease Control and Prevention (CDC), three cases of a new flu virus have been confirmed. These originated in pigs but apparently spread from person to person, in three Iowa children.

According to Arnold Monto, a flu expert and professor at the University of Michigan School of Public Health, there is no reason to fear the beginning of a new pandemic. He said, “I don't think this is anything to worry about for the moment… We have known that swine viruses get into humans occasionally, transmit for a generation or two and then stop. The issue is whether there will be sustained transmission (from person to person) - and that nearly never happens.”

The CDC has counted a total of 18 cases of this new virus, an influenza A strain known as S-OtrH3N2, in two years. That suggests that it's not spreading quickly or easily, explained William Schaffner, a professor at the Vanderbilt University School of Medicine and spokesman for the Infectious Diseases Society of America.

Schaffner added that that flu viruses mutate and swap genes all the time. Infectious disease experts may only be noticing these new viruses because of better technology, he said.

The children, who live in rural Webster and Hamilton counties, did not become seriously ill, said Dr. Patricia Quinlisk, medical director for the Iowa Department of Public Health. “We have pretty good evidence of person-to-person spread,” Quinlisk said. “None of the children or anyone around them had exposure to swine, turkeys or other sources.”

In the new cases, it appears that one of the children transmitted the flu to the other two, and none of them had any animal exposure, Quinlisk said. She declined to identify the children or their ages, saying only they were younger than 18. No further cases have been identified in the past week, she said.

The H1N1 swine flu pandemic began in 2009 after flu viruses mutated to create a new strain that humans had never encountered before, leaving everyone vulnerable to infection. Although the H1N1 pandemic proved to be relatively mild, doctors fear new flu strains because of their lethal history. In 1918, a new flu strain killed more than 20 million people.

All three of the Iowa children had mild illness, the CDC reports. The virus also seems treatable with standard anti-viral drugs, Schaffner noted. The 10 cases of H3N2 in 2011 also have been spread throughout the USA - in Pennsylvania, Maine, Indiana and Iowa - which doesn't indicate a disease “cluster” or outbreak, Schaffner further added.

“People need to be most concerned about the regular, everyday seasonal flu,” Quinlisk said. CDC officials have asked states across the country to be vigilant in looking for it, said Dr. Joe Bresee, the agency's influenza and epidemiology branch chief.

The current seasonal flu vaccine being offered by doctors and clinics was not developed to protect against the H3N2 virus. It contains some antigens similar to a flu virus that circulated in the 1990s, so some people who had the flu then or were vaccinated could have some immunity, but it's not clear how much, Quinlisk said. The Iowa children apparently had not been vaccinated, she added.

The best prevention for the new flu, as with any flu, is to wash hands frequently, cover coughs and sneezes and limit spread of germs by staying home when one is sick, health officials said.
News medicl Net (November 28, 2011)

2011年11月28日月曜日

cap


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

capは「縁なしの帽子」「野球帽」。カタカナ読みは「キャップ」。先端にかぶせるものという意味で、万年筆などの「キャップ」や、転じて「最高限度」「上限」を表す。また、「かぶせる」、「上限を定める」など、動詞としても使う。
昨秋の金融危機以来、ウォール街の金融機関に対する風当たりは強い。とくに、危機の最中に、経営幹部が巨額の報酬を受け取っていたことに、米国民の怒りが爆発。ウォールストリート・ジャーナル(2009年2月14日付)は、“Bankers Face Strict New Pay Cap”と報じた。Pay Capは「報酬支払の上限」の意味で、「(公的資金の投入を受けた)銀行家は、厳しい新たな報酬の制限に直面する」。
ところが、6月10日付のAP通信は一転して、“Geithner: No Caps on Pay for Corporate Executives”(ガイトナー財務長官は「企業の役員に対する報酬制限はない」と語る)と報じ、当初の激しい意気込みは尻すぼみに終わった。長官は会見で、「政府は、企業の株主が役員の報酬額に対して是非を問う採決の法制化を求めるが、その結果は役員会の決定を拘束しないだろう」と述べた。長年の懸案であった株主たちの“say on pay”(報酬についての意見)は、ウォール街の圧力に屈し、結局骨抜きにされてしまった。
さて、米下院エネルギー・商業委員会は2009年5月21日、温室効果ガスの排出権取引を認める法案を可決。ブッシュ前政権の消極的な環境政策から、環境保護重視へ大きく舵を切ることになった。タイム誌(5月22日付)は、“Greens Celebrate Cap-and-Trade Victory-Cautiously”と報じた。このcap-and-trade(キャップアンドトレード)は、排出権取引の1方式。つまり、capとは国や企業に温室効果ガスの排出量を割り当てること。tradeはその枠内で排出権を売買する仕組み。Greensは「環境保護派」。そこで、「環境保護派は排出権取引の勝利を祝う―ただし、慎重に」となる。
地球温暖化問題を訴えた“An Inconvenient Truth”(邦題「不都合な真実」)の映画や著書で、ノーベル平和賞を受賞したゴア元副大統領は、“The bill represents a crucial step forward in addressing the global climate crisis.”(法案は、地球の気象危機に対応するための重要な一歩だ)と語った。だが、急進派の環境保護団体は法案について、「こんなものでは環境破壊を防ぐことはできない」と批判。一方、「エネルギー価格の上昇を招く」との業界筋の主張も根強く、その行方はなお不透明で、「慎重に」という但し書きが付いた。
最後に、“Seven Ten Cap”というジョークをどうぞ。ある婦人がオートショップに来て、Seven Ten Capを求めた。店員は“What’s a seven ten cap? ”(セブン・テン・キャップって何ですか)とたずねると、婦人は○を描いて、その中に710と書いた。そのココロは?710を逆さまにすると、「OIL」。つまり、エンジンのoil capでした。The sankei Shimbun (June 22 2009)

hangover


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

hangoverは「二日酔い」。カタカナ読みは「ハンゴーヴァー」。語源はhang (ぶら下がる)とoverで「決着せずに続いている」という意味だが、持続するのはafter-effects of drinking too much(飲みすぎた後の影響)。朝まで続くことが多いからmorning afterともいう。日本語の「二日酔い」と違って、「残った悪影響」という意味で比喩的にも使う。
今も世界中でひしひしと感じられるのが、“Wall Street’s hangover”(ウォール街の〝二日酔い〟)。つまり、マネーゲームの末に招いた金融危機による悪影響だ。これを最初に指摘したのは、何とブッシュ前大統領。危機が表面化し始める2008年7月、共和党の資金集めのパーティーで、“Wall Street got drunk and now it’s got a hangover.”(ウォール街は酔っ払って、今や二日酔いだ=2008年7月24日付の英・インディペンダント)と内々に語ったという。ブッシュ氏は、米経済のバブルが弾けて不況に陥ることを知らされていた。その上で、“The question is how long will it sober up.”(問題は、醒めるのにどれだけ掛かるかだ)と言っているのが、心憎い。
だが、前大統領がそんな調子だから、共和党は民主党に議会の多数派を譲り、オバマ大統領に政権を追われた。そして、共和党にとって今も深刻なのが、“The Bush Hangover”(ブッシュ政権の〝二日酔い〟)。以後は、景気刺激策をはじめオバマ政権が打ち出す政策には、何でも反対の野党に成り下がり、ついにペンシルベニア州の共和党ベテラン上院議員のアーレン・スペクター氏が民主党にswitch(くら替え)する始末。タイム誌(2009年5月18日号)は、“Is the Party Over?”(党の終わりか)との記事を掲載した。大統領選挙でジョン・マケイン候補が敗北して以来、共和党はリーダーシップを取る者がなく、政治を刷新する力を失っている。“Most of this is just a hangover from the Bush years. Time heals all wounds.”(このほとんどは、ブッシュ時代の悪影響だ。時が傷をいやすだろう)と関係者はつぶやく。(注:住宅バブルの崩壊で手傷を負った金融機関は、公的資金の投入で息を吹き返したが、米経済はどん底の低迷からいまだに立ち直ることはできない。その意味では、hangoverは今なお続いているといえるのだ) 
ところで、実際の“How to Cure a Hangover”(二日酔いの治し方)。まず、第1に“sleep”(眠る)。“Rest is your best friend.”(休息は最高の友)であり、疲労回復の最適な手段だ。第2に、“take a shower”(シャワーを浴びる)。これは、刺激療法の一つで、水とお湯を交互に浴びると効果的。第3に“drink water”(水を飲む)。これは水分補給。そして、第4に、“get some exercise”(運動をする)。つまり、汗を流すまで動けば、次第に力はよみがえって来る…。
だが、二日酔いになる前に手をうつに越したことはない。つまりは酒の飲み方。“Drink the first. Sip the second slowly. Skip the third.”(1杯目を飲む。2杯目はちびちび飲む。3杯目は避ける)。何事もほどほどに、という教訓である。The Sankei Shimbun (June 29 2009) 

2011年11月27日日曜日

mindcasting


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

mindは「心」「精神」と訳されるが、本来は「記憶する」「考える」など心の知的な働きを指す。castingはcast(投げる)の動名詞形だが、ここではインターネットのブログなどにメッセージをpost(掲示)すること。そこで、mindcastingは、考えや思想、感情などをメッセージにしてネット掲載することだ。カタカナ読みは「マインドキャスティング」。
mindcastingは、今や流行の“Twitter(ツイッター)”の出現とともに注目を集め始めた言葉。twitterの元の意味は鳥のさえずりで、人の場合は「つぶやき」を表す。従来のブログは、普通1日1回〝更新〟されるが、そこからケータイなどを使って短いメッセージを次々に掲示するmicro-blog(小型ブログ)という考えが生まれた。これが、social networking(ソーシャル・ネットワーキング) 機能と結びついて利用されるのがTwitter。米Obvious社(現Twitter社)が2006年7月からサービスを始めた。
では、Twitterで何ができるのか?
同社のPRによると、“What are you doing?”(いま何をしている?)などの簡単な質問に対し、140 字以内の短い文章で答えることで、コミュニケーションの輪が広がるという。
その利用例として注目されたのが、イラン大統領選挙後の混乱についての市民報道。フォックス・ニュース(2009年6月16日付)は、“Twitter Links Iran Protesters to Outside World”(ツイッターがイランの抗議者と外部の世界を結ぶ)と報じた。大統領選挙の結果に抗議する人たちに対する政府当局の弾圧の模様が、イラン市民によってTwitterを通して、実況中継のごとく世界に報じられた。
ところで、Twitterの参加者の多くは、自分の身の回りや日常生活について話し始める。つまり、自分のlifeに関するメッセージを掲示するからlifecastingという言葉が誕生。これがさらに考えや思想にまで対象が拡大し、時々刻々メッセージを流すのがmindcastingだ。ロサンゼルス・タイムズ(2009年3月11日付)は、“On Twitter, Mindcasting Is The New Lifecasting”(ツイッターにおいてマインドキャスティングは新たなライフキャステイング)と述べて、その可能性に注目する。
mindcastingによって、自分の見たこと、聞いたこと、さらにそれに対する意見や感想などを即座に編集して多くの参加者に流すことができるから、“Twitter is the most minimal newspaper.”(ツイッターは、最も小さな新聞)となり、〝マイ新聞〟ができるというわけ。
だが、たとえ〝マイ新聞〟でも新聞と名が付く以上、途中で止めてはならず、発行し続ける必要がある。吉田兼好の徒然草ではないが、「心に移りゆくよしなし事」をメッセージにしてケータイで四六時中送り続けるというのは、本当にもの狂おしい作業のようにも思える…。The Sankei Shimbun (July 6 2009)

PS: この記事を書いてから2年以上たち、Twitterが有力なメディアであることが、中東におけるアラブの春の民主化運動でも証明された。だが、一方でinternet addictionに拍車を掛けるものであることも確かになってきた。最近の精神病の増加との因果関係にも注意したい。

painkiller


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

painは「痛み」で、killerは「殺し屋」「殺すもの」。painkillerは「痛みを殺すもの」という意味で「痛み止め」「鎮痛剤」。カタカナ読みは「ペインキラー」。
“The King of Pop”(ポップの王様)と呼ばれたマイケル・ジャクソンさんが2009年6月25日、自宅で急死した。米メディアは、“Michael Jackson was heavily addicted to the powerful painkiller Oxycontin and received daily doses of it.”(強力な鎮痛剤オキシコンチンの重症中毒で、毎日服用していた=6月26日付のABCニュース)などと報じ、死亡原因に関連して、鎮痛剤の中毒による健康問題があったことを指摘した。
AP通信(2009年6月28日付)は、“Thread of Pain Ran Through Jackson’s Career”(ジャクソンさんの生涯は痛みの連続)と報じた。1984年、コマーシャルの撮影中に事故で頭部を火傷した際の痛み。その2年後、白斑ができる皮膚病を発症してから、度重なる整形手術による痛み。さらに、厳しいダンスの訓練にともなう筋肉痛。“Physical agony was the unshakable problem with being Michael Jackson.”(肉体的苦痛は、マイケル・ジャクソンであるために、逃れられない問題だった)という。ジャクソンさんはpainkillersを常用するようになり、その結果、様々な副作用に悩まされて、入退院を繰り返していたという。
(注:マイケル・ジャクソンの死亡事故に関して、ロサンゼルス郡地裁の陪審団は2011年11月7日、過失致死罪に問われていた元専属医のコンラッド・マーレー被告(58)に対し、有罪評決を下した。死因は、複数のpainkillerの使用である)
ところで、オキシコンチンは、アヘンの成分を化学合成したオキシコドン(oxycodone)という麻薬系鎮痛剤の商品名。米国では1995年に処方箋薬として認可された。ガンなどの耐え難い痛みを緩和する効果が大きく、2001年には年間売上高が10億㌦を超えるベストセラーとなった。だが、医療目的以外の乱用が表面化。中毒、過剰服用、挙句の果てに死亡事故が起こり、2003年には薬の宣伝内容が違法として、連邦議会で取り上げられた。
米国では、オキシコンチンをはじめprescription painkillers(処方箋鎮痛剤)の医療目的外での使用者は年々増加。2006年には520万人と推定され、とくに10代の若者にまでpainkiller addiction(鎮痛剤中毒)が広がっている(2008年1月4日のABCニュース)。子どもたちは、医師が処方した親の薬を盗んで使うことから始め、友達と薬のやりとりをしたり、インターネットでの売買にはまるという。つまり、〝合法的麻薬〟として流通し始めているのだ。
“These drugs both prevent pain and stimulate the pleasure center in the brain.”(これらの薬は痛みを妨ぐとともに、脳内の快楽中枢を刺激する)からで、強力で、よく効く鎮痛剤は、それだけ中毒性が強い。中毒に陥り、乱用の果てにあるのは、麻薬と同じく健康被害、人間関係の破綻、そして副作用による死である。“Painkillers can kill you.”(痛み止めは、君の息の根を止めることができる)というのは笑い事ではない。The Sankei Shimbun (July 13 2009)


2011年11月24日木曜日

mission


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

missionは「使命」「任務」と訳される。語源は、キリスト教の布教団体が宣教師を海外へ派遣したことに由来、act of sending(送る行為)を意味する。カタカナ読みは「ミッション」。そこで、宇宙飛行ならばspace mission、軍隊の派遣ならばmilitary missionである。
7月20日は“moon landing mission”(月面着陸ミッション)の記念日。“On July 20, 1969, at 10: 56 p.m. ET, Apollo 11 astronaut Neil Armstrong stepped off the Eagle onto the surface of the moon.”(1969年7月20日、米東部時間の午後10時56分、アポロ11号の宇宙飛行士ニール・アームストロングは、着陸船イーグル号から月面に降り立った)。彼は言った、“That’ s one small step for man, one giant leap for mankind.”(それは1人の人間にとって小さな1歩だが、人類にとっては大きな飛躍である)。ここに、宇宙開発の歴史の新たなページが開かれた。
さて、オバマ大統領は、テロとの戦いの主戦場をイラクからアフガニスタンに移すことを決めた。ワシントンポスト(2009年7月2日付)は、“Marines Deploy on Major Mission”と報じた。marinesは、対テロ戦の主力部隊である海兵隊、deployは「配備する」。major missionは大規模な軍事ミッション。そのoperation(作戦)の内容は、約4000人の海兵隊員を南西部のヘルマンド川流域の渓谷に投入、イスラム原理主義勢力タリバンを掃討すること。この地域は、世界に流通するアヘンの約半分を生産、タリバンの重要な資金源になっており、ケシの栽培を撲滅するのが狙いだ。“The mission is the Marine’s largest operation since the 2004 invasion of Fallujah, Iraq.”(そのミッションは、海兵隊にとって2004年のイラク・ファルージャ侵攻以来の大規模作戦だ)という。
では、Iraq mission(イラクのミッション)はどうなったか?米軍の戦闘部隊が主要都市部から撤退を完了した2009年6月30日付のワシントンポストに、イラクのジャワド・ボラニ内相が、“Iraq: Mission Not Yet Accomplished”(イラクの主張:ミッションはいまだ達成せず)との論文を寄稿。その中で、米軍の撤退について“It is the beginning of a highly uncertain chapter in Iraqi democracy and self-governance.”(イラクの民主主義と自治にとってまったく不確実な章の始まりである)と将来に対する不安を吐露している。
ところで、われわれ1人ひとりにも人生というmissionがある。「かもめのジョナサン」の著者、リチャード・バック氏は、こう述べている。“Here is the test to find whether your mission on earth is finished. If you’re alive, it isn’t.”(この地球上におけるあなたのミッションが完了したかどうか、確かめるテストはこうだ。あなたが生きているとすれば、それはなお未完である)。Mission Accomplishedまで、闘いは続く。The Sankei Shimbun (July 20 2009)

2011年11月23日水曜日

cell yell


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

cellはcellphoneで「ケータイ」。yellは 「叫ぶ」「大声を出す」。cell yellは、excessively loud cell phone conversation(大声のケータイ通話)で、カタカナ読みは「セル・イェル」。
米国で7月は“National Cellphone Courtesy Month”(ケータイ・マナー月間)。これはケータイの普及にともない2002年に始まった運動で、その課題の中心が耳障りな着信音とcell yell。“Many cellphone users have a tendency to speak into their phones more loudly than necessary.”(多くのケータイ使用者は必要以上に大きな声で話す傾向がある)。電車の中などで、聞きたくもない他人の会話を強制的に聞かされるのがイヤだというcell-yell hater(セル・イェル嫌い)は多い。
2006年2月にABCニュースが実施した“Rudeness in America”(アメリカにおける無礼)という調査では、“making annoying cellphone calls”(迷惑なケータイ通話)に関して、87%の人が時々、57%の人がよく出遭うと回答している。
ケータイの会話はなぜ大声になるのか?小さなケータイのマイクに、ちゃんと声が届いているか心配な上に、周囲の騒音が気になるからだ。
だが、それだけではない。ニューヨーク・タイムズ(2001年11月22日付)の“Cell Yell: Thanks for (Not) sharing”(セル・イェル:共にする(しない)ことの有難さ)での分析はこうだ。
公衆電話が登場した1950年代には、通話のプライバシーを守るために電話ボックスが置かれた。もし、当時ケータイが発明されていたら、人はやはりプライバシーを気にしてボックスからケータイを掛けたであろう。ところが今日、社会はオープンになり、“Many relish the idea of speaking in open spaces, oblivious to the presence of others, and often in too loud a voice.”(多くの人が、公開の場で他人の存在を気に留めず、しばしば大声で話すことを好む)。cell yellはその結果というわけ。
ところで、cell-yell haterの感情を逆なでするのが、いかにも楽しそうに大声でケータイ通話する連中だ。こうした意図的な行動をstage-phoning(スティジ・フォーニング)という。2001年に英国の学者が指摘した現象で、一種の虚栄心から劇場の舞台に立って電話するように、“The caller is effectively performing for innocent bystanders.”(電話の掛け手は、何も知らない傍観者に見せつけるように振舞う)というタチの悪いタイプ。
では、cell yellに直面したら、アメリカ人はどうするか?“No need to shout. Be aware of how loudly you’re speaking.”(叫ばなくてもいい。どれだけ大声で話しているか気を付けなさい)と注意する?それとも、“Don’t cell yell!”(大声で通話するな)、または“Turn it off!”(ケータイを切れ)と怒鳴る?実は、多くの人は見て見ぬふりをして、“Fuck yourself!”(こん畜生)と心の中で罵るのだとか。The Sankei Shimbun (July 27 2009)

2011年11月22日火曜日

bottom out


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

bottomは「底」だが、動詞としても使い、bottom outは最低レベルに達することをいう。20世紀半ばからは経済用語として、景気や相場が「底を打つ」という意味に使う。カタカナ読みは「ボトマウト」。アメリカン・ヘリテージ辞典によると、“To descend to the lowest point possible, after which only a rise may occur.”(最低まで落ちて、後は上がるだけ)と定義している。
経済開発協力機構(OECD)は2009年6月24日、“A severe U.S. recession will bottom out this year, but any recovery will be weak due to anemic markets and shrunken consumer wealth.”(米国の厳しい景気後退は年内に底を打つだろうが、市場は活力がなく、消費者の資産も縮小しているため、回復は弱い=ロイター通信)と予想した。
米国景気のカギを握るのが、バブル崩壊後低迷し続けるhousing market(住宅市場)。有力格付機関のフィッチ・レーティングズは2009年7月15日、“The long-awaited bottoming of the U.S. housing market may be in sight, but a recovery could take as long as 18 months.”(長く待ち望まれた米国の住宅市場の〝底打ち〟が実現間近となったようだ。しかし、回復までには18カ月の長期間を要するだろう=ロイター通信)と判断。本格的な景気回復に至らないまでも、最悪期を脱する兆しが見えてきたと指摘した。
また、2008年秋以来の金融危機を見事に予測した“Dr. Doom”(ドクター・ドゥーム)ことヌリエル・ルービニ・ニューヨーク大学教授の新たな〝ご託宣〟。ブルームバーグ(7月16日付)によると、ルービニ教授はニューヨークでの講演で、“We might be at the bottom or close to the bottom.”(今が底か、あるいはもうすぐ底だ)と述べ、“In many ways the worst is behind us in terms of economic and financial conditions.”(経済・金融の状況においては、多くの点で最悪を脱した)と述べた。
では、回復基調に転じるのは何月ごろか?
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は2009年6月9日、ロンドン大学で講演し、“The oh-my-God-the-world-is-ending phase of the economic downturn is over.”(「おお神様、世界は終わりだ」という経済下降の段階は過ぎ去った)と述べた上で、“The economy will probably emerge from the recession by September.”(経済はたぶん9月までに景気後退から抜け出すだろう)との予測を示した。
だが、2011年11月の時点から振り返って言えることは、OECDのエコノミストも、格付け会社も、預言者もノーベル賞経済学者もどこに眼をつけていたのか、とあらためて考えさせられるということである。今や世界経済は、二番底をぶち抜いて、果てしない不確実性の時代に突入したようだ。おそらく、1929年の大恐慌もこうして世界経済を混乱に陥れたのではないかと思う。
それでは、われわれの未来はどうなるか?
われわれはなおも底を探る以外にはない。第二次世界大戦で米軍の機甲軍団を指揮したジョージ・パットン将軍はこう述べている。“Success is how high you bounce when you hit bottom.”(成功は、あなたがどん底に達したとき、そこからどれだけ高く跳ね上がるかにかかっている)。諸君の健闘を祈って、Bottoms up!(乾杯)The Sankei Shimbun (August 3 2009)

2011年11月21日月曜日

age barriers


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

ageは「年齢」でbarrierは「障壁」。age barriersは「年齢の障壁」。障壁にはいろいろあるので、複数形をとることが多い。カタカナ読みは「エイジ・バリアーズ」。
age barriersは、若年にも老年にも存在する。若い方では、USA TODAY(2009年3月23日付)が“Judge: Lift Age Barriers on Morning-After Pill”と報じた。morning-after pillは事後に服用する経口避妊薬の“Plan B”。米国では、2006年から18 歳以上ならば処方箋なしで、店頭で購入できるが、ニューヨーク東部地裁の判事は、「直ちに17歳にも許可したうえで年齢障壁を取り払え」との判断を示した。FDA(食品医薬品局)は、これを受けて、年齢制限の撤廃について検討していくという。
年配の方に目を向けると、このところage barriersが高くなってきたのが、雇用条件。AP通信(2009年7月6日付)は、“Jobless Tackle Age Barriers in U.S.”(米国の失業者は年齢障壁と格闘)と配信した。米労働省の調査によると、55歳以下の失業者は再就職まで平均21週、それ以上では30週かかるという。高齢になればなるほど、再就職へのハードルが高くなるのは、日本と同じ。
法律上は、雇用におけるage discrimination(年齢による差別)は許されない。企業は、求人募集条件に年齢制限を設けることはできないし、応募者も履歴書に年齢を記す必要はない。しかし、実際には高齢者が応募しても、人事担当者が顔を見るや否や、“The people applying for this job are young.”(この仕事に応募してくる人は若いですよ)と容赦なく拒絶する、といったケースが頻繁に起こっている。そこで、再就職のために“Botox injections”(ボトックス注射)によって顔のシワを伸ばして、少しでも若く見せようと涙ぐましい努力をする中高年は少なくないという。
シカゴ・サンタイムズ(2009年7月9日付)は、“How Mature Men Can Beat Age Barriers to Hiring”(熟年はいかにして雇用の年齢障壁を打ち砕けるか)という記事を掲載。“Many employers believe seasoned workers will cost more and know less about technology.”(ベテラン労働者は賃金が高いわりに、ハイテクについて知らない、と信じている雇用主が多い)ことがage barriersの大きな要因であると指摘した上で、これはまったくの偏見だ、と述べている。実際、50代、60代でも積極的に新しいことを学ぼうとする人は多いのだ。しかも、若い連中に負けない根性だってある。
米プロゴルファーのトム・ワトソンを見よ。今年の全英オープンで選手権では、世界ランク1位のタイガー・ウッズも、17歳の新鋭石川遼も予選落ちだった。だが、ワトソンは59歳という年齢で、大会史上最年長の優勝を狙い、最終ラウンドまで激闘。惜しくもプレーオフで敗れたとはいえ、堂々2位の成績を残したのだ。“Age is certainly not a barrier.”(年齢は決して障壁ではない)。The Sankei Shimbun (August 10 2009)

2011年11月20日日曜日

status quo


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

statusは、日本語でも「ステータス」という。元はラテン語で「立っているところ」を意味し、別の英語ではstate(状態)。status quoは“the state in which …”(~という状態)で、「現状」を意味する。カタカナ読みは「ステイタス・クォ」。“To maintain the status quo is to keep the things the way they presently are.”(現状維持とは、物事を今のまま維持することである)
政治用語では、いわゆる「体制」。ポール・ワッサーマンの『イタチ言葉-アメリカの2枚舌辞典』によると、status quoの本質を、“Those with money and power like to hold on both.”(金や権力を握る者たちは、その2つにしがみつきたがる)と看破する。金も無く、権力の中枢から外れた人々は、体制の変革(change)を訴える。ここにconservatives(保守派)とliberals(リベラル派)の政治闘争が生まれる。
さて、アメリカで2009年秋の最大の政治課題は、health care reform(医療保険制度改革)。これこそ、health insurance(健康保険)をhaves(持つ者)とhave-nots(持たざる者)のstatus quoをめぐる戦いだった。
オバマ政権は、日本と同じようなuniversal health care system(国民皆保健制度)の創設を最終目標に掲げ、have-nots のために改革を断行する考えだ。ワシントン・ポスト(2009年7月22日付)は“Imperfect Health Reform Still Beats the Status Quo”(不完全な改革でも現状を打破する)と、エールを送った。実際、アメリカでは健康保険は民間企業が販売しており、保険料を支払えない貧困層は加入できず、国民の6人に1人が無保険という。オバマ大統領は、その人々の救済策として公的な健康保険の導入を検討している。
だが、これに対して「現状維持」を訴える体制擁護派は、阻止に乗り出す。タイム誌(8月10日号)は、“Can Obama Find a Cure?”(オバマは解決策を見い出せるか?)の記事で、“The U.S. Chamber of Commerce has already allocated $2 million to fight the idea of a public plan that would compete with private insurers.”(米商業会議所は、民間保険業者に対抗する公的プラン案と戦うための資金200万㌦を予算割当てした)と述べた。つまり、「民業圧迫反対」によって、既存利益を確保しようという。
そこに、民主党の進撃を阻止し、巻き返しを図りたい共和党が同調する。“If we’ re able to stop Obama on this, it will be his Waterloo. It will break him.”(もし、これでオバマを止めることができれば、それはやつのワーテルロー=大敗北になるだろう。やつを潰せる)と意気込んだ。
“Status quo, you know, that is Latin for the mess we’re in.”(現状とは、ご存知の通り、われわれのいる混乱の状態を指すラテン語だ)と指摘したのは、ロナルド・レーガン大統領でした。The Sankei Shimbun (August 24 2009)

The Patient Protection and Affordable Care Act (Public Law 111-148) was signed into law by President Barack Obama on March 23, 2010. Along with the Health Care and Education Reconciliation Act of 2010 (signed March 30), the Act is a product of the health care reform efforts of the Democratic 111th Congress and the Obama administration. The law includes health-related provisions to take effect over the next four years, including expanding Medicaid eligibility for people making up to 133% of the federal poverty level (FPL),[9] subsidizing insurance premiums for people making up to 400% of the FPL ($88,000 for family of 4 in 2010) so their maximum "out-of-pocket" payment for annual premiums will be from 2% to 9.8% of income,[10][11] providing incentives for businesses to provide health care benefits, prohibiting denial of coverage and denial of claims based on pre-existing conditions, establishing health insurance exchanges, prohibiting insurers from establishing annual coverage caps, and support for medical research. The costs of these provisions are offset by a variety of taxes, fees, and cost-saving measures, such as new Medicare taxes for those in high-income brackets, taxes on indoor tanning, cuts to the Medicare Advantage program in favor of traditional Medicare, and fees on medical devices and pharmaceutical companies;[12] there is also a tax penalty for those who do not obtain health insurance, unless they are exempt due to low income or other reasons.[13] The Congressional Budget Office estimates that the net effect of both laws will be a reduction in the federal deficit by $143 billion over the first decade.[14](Health care reform from Wikipedia)

mountain of debt


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

mountainは「山」で、debtは「債務」「負債」「借金」。mountain of debtは文字通り「借金の山」。カタカナ読みは「マウンテン・オブ・デット」。
バブル経済崩壊の尻拭いは政府の役割で、大盤振る舞いの景気対策のつけは、結局のところbudget deficit(財政赤字)という名の借金として残される。その額が小さいうちは問題にならないが、“Mountain of Debt: Rising Debt May Be Next Crisis”(借金の山、増え続ける負債が新たな危機になるかもしれない)とAP通信(7月3日付)は報じている。
アメリカの場合、“The debt soared with the wars in Iraq and Afghanistan and economic stimulus spending under President George W. Bush and now Obama.”(ブッシュ前大統領と今のオバマ大統領の下で、イラク・アフガニスタン戦争と景気対策の支出のため負債は急増した)。1989年に2兆7000億㌦だった連邦政府の債務残高は、2008年には10兆㌦を超えた。
ところが、AP通信の続報(2009年8月13日付)によると、“The annual deficit was already heading above $1 trillion when Obama took office.”(オバマが大統領に就任したとき、すでに年間財政赤字は1兆㌦を超えようとしていた)のが、現実となり、債務残高は今や11兆8000億㌦に。
(注:During the presidency of George W. Bush, the gross public debt increased from $5.7 trillion in January 2001 to $10.7 trillion by December 2008. Under President Barack Obama, the debt increased from $10.7 trillion in 2008 to $14.2 trillion by February 2011.)
オバマ政権は「財政健全化のために医療保険制度改革が重要」と訴えているが、保守派は、その改革が財政赤字をさらに拡大させると、反発を強めた。
しかも、公的年金制度にあたるSocial Security(社会保障制度)が、危機的状況を迎えつつあるという。戦後のベビー・ブーマー世代の大量定年退職が始まり、old-age benefits(老齢給付金)と若い世代のcontributions(負担金)のギャップが問題になり始めているのだ。制度を破たんさせないためには、結局、政府が負担を肩代わりすることになるが、それもまたmountain of debtとなってのしかかることになる。
ワシントン・ポスト(2009年3月29日付)は、“Hiding a Mountain of Debt”(借金の山隠し)の記事で、ブッシュ前政権もそうだが、オバマ政権に対しても“the absence of any serious strategy for paying it all back”(借金をすべて返すための真剣な計画の欠如)を批判。 “The larger price will be paid by your children and grandchildren, who will inherit a future-blighting mountain of debt.”(その大きなツケを支払うのは、あなたの子供や孫である。彼らは未来を打ち砕くような借金の山を相続するのだ)と結んでいる。
オバマ氏は、“This(mountain of debt)is something that keeps me awake at night.”(この借金の山を考えると、夜も眠れない)と真情を吐露しているが、政府の借金の山は、日本にとっても、対岸の火事ではないのだ。The Sankei Shimbun (September 7 2009)



2011年11月17日木曜日

investment porn


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

investmentは「投資」、pornはpornographyの略で「ポルノ」だが、直訳して「投資ポルノ」では何のことかわからない。だが、pornにはlurid or sensational material(けばい、扇情的な材料)という別の意味がある。そこで、investment pornは、投資を煽るような金儲けの成功談をいう。カタカナ読みは「インヴェストメント・ポーン」。
景気の底打ち(bottom out)がいよいよ本物になって、株式市場に活気が戻ってくると、よく聞く質問は、“What are you buying in this market?”で「あなたはこの相場で何を買うのか」、端的に言うと「この相場では何が〝買い〟?」。質問する側が目論んでいるのは、他人の尻馬に乗って儲けようというget-rich-quick scheme(てっとり早い金儲け法)。こうした連中が眼の色を変えて読むのがinvestment porn。株式に限らず、流行のFX、金投資、急成長の某国の投資信託など、儲かるのなら投資対象は何でもOK。
よく似た言葉にfinancial porn(ファイナンシャル・ポルノ)がある。1998年にアメリカの株式市場がバブル相場に盛り上がっていた時、ニューズウィークの編集者が造語。“Short-term focus by the media on a financial topic can create excitement that does little to help investors make smart long-term decisions.”(熱狂を作り出すが、投資家に賢明な長期的決断をさせるには程遠い金融の話題についてのメディアの短期的な焦点)と定義し、「多くの場合、むしろ決断能力を曇らせる」としている。つまり、「誇張やウソがある」というのがpornの本質である。
これと同様のpornの使い方をする新語に、eco-porn(エコ・ポルノ)がある。ecoはecological(環境保護的な)の省略形。企業が自社の環境政策を宣伝する場合、往々にしてeco-pornがはびこる。たとえば、このキャッチ、“For Us, Every Day Is Earth Day”(われわれにとって、毎日が〝地球の日〟)。使われているのが、製材、製紙の組合や土地開発業者などの広告となれば、“Really?”(ほんまかいな)ということになる。
さて、オックスフォード英語大辞典(OED)によると、pornographyの語源は1864年にさかのぼる。pornoは「売春婦」、graphyは「記述」を指し、売春用の品書きを意味した。そこから、性行為の描写を売り物にしたわいせつな読み物や絵画、さらに映像などを意味するようになった。
日本で、著書「チャタレイ夫人の恋人」がわいせつ文書として発禁処分にもなった英作家、D・H・ローレンスは、“Pornography is the attempt to insult sex, to do dirt on it.”(ポルノはセックスを侮辱し汚すものだ)と、真の芸術と一線を画すが、米ポルノ女優グロリア・レオナードは、こう語る。
“The difference between pornography and erotica is lighting.”(ポルノとエロチカの違いは、照明だけよ)The Sankei Shimbun (September 14 2009)

2011年11月16日水曜日

exodus


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

exodusは「出て行くこと」、とくに集団の「移動」「出国」を指す。カタカナ読みは「エクサダス」。集団が大規模になる場合は、mass(多数の)を付けてmass exodus (大移動、大出国)という。
アメリカの国土は広く、何かのきっかけで、ある州から他の州へと人口のexodusが起こる。
かつてゴールドラッシュで人口急増にわき、豊かな州の代表であったカリフォルニア州は、いまや、シュワルツェネッガー知事の下で財政破綻の危機に追い込まれた。実は2000年以降、その異変を察知し、沈む船からネズミが逃げ出すように、California’s exodus(カリフォルニア脱出)が進行してきた。AP通信(2009年1月13日付)によると、2008年7月1日時点で、過去1年間に流出人口から流入人口を引いた純減は14万4000人に上ったという。中南米からの不法移民が増加して生活環境が年々悪化し、長らく住んでいた人々が逃げ出すという現象だ。とくに、数年前は住宅バブルで家が高騰。安い家を求めてアリゾナ、ネバダ州に移る人が多かった。最近は、バブルがはじけて州経済が低迷。そのしわ寄せによる増税と、学校教育の質の低下がexodusに拍車をかけているという。
また、タイム誌(2009年9月2日付)は、“Behind Florida’s Exodus: Rising Taxes, Political Ineptitude”(フロリダ脱出の背景に増税と政治的無能)と報じた。“The region-Miami-Dade, Broward, Palm Beach counties-lost 27,400 residents between 2008 and 2009, while Florida as a whole lost 58,000.”(2008年から09年にかけてマイアミデード、ブロワード、パームビーチ3郡で2万7400人、フロリダ州全体で5万8000人減少した)。同州は人口約1800万人だから比率としては大きくないが、第2次大戦後では初めての現象だ。その背景には、景気後退によるしわ寄せで、マイアミデード郡で財産税を大幅にアップ。また、フロリダ州では、州が運営する保険会社がハリケーンに対する損害保険料を大幅値上げしたことなどが影響しているという。
さて、The Exodusというと“the going out of Egypt”、つまり「出エジプト」。『旧約聖書』第2巻の「出エジプト記」によると、古代エジプトにおいて迫害に苦しんできたイスラエル人が、大預言者モーゼに率いられてエジプトを脱出、約束の地であるカナンに導かれた。その途中、シナイ山で神がモーゼに授けたのが「十戒」である。
「十戒」は英語では、“The Ten Commandments”。アメリカでは、“exodus to freedom”(自由への脱出)とよく言われるが、“Freedom is the will to be responsible to ourselves.”(自由とは自己責任を負う意思=ニーチェの言葉)でもある。そこで、殺されたくなければ“Thou shalt not kill.”(汝、殺すなかれ)、盗まれたくなければ、“Thou shalt not steal.”(汝、盗むなかれ)という律法が生まれるのであろう。The Sankei Shimbun (September 21 2009)

Radiation fears trigger Tokyo exodus

Fears of another earthquake combined with growing alarm about radiation leaks from nuclear plants in Fukushima have triggered an exodus from Tokyo.

Executives with domestic and foreign companies told the FT on Sunday that many expatriate and a number of Japanese staff were intending to relocate, some with their families, either to cities west of Tokyo, including Fukuoka and Osaka, or overseas.

Some foreign companies said their staff would stay away until fears of radioactive leaks and further earthquakes had abated.

Fukuoka and Osaka, both of which have international airports, are favoured destinations for temporary relocation because of the availability of flights abroad, which, one consulting company executive noted, “might be useful if the situation gets worse”.

Most flights from Tokyo to key regional destinations such as Singapore, Bangkok, Hong Kong and Sydney are fully booked for at least two weeks, prompting some nervous expatriates to move their families to hotels in Osaka or elsewhere.The Financial Times (March 13 2011)

shot


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

shotは日本語でも「ナイスショット」などと、そのまま使う。テニスや卓球では「打球」、銃砲やミサイルは「発射」。さらに、一杯の強い酒もshotで、take a shot of whiskey(ウイスキーを一杯やる)などといい、この用法は古く17世紀にさかのぼる。だが、ここではhypodermic injection(皮下注射)を指す。
世界で今最も関心が高まっているのがflu shot(インフルエンザの予防注射)。ワシントン・ポスト(2009年9月10日付)は、“Single Swine-Flu Vaccine Shot Effective, Study Finds”(豚インフルのワクチン接種は一回で効果、研究で判明)と報じた。米国のメディアは、新型インフル(H1N1)のことを今でもswine-fluと呼ぶ。“Preliminary data from a study involving 240 adults in Australia found that a single standard dose of vaccine produced an immune response within 21 days that appeared easily adequate to protect against the new virus.”(オーストラリアで240人の成人で実験した予備データによると、一回の標準ワクチンの接種で、新型ウイルスに対して容易に抵抗できると見られる免疫反応が、3週間以内に生まれた)としている。
一方、タイム誌(2009年9月14日号)は、“A Shot at Cancer”(がんに予防注射)という見出しで、米国でのがん治療の最前線をレポートした。この“New Therapy”(新しい療法)には、がんに対するワクチンの開発が前提となる。その接種よって、“to educate a body to, in essence, recognize and round up tumor cells the same way it polices viruses and bacteria.”(ウイルスやバクテリアを取り締まるのと同じように、本質的に、腫瘍を認知して捕捉するよう、体に教え込む)という。
その原理について、“The immune system may be fooled by the homegrown nature of cancer, recognizing the cells as part of the body.”(われわれの免疫システムは、がんの自生する性質によってバカになっており、がんの細胞を体の一部と認めてしまう)。そこで、ワクチンによって免疫システムを刺激し、がんを見つけ出すように仕向けて、攻撃させようという。うまくいくかどうか。
さて、a shot in the armといえば、「腕に一発」という俗語表現。ここで注射するのは刺激剤で、“Swine Flu Concerns Give Biotechs Shot in the Arm”(新型インフル懸念がバイオテク産業に刺激=サンディエゴ・ビジネス・ジャーナル)などと一般にも使う。だが、注射するのがnarcotic(麻薬)で、“All I need is a shot in the arm.”(腕に一発お願いよ)などとせがむようになれば、これはもう立派なjunky(drug addict=麻薬中毒患者)。待っているのは、ジョン・レノンとプラスティック・オノ・バンドの曲でおなじみ、“Cold Turkey”(冷たい七面鳥=冷汗が流れて、鳥肌の立つような禁断症状)である。The Sankei Shimbun (September 28 2009)

2011年11月15日火曜日

take a hike


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

hikeは-ingを付けてhikingとすると、日本語でも「ハイキング」。つまり、hikeはhikingの原形で、動詞・名詞。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、語源は1809年にさかのぼり、walk vigorously(元気よく歩く)こと。タラタラ歩いていては、hikeにはならない。take a hikeはtake a walk(散歩する)と同様の言い方で、「ハイキングに出かける」。ちなみに、どちらも命令形で使うと「失せろ!」という意味になるので、要注意。 カタカナ読みは「テイカ・ハイク」。
ウォールストリート・ジャーナル(2009年9月21日付)は、“Out of a Job, Some Decide to Take a Hike”(職を失くして、ハイキングに出かける人がいる)と、最近のアメリカのoutdoor activity(屋外活動)の様子を紹介している。
だが、ここでいうhikingは、日本での日帰りハイキング(英語ではa day hike)とは違って、thru(or through)-hiking(スルーハイキング)のこと。つまり、長距離を何日もかけて端から端まで踏破するハイキングだ。その典型がAppalachian Trail(米東部のアパラチア山脈にそって南北に縦走する長距離自然歩道)を歩くもので、総延長は2175マイル(3500㌔)に達する。
ジャーナル紙によると、アパラチアン・トレイルを最南端のジョージア州から出発するハイカーは毎春1000人程度。だが、今年は1400人近くに上り、初夏にかけてさらに数百人が加わったという。その中で目立つのは、失業者。
“Hikers say they budget $1 a mile for food and the rare motel stay, making life on the trail cheaper than life in town.”(ハイカーたちは、食費を1マイル1ドルに抑え、ホテル宿泊もめったになく、都会にいるより自然歩道での生活は安上がり、という)。つまり、同じことを都会でやれば浮浪者とみなされるが、“If you do this on the trail, you’re a hiker.”(ハイキング・トレールでやる限り、あなたはハイカーである)。
さて、米国でthru-hikerのパイオニアとされるのが、ロシア移民女性のリリアン・エイリング。カルビン・ラツトラム著の“The New Way of the Wilderness”(荒野の新たな道、1958)によると、1927年夏、ニューヨークで働いていた27歳のリリアンはホームシックに陥り、ロシアへ帰る決心をする。しかし、旅費はなく、ロシアまでざっと1万2000マイルを極力歩こうと決意。シカゴ、ミネアポリスなど北部を歩いて、カナダのブリティッシュコロンビアに至る。そこからアラスカに入ってスワード半島に達し、最後に、シベリアへ向けてベーリング海峡を渡るために、エスキモーと舟の交渉をしているのが目撃されたという…。
“If you are seeking creative ideas, go out walking.”(創造的なアイデアを探すならば、表に出て歩け)と言われるだけに、職を離れたら自分探しの旅に、歩いて出るのも一考である。The Sankei Shimbun (October 5 2009)

go sleeveless


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

sleevelessはwithout sleeves(袖なし)という意味の形容詞。go sleevelessは「袖なしでいく」。つまり、wear sleeveless clothes(袖なしの服を着る)という意味だが、この表現には、腕や肩をたくましく鍛えてあるので、袖なしの服を着ても恥ずかしくない、という含みがあり、いまや女性フィットネスの合言葉になってきた。カタカナ読みは「ゴー・スリーブレス」。
公の場に袖なしのドレスで登場し注目を集めたのが、ミシェル・オバマ大統領夫人。“How to get Michelle Obama’s toned arms and go sleeveless”(彼女のような丈夫な腕になり、袖なしでいく方法=2009年9月6日付のイグザミナー)が、女性の間で大きな関心を呼んだ。
“Women’s Health Magazine”(9月22日付)は、“The First Lady’s Fitness Secrets”(大統領夫人のフィットネスの秘密)と題して、長年の専属トレーナーの話を伝えた。彼女の腕は、1997年以来シカゴのフィットネス・クラブに通い、これまで1872回に渡って、全身をシェイプアップする総合的なトレーニングを積んできたからという。
現在は、“She works out for 90 minutes, 3 days each week. She and President Obama wake up these mornings at 5:30 a.m. to workout.”(彼女は週3回、90分ずつトレーニングする。その日の朝は、オバマ大統領と2人で午前5時半に起きてトレーニングに行く)そうだ。
ジャーナル・ガゼット(9月12日付)によると、“Work Triceps, Biceps for Obama Arms”(「ミシェル・オバマの腕」を手に入れるには、(上腕の)三頭筋と二頭筋を鍛えろ)。flabby and saggy arms(振袖のようにたるんだ腕)を引き締めるには、hammer curls (ダンベルを使う二の腕の運動)などが有効だとアドバイスしている。
ところでオバマ大統領も、バスケットボールだけでなく、fitness enthusiast(フィットネスに熱心な人)である。“Usually I get in about 45 minutes, six days a week. I’ll lift weights one day, do cardio the next.”(通常、私は週に6日間、大体45分やっています。1日はウエイトを上げ、次の日は、カーディオをやります)と“Man’s Health Magazine”のインタビューに答えている。このcardio(カーディオ)は、cardiovascular exercise(心臓血管を強化するための運動)で、aerobic exercise(エアロビクス運動)のこと。つまり、ジョギングやtreadmill(トレッドミル)による運動だ。実は、大統領専用機のAir Force Oneにも、トレッドミルが備え付けてあるという。
さて、世界のリーダーを見渡すと、ロシアのプーチン首相は柔道、フランスのサルコジ大統領はジョッギング(ただし、2009年の夏はジョギング中に倒れたが)など、フィットネス志向はますます強まっている。サミット(首脳会議)もgo sleevelessで、各国首脳が腕っ節の強さを誇示してみせる時代が来ている。The Sankei Shimbun (October 12 2009)

2011年11月14日月曜日

call to action


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

callは「呼ぶ」(動詞)、「呼び声」(名詞)。actionは「行動」。一般的に、行動を呼びかける場合、request(要求)の意味の表現はcall for action。ここでは、for の代わりにtoが使われているのがミソ。call は名詞で、call to actionは「行動への呼びかけ」と訳せる。カタカナ読みは「コール・トゥ・アクション」。
2009年のノーベル平和賞は、オバマ米大統領に授与されることが決まり、世界中があっと驚いた。大統領に就任してわずか9カ月足らずでの受賞に、本人も“I am both surprised and deeply humbled by the decision of the Nobel Committee.”(ノーベル賞委員会の決定に驚くと同時に大変恐縮します)と答え、自身の実績を考えると、他の多くの受賞者と肩を並べるだけの資格があるとは感じていないという。だが、“I will accept this award as a call to action, a call for all nations to confront the common challenges of the 21 st century.”(この賞を行動への呼びかけとして、すべての国に21世紀の共通の課題に向き合うことを求める声として受け止めたい)と語った。
 つまり、オバマ氏が提唱する「核兵器のない世界」の実現に向けて、口先だけでなく“Take action!”(行動を起こせ)という呼びかけとして受け止めるという。
call to actionは、実はビジネス用語。“Words that urge the reader, listener, or viewer of a sales promotion message to take an immediate action.”(販売促進のメッセージを受け取った読者や視聴者にただちに行動を起こすように促す表現)と定義される。すなわち、顧客に考える時間を与えず、気が変わらないうちに商機をとらえようと意味合いだ。
call to actionの典型的な表現が、“Buy now”(今すぐ買おう)。このnowが、間髪を入れない決断を促す。ほかにも、“Call now”(今すぐ電話)、 “Reserve now”(今すぐ予約)などのバリエーションがある。さらに、インターネットのサービスでは、“Click here”(ここをクリック)がお馴染み。“Sign-up now”(今すぐサインアップ)や“Immediate Down load”(すぐにダウンロード)などもよく目にする。だが、必ずしも命令形ばかりではなく、“Best value”(最もおトク)とか“Easy to use”(使いやすい)などの誘い文句もある。
さて、人生においてもactionが一番大切。ドイツの作家ゲーテはいう。“Knowing is not enough, we must apply. Willing is not enough, we must do.”(知っているだけでは不十分で、応用しなければならない。期待するだけでは不十分で、行動しなければならない)と。ただし、行動派の作家ヘミングウェイはこう釘を刺す。“Never mistake motion for action.”(ただ動くというのを行動と勘違いしてはいけない)。
actionの前には、“Think twice!”(よく考えて)。The Sankei Shimbun (October 19 2009)

control freak


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

controlは日本語でも「コントロール」という。つまり「支配」「統制」。freakは「気まぐれ」「異常」などの意味もあるが、人に対して用いるとやや侮蔑的な意味になり、俗語で「変わり者」。そこで、control freakは後者で、ランダムハウス米俗語歴史事典によると、“a person having neurotic need to control his or her surroundings”(自分の周囲のことをコントロールしたいという神経症的な欲求がある人)と定義している。カタカナ読みは「コントロール・フリーク」。
2009年の秋封切られた恋愛コメディー映画“The Ugly Truth”(邦題「男と女の不都合な真実」)で、キャサリン・ハイグルが演じる女主人公アビーは、control freakのテレビプロデューサー。何でも自分の思い通りにしないと気がすまない性格だから、彼氏ができない。隣人の青年医師を好きになり、恋愛番組パーソナリティのマイク(ジェラルド・バトラー)に恋愛指南を受けて、従順な女性を演じてみせるが、そこで男と女の「真実」を知る・・・、というストーリー。
ある調査によると、米国の家庭で、男がコントロールしたがる第1は“TV remote control”(テレビのリモコン)、第2が車で、第3が車庫や物置、第4にデジタルカメラなど機器類が続く。一方、女は、第2が鏡台、第3が会話、第4がクレジットカード。そして、コントロールしたがる第1は男、というのが女の本音だそうだ。それだけに、男の側からすると、“My wife is a control freak! She is just too controlling! I am weak and she is strong. I can’t take it anymore!”(妻はコントロール・フリーク。あまりにも支配したがる。僕は弱く、彼女は強い。もうこれ以上耐えられない)という事態に陥り、離婚になりかねない。
さて、先月、東部の名門エール大学で、結婚を目前にした女子大学院生が研究棟の壁裏から遺体で発見された。この事件で、殺人容疑で逮捕された研究アシスタントの男について、AP通信(2009年9月18日付)は“AP Source: Yale Suspect Painted as ‘Control Freak’”(関係筋:エール大の容疑者を「コントロール・フリーク」と述べる)と報じた。
このアシスタントは研究室を自分の〝縄張り〟だと思い込み、何もかも自分の思い通りにならないと気がすまない性格だったという。それが高じて、“Something went out of his control.”(何かがコントロールからはずれた)ので、ついに“He lost his self-control.”(自己をコントロールできなくなった)、その結果の犯罪であったと推測される。こうなると、もはや笑いごとではすまされない。
そこで、“the sober truth”(醒めた真実)を。
“You cannot control what happens to you, but you can control your attitude toward what happens to you.”(あなたは自分の身に起こることをコントロールできないが、起こることに対する自分の態度はコントロールできる)The Sankei Shimbun (October 26 2009)


Genius, Hippie, Control Freak? Jobs Bio Tells All

Steve Jobs expected to die young, wanted to destroy Android, thought musician John Mayer was “out of control,” and believed television was the next big Apple product, according to a new biography released today.

The authorized biography of the late Apple cofounder and chair, written by Walter Isaacson, is available for purchase via download or in bookstores starting today. The reviews that have come in so far are complimentary, saying the book creates a rounded picture of Jobs as a brilliant but at times volatile and controlling leader.

From the New York Times:

Steve Jobs greatly admires its subject. But its most adulatory passages are not about people. Offering a combination of tech criticism and promotional hype, Mr. Isaacson describes the arrival of each new product right down to Mr. Jobs’s theatrical introductions and the advertising campaigns. But if the individual bits of hoopla seem excessive, their cumulative effect is staggering. Here is an encyclopedic survey of all that Mr. Jobs accomplished, replete with the passion and excitement that it deserves.

The review from AP appreciated the book's focus on Jobs' personal side:

The intimate chapters, where Jobs' personal side shines through, with all his faults and craziness, leave a deep impression. There's humor too, especially early on when Isaacson chronicles Jobs' lack of personal hygiene, the barefoot hippie who runs a corporation. And deeply moving are passages about Jobs' resignation as Apple's chief executive and an afternoon he spent with Isaacson listening to music and reminiscing.

Many of the more surprising aspects of the book were leaked in advance, and a revealing interview with Isaacson appeared on 60 Minutes last night. In the interview, Isaacson describes how Jobs, who was adopted, actually met his birth father at a Silicon Valley restaurant without knowing it. And in an unaired section uploaded to the CBS website, we hear from tapes from Isaacson's interviews with Jobs describing his thoughts on rival Bill Gates (just a hint: it's not complimentary) and Mark Zuckerberg. "They are dominating this," he said of Facebook. "I admire Mark Zuckerberg…for not selling out, for wanting to make a company. I admire that a lot."

And if that isn't enough Steve Jobs news for today, Apple is also releasing the 80-minute video tribute shown to staff last week as part of the company emorial. Portfolio.com (October 24 2011)

2011年11月13日日曜日

Let me be clear. Obama's verbal tic!


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

clearは「透明な」「はっきりした」という形容詞。Let me be clearは、「私(の主張)をはっきりさせたい」という、前置きに使われる短文。日本語の表現では、「はっきり言って…」に当たる。カタカナ読みは「レット・ミー・ビー・クリア」。
この言葉は今や、“Obama’s catch phrase”(オバマ大統領のキャッチ・フレーズ=2009年8月1日付ポリティコ)となった口癖(verbal tic)。演説の重要なところになると、繰り返される。
たとえば、テロ対策について、“Now let me be clear : We are at war with al-Qaida and its affiliates.”(今はっきり言って、われわれはアルカーイダとその一味に対して戦争状態にある)。また、学力テストについては、“Let me be clear : Success should be judged by results, and data is a powerful tool to determine results.”(はっきり言って、成功は結果によって判断すべきだ。データは、結果を判断する有力な道具である)。さらに、モスクワでも、“Let me be clear : America wants a strong, peaceful, and prosperous Russia.”(はっきり言って、アメリカは、強くて平和的な、繁栄するロシアを望んでいる)。(以上AP通信)
オバマ氏のLet me be clearのバリエーションには“Let’s be clear.”(われわれ[の主張]をはっきりさせよう)、“I want to be clear.”(はっきり言いたい)などがあるが、いずれも意味するところは、“What I’m about to tell you is important.”(私がこれから君たちに言うことは重要だ)というアピール。
ポリティコによると、Let me be clearはオバマ氏の〝専売特許〟ではない。実は、ニクソン大統領の口癖が、“Let me make one thing perfectly clear.”(一つはっきりさせておきたいことがある)だった。レーガン大統領も、Let me be clearの愛好者で、警告するときによく使ったという。
一方、クリントン大統領は警告の際に、“Make no mistake about it.”(間違うなよ)と念を押した。オバマ氏も、“Make no mistake.”と省略して使うことがある。
だが、オバマ氏のLet me be clearの口癖に対しては、overuse(使い過ぎ)との批判が噴出。“He is greatly concerned with his own transparency.”(彼は、内心では自身の透明性について非常に気にしている)という〝証拠〟だとする、うがった見方もある。そういえば、大統領選挙戦では、“Can we change the world?”(われわれは世界を変革できるか)“Yes, we can !”(できるとも)と歯切れがよかった。だが、現実はどうか?
“Let me be clear : Change isn’t easy.”(はっきり言って、変革は容易ではない)“Let me be clear : It won’t happen overnight.”(はっきり言って、それは一夜では起こりえない)“Let me be clear : There will be setbacks and false starts.”(はっきり言って、つまずきやスタートの誤りもある)The Sankei Shimbun (November 2 2009)

dog whisperer


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 dogは「犬」。whispererは、動詞のwhisper(小声で話す、ささやく)に人を表す接尾辞がついたもので、直訳すると「犬にささやく人」。だが、何も犬に内緒話をしようというのではない。 犬とコミュニケーションができて、手なずけるのが上手な人を指す新語。つまり、dog training(犬の調教)の達人のことだ。カタカナ読みは「ドッグ・ウィスパラー」。
 アメリカはペット王国である。なかでも犬は最も愛される動物だが、“how to keep dogs”(犬の飼い方)となると、なかなか難しい。飼い始めた当初は可愛がるが、途中で嫌になって虐待したり、棄てたりする身勝手な飼い主が後を絶たないのは、日本と同じ。虐待された犬は人間を恐れ、また非常に攻撃的になったりする。そこで、そのような犬のリハビリを行い、社会復帰させるdog trainer(犬の調教師)が必要となる。
 ナショナル・ジオグラフィックTVが2004年から始めた人気シリーズ番組に、“The Dog Whisperer”がある。プロの調教師のシーザー・ミラン氏が手に負えない犬(英語では、difficult dog)を、犬の心理学に基づいた独自のトレーニング・プログラムで見事にリハビリさせる趣向だ。
 ミラン氏は、一般的に犬を飼う上で注意することとして、exercise(運動)、discipline(しつけ)、そしてaffection(愛情)を挙げる。そのうち最も重要なのがexercise。犬の散歩(walking a dog)は、犬の運動になるだけでなく、飼い主との関係を深めるのに重要という。さらに、“To be happy, (dogs) basically need a good job, and good food, and a pat on the head.”(犬が幸せになるには、よくやったと言われるような行為と、よいエサ、そして頭をなでてやる必要がある)とした上で、“Americans tend to overdo on the affection and underdo on the exercise.”(アメリカ人は、犬にベタベタし過ぎるわりに、犬の運動は足らないという傾向がある)と指摘する。
 ところで、dog whispererの原型はhorse whisperer。つまり、horse training(馬の調教)の達人。19世紀の初め、英国でダニエル・サリバンというアイルランド人調教師が、やはり虐待や事故に遭ってトラウマ(trauma)を抱えた馬をリハビリさせたという。サリバンはその方法を秘密にしていたが、馬に顔を寄せて話しかけているように見えたので、whispererの語が生まれたそうだ。サリバンのテクニックは、アメリカ人調教師のウイリス・パウエルに伝えられ、“Tachyhippodamia; or, The New Secret of Taming Horses”(馬を馴らす新たな秘密)という本として今に伝わっている。
 犬も馬も人類の長い友達である。彼らとうまくやっていくコツは、“Love your friends.”(汝の友を愛せよ)。しかも、正しい方法で。The Sankei Shimbun (November 15 2009)

Top dog whisperer Cesar Millan to share his secrets in Australia

In a stunning display of the dog whisperer's "pack power,'' the TV superstar had them literally eating out of his hands at a Sydney dog reserve.

Ahead of a national seminar tour, sharing his secrets to "transforming dogs and empowering their owners,'' Cesar Millan took aim at those blaming bad dogs or breeds for attacks and anti-social behaviour.

Having raised his two sons around American pit bulls, the Emmy-nominee said like powerful cars, humans need to "understand and control the power of dogs.''

"It's not the dog, it's the human. We have created breeds with certain power, such as pit bulls and we have to take responsibility for that," he said.

Blog live with Cesar Millan at 11am below

Widespread issues with dangerous dogs is not a "problem with aggression, but a problem with education.''

"There is a reason why it is mandatory for you to take a test to drive a car because of the danger, the power, the responsibility. It should be the same for us to understand and control the power of dogs," he said.

According to Millan, dogs, like people, are facing obesity and anxiety issues like never before - the result of being indulged by their owners.

"They go buy a toy, or some treat to cover up their guilt because they didn't take the dog for a walk, which it needs,'' he said.

The charming 42-year-old built his dog psychology empire from humble beginnings - born in Mexico and moving to America as an "illegal."

His first legitimate job was as a limousine driver for Hollywood's A-list, encouraged by Jada Pinkett Smith (the wife of Will Smith) to turn his pet expertise into a business (she paid for his English tutor).

Training the pampered pooches of the rich and famous, Millan launched his hit TV series, The Dog Whisperer in 2004.

His philosophy is founded on "calm, assertive energy'' and three principles: exercise, discipline and affection.

"Dogs want the same things we do,'' he told The Daily Telegraph - "trust, respect and love.''

"I have learned to raise my kids because I have raised so many dogs. The goal is the same. I want a kid who achieves balance in life, before wealth. You can be wealthy and miserable," he said.

A big sky thinker, Millan believes aggression in dogs is a symptom of unstable owners.

"Aggression is just the outcome. It's your responsibility to understand the animal and the psychology of that species, not the other way around.''
by: Holly Byrnes From: The Daily Telegraph (November 10 2011)

charticle


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 articleは新聞などの「記事」。その頭にchart、つまり「図表」「チャート」を被せたのが、charticle。その言葉の通り、図表や絵・写真によってビジュアル化を優先した記事を指す。アメリカの新聞業界用語。カタカナ読みは「チャーティクル」。
 アメリカン・ジャーナリズム・レビュー(2008年10・11月号)の“Charticle Fever”(チャーティクル・フィーバー)と題する記事によると、“Charticles are combinations of text, images and graphics that take the place of a full article.”(チャーティクルとは、文とイメージとグラフィックの組み合わせで、文章ばかりの記事にとって代わるもの)と定義。インターネットの影響によって若者の新聞離れが進む中で、地方紙を中心に、18歳から35歳のネット世代の読者を開拓しようと、charticleを取り入れる新聞社が増加、新聞の〝異変〟を示す言葉として注目されている。
 米国で、絵や写真入りの新聞は古くから発行されているが、記事の理解を助けるためにグラフや図式を用いるようになったのは、1970年代。だが当時は、新聞社内でもこんな言葉はなかったという。その後、コンピューター・グラフィックスの進歩で情報のビジュアル化が容易になり、information graphics、またはinfographicsと呼ばれるようになる。これを積極的に取り入れ、カラー化で成功した新聞がUSA Today。それでも、charticleの語自体は、新聞社の編集局にとどまり、表に出ることはなかった。アメリカ英語のサイト、The Big Appleによると、1998年にフォーブス誌で使われたのがcharticleの語の初出という。
 だが、それから約10年、情報のビジュアル化は、どの分野でも本格化している。その利点は、“It’s clear at a glance.”(一目瞭然)。たとえば、Youtubeが人気を呼ぶのは、動画が“universal language”(普遍語)であって、見れば分るから。text(文章)も長い話は敬遠されがちで、blog(ブログ)より短いTwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)が流行。情報の専門家は、今後の情報伝達は“shorter, tighter, quicker”(より短く、簡潔で迅速)になるのは避けられないという。だから、新聞もcharticleというわけだ。
 だが、ワシントン・ポスト(2009年11月1日付)は、“Keeping a Long Story”(長文の記事を続ける)と題して、長文の新聞記事は本当に時代遅れの“dinosaur”(恐竜)かと、何でもビジュアル化するトレンドを批判。事実、ハリーポッターはとても長い物語だが、子供たちは夢中で読む。出来事の詳細な叙述に対する読者の興味は、決して衰えていない、と分析する。そして、“The storytellers know that the story is the original killer app.”と主張。“killer app”はkiller application(決め手のソフト)というコンピューター用語。つまり、「新聞記者たちは、記事そのものが本来の決め手だと知っているのだ」。The Sankei Shimbun (November 23 2009)

PS: ご意見、ご感想をお待ちしております。

sugar daddy


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 sugarは「砂糖」で、daddyは「パパ」。sugar daddyは、文字通りでは「(砂糖のように)甘いパパ」だが、実は、自分よりずっと若い、時には自分の娘ぐらいの女性に金品を与えて親密な関係を求める、金持ちの中高年男性をいう。いわゆる「おじ様」。カタカナ読みは「シュガー・ダディ」。
 ABCニュース(2009年10月30日付)は、“‘Sugar Daddy Ken’ Doll from Barbie Line Raises Eyebrows”と報じた。玩具メーカーのマテル社が、バービー人形シリーズの1つとして“Sugar Daddy Ken”の人形を登場させることになったが、その名称に人々は眉をひそめるという。
バービー人形が誕生して今年で50周年。ケンは長年にわたるバービーの〝ボーイフレンド〟だ。ところが、来年春に発売される予定のケン人形は、銀髪の上、フロリダの高級リゾート、パームビーチでよく見られるリッチな中年男性向けの粋な服装で、白い犬を連れている。マテル社の広報担当者は、「この犬の名前がシュガーで、ケンはシュガーのパパです。だからシュガー・ダディ」と説明している。だが、この説明を聞かないうちは、ケンが“Barbie’s Sugar Daddy?”(ケンはバービーの〝おじ様〟?=CNBC)という憶測をたくましくしてしまう、というわけ。
 sugar daddyの語は1900年ごろから使われるようになったが、最近はsugar mommyあるいはsugar mamaの語も登場。女性の社会進出につれて、若い男性を囲う裕福な「おば様」も珍しくなくなった。一方、面倒をみてもらったり、援助を受ける若い男女は、sugar babyと呼ばれる。
 インターネット上には、“Mutually Beneficial Relationships”(お互いに有益な関係)と題する出会い系サイトが盛況だ。その勧誘の文句には、“Rich and successful. Single or married, you have no time for games. You are looking to mentor or spoil someone special.”(金持ちで成功者。未婚、既婚に限らず、出会いの機会がないあなた。誰か特別な人の面倒をみたい、可愛がりたいと願っているあなた)などと書かれている。
  こうした年齢差のある恋愛関係は、“age disparity in sexual relationships”(性的関係における年齢の不均衡)と呼ばれている。“age of consent”(性的同意年齢)は各州政府が法律で定めており、16歳から18歳。だが、現実には、こんな規定が守られているわけではない。2人の関係が、性的虐待などの事件やスキャンダルに発展しないかぎり、大して問題にならない。
フランスの大女優、ジャンヌ・モローはいう。
 “Age does not protect you from love. But love, to some extent, protects you from age.”(年をとったからといって、恋をせずにいられるわけではない。でも、恋をすることである程度、年をとらずにいられる)。つまり、「愛があるなら年の差なんて」というわけだが、何事もほどほどに。The Sankei shimbun (November 30 2009)

America's 'sugar daddy' scene moves to Britain
Parties at which young women agree to enter relationships with wealthy older men in return for large sums of money are set to take place in Britain having developed a following in the US.

The American organisers of "Sugar Daddy Parties", where "mutually beneficial arrangements" worth tens of thousands of dollars per month are struck over cocktails in New York nightclubs, are now seeking venues in London.

Denying that they are encouraging prostitution, they say they already have thousands of British "sugar babies" waiting to meet rich patrons. Typically, they are women in their late teens or early twenties seeking to pay university fees or fund glamorous living.
"We have perfected our parties and are now ready to launch in even bigger markets like London," said Brandon Wade, the chief executive of Seeking
Arrangement. "We are due to start early in 2012."

A recent party at New York's Hudson Terrace bar was attended by about 600 people. "Daddies", aged 38 on average, were charged $100 (£62), while "babies", typically 12 years younger, paid $40 (£25). Women outnumbered men by two to one, the organisers claimed.
While some guests struck lucrative deals on the spot, others exchanged phone numbers for further negotiations. "$500 per date is common," said Mr Wade. "But we know of arrangements worth $10,000 and $20,000 per month."

Among the daddies was Gianni Russo, a 67-year-old actor from New York who appeared in The Godfather and has been married 10 times. "I am just an old man looking for a friend," he told onlookers, as Pretty Young Thing by Michael Jackson played over the sound system.

The host, Alan Schneider, who says he has a background in "entertainment", described the events as "elegant, classy and refined".

Beltkiss Ocon, a 25-year-old paralegal, turned down an offer of $1,000 (£620) in "dinners and outings" from a man who called himself Mike. "He was very arrogant and pompous," she said.

Other young women sipped $16 (£10) cocktails bought by suitors whom they agreed to see again in the following days. "I don't think there is anything bad about this," said one, with an eastern European accent.

Mr Wade claims that two of the top 10 from Forbes magazine's list of wealthiest American billionaires are members of his site and use it to maintain their romantic lives.

Seeking Arrangement already has thousands of British members on its website, which encourages striking deals online. Male members, many of whom state that they are married, are charged $50 (£31) per month. "Sugar babies" can join for nothing.

Demi Maguire, a 19-year-old student from Stevenage, is seeking a sugar daddy to pay her up to £1,800 per month for a relationship. "I'm looking for someone to sponsor me so I can go and do some volunteer work in Tanzania and Uganda for a few months," she said.

Others have ended their connection after unpleasant experiences. "I had a few dates through it, because I wanted to meet a different type of man," said Natalie, a 24-year-old from Staffordshire. "But lots of them just saw it as a high-class hooker service."

Mr Wade, 41, rejected suggestions that his company was encouraging prostitution. "People may feel obligated," he admitted. "But no one is required to do anything that they don't want to. There has to be chemistry, otherwise the relationship just would not work." The Telegraph (Oct 28 2011)

2011年11月11日金曜日

clothesline


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 clothesは「衣服」で、lineは「紐」「ロープ」。clotheslineは、文字通りでは「衣服を掛けるロープ」だが、実は洗濯物を乾す「洗濯ロープ」「物干し綱」のこと。カタカナ読みは「クロウズライン」。
 アメリカでは物干し竿を使わず、昔はtwo poles(2本の支柱)の間にclotheslineを渡して洗濯物を干す習慣があった。ところが、電化が進んでclothes dryer(洗濯物乾燥機)が各家庭に普及し、さらに、住宅街やアパートメントなどに人々が集まって住むようになると、風にたなびく洗濯物をeyesore(目ざわり)と感じるようになり、コミュニティー全体で屋外での物干しを規制するようになった。
 ロイター通信(2009年11月18日付)の“U.S. Residents Fight for the Right to Hang Laundry”(洗濯物を干す権利を求めて闘うアメリカの住民)によると、米国では人口の約2割に当たる6000万人が集合住宅に住んでおり、その人たちの属する住宅協会の半分が、いわゆる“no hanging rule”(物干し禁止)を採用しているという。その理由として、“The consensus in most communities is that people don’t want to see everybody else’s laundry.”(大概のコミュニティーの総意は、みんな他人の洗濯物を見たくないということだ)。なるほど、それ自体は普通の感覚のようだが、実は、「景観を阻害」し貧乏臭く見えるので、不動産価格が下がるという思惑も働いているのだ。そこで、みんなで禁止することになるわけだが、その一方で規制に反発し、“Clothesline Liberty”(洗濯ロープの自由=2008年1月24日付ナショナル・ポストの社説の見出し)を唱える人々が出て来た。
 このところ、反発の高まりを受け、フロリダ、ユタ、メーン、バーモント、コロラド、ハワイの各州政府が、地域で物干しを禁止してはならない、という〝禁止の制限〟条例を相次いで可決した。
 地方紙のマーキュリー・ニューズ(2009年11月6日付)は、“Clotheslines Make a Comeback”(洗濯ロープが復活)と報じている。
 この復活を後押ししたのは、何といっても不況のさ中の節約マインド。“Clothes dryers are notorious energy hogs.”(洗濯物乾燥機は、名うてのエネルギー消費の〝豚〟)で、エネルギー省によると、2001年の家庭の電力消費の約6%を占めるという。屋外に干せば、ロープ1本わずか数ドルで、お天道様はタダ。しかも最大のアピール点は、“Zero greenhouse gas emissions per load”(洗濯物1回分で温室効果ガスはゼロ)。すなわち、乾燥機を使えば、1回分で約2キログラムの二酸化炭素が排出されるが、太陽の熱エネルギーだと、それがゼロというわけ。さらに、乾燥機を使わないから、“Laundry items don’t shrink but stay softer.”(洗濯物は縮まず、より柔らか)というメリットもある。難点は、“Risk of theft of clothes”(衣服盗難の危険性)。下着泥棒にはご用心!The Sankei Shimbun (December 7 2009)

Stolen panties prompt investigation in New Mexico

LAS CRUCES, N.M. (AP) — Campus police at New Mexico State University are investigating claims that a man came into a woman's yard and stole panties from her clothesline. She told officers she had hung several pairs of colored underwear, two bras and some of her son's shirts on the clothesline Saturday evening. She found her gate open Sunday morning and nine pairs of panties worth about $60 were gone. Oct 19, 2011

party crasher


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 partyはクリスマス・パーティーなどの「パーティー」。crasherは動詞形がcrashで、他の英語でいうとbreak in(押し入る)。crash a party は、文字通りでは「パーティーに押し入る」だが、招待されていないのにパーティーに押し掛けることを意味する慣用表現。その当事者がparty crasher。カタカナ読みは「パーティ・クラシャー」。
 さて、2009年11月24日、インドのシン首相を迎えてホワイトハウスで催された公式晩餐会に、中年夫婦のparty crashers(2人だから複数)が紛れ込んでいたことが分かり大騒ぎになった。この2人はバージニア州に住むサラヒ夫妻で、夫はタキシード、妻はサリー風の赤いドレスで正装、バイデン副大統領と記念写真に収まっていた。さらに、FOXニュース(11月28日付)は“Party Crashers Met Briefly with Obama”(パーティー・クラッシャー、少しの間オバマ大統領と面会)と報じた。
 ここで問題になったのは、party crasher が仮にテロリストだったらどうするのだ、そんなずさんな警備体制で大統領の身の安全が守れるのか、ということ。“The controversy over state dinner crashers has prompted the White House to order a ‘full review’ of the incident to find out how the Secret Service allowed such a security breach.”(公式晩餐会のクラッシャーをめぐる議論の高まりで、ホワイトハウスは、シークレット・サービスがどうしてそんなセキュリティの抜け穴を許したのか究明するために、事件の全面的見直しを早急に命じた)という。実際、大事に至らなかったのは不幸中の幸い、というべきだろう。
 一連の報道の中で、gate crasherという言葉も出てきた。パーティーに限らず、“the act of attending an invite-only event without invitation”(招待者だけの行事に招待状なしで参加する行為)をgate crashingという。gateは「門」だが、ここではイベントの受付口のこと。
 さて、party crasherの狙いは何か。今回のケースは、どうやら“to have pictures taken with famous people”(有名人と一緒に写真を撮ってもらうこと)のようだが、一般的に多いのはfree food and beveragesで、要するにタダでうまいものを飲み食いすること。
 そこで、“How to crash a party”(パーティーをクラッシュする方法)を伝授。まず“Dress well and stylishly.”(パーティーにふさわしい服装をする)。駐車場探しや飲酒運転を避けるため“Calling a cab is a great idea.”(タクシーを呼ぶのはいい考えだ)。そして重要なのは、“When you get to the party, walk in confidently and say hello to a few people as you enter.”(会場に着いたら自信満々で歩いて行き、入りがけに2、3人に「やあ、こんにちは」と声をかけること)。つまり、後になって“What nerve he’s got!”(なんてずうずうしいヤツだ)と言われるのが成功のコツだとか。The Sankei Shimbun (December 21 2009)

unprecedented Obama's verbal tic!


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 unprecedentedの語は、否定を表す接頭辞un-とprecedent(名詞で「先例」)、それを形容詞化する接尾辞-edに分解できる。このうち、precedentは動詞形がprecedeで、語源はpre-(前に)cede(行く)。そこで、unprecedentedは「先例のない」「経験したことのない」「未曾有の」という意味になる。カタカナ読みは「アンプレシデンティド」。
 この1年を振り返ってみると、アメリカのニュースには“unprecedented”があふれた。年初には、米国史上unprecedentedな黒人大統領オバマ氏が就任し、大きな変化(change)を印象付けた。オバマ氏は就任後の週末演説で、こう語った。“We begin this year and this administration in the midst of an unprecedented crisis that calls for unprecedented action.”(われわれは、この年とこの新政府を、先例のない行動を求められる未曾有の危機の最中に始めることになる)
 昨秋のリーマン・ブラザーズの破綻に始まった経済危機は、オバマ氏によると、“unprecedented economic turmoil”(未曾有の経済の混乱)をもたらし、そのため“unprecedented international cooperation”(先例のない国際的協力)が求められた。各国政府は今なおunprecedented な景気対策に追いまくられている。まさに、unprecedented な一年だったというわけ。
 政治専門メディアのポリティコ(2009年11月25日付)は、“The White House’s Unprecedented Use of ‘Unprecedented’”(ホワイトハウスの未曾有な「未曾有」の使用)という記事で、オバマ氏が就任以来これまでに、大小の演説や会見などで少なくとも129回unprecedentedを使ったといい、ブッシュ前大統領が8年間の任期中に262回使ったことと比較して、異例の多さだと指摘した。そして、“He has promised an ‘unprecedented commitment’ to education, to developing clean energy, and to preserving America’s treasured landscapes.”(彼は、教育やクリーンエネルギーの開発、アメリカの貴重な景観の保存に対して、「先例のない公約」をした)と、皮肉っている。
 だが、ノルウェーのノーベル賞委員会は、就任1年に満たないこの米大統領に、「核兵器なき世界」を訴えたことを評価してunprecedentedなノーベル平和賞を授与。ところがオバマ氏は授賞式で、“Still, we are at war, and I’m responsible for the deployment of thousands of young Americans to battle in a distant land. Some will kill, and some will be killed.”(依然として我々は戦争状態にある。私は、遠く離れた地に数千人ものアメリカの若者を戦闘に配備した責任者だ。ある者は殺し、ある者は殺されるだろう)と、米国の武力行使は正当だとするunprecedentedな演説を行った。これには、オバマ支持者は冷水を浴びせられた格好で、unprecedented disillusionment(先例のない幻滅)をもたらしたようだ。The Sankei Shimbun (December 28 2001)

Obama: Keep up ‘unprecedented pressure’ on Iran

WASHINGTON ? US President Barack Obama called on Thursday for the international community to maintain “unprecedented pressure” on Iran to comply with international obligations on nuclear proliferation.

While Obama warned Iran in advance of an IAEA report expected to be the UN nuclear agency’s harshest-yet utterance on Tehran, the US legislature also took steps against the Islamic Republic, with a congressional committee approving tougher sanctions in response to an alleged assassination plot in Washington.The Jerusalem Post (November 4 2011)

2011年11月10日木曜日

Take it easy


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 take は「とる」「受け取る」という動詞で、itは「ものごと」を指す。中心になるのはeasy(容易な)という形容詞。ここでは「気楽な」「ゆっくりとした」といった意味になる。take it easyは「ものごとを気楽に考える」「ものごとをゆっくりする」という慣用表現。つまり、「無理しない」「急がない」。カタカナ読みは「テイキッティージー」。
 AFP通信(2009年11月15日付)は、“Bolt Hopes to Take It Easy in 2010”(2010年、ボルトは気楽にやりたい)と報じた。これは、百㍍を9秒58で走る世界最速の男、ジャマイカのウサイン・ボルト選手のこと。彼はメキシコでのインタビューで、“This year will be a little strange. We’re not going to do much or try to do a lot.”(今年はちょっと変則的になるだろう。やることがあまりないし、多くを試すこともない)と語った。つまり、2010年はオリンピックがないので暇だ、というわけ。だが、こう付け加えた。“I don’t consider myself like a Superman, nor gifted. What I do is not easy.”(僕はスーパーマンではないし、才能もあるとは思わないけれど、やっていることは簡単でない)。だから、次の目標(たぶんロンドン5輪)に向かってやるべきことを続けるだけだという。
 さて、2010年、世界が直面する大きな課題は、景気回復と環境問題だろう。これらは、今の社会でなかなか両立が難しい。
 シカゴ・トリビューン(2009年12月8日付)は、“Take It Easy on CO2 Regulation”(二酸化炭素規制はお手柔らかに)と題する社説を掲載した。Environmental Protection Agency(EPA=米環境保護庁)が推し進めるCO2 排出規制に対し、“Regulation and taxing of CO2 will increase energy prices, drive up fuel costs, and hurt the job market.”(CO2への規制と課税は、エネルギー価格を上昇させ、燃料コストを引き上げ、雇用市場を損なう)と指摘。地元の政治家に対して、“Please do not let bureaucrats dictate more taxation and regulation.”(どうか官僚どもに好き勝手に課税や規制をさせないでくれ)と主張した。
 この不況を脱して景気を回復させることは、オバマ大統領のカリスマ性をもってしても、“Yes, We can!”というわけには行かないようだ。それだけに、一般庶民としては、もはやジタバタしたって始まらない。あるブログがこう指摘していた。くだけた英語だが、Take it easy!
 “Always in hurry, always in rush. Lots of thing to do. All day out of home. Quick lunch or even not. Stress. Finally at home. Time to rest.”(いつも急ぎ、いつもあわてる。たくさんの仕事をかかえ、一日外に出て、昼飯もかき込むか、食べる暇さえない。ストレス。最後に帰宅して、寝るだけ)。そんな生活を長年にわたって送ってきた人々にとって、景気の停滞はもっけの幸い、エネルギー充電のときである。“Relax!Take it easy.”(リラックスして、無理しないでね)The Sankei Shimbun (january 11 2010)

death tax


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 deathは「死」でtaxは「税金」。death taxは人の死にかけられる税金、つまり「死亡税」という意味で、日本で言う「相続税」を指す。ただし、この語は相続税をこきおろす悪口。カタカナ読みは「デス・タックス」。
 相続税は一般的にinheritance(相続)taxという。アメリカでは、死亡した人の財産、つまり遺産が課税対象になるのでestate tax(遺産税)と呼ばれる。この課税に反対し廃止を求める人たちがdeath taxと呼んで〝糾弾〟、政治闘争を繰り広げたのだ。共和党が1994年の中間選挙で勝利し1952年以来初めて上下両院の多数派を制してから、death taxは保守派による相続税廃止キャンペーンの標語となった。
 ニューヨーク・タイムズ(2009年12月28日付)は、“An Estate Tax Mess”(遺産税をめぐるメチャクチャ)と題する社説で、“Estate-tax foes sold Americans a myth about a ‘death tax’ that prevented average people from passing on hard-earned money.”(遺産税の反対者が、一般庶民が汗水たらして稼いだ金を子孫に伝えるのを妨げる「死亡税」という神話を米国民に売りまくった)と説明している。
 その結果、ブッシュ政権が発足した2001年から2009年にかけてestate taxの大幅減税が行われ、さらに、この1月1日から1年間だけは課税廃止、そして2011年以降は2001年以前の水準に戻すことが決まった。ところが、オバマ政権は、医療保険制度改革などの審議にかまけて、この法律をそのまま放置したので、今や相続税が無税という異例の事態に突入することになった。
 USニューズ・アンド・ワールドリポート(2010年1月4日付)は、“Lapse of Estate Tax Raises Doubts about Democrats”(遺産税の失策で民主党に疑義)との記事で、“If the current law remains unchanged, in 2011 the estate tax will be back with the exemption lowered to $1 million and the maximum rate hiked to 55 percent.”(現行の法律が変わらなければ、2011年には遺産税の免税枠は100万㌦にまで下がり、最高税率が55%にまで上がるだろう)と指摘する。
 上記のニューヨーク・タイムズの読者欄に寄せられた投書が、意味深長。“Congress created a situation where heirs to large estates stand to inherit a windfall for a death in the next 12 months.”(議会は、大きな遺産を継承する相続人にとって、次の12カ月の死が「棚ボタ」になる状況を作り出した)。そのために、“moral hazard”(道徳的危機)を招くだろう、と。
 建国の父、ベンジャミン・フランクリンは“In this world nothing can be said to be certain, except death and taxes .”(この世で死と税金だけは確実で、逃れられないといえる)と言ったが、2010年は死によって税金から逃れられた…。The Sankei Shimbun (January 18 2010)

Estate tax to return in 2011, and it could hurt ordinary folks

By Sandra Block

In life, George Steinbrenner beat the Red Sox. In death, he beat the IRS.
Steinbrenner's death on July 13 occurred six months after the federal estate tax expired. Forbes magazine estimates the Yankees owner's net worth was $1.15 billion, so the timing of Steinbrenner's death could save his heirs up to $500 million in federal estate taxes.

But future heirs may not be so lucky. The federal estate tax is scheduled to return with a vengeance on Jan. 1, 2011, imposing a levy of up to 55% on estates valued at more than $1 million. And the same congressional paralysis that allowed the tax to expire in 2010 could thwart efforts to pare it back, estate planning attorneys say.

A $1 million exemption would affect a lot of families that are well out of Steinbrenner's league. "You take a home, an IRA or 401(k) retirement account, some other savings and you get to $1 million pretty easily," says Richard Behrendt, senior estate planner for Robert W. Baird and a former IRS attorney.

ESCAPING ESTATE TAX: Famous folk who have died this year
Families who live in areas with high property values are particularly vulnerable, says Clint Stretch, tax principal for Deloitte Tax who lives outside Washington, D.C. "People in my neighborhood bought a house for $32,000 in the '60s, and now it's worth $1 million," he says. "If they've got anything else, they would be paying an estate tax."

And for truly wealthy families, estate taxes could influence life-or-death decisions. But more on that later.

Congressional inaction

The roots of the estate tax disarray date back to 2001, when Congress voted to gradually raise the estate tax exemption while cutting income tax rates. The phase-out ended in repeal of the tax in 2010. But like the Bush administration's income tax cuts, the reduction in the estate tax is scheduled to expire at the end of this year.

Right up until the end of 2009, most estate tax attorneys expected Congress to step in and reinstate the tax. That didn't happen — raising doubts about whether Congress can agree on a fix that will prevent a more punitive tax from rising from the grave in 2011.

"Nine years ago I would have told you there was no chance we would have a year of repeal and no chance we would go back to the $1 million exemption," says Beth Kaufman, a partner with Caplin & Drysdale in Washington, D.C., and former associate tax legislative counsel for Treasury's Office of Tax Policy. "Now that we've gotten to the year of repeal, it's hard to say that something is impossible any more."

Historically, wealthy individuals have used a variety of strategies to mitigate estate taxes, including giving away a large portion of their wealth while they're still alive. Individuals can give their children, relatives and others up to $1 million during their lifetimes without incurring federal gift taxes, Kaufman says. In addition, individuals can give away an annual amount without reducing their exemption for gift or estate taxes. In 2010, the annual gift tax exclusion is $13,000 per recipient and individuals can give away that amount to as many people as they want. Many wealthy families also reduce the size of their taxable estates by giving money and other assets to charity.

But those strategies aren't practical for families who have most of their wealth tied up in their primary residences and retirement savings, Kaufman says. "You're not going to give away your house, because you're living in it," she says. Taking withdrawals from retirement plans will trigger income taxes, plus a 10% penalty if the plan owner is under 59½.

Proposed fixes

The Obama administration has proposed returning the estate tax to its 2009 level, with a $3.5 million exemption and a 45% rate on assets that exceed that amount. The House approved the administration's proposal last year, but Republican opponents blocked action in the Senate.

Last week Sens. Jon Kyl, R-Ariz., and Blanche Lincoln, D-Ark., re-introduced legislation that would exempt up to $5 million from estate taxes and impose a 35% tax rate on assets that exceed that amount.

"In just six short months, American taxpayers will face the largest tax hike in history unless Congress acts," Lincoln said in a statement. "It is estimated that more than a half-million American families will pay the estate tax over the next decade, and the lack of congressional action creates a tremendous amount of uncertainty for these families, small-business owners and farmers."

But political partisanship has made compromise increasingly difficult, says Melissa Montgomery-Fitzsimmons, director of wealth planning for First Western Trust Bank in Denver. "Given the fact that we're in an election year, the most likely thing to happen is that the laws will not change, and we will go back to $1 million of exemption and a 55% rate," she says.

Plus, reinstating the estate tax with a lower exemption would provide lawmakers with a back-door way to raise revenue, says Jason Smolen, an estate tax attorney at SmolenPlevy of Vienna, Va. "If you could do nothing and get more money, it's better than voting to raise taxes to get more money," he says.

Stretch is more optimistic that Congress will resolve the issue before the end of the year. He believes an estate tax with a higher threshold than $1 million — possibly somewhere between the one in the House-passed bill and the one proposed by Kyl and Lincoln — will be included in legislation preventing the middle-class tax cuts from expiring.

That legislation has real urgency, because without it, millions of middle-class Americans will see their taxes go up on Jan. 1, Stretch says. The higher taxes "would come out of people's paychecks almost immediately," he says. "If there's any sanity left in our political system, it will take care of middle-class tax cuts before January and at that moment in time they'll take care of estate tax."

Stretch says there's a good chance the House will extend the middle-class tax cuts and address the estate tax before the midterm elections, possibly as early as this month. But the Senate probably won't take up the issue until after the elections, he says.

Retroactive tax unlikely

In the meantime, the list of wealthy estates that will escape federal estate taxes will no doubt continue to grow. In addition to Steinbrenner, families of real estate magnate Walter Shorenstein, Texas pipeline tycoon Dan Duncan and Taco Bell founder Glen Bell will not have to worry about federal estate taxes. J.D. Salinger's heirs will also get a tax break, although establishing the value of the reclusive author's estate could take years.

"If there's ever a good time to die, 2010 is certainly it for the wealthy individual," Kaufman says.

Shortly after the estate tax expired, there was widespread speculation that Congress would reinstate it and make the tax retroactive to the beginning of 2010. But even if Congress agrees on an estate tax fix, it's unlikely lawmakers will be able to make it retroactive, Behrendt says. Families of billionaires who have died this year have the money and wherewithal to fight the tax all the way to the Supreme Court, he says.

"At some point, it becomes impractical to bring it (estate tax) back," Behrendt says. "George Steinbrenner's death in mid-July really underscores that reality."

Life-or-death tax implications

As repeal of the estate tax loomed at the end of 2009, wealthy families had an incentive to keep ailing parents or grandparents alive until Jan. 1. This year, in what sounds like an episode of Law & Order, heirs stand to benefit if wealthy benefactors die before midnight on Dec. 31. While outright homicide seems unlikely, estate-planning attorneys say they can envision situations in which the prospect of onerous estate taxes influences family members' decision to discontinue a relative's life support.

It could also cause some wealthy people with terminal illnesses to hasten their own demise, Behrendt says. "The fact is that our tax laws are influencing people's decision to live or die." USA TODAY (7/23/2010)