Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
mindは「心」「精神」と訳されるが、本来は「記憶する」「考える」など心の知的な働きを指す。castingはcast(投げる)の動名詞形だが、ここではインターネットのブログなどにメッセージをpost(掲示)すること。そこで、mindcastingは、考えや思想、感情などをメッセージにしてネット掲載することだ。カタカナ読みは「マインドキャスティング」。
mindcastingは、今や流行の“Twitter(ツイッター)”の出現とともに注目を集め始めた言葉。twitterの元の意味は鳥のさえずりで、人の場合は「つぶやき」を表す。従来のブログは、普通1日1回〝更新〟されるが、そこからケータイなどを使って短いメッセージを次々に掲示するmicro-blog(小型ブログ)という考えが生まれた。これが、social networking(ソーシャル・ネットワーキング) 機能と結びついて利用されるのがTwitter。米Obvious社(現Twitter社)が2006年7月からサービスを始めた。
では、Twitterで何ができるのか?
同社のPRによると、“What are you doing?”(いま何をしている?)などの簡単な質問に対し、140 字以内の短い文章で答えることで、コミュニケーションの輪が広がるという。
その利用例として注目されたのが、イラン大統領選挙後の混乱についての市民報道。フォックス・ニュース(2009年6月16日付)は、“Twitter Links Iran Protesters to Outside World”(ツイッターがイランの抗議者と外部の世界を結ぶ)と報じた。大統領選挙の結果に抗議する人たちに対する政府当局の弾圧の模様が、イラン市民によってTwitterを通して、実況中継のごとく世界に報じられた。
ところで、Twitterの参加者の多くは、自分の身の回りや日常生活について話し始める。つまり、自分のlifeに関するメッセージを掲示するからlifecastingという言葉が誕生。これがさらに考えや思想にまで対象が拡大し、時々刻々メッセージを流すのがmindcastingだ。ロサンゼルス・タイムズ(2009年3月11日付)は、“On Twitter, Mindcasting Is The New Lifecasting”(ツイッターにおいてマインドキャスティングは新たなライフキャステイング)と述べて、その可能性に注目する。
mindcastingによって、自分の見たこと、聞いたこと、さらにそれに対する意見や感想などを即座に編集して多くの参加者に流すことができるから、“Twitter is the most minimal newspaper.”(ツイッターは、最も小さな新聞)となり、〝マイ新聞〟ができるというわけ。
だが、たとえ〝マイ新聞〟でも新聞と名が付く以上、途中で止めてはならず、発行し続ける必要がある。吉田兼好の徒然草ではないが、「心に移りゆくよしなし事」をメッセージにしてケータイで四六時中送り続けるというのは、本当にもの狂おしい作業のようにも思える…。The Sankei Shimbun (July 6 2009)
PS: この記事を書いてから2年以上たち、Twitterが有力なメディアであることが、中東におけるアラブの春の民主化運動でも証明された。だが、一方でinternet addictionに拍車を掛けるものであることも確かになってきた。最近の精神病の増加との因果関係にも注意したい。
0 件のコメント:
コメントを投稿